消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

消費税5%減税と現金給付がコロナ危機から日本経済を救う

増税とコロナは関東大震災クラスの経済的損失をもたらした

 内閣府が6月8日に発表した2020年度のGDP成長率は物価の変動を除いた実質がマイナス4.6%、物価の変動を含めた名目がマイナス3.9%の落ち込みだった。特に実質GDP成長率はリーマンショックだった2008年度のマイナス3.6%を超える下落幅で、消費税10%増税個人消費が疲弊していたところに新型コロナウイルスが追い討ちをかけたのが明らかだろう(図1を参照)。

 財務省は数年前まで明治時代以降のGDPの長期時系列データを公表していて現在は削除されてしまったようだが、私のExcelに保存してあった数字を確認すると関東大震災が発生した1923年の実質GDP成長率もマイナス4.6%となっている。つまり、増税とコロナは10万人以上が犠牲になった関東大震災クラスの経済的損失をもたらしたことになる。

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 国民経済計算では5年ごとに基準となる年を変更してGDPを公表しているが、平成17年基準の名目GDPは消費税を5%に増税した1997年の523.2兆円が過去最高で2020年は500.3兆円である。また、国際基準の研究開発費とは関係ない「その他」の部分を大幅に加算したと言われている平成27年基準の名目GDPも消費税を10%に増税した2019年の559.8兆円をピークに2020年の538.6兆円まで落ち込んでいる(図2を参照)。

 政府は今後、消費税引き下げや毎月の現金給付など大規模な景気対策を打ち出さない限り、コロナ収束後もデフレ不況が続いて平成27年基準の名目GDPは永遠に2019年の水準を超えない可能性が高いだろう。

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 もともと日本経済は2019年に入ってから米中貿易摩擦を発端とした世界経済不安の影響で落ち込みが見られるようになっていて、藤井聡氏や松尾匡氏など反緊縮の経済学者がこれ以上景気を冷え込ませないために消費税10%増税の中止を提案していた。しかし、当時の安倍政権は聞く耳を持たず予定通り10月に増税を強行した結果、2019年10~12月期の名目GDP成長率は年率マイナス4.6%と前回8%に引き上げた2014年4~6月期の年率プラス0.9%と比較しても大幅に悪化してしまったのである。

 そして、2020年には新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化して名目GDP成長率は1~3月期が年率マイナス2.2%、4~6月期が年率マイナス27.7%と3期連続でマイナス成長が続いていたのは周知の通りである。

 

 しかし、1回目の緊急事態宣言が発令された2020年4月に政府は国民全員に一律10万円を支給する特別定額給付金の実施を決定し、7~9月期の名目GDP成長率は年率プラス24.1%まで回復する。特に、名目GDPの内訳を見ると民間企業設備投資が年率マイナス7.2%、民間住宅投資が年率マイナス18.6%の落ち込みだった一方で、個人消費を表す家計最終消費支出(帰属家賃を除く)は年率プラス27.8%と大幅に増加した。

 2020年7~9月期の名目GDPを下支えしたのは国民の個人消費であって、10万円の特別定額給付金はコロナ後の景気対策として一定の成果を上げたのではないだろうか。

 

 麻生財務相は「10万円を給付しても貯金に回っただけ」と発言しているが、これもデータを見れば嘘だということがわかる。例えば、総務省の家計調査によれば二人以上の世帯における食料の支出は1回目の緊急事態宣言が発令された後の2020年5月が7万8272円、6月が7万7246円、7月が7万9290円と3ヵ月の累計で23万4808円となっている。つまり、2人世帯が合計20万円を受け取ったとしても3ヵ月経てば食費で全て消えてしまうのだ。

 

 2021年には東京で新型コロナウイルスの感染が再拡大し、政府は1月8日から3月21日まで2回目の緊急事態宣言を発令していた。その影響で2020年10~12月期に年率プラス10.1%と好調だった名目GDP成長率は、2021年1~3月期に年率マイナス5.1%まで落ち込んでいる。日本経済は2020年後半に回復の兆しを見せていたが、今年に入ってから消費税引き下げや特別定額給付金の再支給など景気対策を伴わない緊急事態宣言で再び不況に戻ってしまったのが実情だろう。

 

 

現金給付を行えば2022年には名目GDPが640兆円にも達する

 それにも関わらず、菅政権はコロナに便乗して消費税を15~20%まで引き上げようとしている。2021年1月18日、菅首相は施政方針演説で「今後は右肩上がりの高度経済成長の時代と違って、少子高齢化と人口減少が進み、経済はデフレとなる。その中で国民に負担をお願いする政策も必要になる。その必要性を国民に説明し、理解してもらわなければならない」と発言した。政府はコロナ前まで散々「アベノミクスで景気が回復した」と自画自賛していたくせに、コロナで景気が悪化すると政策の失敗を認めることなく日本社会の構造のせいにするのは無責任だろう。

 

 その上、日本は2007年から高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)が21%を超える「超高齢社会」に入って人口の減少が始まったが、個人消費東日本大震災が発生した2011年3月から消費税が8%に増税される直前の2014年3月まで3年間で約15%も増加している(図3を参照)。

 もし、安倍政権が消費税増税を中止して税率が5%のままだったら2014年4月以降も個人消費が増加を続けてコロナによる経済の落ち込みは今ほど酷くなかった可能性が高いだろう。日本経済が成長していないのは少子高齢化ではなく、消費税増税をはじめとする政府の緊縮財政が原因である。

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 アメリカではコロナ危機が深刻になった2020年3月にまず1人最大1200ドル(約12.8万円)の支給を決定し、2020年12月には最大600ドル(約6.4万円)、2021年3月には最大1400ドル(約15万円)と3回の合計で最大3200ドル(約34.2万円)の大規模な現金給付を実施している。その影響で2021年1~3月の実質GDP成長率は年率プラス6.4%と2020年7~9月期から3期連続でプラス成長が続き、2021年4月の消費者物価上昇率も前年同月比プラス4.2%と急速に景気回復の兆しを見せている。アメリカは1980年代から小さな政府を推進してきたが、コロナ危機の影響で経済政策が転換しつつあるようだ。

 

 それに対し、日本では2020年度に持続化給付金や特別定額給付金などの景気対策を実施して国債発行額が前年度の36.6兆円から112.6兆円まで増加したが、2020年度の消費者物価上昇率は対前年比マイナス0.2%とインフレは全く発生していない。「現金給付を繰り返し実施するとハイパーインフレになる」と脅す経済学者もいるが、実際にはれいわ新選組の舩後靖彦議員が参議院調査情報担当室を通して行った試算によれば、国民全員に毎月10万円を給付したとしても物価上昇率は1年目で1.22%、2年目で1.44%、3年目で1.81%、4年目で1.75%と日銀が目標に定めている年率2%のインフレには達しないという。

 

 逆に、国民全員に一律の現金給付を行うメリットは大きい。日本経済復活の会の小野盛司氏はコロナ以前の経済状況を名目550兆円だとすると、国民に配る金額によってその後の経済が回復するスピードも変わってくると指摘している。例えば、何も配らなかった場合は3年が経ってもコロナ以前の経済規模には戻らないが、年間40万円を配った場合は1年ほど、年間80万円を配った場合は半年ほどでコロナ以前の水準に戻り、年間120万円を配った場合は名目GDPが急速に伸びていって2022年にはもう640兆円に達することが予想される(画像を参照)。

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生活困窮世帯に限定した現金給付は景気対策にならない

 深刻なコロナ危機であるにも関わらず、日本政府は何故これほどまで消費税引き下げや現金の再給付を頑なに拒否し続けるのだろうか。それには、まず2020年4月の緊急事態宣言で10万円の特別定額給付金が支給された本当の理由について振り返っておく必要があるだろう。

 2020年3月31日に自民党政務調査会が政府に提出した提言には、「消費税5%減税分に相当する約10兆円を上回る給付措置を、現金支給を中心に全体として実現すること」と書かれている。当時は自民党の安藤裕議員が代表を務める「日本の未来を考える勉強会」がコロナの景気対策として消費税を5%に減税する案を提言していた。つまり、自民党政調が決めた10万円給付というのは安藤議員に対して「現金給付でその分を国民に還元するから消費税引き下げをあきらめなさい」というメッセージでもあるのだ。

 

 2021年3月21日に2回目の緊急事態宣言が解除された後もコロナの感染拡大は収束せず、4月25日には東京、大阪、京都、兵庫を対象に5月11日まで特別措置法に基づく緊急事態宣言を再び発令した。しかし、「短期集中型」と言われた3回目の緊急事態宣言はまず5月31日までに延長され、5月28日には更に6月20日まで延長することを決定した。2021年に入ってから既に5ヵ月半が経過したが、そのうちの約4ヵ月間は緊急事態宣言が発令されていることになる。

 

 だが、5月14日には経済財政諮問会議の民間議員が国と地方の基礎的財政収支プライマリーバランス)を2025年度までに黒字化するとの従来目標を堅持すべきだと提言し、自民党財政再建推進本部も新型コロナウイルス対策のための財政出動を重視しつつ、コロナ収束後を見据えて来年度以降3年間の歳出削減目標の策定を求めている。

 

 その結果、3回目の緊急事態宣言では生活困窮世帯に限定して3ヵ月間で最大30万円を給付する合計約500億円のみの支援金を決定した。また、政府はまん延防止等重点措置で午後8時までの営業時間の短縮要請に応じた飲食店に対し、中小企業には売上高に応じて1店舗当たり日額4~10万円、大企業の店舗へは売上高の減少額に応じて最大日額20万円の協力金を支給している。

 しかし、2021年1~3月に実施した2回目の緊急事態宣言における時短協力金の支給率は兵庫が9割にのぼる一方で、東京や大阪、京都は4~5割程度と地域間格差が顕著に表れているようだ。

 

 ベーシックインカムを推進する経済学者の井上智洋氏は「シングルマザーや生活が苦しい学生などピンポイントで困っている人だけを救済すると、政府が想定しているような困っている人以外は救済されないことになる」と指摘している。例えば、生活に困っている一人暮らしのフリーターはシフトが入っていない状態にされているためコロナによる休業手当てを貰えない場合も非常に多い。その上、現金給付に所得制限を設けると対象になる国民と対象にならない国民が分断することにもなりかねないだろう。

 

 私は深刻なコロナ危機から日本経済を救うためにまず消費税を5%に減税し、日銀が定めている年率2%のインフレ目標に達するまで国民全員に毎月10万円の現金給付を続けることが最も適切な景気対策だと思っている。

 

 

<参考資料>

松尾匡 『左翼の逆襲 社会破壊に屈しないための経済学』(講談社、2020年)

井上智洋、小野盛司 『毎年120万円を配れば日本が幸せになる』(扶桑社、2021年)

森永卓郎 『なぜ日本経済は後手に回るのか』(KADOKAWA、2020年)

 

国民経済計算 2021年1-3月期 2次速報値

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2021/qe211_2/gdemenuja.html

家計調査(家計収支編) 時系列データ(二人以上の世帯)

https://www.stat.go.jp/data/kakei/longtime/index.html

3回の「緊急事態宣言」違いは? 「期間・地域・対策」を比較

https://news.yahoo.co.jp/articles/d846179297733caaf4293f11619c3d2e6053a1a4

第二百四回国会における菅内閣総理大臣施政方針演説

https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2021/0118shoshinhyomei.html

米、1人15万円を月内追加給付 200兆円対策を上院可決

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN064Z30W1A300C2000000/

GDP プラス6.4% 3期連続で改善

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210429/k10013005491000.html

消費者物価「市場予想超え」4.2%上昇でも、アメリカは金融政策「正常化」に動かないと言える理由

https://www.businessinsider.jp/post-234707

戦後の国債管理政策の推移

https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/appendix/hakkou01.pdf

<野党は減税でまとまれ>れいわ新選組 下関でゲリラ街宣 熱気帯びる意見交換

http://www.asyura2.com/20/senkyo275/msg/894.html

緊急経済対策第3弾への提言~未曾有の国難「命を守り、生活を守る」ために~

https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/news/policy/200009_1.pdf

25年度黒字化目標、苦肉の「堅持」 諮問会議で確認

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA13BKK0T10C21A5000000/

来年度以降3年間の歳出改革目標策定を 自民・財政再建本部提言案判明

https://www.sankei.com/politics/news/210512/plt2105120034-n1.html

困窮世帯へ最大30万円の給付金 政府が新たな支援策

https://www.asahi.com/articles/ASP5X6G7ZP5XUTFL00N.html

政府、百貨店などに日額20万円 休業要請、テナントは2万円

https://www.jiji.com/jc/article?k=2021042300969&g=eco

支援金すら速やかに配れない後進国

https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12670196379.html