消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

消費税を廃止するためには経済成長の大切さを認識しよう(2023年最新版)

この記事は、2020年1月22日に更新された「消費税を廃止するためには経済成長の大切さを認識しよう」の最新版です。

 

人口が減少している国でも経済成長は可能

 岸田首相は2022年12月10日に臨時国会が閉会したことを受けて会見し、防衛力増強の財源として増税を行う考えを改めて示すと共に、国債を発行する可能性は「未来への責任としてあり得ない」と否定した。また、12月13日の自民党役員会で、防衛費増額について「責任ある財源を考えるべきであり、今を生きる国民が自らの責任としてしっかりその重みを背負って対応すべきものである」と発言したことが物議を醸した。

 これを受けて2023年に入ってからは「異次元の少子化対策を行う財源として消費税増税が必要」という作戦に切り替えている。政府は防衛力増強でも少子化対策でも、将来的に消費税を15~20%まで増税できれば理由は何でも良いと思っているようだ。

 

 しかし、日本では消費税の廃止を求めるデモがほとんど起こっておらず、燃料税の引き上げに反対するフランスの「黄色いベスト運動」のような反緊縮の運動に発展する気配が全く感じられない。その理由は政治に無関心な人が多いだけでなく、「日本のような人口が減少する国ではもう経済成長できない」という勘違いが国民の間で広く共有されているからではないだろうか。

 例えば、財務官僚の森信茂樹氏は著書『消費税、常識のウソ』(朝日新聞出版、2012年)の中で「経済の成長は、基本的に労働人口の増加と生産性の向上によるものです。したがって、人口減少=経済成長の減速です。成熟した我が国の経済を考える場合、名目成長で4~5%を想定することはないものねだりと言えましょう」と述べている。

 こうした人口減少衰退論は森信氏だけでなく、私が様々な方と政治の話をしていて消費税増税の反対派でも「日本は人口が減少しているからもう経済成長できないよね」と言う人が多いように思う。

 

 だが、世界では日本より人口が減少している国はいくらでも存在するのが事実だ。2001~2021年の人口増加率はラトビアがマイナス19.6%、リトアニアがマイナス19.3%、ウクライナがマイナス14.8%、ルーマニアがマイナス14.3%、ブルガリアがマイナス13.3%、モルドバがマイナス11.6%、ジョージアがマイナス7.7%、クロアチアがマイナス6.3%、アルバニアがマイナス6.2%、ベラルーシがマイナス6.1%、ハンガリーがマイナス4.6%、エストニアがマイナス4.3%、アルメニアがマイナス3.3%なのに対し、日本はマイナス1.3%と減少幅が小さくなっている(図42を参照)。

 

 その一方で、2001~2021年の名目GDPの伸び率はベラルーシが97.28倍、ウクライナが26.84倍、モルドバが12.70倍、ルーマニアが10.07倍、ジョージアが8.78倍、アルメニアが5.94倍、エストニアが4.50倍、ラトビアが4.40倍、ブルガリアが4.28倍、リトアニアが3.91倍、ハンガリーが3.59倍、アルバニアが3.35倍、クロアチアが2.22倍と大なり小なり差があるものの、日本の1.02倍よりもはるかに経済成長していることがわかる(図43を参照)。

 

 人口減少国の中でベラルーシの名目GDPの伸び率が突出しているのは、2001~2021年の20年間で軍事支出を78.4倍も増加させた背景があるようだ。北朝鮮でも1998~2018年の20年間で軍事支出の伸びは74.1倍なので、いかにベラルーシの軍事費が増加しているのかわかるだろう(ストックホルム国際平和研究所のデータより引用)。

 更に、「人口減少国でもベラルーシウクライナは経済成長している」と言うと、必ず「ベラルーシウクライナ旧ソ連から独立した発展途上国だから日本とは状況が異なる」と反論してくる者がいるが、旧ソ連の国以外でもルーマニアブルガリアハンガリーアルバニアクロアチアでは2001~2021年の20年間で名目GDPが倍以上も増加しているのだ。

 

 諸外国と比べて日本だけが経済成長できないのは人口が減少しているからではなく、政府の公共投資を削減してきたからだということは「増税賛成派の井手英策氏に反論する(前編)」の記事でも指摘したが、その他にも消費税が日本経済を蝕んでいるという現実があるのではないだろうか。

 国民経済計算によれば、物品税の時代だった1956~1988年度では名目GDP成長率の平均が12.3%、実質GDP成長率の平均が6.8%と高かったのに対し、消費税を導入してからの1989~2021年度では名目GDP成長率の平均が0.9%、実質GDP成長率の平均が1.0%と大幅に下落している。つまり、物品税の時代と比べて消費税を導入してからの約30年間は名目では13分の1以下、実質では6分の1以下しか成長していないのだ(図44を参照)。

 「人口が減少する国ではもう経済成長できない」という通説は、「消費税のせいで日本は経済成長できない」という現実から目を逸らすために唱えられている部分もあるだろう。

 

 

経済成長が人々の心を豊かにしている

 また、昔から言われている通説に、「物質的な豊かさを追求すると人々の心が貧しくなる」というものがある。

 古くは1970年代に論争を巻き起こし、大平政権(1978~1980年)の「一般消費税構想」にも寄与した保守派知識人の集まりであるグループ一九八四年が、著書『日本の自殺』(PHP研究所、1976年)の中で「戦後日本の繁栄は、他方で人々の欲求不満とストレスを増大させ、日本人の精神状態を非常に不安定で無気力、無感動、無責任なものに変質させてしまった」と発言している。

 

 それから30年が経って、安倍元首相も第一次政権のときに出版した著書『美しい国へ』(文藝春秋、2006年)の中で、「戦後の日本は経済を優先させることで、物質的に大きなものを得たが精神的には失ったものも大きかったのではないか」「自主憲法を制定しなかったことで損得が価値判断の重要な基準となり、家族の絆や生まれ育った地域への愛着、国に対する想いが軽視されるようになってしまった」と述べている。

 

 しかし、実際に戦後の名目GDPは1955年の8.4兆円(平成2年基準)から2021年の549.4兆円(平成27年基準)まで約65倍も増加したのに対し、他殺による死亡者数は1955年の2119人から2021年の254人まで8分の1以下に減少している。つまり、戦後の経済成長は殺人事件の件数を減らし、人々の心を豊かにしたというのが事実なのだ(図45を参照)。

 最近では、「家族間殺人が増加している」という報道をよく目にするが、増えているのはあくまでも殺人事件全体に占める割合であって、未遂を含めた家族間殺人の件数は2008年の558件から2021年の372件まで減少しているのである。

 

 更に、作家の曽野綾子氏は自伝本『この世に恋して』(ワック、2012年)の中で「今、日本人はお坊ちゃま、お嬢ちゃまの集団になっています。貧困の中で生きるアフリカの人々のほうが、物質的に恵まれた社会に暮らす私たちよりも人間として豊かなのかもしれません」と戦後の経済成長を真っ向から否定した主張をしている。

 彼女は2013年に安倍政権が発足した教育再生実行会議の有識者メンバーに選任されたことから、2018年度から始まった道徳の教科化に関しても「今の子供たちは物質的に豊かになって甘やかされているから道徳教育の強化が必要」という若者バッシングが背景に存在することは確実だろう。

 

 だが、2022年に国連が発表した世界の幸福度ランキングを見ると1位のフィンランド、2位のデンマーク、3位のアイスランドと福祉や教育が充実している北欧の国々が上位に並んでいて、4位のスイスは付加価値税の標準税率が7.7%、15位のカナダは5%と日本より消費税の安い国も存在し、9位のイスラエルは国民負担率(2018年度)が43.1%、12位のオーストラリアは41.4%と日本の44.3%より低くなっている。

 図46では幸福度ランキング1~15位の国と日本の2001~2021年の名目GDPの伸び率を比較したが、スイスの1.51倍からアイスランドの4.05倍まで安定的な経済成長をしている国が多いことがわかる。逆にベラルーシのように軍事支出を大幅に増やして、名目GDPの伸び率が跳ね上がっている国もない。

 

 それに対し、ランキング下位にはボツワナルワンダジンバブエレバノンアフガニスタンなど経済的な混乱が続いていたり、戦争や紛争が絶えなかったりする発展途上国が並んでいて、「アフリカの国々のほうが人間として豊か」という曽野綾子氏の主張は全くのデタラメだろう。ちなみに、日本の幸福度ランキングは54位と高くないが、これも1990年代後半から20年以上デフレ不況が続いて経済成長していないことが原因だと考えられる。

 

 しかし、一体どれほどの日本人が「戦後の経済成長によって人々の心が豊かになり、治安も大幅に改善した」という事実を共有しているだろうか。例えば、2017年2月にSF作家の山本弘氏が大阪府箕面市の中学生に実施したアンケート調査では『50年前に比べて、日本の少年犯罪は大幅に増えている』という質問に「信じている」「やや信じている」と回答した生徒は合わせて57.4%にものぼったのに対し、「信じない」「やや疑っている」と回答した生徒は合わせて10.1%しかいなかったという。

 実際に、未成年の検挙人数は1981年の25万2808人から2021年の2万399人(少年人口比では10万人当たり1432.2人から186.5人)まで7分の1以下に減少したにも関わらず、長年マスコミが「日本の治安は悪化している」というデマを流し続けている影響で、少年犯罪が凶悪化していると勘違いする中学生が多いのかもしれない。

 

 この誤解を解くためには、中学や高校の授業で前述の図46のグラフを提示して「経済成長が人々の心を豊かにしている」という事実を教えるべきではないだろうか。学校教育では常に政治的中立性が議論の対象となっているが、日本の治安が大幅に改善したという事実を教えることに全く問題はないだろう。消費税を廃止する世論を盛り上げるためには、経済成長の大切さを国民に広く共有してもらう必要があると言える。

 

 

<参考資料>

岸田首相、防衛費財源で増税に理解求める 国債は否定

https://jp.reuters.com/article/japan-prime-minister-idJPKBN2SU05H

岸田首相、防衛費増額は「国民が重み背負うべき」 増税に理解求める

https://www.asahi.com/articles/ASQDF4T72QDFUTFK00V.html

「異次元の少子化対策」で岸田首相にさらなる不信

https://www.sponichi.co.jp/society/news/2023/01/07/kiji/20230107s00042000083000c.html

SIPRI Military Expenditure Database

https://milex.sipri.org/sipri

図録 他殺による死亡者数の推移

https://honkawa2.sakura.ne.jp/2776.html

令和3年の刑法犯に関する統計資料

https://www.npa.go.jp/toukei/seianki/R03/r3keihouhantoukeisiryou.pdf

【2022年】最新世界幸福度ランキング 世界の順位一覧と日本の状況

https://eleminist.com/article/2052

日本の税金は高すぎる?税金の国民負担率ランキング、1位は驚愕のあの国

https://the-owner.jp/archives/6397

中学生の6割は「月は西からのぼる」と信じている。(2)

https://hirorin0015.hatenablog.com/entry/2017/03/06/181746

令和4年版犯罪白書のあらまし

https://www.moj.go.jp/content/001385251.pdf