消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

反緊縮を掲げる安藤裕議員と須藤元気議員を応援しよう

安藤裕議員は2021年の自民党総裁選に出馬して総理大臣を目指すべきだ

 最近、気になっている政治家に自民党の安藤裕議員と立憲民主党須藤元気議員がいる。安藤氏は自民党衆議院議員でありながら安倍政権が進める消費税増税法人税減税に批判的で、2018年11月には別冊クライテリオンで当時自由党参議院議員だった山本太郎氏とも対談した。その一方で、自民党の離党を求める声に対しては「離党してしまっては与党の政策を転換させることはより困難になる」と否定している。自民党に所属しながら安倍政権の緊縮財政を批判するのは非常に勇気のいることだろう。

 しかし、真っ当な経済政策を掲げる安藤氏に対して揚げ足を取ろうとしているのが自民党幹部の議員だ。新型コロナウイルスに乗じて更なる増税を目論んでいる石原伸晃元幹事長は6月4日、消費税廃止を求める党内の声に触れ、「根拠を示さずものだけ言うようなことはこれまでの我が党にはない」と発言し、ある閣僚経験者も「子や孫の世代に負担を押し付けることになる。責任政党の姿ではない」と減税勢力をけん制した。

 

 自民党幹部が言う「孫の世代に負担を押し付ける」とは国の借金が増えることなのだろうが、国際的な財政再建の定義は政府の負債対GDP比率が減少することで、名目GDPが増加すれば政府の負債が増えても財政健全化は達成できるのだ。2019年度の名目GDPは552.1兆円だが、もし橋本政権以降の自民党が緊縮財政を行わず消費税が3%のままだったら個人消費が157.8兆円も押し上げられて名目GDPは709.9兆円になっていた可能性が高いことは『消費税3%減税と公務員増加で名目GDP700兆円を目指そうの記事でも説明した。

 だが、橋本政権よりも前に1989年の竹下政権が消費税を導入しなかったらどうなっただろうか。消費税が導入される前の1981~1988年度の家計最終消費支出(帰属家賃を除く)は年平均で7兆6840億円も増加していた。2019年度の家計最終消費支出は245.9兆円だが、もし消費税が導入されなかったら家計消費が毎年7兆6840億円も増加して2019年度は415.7兆円にのぼっていたことが予想される。そうなると2019年度の名目GDPは169.8兆円も押し上げられて721.9兆円になっていた可能性が高いだろう(図62を参照)。ちなみに、消費税廃止の他にも1997年以降に削減されている公的固定資本形成を増やせば、名目GDPは750~800兆円にも達していたかもしれない。

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 名目GDPが552.1兆円から721.9兆円に増加すれば当然のことながら「政府の負債対GDP比率」も減少する。財務省によれば2020年3月末時点で国債と借入金、政府短期証券を合計した政府の負債は1114.5兆円で対GDP比率は202%となっているが、もし消費税を導入せず名目GDPが721.9兆円だったら「政府の負債対GDP比率」は154%まで縮小したことになる(図63を参照)。消費税を増税するどころか廃止したほうが名目GDPは増加して財政再建にも有効で、安藤氏の提言は極めて現実的なものだと言える。

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 ただし、消費税廃止を実現させるために安藤氏は2021年の自民党総裁選に出馬して総理大臣を目指す必要があるだろう。自民党総裁選に出馬するためには党所属の国会議員から20人の推薦をもらう必要があるが、問題なのは安藤氏を支持する自民党議員がどれほど存在するかということである。例えば、自民党幹部は麻生太郎氏、二階俊博氏、森喜朗氏、甘利明氏など自民党総裁の任期を更に延長して2021年以降も安倍首相を続投させる方針を支持していて、消費税廃止を求める党内の意見を黙殺しているのが現状だ。

 また、安藤氏は今年3月30日に青山繁晴議員が代表を務める「日本の尊厳と国益を護る会」と共同で記者会見を行ったが、青山氏は「安倍首相も将来的な消費減税を全部否定されているとは思わない」「私たちは抵抗勢力ではなく、消費税について柔軟な考えを持っている安倍首相の背中を押すという減税勢力」と中途半端な発言に終始していて、もし2021年の自民党総裁選で安藤氏が直接的に安倍首相と戦うことになったら青山氏は安倍首相を支持する可能性が高いだろう。自民党内で安藤氏を総理大臣にする声が高まらないのは、表面的に消費税を批判していても「安倍政権の増税だったら仕方ない」と思っている議員が大多数だからなのかもしれない。

 

 とはいえ、海外では新型コロナウイルス景気対策として付加価値税の引き下げを決断する国が相次いでいる。ドイツが2020年7~12月の期間限定で付加価値税を19%から16%、食料品などに適用されている軽減税率を7%から5%に引き下げたことは『日本政府はドイツと同様に消費税引き下げを決断すべきである』の記事でも述べたが、最近ではイギリスでもレストランや娯楽施設に適用される付加価値税を2020年7月から2021年1月まで20%から5%に減税することを発表した。ここで自民党増税反対派が団結し、戦後最悪の緊縮財政を強行した安倍政権を辞任させないと日本は後進国に逆戻りすることが確実となるだろう。私は今の自民党を全く支持していないが安藤氏には頑張ってほしいと思っている。

 

 

野党の増税反対派が協力して安倍政権に危機感を抱かせる必要がある

 須藤元気氏はもともと総合格闘家だったが、2019年の参院選立憲民主党から出馬して初当選した。しかし、今年7月5日に実施された東京都知事選では山本太郎氏の支持を表明し、宇都宮健児氏を支持した党の幹部と対立している。須藤氏が山本氏の応援演説でしきりに訴えたのがロストジェネレーション(以下、ロスジェネ)の救済である。

 ロスジェネとはバブル崩壊後の不況の影響を受けた主に1970年代生まれのことで、運良く高収入になれた男性を除いて夫が妻子を養う高度経済成長期の家族モデルを形成できなかった世代でもある。国税庁民間給与実態統計調査によれば、35~39歳男性の平均年収は1997年の589.1万円から2018年の527.6万円まで61.5万円(1997年比で10.4%)も減少し、40~44歳男性の平均年収は1997年の644.7万円から2018年の580.6万円まで64.1万円(1997年比で9.9%)も減少している。図64では1997年を100とする「35~44歳男性の平均年収と消費者物価指数」の推移を示した。

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 本来なら結婚して子育てに励んでいるはずの世代がなぜこれほどまでに貧困化しているのか。代表的なアンチ山本太郎である政治ジャーナリストの安積明子氏は「ロスジェネ世代がロスジェネにならざるをえなかったそもそもの原因は、日本の国際競争力が低下したことにある」と、まるで日本のグローバル化が足りないから1970年代生まれの所得が減少したと言いたいようである。しかし、実際には小泉政権以降の自民党が緊縮財政を続けてデフレ不況を長期化させてきたことが原因の一つではないだろうか。図65では2001年を100とする「主要先進国の政府支出の推移」を示したが、これを見ると日本は先進国の中で最も政府支出を増やしていない国だと言える。

 ドイツが付加価値税の引き下げを発表したときに、「厳しい歳出削減を行った上で減税するから日本とは状況が異なる」と発言した経済学者がいたが、そのドイツでも2001~2019年の18年間に政府支出を1.5倍も増加させているのだ。

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 また、安積明子氏は今回の都知事選で須藤氏が立憲民主党方針に反し、消費税廃止を掲げる山本氏を応援したことについて、「5%だった消費税を10%にすることは民主党政権時の野田内閣で決まったことだ。もし須藤氏がその事実を知らなくて同党から出馬したとするなら、あまりにも無知すぎる」と批判しているが、これは悪質なネガティブキャンペーンだろう。

 消費税10%への増税を決定したのは2016年6月1日の安倍政権だし、立憲民主党の中にも石垣のりこ氏や堀越啓仁氏など消費税に批判的な議員は少なくないのだ。安積氏をはじめとする自称保守派が増税民主党政権のせいにするのは、安倍政権のやることに何でも賛成しているからだろう。

 

 更に、安積氏は都債を発行して都民に一律10万円を支給する山本氏の政策について、「15兆円のバラマキは都政財政を破綻させる自殺行為」だと発言している。しかし、2013年以降に日銀が金融緩和を行って民間銀行の国債を買い取り、国民に返す必要のある負債は急速に減少しつつある状況でどうやったら東京都が財政破綻するのだろうか。2020年3月末現在、すでに日本国債の47.2%は政府の子会社である日銀が所有していて、このぶんは返済や利払いを行う必要はないのだ。「都債を発行すれば財政破綻する」というデマは、「消費税を増税しないと財政破綻する」という財務省プロパガンダと同じだろう。

 そもそも、安積氏は都債15兆円の発行をバラマキ扱いしているが、緊縮財政を続けてデフレ不況を長期化させてきたのがこの20年間の日本である。公共事業でも社会保障でも、「バラマキ」という言葉を使う人を絶対に信用してはいけないと思う。

 

 最近では国民民主党玉木雄一郎代表が次の衆院選に向けて、「消費税減税で野党はまとまって戦うべきだ」と主張し、野党共闘には反緊縮的な政策が必要だと提言している。玉木氏はドイツに続いてイギリスが付加価値税の引き下げを発表したことを受けて、「消費税を5%に減税するだけでなく、半年間0%なども検討したい」とツイッターで述べた。そのため、須藤元気氏は立憲民主党を離党した後に、国民民主党の玉木氏や馬淵澄夫氏など増税反対派の議員と山本太郎氏を国政に戻すよう選挙協力するのはどうだろうか。

 自民党の安藤裕氏や国民民主党の玉木氏、そして須藤氏と与党からも野党からも消費税引き下げを求める声が上がれば、安倍政権にとって「次の衆院選までに消費税を5%に戻さないと政権を失う恐れがある」と危機感を抱かせるきっかけになるかもしれない。消費税増税に賛成する自民党立憲民主党の幹部に逆らって、反緊縮を掲げる安藤氏と須藤氏を今後も応援していきたいと思う。

 

 

<参考資料>

責任政党の姿ではない

https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12607131546.html

国民経済計算 2020年1-3月期1次速報値

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2020/qe201/gdemenuja.html

国債及び借入金並びに政府保証債務現在高(令和2年3月末現在)

https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/gbb/202003.html

外食を50%割引、付加価値税は5%に減税

https://www.bbc.com/japanese/53344151

民間給与実態統計調査結果

https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/jikeiretsu/01_02.htm

都知事選、一番目立つ山本太郎でも「大旋風」を起こせない理由

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/73601?page=5

国債等の保有者別内訳(令和2年3月末速報)

https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/appendix/breakdown.pdf

国民・玉木氏「消費減税を旗印に」 合流ハードル高める

https://mainichi.jp/articles/20200717/k00/00m/010/263000c

古市憲寿氏やイケダハヤト氏など増税賛成派の若手の論客に反論する

若者は幸福だからと言って消費税増税に賛成する古市憲寿

 社会学者の古市憲寿氏が2011年に出版した『絶望の国の幸福な若者たち』という本を読んでいた。この本はバブル崩壊から20年以上不況が続いているというのに、現代の若者の生活満足度や幸福度は上昇しているという矛盾点を取り上げた内容である。例えば、内閣府の「国民生活に関する世論調査」によれば、2010年の時点で20代の70.5%が現在の生活に「満足」していると答えている。最新の2019年の調査でもこれが85.8%に増加したので、ますます若者の幸福度が高まっているとも言えるだろう。

 古市氏は本書を出版してから、政府の会議、企業向けの講演、政治家との討論番組など様々な場所に「若者」として呼ばれる機会が増えたという。政府やマスコミはどうやら彼の主張を「若者を代表する意見」だと認識しているようだ。

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 しかし、古市氏が若者は幸福だと考える根拠については大いに問題がある。内閣府の「国民生活選好度調査」(2010年)では「幸福度を判断する際、重視した事項」を聞いているが、そこで15~29歳の若者の60.4%が「友人関係」と答えていて他の世代と比べても突出して高かったという。古市氏は「1990年代以降顕著になったのは、若者たちにとって友人や仲間の存在が増してきたということだ」と述べている。だが、これは私のように中学生の頃に深刻ないじめを受けて同世代の友人がほとんどいない人にとっては何の説得力も持たない理由だろう。また、若者の多くがまるで小中学生のように友人や仲間こそ大切だと考えているなら、身の周りのことに気を取られて政治経済のことに関心を持ちにくくなる問題も生じてしまう。

 日本財団が2019年9~10月に9カ国の18歳を対象に実施した調査によれば、「社会課題について、家族や友人など周りの人と積極的に議論している」と答えた割合は中国が87.7%、インドが83.8%、インドネシアが79.1%、ベトナムが75.3%、イギリスが74.5%、ドイツが73.1%、アメリカが68.4%、韓国が55.0%なのに対し、日本は27.2%程度と欧米・アジアの他の8カ国と比べても著しく低い。10~20代の選挙投票率が低いのは、政治経済のことについて話さない友人関係にも原因がありそうだ。

 

 また、「国民生活に関する世論調査」だけを見て現代の若者の多くが幸福だと判断しても良いのだろうか。例えば、厚労省が発表している2019年の「自殺対策白書」によれば、10歳から39歳の死因の第一位は自殺となっている。こうした状況は国際的に見ても深刻であり、15~34歳の若い世代で死因の第一位が自殺なのは先進国で日本と韓国のみである。つまり、現代の若者は身近な友人たちと幸福を分かち合っている層と、学校のいじめや職場の不安定雇用に苦しめられている層とで二極化していると言えるかもしれない。

 

 その上、古市氏が現代の若者が幸福だと結論付けるのは彼の経歴や世代的な背景が存在するだろう。1985年1月に生まれた古市氏は慶応義塾大学環境情報学部を卒業した後に、東京大学大学院総合文化研究科に入学するエリート街道を歩んできた。2014年度の「東京大学学生生活実態調査」で東大生に家庭の年収を尋ねた結果が掲載されており、それによれば東大生の家庭では年収950万円以上が54.8%を占めている。世帯主が40~50代の一般世帯では22.0%でしかないので、東大生は富裕層の出身者が著しく多いことがわかる。逆に年収350万円未満の低所得者層は一般世帯では24.5%だが、東大生では8.7%しかいない。つまり、古市氏の主張は結局のところ社会的成功者としての若者論だということだろう。

 更に、厚労省の「国民生活基礎調査」によれば、児童のいる世帯の平均所得金額は1985年の539.8万円から1996年の781.6万円まで11年間で240万円以上も増加しており、古市氏が小学生の頃までは子育て世代の収入が上昇していたのだ。そのため、彼はまだ一億総中流社会の面影が残っていた時代に幼少期を過ごしたと言うこともできる。だが、消費税を5%に増税した1997年以降はデフレ不況が長期化し、児童のいる世帯の平均所得金額は2017年に743.6万円まで減少してしまった。

 

 図58では1996年を100とする「児童のいる世帯の平均所得金額と消費者物価指数」の推移を示したが、これを見ると物価はデフレと言われながらも消費税増税の影響でやや上昇しているのに対し、子育て世代の所得は大幅に下落したことがわかる。2020年以降は消費税10%増税新型コロナウイルスの影響で、更に子育て世代の所得が減少してしまうかもしれない。今の子供たちは古市氏が小学生の頃とは明らかに異なる時代を過ごしているのだ。

 むしろ、昭和の管理教育が衰退してから小学校に入学し、SNS上のいじめが深刻になる前に義務教育を修了した1980年代~90年代前半生まれのほうが今の子供たちよりも恵まれていると言えるだろう。

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 古市氏は2013年8月26日から31日にかけて経済財政諮問会議で行われた『消費税率8%への引き上げに関する集中点検会合』で、消費税増税について「海外からアベノミクスとセットで増税が認識されている」と発言している。つまり、「現代の若者は幸福だから国際公約のために増税しても問題ない」と言いたいのだろう。しかし、国際公約とは2011年11月にG20サミットで野田首相(当時)が「日本は2010年代半ばまでに消費税を10%に増税する方針を決めた」と発言したことを根拠にしているのだろうが、当時の世界主要国はユーロ危機の対応に追われていて日本の増税などどうでもいい話である。

 そもそも、消費税を引き上げるかどうかは他国が干渉できない国内の問題であって、このブログで何度も指摘しているように安倍首相は2012年6月のメールマガジンで「名目成長率が3%、実質成長率が2%を目指すというデフレ脱却の条件が満たされなければ消費税増税を行わないことが重要」と述べている。2013年の名目GDP成長率は0.8%、実質GDP成長率は1.4%程度(共に平成17年基準)なので、安倍首相はこの公約通り消費税8%への増税を中止すべきだっただろう。

 

 また、日本では欧米と違って若者が経済格差に反対するデモを起こさないことについて、古市氏は「ブラック企業問題などもあるが、ヨーロッパに比べたら大卒というだけで何とか働き口が見つかる日本は若者に優しい社会である」と述べている。この発言を聞いて古市氏は日本経済の現状が全くわかっていないと思わざるを得なかった。確かに日本は若年失業率の低い国であることは事実だが、その一方で先進国の中で最もデフレが長期化してこの20年間全く賃金が上昇していない。図59では1997年を100とする「主要先進国の賃金推移」を示した。

 古市氏が「若者は幸福だからデモを起こさない」と結論付けて消費税増税に賛成するのは、政治経済に関心を持たずデフレ不況で賃金が上がらない状況に甘んじているだけではないだろうか。私も29歳で今の生活に満足しているが、幸福を感じられない若者を自己責任で見捨てる古市氏の主張にはどうしても賛同できないのである。

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増税の代わりに社会保険料の引き下げを求めるイケダハヤト氏

 また、古市氏と似たような人物にYoutuberのイケダハヤト氏がいる。1986年生まれの彼は早稲田大学政治経済学部を卒業してから半導体メーカーに就職したが、その後はITベンチャーに転職し、現在はブログやYoutubeなどのアフィリエイターとして活動している。イケダ氏は著書『年収150万円で僕らは自由に生きていく』(講談社、2012年)の中で、「僕の考えでは人的なつながりさえ豊かであれば、お金は少なくても、あるいは全然なくても大丈夫です。わかりやすいところでは、友達とルームシェアをしていれば、家賃や光熱費、食費はだいぶ少なくなります」と述べている。つまり、「日本がいくらデフレ不況に苦しめられていても、身近な友人たちと幸福を分かち合えばいい」という古市氏と同様の考え方をしているのだ。

 

 更に、イケダ氏は「約40年後の2050年には日本の人口は9500万人台になり、その高齢化率は約40%にのぼるそうです。そうした長期のトレンドを鑑みれば、日本人の年収が今まで通り右肩上がりという妄想を抱くほうがクレイジーだと僕は思います」と典型的な『人口減少衰退論』を述べている。しかし、「消費税を廃止するためには経済成長の大切さを認識しよう」の記事でも説明した通り、ウクライナルーマニアなどは日本より人口減少のペースが速いにも関わらず、名目GDPは1998~2018年で20倍以上も増加しているのだ。

 日本のデフレ不況が長期化しているのは人口減少ではなく、1997年以降の自民党が緊縮財政を続けてきたことが原因なのだが、イケダ氏はそれを知らないのだろうか?

 

www.youtube.com

 

 イケダ氏は消費税増税にも賛成していて、Youtubeの動画『消費税ゼロはヤバい!イケハヤが消費税増税に大賛成な理由』を観ると、彼は消費税を大幅に増税する代わりに、現役世代の多大な負担になっている社会保険料を下げるべきだという立場らしい。2017年度の社会保障費用統計によれば、社会保障財源の構成割合は税金を含めた公費負担の35.3%(49.9兆円)よりも社会保険料の50.0%(70.8兆円)のほうが多く、そのうち企業負担に当たる事業主拠出が23.6%(33.4兆円)、個人負担に当たる被保険者拠出が26.4%(37.4兆円)で占められている。

 日本の社会保障制度の半分は税金ではなく社会保険料で成り立っているのであって、「消費税を増税して保険料を下げろ」というイケダ氏の主張は企業の負担を軽減して、そのぶんは増税として低所得者にまで広く負担を求める乱暴な案である。日本では1989年以降、経団連法人税減税の代わりに消費税増税を求めてきたが、「保険料を下げる代わりに増税」という主張もそれと同じようなものではないだろうか。

 

 また、イケダ氏は動画内で「世代間の格差を解消するために消費税増税が必要」と言っている。世代間格差とは、学習院大学教授の鈴木亘氏の試算によれば、将来的に受け取る年金受給総額から、現役時代に納めた年金保険料の総額を引いた差が1940年生まれと2010年生まれで約5900万円もあるという。

 世代間格差を消費税で解決しようとする意見には「消費税を増税すれば、富裕高齢者の消費によって税収が上がり、社会保険料の引き下げや将来的な年金支出を通して貧しい若年層に再分配できる」という思惑が存在するが、そもそも高齢者の多くは若者から搾取するほど金持ちなのだろうか。図60では「全世帯と高齢者世帯の所得金額階級分布」を示したが、これを見ると年収500万円以上は高齢者世帯より全世帯のほうが多いのに対して、年収400万円未満は全世帯より高齢者世帯のほうが多い。つまり、現役世代よりも高齢者のほうが貧困層は多いのだ。

 消費税は所得に関係なく、消費に対して同じ額の税金が掛かる「逆進性」の強い性質を持っているため、富裕高齢者よりも貧しい高齢者へのしわ寄せが大きいだろう。もし、世代間格差を解消させるために富裕高齢者に対して負担を求めるなら、消費税を廃止する前提で相続税を大幅に引き上げたり、金融資産に課税したりするのはどうだろうか。

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 更に、新潟大学教授の藤巻一男氏は2011年、消費税増税に関して20~60代の男女1000名に以下のアンケート調査を実施したが、その中で「消費税の引き上げには反対」と答えた人は20代で32.5%、30代で28.4%、40代で29.1%、50代で25.5%、60代で22.8%と高齢者より若者のほうが割合は高かった。私は2017年2月に『消費税の歴史と問題点を読み解く』という本を出版してから、様々な世代の方に消費税についてどう思っているのか聞くようになったが、明らかに60代以上のほうが増税を容認する人が多いように感じる。

 もし、消費税増税が世代間格差の是正になると国民が実感しているのなら、若者こそ消費税増税に賛成する割合が高くなければならないが、高齢者より若者のほうが増税に反対する人が多い事実について、イケダ氏をはじめとする消費税増税の賛成派はどう感じるだろうか。

 

 また、仮にイケダ氏が言うように社会保険料を引き下げる必要があったとしても、しばらくの間は増税ではなく国債を発行して財源を捻出すれば良いだろう。今は新型コロナウイルスの影響でデフレ不況が深刻なので、政府は例えば景気対策として年間の名目GDP成長率が5%以上に達するまで社会保険料の支払いを免除して財源は国債で賄うという政策を打ち出すことも可能である。イケダ氏は社会保障の財源を捻出する方法が税金と社会保険料しかないと思っているから、「社会保険料引き下げの代わりに消費税増税」という提案になるのだろう。

 

 更に、イケダ氏は「社会保険料引き下げと消費税増税で現役世代の負担を減らせば、経済が良くなって子供を生みやすくなる」と発言しているが、これは消費税の怖さを全く理解していない暴論である。図61では過去60年間(1959~2019年)の「名目GDP成長率と出生数の推移」を示したが、1970年代後半以降の成長率と出生数の低下には強い相関関係があることがわかる。

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 特に消費税を導入した1989年からは少子化がより深刻になっていて、消費税3%だった1989~1996年は出生数の平均が年間121.5万人なのに対し、消費税5%だった1997~2013年の平均が年間111.3万人、消費税8~10%に引き上げられた2014~2019年の平均が年間95.3万人と増税すればするほど出生数が減少しているのだ。先進国の中で最も公的な教育予算が少なく、毎日消費される食料品にまで8%の税率が適用される日本では20年以上続いたデフレ不況が少子化にも影響しているのではないだろうか。

 若者の代表を装って、子育て世代を苦しめる消費税増税に賛成する古市憲寿氏やイケダハヤト氏は大いに問題があると感じる。

 

 

<参考資料>

古市憲寿 『だから日本はズレている』(新潮社、2014年)

本田由紀 『教育は何を評価してきたのか』(岩波書店、2020年)

片田珠美 『「正義」がゆがめられる時代』(NHK出版、2017年)

三橋貴明 『メディアの大罪』(PHP研究所、2012年)

藤巻一男 『日本人の納税者意識』(税務経理協会、2012年)

 

現在の生活に対する満足度(2019年)

https://survey.gov-online.go.jp/r01/r01-life/zh/z02-1.html

年齢階級別の自殺者数の推移

https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/jisatsu/19-2/dl/1-3.pdf

平成30年 国民生活基礎調査の概況

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa18/index.html

国民経済計算 2016年7-9月期 1次速報値

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2016/qe163/gdemenuja.html

Earnings and wages Average wages OECD Data

https://data.oecd.org/earnwage/average-wages.htm

社会保障費用統計(平成29年度)

http://www.ipss.go.jp/ss-cost/j/fsss-h29/fsss_h29.asp

人口動態総覧の年次推移

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai19/dl/h1.pdf

デフレ不況が20年以上続く日本で消費税は不向きな税制

積極財政を装って緊縮財政を進める安倍政権

 安倍政権が発足してから7年半が経って、結局のところアベノミクスって何だったのだろうかと思う。アベノミクスはもともと、「大胆な金融緩和」「機動的な財政政策」「民間企業を呼び起こす成長戦略」という3本の矢で構成されていた。一つ目の金融緩和は日銀が世の中に供給するお金の量を表したマネタリーベースを見ると、2012年12月から2020年5月までに396.3兆円も増加しているので徹底的に進められたと言うことはできるかもしれない。

 しかし、消費者物価指数の中で最も重要なコアコアCPI(食料〔酒類を除く〕及びエネルギーを除く総合)は2020年5月に対前年比0.1%と消費税増税の影響を含めても年率2%のインフレ目標には達しておらず、金融緩和がデフレ脱却に全く寄与していないのが明らかである(図52を参照)。

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 2つ目の財政政策については当初、国土強靭化として公共事業の大盤振る舞いを宣言していたが、実際に安倍政権が財政出動を行っていたのは最初の1年だけであって、公的固定資本形成は2013年10~12月期の27.1兆円から2020年1~3月期の27.0兆円へとほとんど横ばいの状態が続いている(図53を参照)。2013年10月1日に消費税8%への増税を決めてから政府の公共投資を全く増やしていないのが現実なのだ。

 それどころか、安倍政権は2025年のプライマリーバランス黒字化目標のために憲政史上初めて消費税率を2段階も引き上げた戦後最悪の緊縮財政内閣だと言うこともできるだろう。

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 また、安倍政権が本当に2012年当時から積極財政だったのかというのも疑問に思う。安倍首相は2012年6月のメールマガジンで「名目成長率が3%、実質成長率が2%を目指すというデフレ脱却の条件が満たされなければ消費税増税を行わないことが重要」と発言していたが、これは非常にハードルの低い目標である。そもそも消費税とは完全雇用のもとで国民の消費を減らし、消費財を生産していた人手を浮かせてインフレを抑制することが目的の税金であって、年間の名目GDP成長率が10%を超えるような激しいインフレが発生しない限り増税してはいけないからだ。

 つまり、安倍政権は消費税増税を実現させるために、一時的に財政出動を行って少し景気を上向かせておこうと考えていただけではないだろうか。日本が本当にデフレ脱却するためには、消費税の廃止こそが必要だという考えには至らなかったようである。

 

 

法人税を減税しても国内への設備投資は増えない

 3つ目の成長戦略は具体的に言えば法人税減税などの規制緩和だが、消費税増税の代わりに法人税を引き下げて企業に余力が生まれたとしても、利益は需要不足の日本ではなく海外に投資される可能性が高い。

 1996~2019年の23年間で民間企業の設備投資は1.25倍しか増加しなかったのに対し、海外への投資の額を表した対外直接投資は9.50倍も増加している(図54を参照)。海外に拠点を置いて活動する企業の数を表した現地法人企業数も1996年の12657社から2018年の26233社まで増加していて、法人税の高い時代のほうが企業は国内で仕事をしていたのだ。

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 更に、法人税を減税すると企業の経常利益が増加しても法人税収がほとんど増えないという問題も発生する。法人税の基本税率は消費税が導入された1989年度の40.0%から2018年度の23.2%まで減税し、法人税収も1989年度の19.0兆円から2018年度の12.3兆円まで減収しているのだ。それに対し、企業の経常利益は1989年度の38.9兆円から2018年度の83.9兆円まで約2.2倍も増加し、法人税収が減少する一方で経常利益はバブル崩壊後も増え続け過去最高を更新している。

 もし、2018年度の経常利益に1989年当時の税率(40%)が適用された場合、単純比較で法人税収は41.0兆円にものぼっていたことが予想され、これは実際の法人税収より28.7兆円も多かったことになる(図55を参照)。2018年度の消費税収は17.7兆円程度であるため、法人税率を一昔前の水準に戻せば消費税を廃止しても社会保障費を捻出することは可能なのだ。

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 経団連は「法人税増税すると日本から企業が逃げ出す」と言うが、経産省の海外事業活動基本調査(2017年度)では海外に進出する企業に対して移転を決定した際のポイントについて3つまでの複数回答で聞いたところ、法人税が安いなどの「税制、融資等の優遇措置がある」を選択した企業は8.0%と一割にも満たなかった。

 その一方で、企業が海外進出を決定した理由としてトップに挙げたのは「現地の製品需要が旺盛または今後の需要が見込まれる」の68.6%で、法人税を減税するよりも消費税を廃止して個人消費による需要を創出すれば、企業が国内に留まってくれる可能性が高いということだろう。

 また、今後は新型コロナウイルスの影響で景気が悪化して法人税収が減少するのではないかという懸念もあるが、そのときは日銀が目標に定めている年率2%のインフレ目標に達するまで国債を発行して財源を捻出すれば良い。国債を躊躇なく発行すれば、それによって歳出が短期的に増加することがあったとしても財政出動による経済効果で成長率が上がり、自然増収が毎年どんどん増えていくのである。

 

 

消費税廃止を掲げる人物を総理大臣にしよう

 私は消費税についてデフレ不況が20年以上続く日本では不向きな税制なのではないかと考えている。財務省は毎年度の政府予算で歳出が税収を上回って不足額が広がっていく現象を「ワニの口」と呼んでいるのに対して、京都大学教授の藤井聡氏は1997年以降に名目GDPの日米格差が大幅に開いてしまったことを「新ワニの口」と表現している。

 図56では主要先進国の名目GDPの推移を示したが、これを見ると1997~2019年の22年間でカナダが2.53倍、アメリカが2.50倍、イギリスが2.30倍、フランスが1.86倍、ドイツが1.75倍も経済成長したのに対し、日本は22年間でたったの1.04倍しか名目GDPが増加していない。日本の2019年の名目GDPは553.7兆円だが、もし1997年以降の日本がアメリカ並みに経済成長したら名目GDPは今頃1300兆円を超えていたことが予想される(図57を参照)。

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 しかし、国会議員の方々は日本が「衰退途上国」に転落してしまったことについて全く危機感を持っていないのではないかと思えてならない。例えば、自民党石原伸晃元幹事長は6月11日に「消費税ゼロなんてことを言ったらどこかの政党と一緒だ。保守政党は消費税ゼロを言っちゃダメ」などと発言をしている。だが、消費税増税に反対する産経新聞特別記者の田村秀男氏は2018年11月にトランプ大統領の腹心、ミック・マルバニー補佐官代行と対談した際に、彼は保守主義の政策について「税金を使わずに経済を成長させ、人々の生活を楽にすること」と主張したという。

 2019年9月にもアメリカの保守派から「日本では保守を名乗る政治家がなぜ、経済成長を損なう増税を選挙公約にするのか」と聞かれた際に、田村氏は「日本の政治家は伝統を重視すれば保守だと自認するが、経済成長には無関心で社会保障費を補うために増税やむなしという立場になっている」と答えたら、「それは我々の言う保守主義とは関係ないね」と驚かれたらしい。つまり、保守政党だからといって緊縮財政を推進する理由にはならないということだろう。

 

 今年に入ってからは新型コロナウイルスの影響で、ドイツが付加価値税を7~12月の期間限定で現在の19%から16%に引き下げ、食料品などに適用される軽減税率も7%から5%に下げることを決定した。1997~2019年の22年間で1.75倍も経済成長したドイツが付加価値税を減税したのだから、たったの1.04倍しか名目GDPが増えていない日本も景気対策としてそれを見倣って良いのではないだろうか。

 とはいえ、安倍首相や石原元幹事長などの緊縮派では消費税の引き下げは不可能なので、自民党内であれば安藤裕議員のような消費税廃止を掲げている人物を総理大臣にするしかないと思っている。

 

 

<参考資料>

若田部昌澄 『ネオアベノミクスの論点』(PHP研究所、2015年)

松尾匡 『この経済政策が民主主義を救う』(大月書店、2016年)

菊池英博 『消費税は0%にできる 負担を減らして社会保障を充実させる経済学』(ダイヤモンド社、2009年)

藤井聡 『「10%消費税」が日本経済を破壊する』(晶文社、2018年)

伊藤裕香子 『消費税日記 ~検証 増税786日の攻防~』(プレジデント社、2013年)

田村秀男 「経済成長を無視する空っぽの保守主義」 『表現者クライテリオン』(啓文社書房、2019年11月号)

日本政府はドイツと同様に消費税引き下げを決断すべきである

消費税を減税するドイツと緊縮財政を続ける日本政府

 ドイツのメルケル政権は6月3日に、付加価値税の税率を2020年7~12月の期間限定で現在の19%から16%に引き下げ、食料品などに適用される軽減税率も7%から5%に下げることを発表した。新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ消費や投資の回復を後押しする狙いで、ドイツ政府は追加の国債発行などで必要な資金を調達する見通しである。

 しかし、日本では麻生財務大臣が消費税について「引き下げることは考えていない」と述べ、西村経済再生担当大臣も「消費税は全世代型の社会保障制度に向けた重要な財源として、昨年10月の引き上げは正しい判断だった」という認識を示している。

 

 それどころか、今回の新型コロナウイルスに乗じて更なる消費税増税や歳出削減を推進しているのが東京財団政策研究所の小林慶一郎氏だ。小林氏は「財政が悪化を続けていることが消費者や企業の将来不安を高め、その結果、経済活動が萎縮して経済成長率が低下している可能性がある。財政悪化が経済成長率の低下の原因なら、先に高い経済成長を実現して後で財政再建をするという戦略は成り立たない」と述べている。

 しかし、日本で初めて財政再建を唱えたのは1978年の大平政権であって、1982年9月にも大蔵省が赤字国債を10年で償還する原則をくつがえしたところ、朝日新聞などの大手紙が一斉に「政府財政、サラ金地獄へ」という見出しで財政破綻を煽り始めた。つまり、国民の将来不安が高まったのは高度経済成長期が終焉した70年代後半からだとも言えるだろう。

 だが、個人消費を表した民間最終消費支出(実質値)は1977~1997年の20年間で1.86倍も増加していて、消費税が3%だった90年代半ばまで個人消費は急速に伸びていたのだ。それに対し、1997~2017年の20年間で民間最終消費支出は1.16倍しか増加しておらず、消費税増税こそが経済活動を萎縮させている原因ではないだろうか(図47を参照)。

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 総務省の家計調査を見ても、実質消費指数(2人以上の世帯)は消費税が5%だった最後の月である2014年3月の116.2から最新のデータである2020年4月の86.9まで約6年間で29.3%も下落している(図48を参照)。

 民間最終消費支出も2014年1~3月期の306.2兆円から2020年1~3月期の291.7兆円まで落ち込んでいて、消費税を5%から10%まで増税したことで実質GDPを14.5兆円も押し下げてしまったのだ。これで「消費税引き下げ」を提言できないような政治家や経済学者は、逆に国民を貧困化させたいのではないかと思ってしまう。

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 また、今年度の第2次補正予算案について、野党側はあらかじめ使い道を決めていない予備費が歳出全体の3分の1近くを占めるのは容認できないとして、組み換え動機の提出も視野に予備費の減額を求めていくことになったが、立憲民主党の安住国対委員長は「国民からお預かりをし、将来の子供たちから借りる国債で作るお金を無駄な公共事業など政府が何でも使っても良いという白紙委任は議会としてできない」と事実誤認の発言をしたことが批判されている。

 まず国債発行は単なる政府の貨幣発行で国民が預けているわけではなく、将来世代が国債を返済するということもない。公共事業に関しても政府が行う社会資本整備などの投資の額を表した公的固定資本形成は1996年の46.7兆円から2018年の26.0兆円まで削減され、一人当たりの名目GDPランキングは1996年の3位から2018年の26位へと下落している(図49を参照)。

 

 公共事業は無駄などころか、日本は90年代後半以降に公共事業を削減して貧困化してしまったのだ。最新の2020年1~3月期のデータでも公的固定資本形成は年率マイナス2.2%の落ち込みで、政府は消費税を増税して歳出削減を進めているのが現実のようだ。ドイツをはじめとして先進国の多くが新型コロナウイルス対策として積極財政に転換しているというのに、日本では与党も野党も緊縮財政しか言わないのが非常に残念である。

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デフレ脱却すればプライマリーバランスは改善される

 消費税が増税される理由は、建前では社会保障を充実させるためになっているが、本音ではプライマリーバランス基礎的財政収支、以下PB)を黒字化させるためだろう。PBとは「国の税収」など借金(国債)以外のきちんとした収入から、借金の返済費用(国債費)を除いた政策上必要な支出を除いたもので、これが赤字だと負債はどんどん増えていき、黒字だと税収を少しずつ借金の返済に充てていくことができる。

 1980年代以降のPBの推移を見ていくと、黒字化していたのはバブル期の1985~92年で1993年以降はずっと赤字の状態が続いている。

 

 日本で初めてPB黒字化目標を掲げたのは1997年の橋本政権で、同年11月には「財政赤字の対GDPを毎年3%未満する」「1998年度の公共投資について、1997年度当初予算における公共投資関係費の93%を上回らないようにする」という内容を盛り込んだ財政構造改革法を成立させている。それから数年経った小泉政権でも2006年に「2011年までにPBを黒字化させる」と宣言していたが、2008年にリーマンショックが発生して景気が悪化したことで民主党の鳩山政権はPB黒字化目標の見直しを行った。

 だが、2010年の菅政権は新たに「2020年までにPBを黒字化させる目標」を掲げ、2012年には消費税を増税して社会保障を削減するという「社会保障と税の一体改革」が進められた。外交官の佐藤優氏は片山杜秀氏との対談で、「菅政権は東日本大震災の対応ばかり語られるが、消費税10%への引き上げに言及したりTPPの協議開始を表明したりと、実は極めて重要な決定をいくつもしている。安倍政権のアジェンダは菅政権で作られた」と述べているが、全くその通りだと思う。

 

 現在の安倍政権も「2025年までにPBを黒字化させる」と明言しており、新型コロナウイルスが収束した後に再び消費税を増税する話が出てくるかもしれない。安倍首相は2017年3月の予算委員会で「来年の予算を半額にしてPBを改善すれば、日本経済は死んだような状況になる」と言っていて、PB黒字化目標の弊害を理解しながら進めるのは「日本経済を殺します」と宣言したようなものだろう。安倍首相は今よりはるかに殺人事件が多発していて学生運動エスカレートしていた昭和30年代を「今の時代に忘れられがちな家族の情愛が存在した」と懐古しているため、貧しい時代の日本を取り戻す目的で消費税10%増税やPB黒字化目標などの緊縮財政を推進している部分もあるのかもしれない。

 日本政府が本当にPBを改善させたいのであれば、「2025年までに黒字化させる」といった期限を定めるのではなく、消費税引き下げと財政出動によって名目GDP成長率を高める政策を打ち出すべきだろう。実際に、1980年代以降の名目GDP成長率とPBには相関関係があることが確認され、消費税を引き下げてもデフレを解消すれば税収が増加して自然にPBは改善していくのだ(図50を参照)。

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 逆にPB黒字化目標を設定して失敗したのが2010年代に世界を騒がせたギリシャである。下記の図51にはギリシャの実質GDPとPBの推移を示した。この図を見ると実質GDPとPBが逆の相関になっていることがわかる。

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 ギリシャは2008年までは経済が順調に拡大していたが、リーマンショックで状況が一変して2009年にはGDPが大きく下落した。そしてPBは一気に悪化し、GDPの1割程度の赤字となってしまった。ギリシャ政府はこの問題を乗り切るためにIMF等に融資を依頼したが、それと引き替えに増税と歳出カットによる緊縮財政を展開することを約束させられてしまう。

 その結果、ギリシャは2013年にめでたくPB黒字化目標を達成するが、徹底的な緊縮財政のあおりを受けてGDPは4分の1も減少してしまった。完全失業率は平均で26%以上、若年層に至っては60%以上となり、2015年には返済期限が来たことで実質的に破綻してしまうことになったのである。

 つまり、経済危機に陥った国に対して無理やりPB黒字化目標を押し付けてしまえば、危機が悪化して景気は低迷、実質的な経済破綻状態となってしまうのが現実だろう。日本も直ちに「PBを2025年までに黒字化させる」という目標を破棄して、消費税を5%に戻すことを決断すべきである。

 

 

<参考資料>

三橋貴明 『世界でいちばん!日本経済の実力』(海竜社、2011年)

森信茂樹 『消費税、常識のウソ』(朝日新聞出版、2012年)

小泉俊明民主党大崩壊 国民を欺き続けた1000日』(双葉社、2012年)

藤井聡 『プライマリー・バランス亡国論』(扶桑社、2017年)

適菜収 『もう、きみには頼まない』(ベストセラーズ、2018年)

 

ドイツ、コロナ対策で消費減税 景気対策16兆円規模

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59955790U0A600C2MM0000/

消費税率を引き下げることは考えていない=麻生財務相

https://news.livedoor.com/article/detail/18383115/

経済再生相「去年の消費税率引き上げ 正しい判断だった」

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200608/k10012462331000.html

日本政府の莫大な借金こそ「失われた30年」の真犯人だ

https://news.yahoo.co.jp/articles/00230ae6e57d0968beb9eeffcaae4230b85c7104

国民経済計算 昭和30年1-3月期~平成13年1-3月期

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2001/qe011/gdemenuja.html

国民経済計算 2020年1-3月期 2次速報値

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2020/qe201_2/gdemenuja.html

家計調査(家計収支編) 時系列データ

https://www.stat.go.jp/data/kakei/longtime/index.html

古臭い、現在の日本に不要な政治家

https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12601712484.html

一人当たりの名目GDP(USドル)ランキング

https://ecodb.net/ranking/imf_ngdpdpc.html

日本の基礎的財政収支の推移

https://ecodb.net/country/JP/imf_ggxcnl.html

ギリシャの実質GDP(自国通貨)の推移

https://ecodb.net/country/GR/imf_gdp.html

ギリシャ基礎的財政収支の推移

https://ecodb.net/country/GR/imf_ggxcnl.html

日野智貴氏や適菜収氏など安倍政権を批判する真の保守派を応援しよう

「左翼の安倍政権」を批判する尊皇愛国の若き保守派

 最近、一つのブログの記事が非常に気になっている。それは日野智貴さんという方が書いた「日本の“左傾化”を象徴する『ネトウヨ』という現実」の記事である。

 

 まずブログの先頭には、私も以前参加していた「右から考える脱原発デモ」の写真が掲載されている。著者は「見るからに参加者の人数が少ない」と言っているが私もその通りだと思う。実際のところ、保守もリベラルも関係なく東日本大震災から9年が経って脱原発デモはすっかり退潮してしまったように思う。

 ブログの著者は2006年当時、小学3年生で第一次安倍政権を支持していたという。幼い頃から「尊皇愛国」の家庭で育った著者にとって、「憲法改正賛成」は「困っている人を助ける」「地球環境のことを考える」といったことと同じくらい自明の善であった。2000年に小学3年生だった私は小渕元首相の訃報を覚えているくらいでまだ政治的な知識は全くなかったので、子供の頃から憲法改正に高い関心を持っていた著者は素直に凄いと思う。

 しかし、著者が疑問に思ったのは憲法改正国民投票法において、「この法律の制定から3年間、憲法改正の発議はしない」という凍結期間なるものが定められたことだったという。自民党が有利な時期にわざわざ凍結期間を設けたのは野党への妥協だと著者は言う。

 

 それから3年が経って、小学6年生だった著者はすっかり「大日本帝国憲法」の復原・改正論者になっていたが、それほど民主党政権への拒否感はなくむしろ環境問題などの政策では積極的に民主党へ期待していたという。それどころか、鳩山政権が社民党福島瑞穂党首を事実上、内閣から追放したときは快挙とすら思ったそうだ。

 だが、鳩山首相がちょうど10年前の2010年6月2日に辞任を発表して菅政権が発足され、西松建設事件の国策捜査尖閣諸島の漁船衝突事件、更には東日本大震災福島第一原発事故が発生すると状況が変わってくる。著者は鳩山首相の辞任を菅直人副総理(当時)による政治的なクーデターだったと説明する。しかし、菅政権を「史上最悪の政権」だと思っていた著者に希望を与えてくれたのがネット上での「菅政権反対」の大合唱だったという。

 2010~2011年に19歳だった私も、当時はネットで政治の情報を調べるのが本当に楽しかった。チャンネル桜など民主党政権を批判する人々は南京大虐殺従軍慰安婦といった歴史改ざんについても批判しており、その影響で私自身も軽くネトウヨになっていたように思う。だが、民主党政権は自身の内閣を自画自賛するネット工作を全く行わなかったので、その点ではまだ安倍政権よりマシだったとも言えるだろう。

 

 民主党政権では消費税がまだ5%だったことで東日本大震災以降に個人消費が急速に回復していたが、安倍政権では消費税率を2段階も引き上げた影響で民主党政権よりも経済成長率の落ち込みが著しい。

 インフレを除いた実質GDP成長率は民主党政権(2009年10-12月期~2012年10-12月期)の時代に年率平均1.69%だったのに対し、安倍政権(2013年1-3月期~2020年1-3月期)では年率平均0.78%へと半分程度に下落している(図45を参照)。更に8月に発表される2020年4-6月期の実質GDP成長率は、新型コロナウイルスの影響で年率マイナス25%近くに落ち込む可能性が高いだろう。

 ネトウヨはよく「悪夢の民主党政権」と言うが、安倍政権より経済成長率の高い政権を悪夢呼ばわりするのは皮肉な話だ。それともネトウヨは経済成長して分厚い中間層を生み出してきた戦後の日本が嫌いだから、より国民を貧困化させる政権にシンパシーを感じるのだろうか。

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 また、著者は菅政権の新自由主義政策を批判しつつも「感情的に反原発を言っている大衆とは違い、冷静に原発に賛成している俺かっこいい」という論調のネトウヨにも疑問を感じていた。それはまるで「革命運動している俺かっこいい」というかつての学生運動家と同じメンタリティーに見えたという。

 第二次安倍政権が発足した頃、「日本の右傾化」を騒ぐ人々が続出したが、当時中学3年生だった著者はもはや自民党には期待していなかった。安倍政権では子宮頸がんワクチンの定期接種化など左翼政策も推進されたと著者は言う。そもそも、米国において右派とは「プロライフ」(生命尊重、堕胎反対)の立場で、左派とは「プロチョイス」(生命軽視、堕胎容認)の立場である。

 だから、ネトウヨが本当に反左翼であるならば子宮頸がんワクチンの接種に反対するはずだが、安倍政権を熱烈に支持する自称保守派には上念司氏など子宮頸がんワクチンを推奨する人物が少なくない。

 

 幼い頃から尊皇愛国の家庭に育った著者が「左翼の安倍政権」を批判しているのは、ネットの情報を鵜呑みにして保守になった気分でいる連中とは大きく異なるからなのかもしれない。だが、著者が「日本が左傾化したと思う理由」は私と少し違うようだ。著者は「右翼や保守の思想を一切持っていないただの中二病的な、一世代前だと新左翼になっていたようなネトウヨがなんとなく右だと思われるくらい、世間の『左右の基準軸』が大きく“左”に寄っていたのだ」と述べている。

 それに対し、私は「国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」と地球市民的な発言を繰り返す安倍首相のやることに何でも賛成するネトウヨそのものが左翼勢力だと思っており、彼らのようなコアな支持層が政権を徹底的に甘やかすことによって消費税増税や移民受け入れなど国民を貧困化させる愚策が次々と実行される原因にもなっていると考えている。とはいえ、日野さんは私より年下にも関わらずよく勉強されていて、今後の活躍に期待したい保守派の方である。

 

 

適菜収氏の著書から「日本の左傾化」を読み解く

 2018年5月、私はある人物の本に衝撃を受けた。それは適菜収氏の『安倍政権とは何だったのか』『安倍でもわかる保守思想入門』(共にベストセラーズ、2017年)という2冊である。著者は保守思想を研究している哲学者で、安倍首相について「保守の対極に位置する人物であり、大衆社会の腐敗の成れの果てに出現した左翼グローバリストにすぎない」と厳しく批判している。

 

 まず、適菜氏の主張で衝撃的だったのは「立憲主義は保守の本質」と言っていることである。安倍首相は立憲主義について、「憲法が権力を縛るためのものだったのは王権の時代で、今我々が改正しようとしている憲法は私たちの理想や国のありかた、未来について語るものにしていきたい」と述べているが、適菜氏は「保守とは権力に対して警戒を怠らない態度のことで、憲法は今も昔も権力を縛るためのものである」と反論している。

 また、安倍信者がよく言う「野党は対案を示せ」というフレーズに対しても、評論家の福田恆存氏の言葉を引用してこう批判する。保守主義とはイデオロギーを警戒する姿勢のことで、安易な解決策に飛びつかず矛盾を矛盾のまま抱え込む。保守の基盤は歴史や現実であり、そこから生まれる常識であると。家に火がついていたら水をかけたり、非常識な人がいたら「非常識だ」と注意したりするようにバカが総理大臣をやっていたら「辞めろ」と言うのが保守なのだそうだ。

 

 更に適菜氏は改憲派だが、「憲法は国の根幹であり、チンパンジーに触らせたら危険である。安倍が改憲するくらいなら、未来永劫今のままの憲法でいい」とも言い、安倍政権を熱烈に支持している自称保守派に対しても「とにかく憲法を変えればうまくいくというのは単なるオプティミズムであり、憲法を変えたら戦争になるという左翼と同類の花畑」と述べている。

 個人的には、「憲法を変えれば何でも良い」と思っている代表格が昨年亡くなった中曽根元首相だったように思う。中曽根氏は1998~2000年に公共事業費を過去最高に増やして一時的に景気を回復させた小渕元首相に対して「真空総理」と皮肉な表現をしたが、2014年以降に消費税率を2段階も引き上げて景気を悪化させた安倍首相に対しては全く批判していない。

 中曽根氏が安倍首相に対して何も言わなかったのは年齢的な問題もあるだろうが、小渕元首相が憲法改正よりも経済再生に取り組んでいたのに対し、安倍首相は経済のことよりも憲法改正を優先しているからではないだろうか。

 

 その上、適菜氏が危惧しているのが「日本の左傾化」である。「今の日本では保守を名乗る人物が特定のイデオロギーに基づき、朝から晩まで抜本的改革を唱えて伝統の破壊に勤しんでいる。日本共産党ですら革命を言わなくなったのに、安倍政権は口を開けば『人づくり革命』だの『生産性革命』だの言っている。『人づくり革命』という発想にジャン=ジャック・ルソーの狂気を想起できなくなっているとしたら、今の社会は病んでいるとしか言いようがない。日本の左傾化の徴候です」と。

 今の日本は右傾化どころか「左傾化」しているという考えに私も全く同感だ。例えば、外国人労働者は2012年の68.2万人から2019年の165.9万人まで安倍政権の7年間で90万人以上も増加したにも関わらず、日本では移民受け入れに反対する声がほとんど噴出していない。移民国家のアメリカでは「メキシコとの国境に壁を作る」と発言した人物が大統領になり、多文化共生を目指してきたフランスやスウェーデンでも移民受け入れに反対する右派政党が台頭しているというのに、日本ほど移民問題に無関心な先進国は珍しいのではないだろうか。

 

 特に私が信じられないのは若年層ほど移民受け入れを容認しているという現実である。外国人労働者の受け入れを拡大する入管法改正についても、共同通信が2018年11月に行った調査によれば賛成の割合は60代以上が37.9%程度だったのに対し、40~50代は54.9%、30代以下は66.3%にものぼっている(図46を参照)。

 移民を受け入れたら日本人の賃金も引き下げられるという事実を無視して、「人口減少が問題になっている日本では外国人労働者が必要」「日本が不況から抜け出せないのは改革が足りないからだ」と勘違いした国民はまだまだ多いのだ。

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 また、安倍首相は皇室に対して、一貫して不敬な態度を取り続けてきたのも驚きだった。適菜氏は安倍首相が官邸の総理執務室で亀井静香元議員と生前退位の話をしていたら、カーペットに膝をつきながら『こんな格好までしてね』と天皇陛下が被災者の方々に寄り添うお姿を茶化していたことを紹介し、「もし安倍が皇室を潰しにかかったら、日本人が取るべき行動は一つしかないということをきちんと確認しておくべきでしょう」と痛烈に批判している。

 適菜氏は最新刊『国賊論』(ベストセラーズ、2020年)の中でも「保守やナショナリストを自称する者がナショナリズムを解体するグローバリストの安倍を礼賛する一方で、頭の悪い一部の左翼は戦後レジームを確定させた安倍を『戦前回帰の復古主義者』と誤認する。自分の世界観に合わせて、都合良く現実を解釈するわけだ」と述べている。

 日本人の多くが安倍政権を「保守」や「右翼」だと勘違いする中で、安倍首相を「左翼グローバリスト」と表現する適菜氏の批判は画期的である。保守もリベラルも関係なく、少しでも安倍政権に疑問を感じる人は是非とも適菜収氏の本を読んでほしいと思う。

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消費税3%減税と公務員増加で名目GDP700兆円を目指そう

消費税が3%なら名目GDPは700兆円を超えていた

 内閣府が5月18日に発表したGDP速報値によれば、物価変動の影響を含めた2020年1~3月期の名目GDP成長率は年率マイナス3.1%の落ち込みだった。個別の項目を見ると、民間最終消費支出が年率マイナス3.6%、家計最終消費支出(帰属家賃を除く)が年率マイナス4.8%、民間企業設備投資が年率マイナス3.8%、民間住宅投資が年率マイナス16.9%と個人消費より住宅投資の下落が大きい結果となった。

 しかし、2019年10~12月期の名目GDP成長率は年率マイナス6.0%、家計最終消費支出(帰属家賃を除く)は年率マイナス11.4%だったので、新型コロナウイルスよりも消費税増税の影響のほうが大きかったと言うこともできるだろう。

 

 安倍政権は2015年9月24日に「アベノミクス新三本の矢」を発表し、希望を生み出す強い経済として2020年までに名目GDPを600兆円にする目標を掲げた。だが、日本経済研究センターによれば2020年度の名目GDP成長率はマイナス7.3%に落ち込むと予想していて、この目標が達成されることはないと思われる。そもそも日本の名目GDPは90年代後半以降の自民党が緊縮財政を行わず、消費税が3%のままだったら今頃700兆円を超えていた可能性が高いことは経済学者もなかなか指摘しないのではないだろうか。

 日本経済はバブル崩壊と言われていた90年代半ばまで着実に成長していて、1989~1996年度の家計最終消費支出(帰属家賃を除く)は年平均で7兆1528億円も増加していた。2019年度の家計最終消費支出は245.9兆円だが、もし消費税が3%のままで家計消費が毎年7兆1528億円も増加したら2019年度は403.7兆円にのぼっていたことが予想される。そうなると2019年度の名目GDPは552.1兆円だが、消費税が3%のままだったらGDPは157.8兆円も押し上げられて709.9兆円になっていただろう(図39を参照)。

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 また、「消費税増税後の景気悪化から逃げ続ける安倍政権」の記事でも説明した通り、安倍政権ではGDPの算出方法を平成17年基準から平成23年基準に変更した際に、研究開発費とは関係ない「その他」の部分を大幅に加算したことが問題になっている。平成23年基準で2019年の名目GDPは553.7兆円と安倍政権以前に過去最高だった1997年の534.1兆円を超えているが、平成17年基準では520.5兆円とまだ1997年の523.2兆円を超えていない(図40を参照)。

 安倍政権は名目GDPを33兆円もかさ上げした以上、GDPの目標値を600兆円から630兆円に再設定すべきではないだろうか。

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 最近では「先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは起こらない」「インフレ率を調整しながら、財政赤字を拡大して経済を成長させていく」という考え方をMMT(現代貨幣理論)と呼ぶが、もし2000年代までにMMTの考え方が一般化していたら消費税10%増税はなく、デフレ不況が20年以上続くこともなかっただろう。MMTの考え方は全く正しいが、消費税増税が決定されてから台頭するのでは「時すでに遅し」というのが現実である。

 新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化してから早くも3ヵ月が経とうとしているが、安倍政権は未だに消費税引き下げを決断できずにいる。政府が消費税引き下げを決定しないのであれば野党が言うしかない。野党は消費税を3%に減税して、2030年までに名目GDPを700兆円にする独自の経済目標を発表すべきではないだろうか。安藤裕氏や玉木雄一郎氏のような消費税減税に言及する国会議員がもっと増えることを願うばかりである。

 

 

公務員人件費を増やせば名目GDPも増加する

 2019年5月に設立した新政党の「オリーブの木」の代表を務める黒川敦彦氏がれいわ新選組の公務員を増やす政策を痛烈に批判した動画が今年2月に話題になった。黒川氏は2017年の衆院選で無所属として出馬した際に山本太郎氏と共闘しており、私も2018年4月に上野で行われた政治イベントで彼と会ったことがある。安倍政権を鋭く批判していた頃の黒川氏を知っているからこそ、「オリーブの木」の最近の動画を見ていて変節ぶりが非常に残念に思う。

 黒川氏は「世界と比べて日本の公務員給与が異常に高いのにこれ以上公務員を増やすとか正気か?」と述べているが、問題にすべきなのは公務員の給与が高いことではなく1997年以降に民間企業の平均年収が減少してきていることだろう。また、黒川氏は「国民の平均所得が440.7万円なのに対し、東京都の公務員は752.6万円、国家公務員は911.1万円、地方公務員は881.8万円」とデータを示しているが、正しいのは「国民の平均所得」だけで後の公務員給与は少し調べれば嘘であることがわかる。

 

 人事院の公務員白書によれば、2018年の国家公務員の平均月収は41万7230円なのでこれに12を掛けると500万6760円、管理職を除く行政職員の期末・勤勉手当は136万2600円なので合計636万9360円と黒川氏が示したデータより100万円以上も少ない。その上、バブル期の1989年には国家公務員の平均年収(458.3万円)よりも民間企業に勤める男性の平均年収(492.8万円)のほうが多かった。

 この間、資本金10億円以上の大企業の内部留保は1989年の99兆円から2018年の369兆円まで3.7倍も増加していて、公務員と民間企業の「官民格差」が広がったのは公務員の給与を決める人事院勧告のせいではなく、デフレ不況が長期化して企業が内部留保をため込んでいるからである(図41を参照)。高校生や大学生の就職希望先ランキングで常に「国家公務員」と「地方公務員」が上位に来ているのも、民間企業が内部留保を活用して賃上げすることをせず、業績が悪化すれば整理解雇やコスト削減を行うことばかり必死になっているからこそ、安定した公務員が人気なのではないか。

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 更に、政府が公務員数を増やして失業者や低所得者を雇えば、GDPの構成要素の一つである「政府最終消費支出」が増加して国の経済成長にも繋がる。政府最終消費支出とは、医療費・介護費の政府負担分や公務員給与の支払いなどを表した額である。国民経済計算を見ると、名目GDPに占める政府最終消費支出の割合はリーマンショック東日本大震災が発生した2008~2011年の時期に増えていて、デフレ不況のときは公務員人件費が景気の下支えをしているのだ(図42を参照)。

 公務員・公的部門職員の人件費(2014年)は高負担・高福祉のデンマークで16.6%、フィンランドで14.2%、小さな政府を志向するアメリカで9.9%、イギリスで9.4%なのに対し、日本は6.0%とOECD加盟国の中でも最低である。特に今後は新型コロナウイルスの影響で大量の失業者が生まれると予想され、日本が景気対策として公務員人件費を増やす余地はまだまだあるだろう。

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コロナ増税という緊縮の流れを作ってはいけない

 元大阪府知事橋下徹氏は4月21日に自身のツイッターで、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた政府の10万円一律給付について「給料がびた一文減らない国会議員、地方議員、公務員は受け取り禁止となぜルール化しないのか」と訴え、その上で「それでも受け取ったら詐欺にあたる、懲戒処分になると宣言すればいいだけなのに」と政府の方針に疑問を呈した。これに呼応するかのように、菅官房長官は自身が給付金を受け取るかどうかを問われた際に「常識的には申請をしないと思う」と述べている。しかし、菅氏が給付金を受け取られないと、そのぶん財政支出や消費が減って国民の所得も増えなくなる。国民が所得減少に苦しんでいる以上、申請しない、あるいは預金するという選択肢は政治家の場合、あり得ないのではないだろうか。

 また、広島県の湯崎知事は休業した事業者に支給する支援金の財源に、国から県の職員に給付される10万円の活用を検討していることを明らかにしたが、これは明確な私有財産権の侵害だろう。地方公務員は総職員数が2005年の304.2万人から2016年の273.7万人まで11年間で30.5万人減少したのに対し、臨時・非常勤の職員数は2005年の45.6万人から2016年の64.3万人まで11年間で18.7万人も増加している(図43を参照)。広島県知事はこうした不安定な働き方を強いられている非正規公務員の給付金までも奪おうとするのだろうか。地方交付税の総額は2000年の21.4兆円から2019年の16.2兆円まで減少していて、休業補償を行うなら職員の給付金を活用するのではなく政府に地方交付税の増額を求めるべきだろう(図44を参照)。

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 更に、地方自治体が「身を切る改革」というスローガンのもとで公務員の給与を削減すると、他の自治体にも同調圧力が及んで最終的に「コロナ増税」という緊縮の流れが出来上がってしまうかもしれない。実際に、2011年の東日本大震災のときも復興財源を捻出するために2012~13年度に手当を含めた公務員給与が平均7.8%削減され、「社会保障と税の一体改革」として消費税増税法人税減税が同時に実施されたのである。

 前述の橋下徹氏は報道番組などで「国が財政破綻する覚悟で休業補償を行うべき」と事実に基づかない発言を繰り返していることから、新型コロナウイルスが収束した後に消費税増税や公務員給与の削減を煽ってくることは確実だろう。だが、すでに日本国債の46.8%は政府の子会社である日銀が所有していて、このぶんは政府が返済や利払いを行う必要はなく2010年代以降に日本の財政は急速に健全化しているのだ。政府が新型コロナウイルス対策として休業補償を行ったとしても、後で増税や歳出削減などを通して返済する必要は全くないのである。

 むしろ、日本が本当にデフレを脱却するためには消費税引き下げと公務員人件費の拡大を同時に実施すべきだろう。

 

 

<参考資料>

明石順平 『アベノミクスによろしく』(集英社インターナショナル、2017年)

藤井聡MMTによる令和「新」経済論 現代貨幣理論の真実』(晶文社、2019年)

三橋貴明 『世界でいちばん!日本経済の実力』(海竜社、2011年)

全労連・労働総研編 『2019年国民春闘白書・データブック』(学習の友社、2018年)

 

国民経済計算 2020年1-3月期1次速報値

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2020/qe201/gdemenuja.html

アベノミクス「新3本の矢」を読み解く

https://www.nikkei.com/article/DGXZZO92034300U5A920C1000000/

徐々に経済再開も、20年度マイナス7%成長

https://www.jcer.or.jp/economic-forecast/20200518-2.html

公務員の給与が高い。解説と改革案。

https://www.youtube.com/watch?v=wrSOyOUx1ig

平成30年度 公務員給与の実態調査

https://www.jinji.go.jp/hakusho/h30/1-3-03-1-3.html

国家公務員のボーナスを知る(2018年)

https://kyuuryou.com/w37-2018.html

2年間で9兆円増えた内部留保 法人企業統計より

https://blog.goo.ne.jp/saitamajitiken/e/8000dbb09afad1d324ccc60eb999fc00

大企業現金・預金66.6兆円 バブル期超え過去最高

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik19/2019-09-25/2019092501_02_1.html

橋下徹氏の10万円給付「公務員は受け取り禁止」提案

https://www.excite.co.jp/news/article/Real_Live_200019157/

ピンハネ税により、現金給付は実は9万円

https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12591463740.html

地方公共団体の総職員数の推移

https://www.soumu.go.jp/main_content/000608426.pdf

地方公務員の臨時・非常勤職員調査結果

https://www.soumu.go.jp/main_content/000476494.pdf

地方交付税等総額(当初)の推移

https://www.soumu.go.jp/main_content/000671432.pdf

橋下徹氏の財政破綻発言!】国民の命or財政破綻

https://www.youtube.com/watch?v=MxfvjV-JNhw

国債等の保有者別内訳(令和元年12月末速報)

https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/appendix/breakdown.pdf

2017年2月28日発売「消費税の歴史と問題点を読み解く」

消費税収の86%が法人税減税に消えている」など、2017年2月までの当ブログの記事をまとめ、大幅に加筆した新書が同年2月28日に発売されました。

興味を持っていただいた方は、書店やAmazon等で購入してもらえると有り難いです。

 

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目次

第1章 消費税の歴史(近代史から橋本内閣まで)

第2章 消費税の歴史(小泉内閣から安倍内閣まで)

第3章 増税グローバリズムのここがおかしい!

第4章 世界の消費税、軽減税率、所得税の負担率

第5章 消費税は社会保障に使われていない

 

内容紹介

 消費税は身近な税金である。しかし国税のなかで消費税は滞納金が多く、増税をしていくにつれて滞納額が増加するという問題点はあまり知られていない。また、消費税引き下げの議論はない一方で、法人税減税は行われている。

 本書では、消費税の導入から増税が繰り返される日本の歴史、欧米諸国との比較、消費税増税についての問題点を明らかにする。消費税に関して改めて整理し、増税後、国民の生活にどのように影響していくのか考察していく。

 

著者 大谷 英暉  ISBN 978-4-344-91106-2

新書186ページ 価格880円

 

 

消費税の歴史と問題点を読み解く

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