消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

日本維新の会の政治姿勢と大阪市廃止の住民投票について

公務員バッシングを煽って大阪を停滞させた維新の会

 大阪市選挙管理委員会は9月7日、大阪都構想の是非を問う住民投票について11月1日の投開票とする日程を決めた。しかし、住民投票で賛成票が反対票を上回ったとしても大阪府大阪都になるわけではなく、政令指定都市である大阪市が4つの特別区に分割され大阪市民は自治も権限も失うことになる。そのため、大阪都構想選挙ではなく「大阪市廃止選挙」と表現したほうが適切ではないかと思っている。

 また、大阪維新の会は2015年の住民投票で「今回が大阪の問題を解決する最後のチャンスです。二度目の住民投票の予定はありません」と発言していた。元内閣官房参与藤井聡氏は「今回の住民投票はその構想の中身についての議論を経て決定されたのではなく、ただ単に維新と公明党が自分たちの党勢の維持と拡大のための党利党略上の都合だけで決定してしまった」と述べている。仮に今回の住民投票で再び否決されても維新は三度目、四度目の住民投票を繰り返してくるだろう。

 

 私が疑問に思っているのは大阪市廃止を推進する日本維新の会の政治姿勢である。一言でまとめると、彼らは経済成長して分厚い中間層を生み出してきた戦後日本に対する激しい憎悪が存在するように感じられる。維新の会代表を務めた橋下徹氏は大阪府知事時代の2010年7月6日に「市役所は税金をむさぼり食うシロアリ。即刻解体しないとえらいことになる」と発言したが、たとえ市役所に問題があろうともそれを真摯に解決しようと努力するのではなく、府民を煽動するために市役所をシロアリに仕立て上げるのは非常に問題だろう。

 公務員・公的部門職員の人件費(対GDP比、2014年)は高負担・高負担のデンマークで16.6%、フィンランドで14.2%、小さな政府を志向するアメリカで9.9%、イギリスで9.4%なのに対し、日本は6.0%とOECD加盟国の中でも最低である(図80を参照)。特にリーマンショック新型コロナウイルスのようなデフレ不況のときはむしろ安定雇用として公務員数を増やす必要があり、民間企業の年収が下がっていることを利用して公務員へのバッシングを煽るのは国民を貧困化させたいのかと思ってしまう。

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 日本維新の会には「自民党ネットサポーターズクラブ」のような組織は存在しないが、2000年代以降に台頭してきたB層に向けて積極的な支持を呼び掛けているのが特徴的だ。B層とは自民党が2005年に規定した「具体的なことはよくわからないが、小泉純一郎のキャラクターを支持する層」であり、同年の郵政選挙ではこのB層に向けて「改革なくして成長なし」「聖域なき構造改革」といったワンフレーズ・ポリティクスが集中的にぶつけられた。その点、「日本が不況から抜け出せないのは改革が足りないからだ」と思っている日本維新の会は完全に小泉政権の亜流で、支持者を見ていても自分と異なる意見を受け入れたくない人が多いように感じられる。

 例えば前回、2015年の住民投票では維新が公権力を利用し、大阪市廃止に反対する藤井聡氏をテレビに出演させないよう圧力をかけるのと同時に、熱烈な支持者たちがネット上で藤井氏に対する個人攻撃を行った。維新支持者による誹謗中傷を観察していた経済評論家の三橋貴明氏は「まさにナチス・ドイツの突撃隊そのものにしか見えなかった」という。

 

 私も2011年にYahoo!知恵袋で「教員の長時間労働が問題になっているのに公務員の給料が引き下げられるのはおかしくないですか?」と質問したら、橋下徹氏の熱烈な支持者だと思われる回答者から「民間企業は給与も上がらずサービス残業が当たり前なんだから、週休2日でボーナスも貰える公務員は有り難く思え」と反論された。サービス残業は明らかに労働基準法違反なので会社に抗議すべきだろうが、それを公務員バッシングにすり替えるのは理解に苦しむところだ。

 90年代後半以降にデフレ不況が長引いて民間企業の年収が下がっていることについて、政府の緊縮財政を批判することなく公務員のせいにすると維新支持者になってしまうようである。

 

 2019年の統一地方選挙大阪維新の会は「大阪の成長を止めるな」というキャッチコピーを宣伝して議席を増やした。しかし、維新府政のもとで大阪が経済成長しているというのは本当だろうか?県民経済計算を見ると2006~2016年度における主要都市の県内実質GDPは10年間で東京都が103.9%、兵庫県が102.6%、愛知県が100.6%増加したが、大阪府は98.6%へとやや縮小してしまった(図81を参照)。

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 また、一人当たりの雇用者報酬に関しても2006~2016年度の10年間で東京都が95.5%、兵庫県が94.8%、愛知県が99.2%と全体的に下落しているが、大阪府は94.0%と特に落ち込みが著しいことがわかる。雇用者報酬とは、公務員や民間企業などに勤務する従業員、役員などのあらゆる生産活動により発生した付加価値のうち、その活動を提供した人(雇用者)に対して報酬の総額を表したものである。大阪の経済が停滞しているのは維新の「身を切る改革」で中小企業や製造業への支援策が大幅にカットされ、大阪の製造業の工場が他県や海外に移転した影響が指摘されている。

 大阪府の中小企業振興予算(制度融資預託金を除く)は2007年度の946.2億円から2017年度の78.1億円まで10年間で92%も削減されてしまった。もし、維新が大阪市廃止に向けてキャッチコピーを掲げるなら、「大阪の成長を止めるな」ではなく「大阪の低成長を止めろ」と言うべきではないだろうか。ちなみに、ツイッターなどでは「維新のおかげで地下鉄のトイレが綺麗になった」という書き込みが見られるが、それは大阪市を廃止して財源を大阪府に吸い上げるための選挙対策なのが現実である。

 

 

悪質なレッテル貼りが横行する大阪市廃止の住民投票

 大阪市廃止の住民投票についてツイッターで賛成派の主張を見ていたが、どうも日本維新の会の熱烈な支持者と大阪市廃止の賛成派がほぼ一体化しているように感じられた。例えば、ツイッターなどで「吉村知事のコロナ対応は良かったけど大阪市廃止には反対」とか「維新の政策には賛成できないけど大阪都構想は良いと思う」といった書き込みをほとんど見かけない。また、大阪市廃止の賛成派は必ずと言っていいほど「維新が行政改革を行って、都構想が実現したら大阪が東京みたいに豊かになる」というイメージを振りまいている。今回の住民投票で賛成票が反対票を上回ったら、大阪市が廃止される事実をどうしても隠したいようだ。

 大阪市の廃止について特に賛成派の書き込みが集まっているのはYahoo!ニュースのコメント欄(以下、ヤフコメ)である。例えば、ヤフコメでは「立憲民主党枝野幸男やれいわ新選組山本太郎が反対しているから私は都構想に賛成」という書き込みが見られる。ヤフコメは2013年に問題となった特定秘密保護法でも「民主党社民党が反対しているから私は賛成」という意見が多数だった。ヤフコメで「〇〇が反対しているから賛成」という書き込みが溢れるのは、彼らが都構想の中身について表面的な理解しかしていないからだろう。

 

 私は2010年頃からヤフコメを見ているが、彼らに共通しているのは戦後の一億総中流社会が嫌いで新自由主義や緊縮財政を信奉している姿勢だ。彼らが大阪市廃止に賛成するのも、公務員バッシングを煽って歳出削減を進める日本維新の会にシンパシーを感じているからではないだろうか。

 更に、私の予想通りヤフコメでは大阪市廃止の反対派に対して左翼扱いする書き込みが見られた。これはまるで1950年代に正力松太郎が米国との合作で実施した原子力平和利用キャンペーンで、原発の危険を訴える人間に「左翼」「共産主義者」というレッテルを貼って徹底的に社会から排除したことに通じるものがある。菅政権や維新の熱烈な支持者は大阪市廃止に限らず新自由主義に反対する者をすぐ左翼扱いするが、正力松太郎原発を推進する際に行ったプロパガンダが2020年現在でも繰り返されていると言えるかもしれない。

 この他にも、ヤフコメでは「大阪都構想に反対しているのは既得権益者だ!」といった書き込みも多い。しかし、大阪市以外に住んでいる人には是非とも考えてほしいのだが、もし自分の住んでいる市や町が廃止されて財源が県に奪われるかどうかの住民投票が強行されて、それに反対する意見が既得権益者扱いされたら貴方は怒らないだろうか。私は既得権益という言葉そのものが自分と立場の違う者に対して、ネガティブキャンペーンを行うためのレッテル貼りに使われているように思う。

 

 また、今回の大阪市廃止の住民投票でヤフコメだけでなくマスコミも反対派に対して悪質なレッテル貼りを行っているようだ。例えば、10月7日放送の読売テレビ『かんさい情報ネットten.』で日本共産党の山中智子市議団長が「この構想そのものが財源から財産から権限からむしり取ると言われた方もいましたが、そういうものなので、同じ地球に住む者が宇宙から侵略してきて支配すると言われたら、どの国も自分たちは侵略されたくないというのは同じ思いだろう」と例え話を述べたら、翌日のデイリースポーツが「吉村知事は宇宙からの侵略者?大阪都構想、反対議員の主張がスゴいことに…」とまるで反対派が全員「吉村知事は侵略者」と言っているかのように印象操作したのである。

 しかし、大阪市廃止に反対しているのは日本共産党だけではなく、元内閣官房参与藤井聡氏や大阪自民党などの保守層も多いのだ。大阪市廃止を推進する日本維新の会とそれに反対する大阪自民党の対立を見ていると、今回の住民投票小泉政権以降に台頭してきた新自由主義勢力と大きな政府によって中間層の所得を分厚くしてきた古き良き時代の保守勢力との戦いでもあると痛感する。

 

 

大阪市廃止を正しく理解する人は1割以下という現実

 日本維新の会大阪市を廃止するメリットとして「二重行政の解消」を挙げ、大阪には大阪府大阪市という二つの役所が狭い面積の中で、同じような行政サービスを行い非効率な税金の投資を繰り返してきたと説明している。

 その具体例として、りんくうゲートタワービル(1996年8月竣工)とワールドトレードセンタービル(1995年2月竣工)、グランキューブ(1999年12月竣工)とインテックス大阪(1985年3月竣工)、ドーンセンター(1994年4月設立)とクレオ大阪中央(2001年11月竣工)、府立中央図書館(1996年5月開館)と市立中央図書館(1996年7月開館)を挙げている。しかし、いずれも小泉政権が公共事業の削減を行う2001年以前に作られた施設である。

 

 政府が積極的に公共投資を行っていた90年代の日本は一人当たりの名目GDPランキングで2~6位を推移していたが、2019年にはこれが25位まで転落してしまった(図82を参照)。つまり、小泉政権以降の自民党や維新の会が強引に行政改革を行ったことで国民が貧困化してしまったのだ。もし、二重行政を解消する目的で大阪市の図書館サービスを廃止したら、大阪市の図書館で働いていた職員が所得を失うことになる。「政府や自治体が歳出削減をすると、何となく自分が得をしたように思える」というのは錯覚を利用した緊縮財政のトリックなのである。

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 大阪市長で維新の会代表の松井一郎氏は「大阪の自民党共産党は二重行政の解消プランを示して貰いたい」と言うが、そもそも二重行政は住民サービスを低下させてまで廃止しなければならないほどの悪なのだろうか?大阪市に限らず、行政とは一般に「国」「都道府県」「市町村」という三つのレベルで行われているものであり、日本国民はこの三つの役所(中央政府、県庁、市庁)から様々なサービスを複合的に受けている。つまり、行政とは全ての地域において「三重行政」なのだ。

 

 また、都構想の賛否に熱心な一部の人々を除いて、大阪市民のほとんどが都構想の中身について理解していないのではないかという問題も存在する。例えば藤井聡氏は前回、大阪市廃止の住民投票が行われた翌年の2016年に大阪在住の人々を対象に都構想の内容を正しく知っているのか調査を実施したが、それによると都構想が実現した場合、「大阪市がなくなる」ということを正確に理解している人は回答者252人のうちたったの24人と全体の1割にも満たない実情が浮かび上がった。

 それ以外の人々は「政令指定都市のまま残る」(25.5%)、「廃止されるが、大阪市と同じ力を持つ5つ(当時)の特別区が設置される」(35.8%)など事実と全く異なる選択肢を選んでおり、大阪市という制度が廃止されてなくなることを理解する人が極めて限定的だったことがわかる。ちなみに、正解の「大阪市がなくなる」と答えた人の87.5%が反対票を投じていて、住民投票の賛成派が上回るか反対派が上回るかについては都構想の中身を正しく知る人が増えるか増えないかにかかっていると言えるのだ。

 

 大阪市政令指定都市なので、255億円の「事業所税」や540億円の「都市計画税」、2600億円の「固定資産税」、1600億円の「法人市民税」を使うことができる。ところが、大阪市廃止が決定すれば大阪市の人々はこれらの巨大な予算の多くを大阪市の判断で使う権限を失ってしまうことになるだろう。

 例えば、大阪市には所得の低い家庭の子供たちが学校に通うにあたって一定の支援を行う就学援助制度や中学生までの子供の医療費を無料にする大変手厚い医療保険制度、高齢者が公共交通を非常に安く利用できる敬老パスなど豊富な財源に基づいた社会保障が存在するが、大阪市政令指定都市でなくなればそれらの行政サービスが今の水準で維持していくのができなくなることが真剣に危惧される。

 

 橋下徹氏は2011年6月の政治資金パーティーで「大阪市が持っている権限、力、お金をむしり取る」と発言しており、この一言に都構想の本質が表れていると言えるのではないだろうか。その上、いったん大阪市が廃止され4つの特別区に分割してしまえば、もう一度今のような格好で大阪市を元に戻すことは現実的に不可能である。

 私は大阪市に住んでいるわけではないが、大阪市民にとって損しかない住民投票でこれだけ賛成派と反対派が拮抗しているのは民主主義の危機だと思えてならない。もし、住民投票大阪市廃止が可決されてしまっても他の政令指定都市に「都構想」が飛び火しないことを願うばかりである。

 

 

<参考資料>

適菜収 『安倍政権とは何だったのか』(ベストセラーズ、2017年)

    『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』(講談社、2015年)

藤井聡 『都構想の真実 「大阪市廃止」が導く日本の没落』(啓文社書房、2020年)

薬師院仁志ポピュリズム 世界を覆い尽くす「魔物」の正体』(新潮社、2017年)

三橋貴明 『日本「新」社会主義宣言』(徳間書店、2016年)

大石あきこ 『「都構想」を止めて大阪を豊かにする5つの方法』(アイエス・エヌ、2020年)

安部芳裕 『世界超恐慌の正体』(晋遊舎、2012年)

 

大阪都構想」2度目の住民投票、11月1日に

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63515230X00C20A9AM1000/

大阪市解体構想と政治の腐敗

https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12623103850.html

県民経済計算(2008SNA、平成23年基準計数)

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kenmin/files/contents/main_h28.html

証券用語解説集 雇用者報酬

https://www.nomura.co.jp/terms/japan/ko/A02570.html

「豊かな大阪をつくる」学者の会シンポジウム

https://www.youtube.com/watch?v=zizUe_3D5M4

消費税増税の布石を打つ菅義偉首相と消費税廃止を推進する玉木雄一郎代表

菅首相は消費税を廃止して公営住宅を増やしていくべきだ

 菅義偉氏が9月16日に総理大臣指名選挙を経て第99代の首相に就任した。菅氏は秋田の高校を卒業した後に集団就職で上京し、世田谷のダンボール工場で働きながら大学に通い、そこで労働者の生活環境に対して問題意識を抱いて政治家を志した苦労人だと説明されているが、果たしてそのイメージは本当だろうか?

 

 菅首相は早速、9月10日放送のワールドビジネスサテライトで消費税増税について「引き上げると発言しないほうが良いだろうと思いましたが、しかしこれだけの少子高齢化社会、どんなに私ども頑張っても人口減少は避けることできません。そうした中で将来的なことを考えたらやはり行政改革は徹底して行った上で国民の皆さんにお願いをして、消費税は引き上げざるを得ないのかなということを率直に申しました」と述べている。

 つまり、菅氏は「日本は人口減少で衰退します!だから増税!」という典型的な人口減少衰退論に陥っているのだ。はっきり言って、菅義偉氏の自虐的な経済思想は2010年に菅直人首相が「もう日本は経済成長できないから、大きな不幸がないだけでも有り難い」という意味の最小不幸社会を提唱して、消費税増税を推進したのと同じように感じられる。

 

 しかし、ウクライナルーマニアなどは日本より人口減少のペースが速いにも関わらず、名目GDPは1998~2018年で20倍以上も増加している(図78を参照)。日本のデフレ不況が長期化しているのは人口減少ではなく、90年代以降の自民党が緊縮財政を続けてきたことが原因なのだ。

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 また、菅首相はその後の記者会見で「安倍前首相はかつて『今後10年くらい消費税を引き上げる必要はない』と発言している。私も同じ考えだ」と述べたが、これもすぐ裏切られる可能性が高いだろう。安倍前首相は2012年6月のメールマガジンで「名目成長率が3%、実質成長率が2%を目指すというデフレ脱却の条件が満たされなければ消費税増税を行わないことが重要」と述べていたが、実際にはデフレ脱却前に消費税を増税してしまった。菅政権でも次の衆院選が終わってから増税に向けた議論が始まると思っておいたほうが良いだろう。

 

 だが、日本政府が消費税廃止を躊躇している間にもコロナ不況はどんどん深刻化しつつある。2020年4-6月期の実質GDP成長率は1次速報値のときに年率マイナス27.8%と戦後最悪の落ち込みだったが、2次速報値ではこれが年率マイナス28.1%に悪化してしまった。リーマンショックのときは2009年1-3月期の実質GDP成長率が年率マイナス17.8%で、民間企業の平均年収が2008年の429.6万円から2009年の405.9万円まで対前年比5.5%(23.7万円)も減少したが、これをコロナ不況に当てはめると民間企業の平均年収は2019年の436.4万円から2020年の398.4万円まで対前年比8.7%(38.0万円)も減少することが予想される。

 消費者物価指数を見ても2020年8月のコアコアCPI(食料〔酒類を除く〕及びエネルギーを除く総合)は対前年比マイナス0.4%と消費税増税の影響を含めてもデフレ不況に逆戻りしていることが明らかで、この状況で消費税廃止を提言できないような政治家や経済学者は逆に国民を貧困化させたいのではないかと思ってしまう。

 

 更に、菅首相は2015年4月7日に行われた参議院内閣委員会で山本太郎議員(当時)から「最近の若者は根性が足らぬというふうにお感じになったりしますか」と質問された際に、「根性が足りないということでありましたけれども、やはり自分が何をやるのかと、そういうものをやはりしっかり持って頑張る方が少なくなっていることは、これは事実かなというふうに思っています。ただ、やはり親に頼るとかそういう方が増えてきているのかなという思いを私はしないわけじゃないです」と発言している。

 つまり菅首相は「最近の若者は親に頼ってばかりで、夢のために頑張る人が少なくなっている」と言いたいようだ。菅首相は苦労人と言われているが、高度経済成長期に青春を過ごした1948年生まれの団塊世代であり、努力は必ず報われると思い込んでいる部分があるのかもしれない。

 

 しかし、自民党改憲案の24条には「家族は互いに助け合わなければならない」という条文が新設されている。憲法に家族の助け合い義務を明記するのは、成人しても親と同居するパラサイトシングルを政府が推奨しているということでもある。社会学者の山田昌弘氏は、長引くデフレ不況の影響で賃金が上がらず弱者に転落した若者を親が面倒見ざるを得なくなっていると指摘している。

 また、親に頼らざるを得ない若者が増加しているのは政府の住宅政策が貧弱で一人暮らしができないという背景も存在するのではないだろうか。例えば、全借家に占める社会住宅の割合はオランダが75.0%、オーストリアが57.1%、スウェーデンが50.0%、イギリスが48.1%、フランスが42.2%、デンマークが42.1%、フィンランドが40.6%、イタリアが20.0%、スペインが15.3%なのに対し、日本は14.0%程度でドイツも7.1%だが、日本が住宅政策の貧弱な国の一つであることは事実だろう(表5を参照)。

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 日本で公営住宅が少ないのは国政選挙で住宅政策が争点になったことが一度もなく、住宅は最大の福祉制度だと考える人がほとんどいないことも無関係ではないのかもしれない。貧困問題に取り組むビッグイシュー基金では2014年、住まいの貧困についての調査報告書「若者の住宅問題―住宅政策提案書(調査編)」をまとめた。この調査では、首都圏・関西圏の8都道府県に住む年収200万円未満しかないワーキングプアと呼ばれる層の若者たち1767人(20~39歳の未婚者)に対して、インターネットを通してアンケートを行うというものだった。

 そこで明らかになったのはまず低所得者の雇用形態で、非正規雇用が47.1%、無職が39.1%であり、正規雇用はわずか7.8%に過ぎないという衝撃の事実だった。しかも、彼らのうち親と同居しているのは77.4%であり、実に4人に3人が実家を出られない状況に置かれていることも読み取れた。親との同居の理由(複数回答)については「住宅費を負担できない」が53.7%と高く、「住宅費の負担の軽減のため」も9.3%になっている。つまり、住宅費の負担が大きいため若者世代は実家に住み続けざるを得ないというのが現実なのだ。

 菅政権は携帯電話料金の引き下げを目玉政策に掲げているが、そうした小手先の政策だけでなく少子化対策のためにも消費税を廃止し、公営住宅を増加させていくべきではないだろうか。政府が公営住宅を増やせば、費用の問題で一人暮らしができなかった若者の自立を促すことにもつながると思っている。

 

 

国民民主党は消費税廃止を目玉政策として掲げるべきだ

 次の衆院選は早ければ今年中に実施される予定だが、最近気になっている政治家に国民民主党玉木雄一郎代表がいる。彼は極めて現実的な保守政治家で、憲法について「何も変えない、何も足さない、何も引かないという原理主義的な護憲論は、結果として安倍政権による解釈改憲を許したのです」と述べ、平和主義を再定義する改憲議論が必要だと提言している。

 今年6月に国民民主党に入党した山尾志桜里議員も「憲法9条があるにも関わらず、専守防衛を逸脱し集団的自衛権の一部を認める安保法制は成立してしまった。憲法の本質的役割は権力統制にあるにも関わらず、最も権力が先鋭化する自衛権という実力を現状の憲法9条で統制することができなかった。ならば、憲法の統制力を強化する憲法改正を本気で検討すべきではないか」と述べている。憲法改正についてタブー視しない国民民主党は、ただの護憲政党になってしまった立憲民主党とは一線を画していると言えるだろう。

 

 また、原発に関しても「廃炉を担う人材、技術、財源の問題を含めて現実的な政策を立てなければ、原発ゼロは掛け声だけで終わってしまう可能性もあります」と述べた上で、LNG液化天然ガス)などによる地域内での発電を核としたスマート・コミュニティを推進している。福島第一原発事故から9年半が経過したが、残念ながら国政選挙では原発の是非について全く議論されなくなってしまった。そのため、経済成長を重視しながら現実的な原発ゼロを目指している国民民主党原発に反対する保守派にとっても評価されるべき政党ではないだろうか。

 更に玉木氏は経済評論家の三橋貴明氏との対談で、小泉政権以降の自民党が進めてきた構造改革を批判し、「食料の安全保障を憲法に明記すべき」と発言していて、大きな政府によって中間層の所得を分厚くした1970~80年代の自民党のような政治家だとも言えるだろう。一部では国民民主党日本維新の会が合流する可能性を指摘する人もいるが、農協改革を推進する維新と農業の保護を訴える玉木氏とでは政策に明確な違いが存在するのである。

 

 この他にも、玉木氏は今年1月22日の通常国会習近平国賓来日について、「日本の主権に対する挑戦を含め、中国の覇権主義国際法や民主主義の基本的価値やルールに反する行動を容認するという誤ったメッセージを送ることにならないか」と厳しく批判している。これに対して安倍前首相は「日本と中国は地域や世界の平和と繁栄にともに大きな責任を有している。習主席の国賓訪問もその責任をしっかり果たすとの意思を内外に明確に示す機会としたい」と述べたが、それから新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化したにも関わらず安倍政権は習近平に配慮して3月5日まで中国人の入国禁止を決断できなかった。日本でコロナの感染者を8万人以上も増やしたのは中国からのインバウンドに依存していた安倍政権の責任であり、1月22日の時点で習近平国賓来日を批判した玉木氏は先見性があったと言えるのではないだろうか。

 NHK世論調査によれば2020年9月の時点で国民民主党の支持率は0.1%程度だが、これだけ保守的な政策を打ち出しているのに支持率が伸びないのは日本が「左傾化」していることが原因だと言えるかもしれない。

 

 だが、玉木氏の政策にはまだまだ不十分な部分も多いように感じられる。例えば、少子化対策について結婚したくてもできない方々への支援や、不妊治療の保険適用といった第1子対策にまず力を入れ、そうした政策を前提にしつつ、特に第3子以降の子供に一人当たり1000万円の大胆な経済支援を提案している。しかし、子供を3人以上育てられる家庭は所得に余裕のある中間層や富裕層が多く、「安倍政権の7年8ヵ月とMMT(現代貨幣理論)を検証するの記事でも述べた通り少子化の原因は90年代以降に子育て世代の男性が貧困化し、生涯未婚率が上昇しているからだろう。

 玉木氏は少子化を改善させたフランスの家族手当が第2子から支給され、第3子から大きく加算される制度になっていることを取り上げているが、フランスは日本より経済成長率が高く1998~2018年の名目GDP成長率は日本が年間平均0.13%なのに対して、フランスは年間平均2.94%にものぼっている(図79を参照)。

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 フランスでは子供が3歳になったときから義務教育が始まるなど、対GDPの公教育支出の割合(2016年)が4.5%と日本の2.9%より多く、政府の総支出も1998~2018年にかけて日本が0.98倍と縮小していったのに対し、フランスは1.84倍まで拡大を続けている。つまり、日本で少子化を改善させるためには福祉政策だけでなく、消費税廃止などの積極財政で子育て世代の所得を引き上げる必要があるのだ。

 玉木氏は今年7月にドイツやイギリスが新型コロナウイルス景気対策として付加価値税の引き下げを決定したことを受けて、「消費税を5%に減税するだけでなく、半年間0%なども検討したい」とツイッターで述べた。だが、消費税廃止を優先的に掲げるれいわ新選組と比較すると国民民主党の減税政策はまだ弱々しく、玉木氏が本当に消費税廃止を実現したいのであれば目玉政策としてもっと高らかに訴えるべきではないだろうか。

 

 また、玉木氏は「とにかく最優先で子育てや教育に国が大きく財政支援を投じる必要がある」として子ども国債の発行を提唱し、新型コロナウイルス景気対策としても国債発行を財源に真水100兆円の財政出動を行うとしている。財務省も2002年に格付け会社ムーディーズが日本国債の格下げを行ったときに、「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」と抗議する意見書を送付しており、デフレ期に国債を発行して社会保障の財源を捻出するのは真っ当な経済政策だと言えるだろう。

 最近では米国民主党の最年少下院議員であるオカシオ=コルテス氏などがインフレ率を調整しながら国債を発行して経済を成長させていくMMT(現代貨幣理論)を支持しており、日本の野党もMMTに基づいた反緊縮的な政策を積極的に取り入れる必要があるのではないだろうか。

 私はもともとれいわ新選組山本太郎代表を応援していたが、彼一人だけが消費税に反対していても消費税廃止は実現できないだろう。そのため、現職の国会議員として消費税廃止や財政出動を推進する国民民主党玉木雄一郎代表を応援しているのである。

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<参考資料>

鈴木哲夫 『ブレる日本政治』(ベストセラーズ、2014年)

藤田孝典 『貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち』(講談社、2016年)

山田昌弘 『なぜ日本は若者に冷酷なのか』(東洋経済新報社、2013年)

玉木雄一郎 『令和ニッポン改造論』(毎日新聞出版、2019年)

      『#日本ヤバイ』(文藝春秋、2019年)

山尾志桜里 『立憲的改憲』(筑摩書房、2018年)

 

菅氏 消費税「将来は引き上げ必要」

https://news.yahoo.co.jp/articles/42b07b84638b1e731137dfdf0f8d8370f3798e5e

消費増税、10年は不要 菅氏「安倍首相と同じ考え」

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020091100595&g=pol

コロナでGDP年率27.8%減 平均給与38万円ダウンの懸念

https://news.yahoo.co.jp/articles/1b7617d1000c956966714f8176539aab4dee0217

国民経済計算 2020年4-6月期2次速報値

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2020/qe202_2/gdemenuja.html

民間給与、7年ぶり減少 平均436万円

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020092901176&g=soc

消費者物価指数 時系列データ

https://www.stat.go.jp/data/cpi/historic.html

第189回国会 参議院 内閣委員会 第4号 平成27年4月7日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=118914889X00420150407&current=1

橋本駅北口デッキ れいわ新選組 山本太郎 2020年9月9日

https://www.youtube.com/watch?v=YLclp0y5i14

三橋貴明×玉木雄一郎構造改革って考え方が古いよね

https://www.youtube.com/watch?v=PcUrphzuXuw

【詳報】首相「家族で楽しめるIR」 カジノ利権批判に

https://www.asahi.com/articles/ASN1Q32C2N1PUTFK012.html

NHK世論調査 内閣支持率 NHK選挙WEB

http://www.nhk.or.jp/senkyo/shijiritsu/

Nominal GDP forecast

https://data.oecd.org/gdp/nominal-gdp-forecast.htm

フランスの合計特殊出生率の推移

https://ecodb.net/country/FR/fertility.html

人口動態調査 e-Stat 政府統計の総合窓口

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450011&tstat=000001028897

教育への公的支出、日本は35か国中最下位

https://resemom.jp/article/2019/09/11/52413.html

安倍政権の7年8ヵ月とMMT(現代貨幣理論)を検証する

経済成長率を引き下げて少子化を加速させた安倍政権の大罪

 8月28日、安倍首相が辞任する意向を表明した。そこで今回は安倍政権の7年8ヵ月の経済状況について振り返ってみたいと思う。国民経済計算を見ると、実質GDPは第二次安倍政権が始まった2012年10-12月期の498.1兆円から2020年4-6月期の484.8兆円へと逆に減少してしまった。これは新型コロナウイルスの影響だと思われがちだが、実際には消費税率を2段階も引き上げたことによって個人消費が極端に落ち込んだことが原因だろう。

 家計最終消費支出(持ち家の帰属家賃を除く)は消費税が5%だった最後の時期である2014年1-3月期の247.7兆円から2020年4-6月期の205.6兆円まで6年間で42.1兆円も下落している(図72を参照)。日経平均株価が2万円を超えても景気回復が実感できないのはこうした背景があるようだ。

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 物価変動の影響を含めた名目GDP成長率も安倍政権前期(2013年1-3月期~2015年4-6月期)は年率平均3.11%にのぼっていたのに対し、安倍政権中期(2015年7-9月期~2017年10-12月期)は年率平均1.47%、安倍政権後期(2018年1-3月期~2020年4-6月期)は年率平均マイナス2.95%と後半になるほど尻すぼみになっていったことがわかる(図73を参照)。安倍政権の中でまともに経済成長していたのは最初の1~2年だけなのだ。

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 また、マスコミもあまり取り上げていないが、安倍政権の罪の一つと言えるのが出生数を大幅に減らして少子化を加速させたことだろう。年間の出生数は2012年の103.7万人から2019年の86.5万人まで7年間で17.2万人も減少してしまったのだ(図74を参照)。先進国の中で最も公的な教育予算が少なく、毎日消費される食料品にまで8%の税率が適用される日本では20年以上続いたデフレ不況が少子化にも影響しているのではないだろうか。

 次の首相として最有力候補になっている菅義偉氏は2015年9月に人気男性歌手と女優が結婚した際に、「この結婚を機に、ママさんたちが一緒に子供を産みたいとか、そういう形で国家に貢献してくれたらいいなと思います」と発言した。菅氏はどうやら日本で少子化が進んだのは若者が結婚せず女性が子供を産まないからだと思っているようだ。実際には、90年代以降に子育て世代の男性が貧困化したことが少子化の原因であるのは『日本でタブー視されている男性の貧困問題』の記事でも述べたが、菅氏が首相になっても過去の自民党政権が繰り返してきた緊縮財政を転換せず、少子化問題について「結婚できない若者や女性が悪い」という自己責任論を煽ってくることは確実だろう。

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高齢者のワーキングプアが急増している実態を共有すべき

 安倍政権の成果として完全失業率が低下し、日本の雇用環境が大幅に改善したことが挙げられている。しかし、就業者数の内訳を見ると非常に問題があるように思う。まず、2012~2019年の就業者数について性別で見ると女性が334万人も増加したのに対し、男性は111万人程度(女性の25%)の増加に留まっている。男性は女性ほど雇用改善の恩恵を受けていないのだ。

 その上、男性の中でも2012~2019年にかけて15歳から64歳までの就業者数は合計で57万人減少したのに対し、65歳以上は166万人も増加している。安倍政権が自画自賛する雇用の改善は女性や高齢者が働かざるを得なくなったことで成り立っていると言って良いだろう。

 

 更に、65歳以上の男性の就業者数が増加する一方で、年収100万円以下で働く男性貧困層は2000年の49万9517人から2018年の97万554人まで増加して過去40年間で最多となっている(図75を参照)。男性貧困層の年齢分布は公表されていないため、筆者は当初年収100万円以下の増加について子育て世代の男性の貧困化が原因だと考えていたが、就業者数の内訳を見る限り男性貧困層が急速に増加しつつある背景には低賃金で働かされている高齢男性の実態が存在するようだ。

 今の65歳以上の男性は1970~90年代にかけて懸命に働いて家族を養ってきた世代で、そうした方々を老骨にムチ打って低賃金で働かせることが安倍政権の成果だと言って良いのだろうか。

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 また、完全失業率の低下についても景気回復より2010年以降の人口減少による影響が大きいだろう。図76を見ると失業率は2008年10月の3.8%から2009年7月の5.5%までは悪化していたものの、それ以降は人口減少と並行して緩やかに改善してきたのがわかる。

 最近は新型コロナウイルスの影響で2020年7月に2.9%とやや悪化する傾向が見られるが、それでもアメリカの10.2%と比較すると低い状態が続いている。人口が減少して高齢化が進むと介護の人手不足が深刻化して景気に関係なく完全失業率が低下しやすくなるのではないだろうか。

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 「人口が減少して失業率も改善する」という現象は難民を受け入れる前のドイツでも発生していて、ドイツの人口は2005~2011年に8134万人から8028万人へと約106万人減少し、完全失業率は11.0%から5.9%まで低下した。ドイツは日本に次いで経済成長率の低い国で、リーマンショック翌年である2009年の実質GDP成長率はマイナス5.6%と、金融危機の当事国だったアメリカのマイナス2.5%よりも悪化しており、決して好景気が失業率改善の主因ではないようだ。

 とはいえ、2014年以降も完全失業率が低下したことで安倍政権は「消費税を増税しても景気が良くなる」と国民に錯覚させるきっかけを作ったとも言えるだろう。今後、財務省新型コロナウイルスに乗じて消費税を15~20%まで引き上げることを提案するかもしれないが、その際に「安倍政権で就業者数が大幅に増加したから増税は景気に悪影響を与えない」と言ってくる可能性が高いと思われる。そのため、消費税増税の反対派は子育て世代の男性が貧困化し、高齢者のワーキングプアが急増している実態を共有する必要があるのだ。

 

 

自民党に勝つためにはMMTに基づいた反緊縮的な政策が必要

 更に、安倍政権の末期に話題となった経済理論にMMT(現代貨幣理論)がある。MMTとはアメリカの経済学者であるランダル・レイ教授が提唱した理論で、「先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは起こらない」「インフレ率を調整しながら、財政赤字を拡大して経済を成長させていく」という考え方をしている。

 実際に日本では2013年以降、日銀が金融緩和を行って民間銀行の国債を買い取り、国民に返す必要のある負債は急速に減少しつつある。2020年3月末現在、すでに日本国債の47.2%は政府の子会社である日銀が所有していて、このぶんは政府が返済や利払いを行う必要はないのだ(図77を参照)。財務省も2002年4月に格付け会社ムーディーズが日本国債の格下げを行ったことに対して、「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」と抗議する意見書を送付しており、MMTを持ち出さなくても日本政府の財政を握る財務省自身が国債の破綻を否定しているのだ。

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 デフレ期の国債発行を認めながら積極財政を推進するMMTは税金についてどのように見ているだろうか。若手の経済評論家として注目される森永康平氏の著書『MMTが日本を救う(宝島社、2020年)によれば「税によって購買力を奪い、総需要を減少させることでインフレを抑制させる」と説明されている。

 例えば、所得税累進課税制度は富裕層から多くの税金を徴収し、貧困層からは最低限の税金だけを徴収している。これは単純に貧富の格差を埋めるだけでなく、不況のときは税収が減ってインフレのときは税収も増えていくので、税収が自然と景気に連動していくような総需要の調整機能を果たすことにもなるだろう。

 しかし、MMTでは悪い税金も存在するとしている。その一つ目が社会保障税、二つ目が消費税、三つ目が法人税だ。特に消費税について、国民はモノやサービスを購入することで生活の質を向上させているのであり、国が消費税を課して国民の購買力を奪うのはおかしいと主張している。この点に関しては筆者も同感である。

 

 だが、MMTを推進する人物が藤井聡氏、三橋貴明氏、西田昌司氏、安藤裕氏など自民党の関係者ばかりなのが気になるところだ。9月14日に実施される自民党総裁選では菅義偉氏、岸田文雄氏、石破茂氏の3人が立候補したが、消費税廃止を掲げる安藤氏は総裁選に何故出馬しなかったのだろうか。安藤氏は自民党総裁を目指さない限り、本音としては増税を容認していると批判されても仕方がないだろう。

 法人税所得税最高税率を引き上げてデフレ期の国債発行を認めれば消費税を廃止することは可能だが、それを決断するのは日本政府であってMMTが消費税廃止の起爆剤になるかどうかは疑問に残るように思う。

 

 次の衆院選は早ければ今年の10月25日に実施すると予想されているが、仮に自民党が大幅に議席を減らしたとしても日本維新の会を与党入りさせて強引に政権を続けてくるだろう。そこで、野党は消費税廃止を掲げて選挙に臨むことを強く要望したい。国民民主党の玉木代表は9月2日の記者会見で、立憲民主党の枝野代表が消費税や所得税の減税を掲げることに前向きな意向を示したのに対し、非常に良いことだと歓迎した。消費税を将来的に15~20%まで引き上げたい自民党に選挙で勝つためには、MMTに基づいた反緊縮的な政策が必要なのである。

 

 

<参考資料>

藤井聡MMTによる令和「新」経済論 現代貨幣理論の真実』(晶文社、2019年)

三橋貴明財務省が日本を滅ぼす』(小学館、2017年)

 

国民経済計算 2020年4-6月期2次速報値

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2020/qe202_2/gdemenuja.html

人口動態総覧の年次推移

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai19/dl/h1.pdf

官房長官「子ども産んで貢献を」 福山さんの結婚うけ

https://www.asahi.com/articles/ASH9Y621MH9YUTFK00R.html

労働力調査 長期時系列データ

https://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.html

民間給与実態統計調査結果

https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/jikeiretsu/01_02.htm

アメリカの7月失業率 10.2% 3か月連続で改善

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200807/k10012557581000.html

ドイツの人口・就業者・失業率の推移

https://ecodb.net/country/DE/imf_persons.html

OECD Data Real GDP forecast

https://data.oecd.org/gdp/real-gdp-forecast.htm

国債等の保有者別内訳(令和2年3月末)

https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/appendix/breakdown.pdf

外国格付け会社宛意見書要旨

https://www.mof.go.jp/about_mof/other/other/rating/p140430.htm

枝野氏の消費減税発言歓迎 国民・玉木氏

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020090201190&g=pol

新型コロナウイルスの感染者に対する自己責任論が日本人を苦しめている

「他人に迷惑をかけるな」は日本人の美点ではなく恥である

 社会心理学者の三浦麻子氏などの研究グループが今年3~4月に行った意識調査によれば、「新型コロナウイルスに感染する人は自業自得だと思う」という質問に対して「そう思う」(「非常にそう思う」「ややそう思う」「どちらかといえばそう思う」の合計)と答えた人の割合は、アメリカが1.0%、イギリスが1.5%、イタリアが2.5%、中国が4.8%なのに対し、日本は11.5%にものぼったことが明らかになった。逆に「全くそう思わない」と答えた人の割合は、アメリカが72.5%、イギリスが78.6%、イタリアが75.6%、中国が61.2%なのに対し、日本は29.3%程度である(図68を参照)。

 『社会保障の充実を阻む「自己責任論」』の記事でも述べた通り、日本はもともと先進国の中で最も貧困問題に対して自己責任論が強く、2007年に行われた国際調査でも「政府が自力で生活できない人を助けてあげるべきか?」の質問で、「全くそう思う」と回答した人はたったの15%と47カ国の中で最も少なかったが、今回の新型コロナウイルスでも改めて日本人の自己責任論が浮き彫りになったと言えるだろう。

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 群馬県内で発行されている上毛新聞(7月30日)には読者の声として、77歳の高齢者のこんな一文が掲載されていた。「他人に迷惑をかけるな―。小学校の時、父や母からよく言われたことが、今でも頭の片隅に残っている。今から約70年も前のことである。当時のクラスの仲間たちも親などを通して、身に付いていた言葉のような気がする。新型コロナウイルスの感染者が7月29日、全国で1000人を超え、危機感を覚え、不安を感じている。最近、感染者の割合は若者が圧倒的に多いことに驚かされる。テレビニュースで『うつっても軽くて済むから』と平然と語る若者の言葉には、重症化しやすい年寄りへの配慮はなく、他者へ感染させないという気遣いさえも感じられないように思える。自分の小遣いをはたいてマスクを寄贈した少女や水害地における高校生のボランティアの話など、他人のために役立とうとする立派な若者も多い半面、自分さえ良ければと考える若者も多いと推測される。日本の将来を担う若者をはじめ、全世代が『他人に迷惑をかけない』をモットーとする日本人の美点を思い起こし、実生活に生かすことがコロナから日本を救う一つの方途だと信じてやまない」。

 

 しかし、この一文には安倍政権が国賓で来日する予定だった習近平に配慮して、3月上旬まで中国人の入国禁止を決断できずに日本で新型コロナウイルスの感染者を5万人以上も増やしたという政治的な背景が全く感じられない。また、この高齢者は「昔の日本人は他人に迷惑をかけないという規範意識を持っていた」とでも言いたいようだが、実際に殺人事件で亡くなった人は2019年が293人なのに対し、高度経済成長期の1955年は2119人にものぼっている。

 図69では1955年以降の名目GDPと他殺による死亡者数の推移を示したが、これを見ると殺人事件の多さから経済的に貧しかった昔の日本人のほうがよっぽど他人に迷惑をかけていたことがわかる。その上、前述の高齢者は水害地でボランティアをする高校生を「他人のために役立とうとする立派な若者」と言うが、ボランティアは給与が全く発生しない「タダ働き」である。そうした国家や地域のために無償労働を行う若者を賞賛しているのは非常に問題だろう。

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 私が様々な方と政治についての会話をしていて感じるのは、消費税引き下げやデフレ期の国債発行に反対するのは圧倒的に60代以上が多いということだ。マスコミが長年、「国の借金で日本が破綻する」というデマを流し続けている影響で、積極財政に拒否反応を示す高齢者が非常に多いのである。90年代以降の日本の政治を振り返ってみても、1930~50年代生まれの政治家や官僚が消費税増税や歳出削減、労働規制の緩和といった新自由主義政策を進めてきた結果、子育て世代が貧困化して少子化が加速する原因にもなっている。今の高齢者世代がこの20~30年間の日本を衰退させてきたのに、国のトップを批判せず「今の若者は自分さえ良ければと考える奴が多い」とバッシングを煽るのは身勝手ではないだろうか。

 更に、最近では地方を中心に新型コロナウイルスの感染者を誹謗中傷する事件が相次いでいるが、これらは「コロナの感染者は他人に迷惑をかけている」という勘違いが招いた犯罪だと推測できる。前述の高齢者は「他人に迷惑をかけるなという日本人の美点を思い起こす必要がある」と述べているが、むしろ「他人に迷惑をかけてはいけない」という意識が日本人を苦しめ、先進国の中でも自殺率の高い社会を形成していると言えるだろう。「他人に迷惑をかけるな」は日本人の美点ではなく「恥」という意識を持つべきである。

 

 

戦後日本を否定して道徳の教科化を煽る自称保守派を許すな

 8月28日、安倍首相が辞任する意向を表明した。だが、そもそも消費税を10%に増税して外国人労働者を大量に受け入れ、公文書まで改ざんした安倍政権が約8年も続いてしまったのは何故だろうか。それは75年間平和を守って、経済成長を続けてきた戦後日本を破壊したい勢力が幅を利かせてきたことも原因の一つだと私は考えている。

 例えば、道徳の教科化を推進してきた教育学者の貝塚茂樹氏は典型的な「戦後日本が嫌いな言論人」である。彼は『13歳からの道徳教科書』(扶桑社、2012年)という学生向けに書かれた本の中で、いきなり「日本が溶解していく」と述べ、その理由として「日本の歴史の中で今ほど家族や社会の結びつきが希薄になった時代はないでしょう」と発言している。しかし、実際には統計数理研究所が実施している日本の国民性調査で「一番大切なものは家族」と答えた割合は1958年の12%から2013年の44%まで増加していて、高度経済成長期より現代のほうが家族の絆は強まっているのだ(図70を参照)。

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 また、貝塚氏は「日本では毎年3万人を超える人が自らの命を絶っており、自殺大国とさえ言われています。それどころか、近年では『身元不明の死者』などの国の統計上では分類されない新たな死が急増しています。こうした傾向は1960年代からの高度経済成長が進む中で顕著となり、家族や地域社会の共同体が徐々に解体されていったことが原因です」と、まるで経済成長と引き替えに日本人の心が貧しくなったから自殺や不審死が増加したと言いたいようである。だが、自殺は完全失業率が改善すれば自然に減少することが明らかになっており、共同体や道徳教育の問題ではないだろう。

 貝塚氏をはじめとする自称保守派は、2011年の東日本大震災で日本人の冷静さや規律正しさが海外から評価されたことについて「戦前の教育勅語のおかげ」だと賞賛する一方で、略奪や風評被害が一部で発生したことについては「戦後の日本が道徳教育を蔑ろにしてきたせいだ」と批判している。つまり、都合の良いことは戦前の日本人の功績で、都合の悪いことは戦後の日本人のせいにしたいわけだ。貝塚氏は「今の日本は『道徳教育が大切だ』という当然のことを口にするのも躊躇しなければならない不気味な社会になっている」と述べているが、問題なのは道徳教育を推進することではなく彼のように戦後日本を否定して道徳の教科化を煽ることだろう。

 もちろん私自身も今の日本に危機感を感じていないわけではない。だが、それは国民のモラルが低下したからではなく、90年代以降の自民党が緊縮財政を続けて子育て世代を貧困化させてきたからである。しかし、貝塚氏がそうした政治家や官僚の「道徳心の欠如」を批判したことは一度もない。戦後日本が嫌いな勢力にとっては、むしろ日本人が貧しくなったほうが好都合だからだ。

 

 更に、道徳の教科化や憲法の家族条項を推進している自称保守派が戦後日本を否定する理由としてよく挙げるのは「家族間殺人が増加している」という言説である。例えば、統一教会(世界平和統一家庭連合)の徳野英治会長は「殺人事件の53.5%(2013年)が親族間のものである。家族とはなんぞやを考えていかねばならない」と発言している。

 この他にも、リベラル派として知られる元NHKアナウンサーの下重暁子氏も「家族間の殺人事件は2003年までの過去25年間、全殺人事件の40%前後で推移してきたが、2004年には45.5%に上昇。それからの10年間では10ポイント近く上がり、2013年には53.5%にまで増えているのだ」と述べている。「家族間殺人が増加している」という言説を煽るとき、必ず「件数」ではなく「パーセンテージ」で見るのが特徴のようだ。しかし、実際に未遂を含めた家族間殺人の件数は2008年の558件をピークに、2018年の418件へと減少している。家族間殺人は増加するどころかむしろ減っているのだ(図71を参照)。

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 消費税を10%に増税した2019年10-12月期から新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が発令された2020年4-6月期まで実質GDPが3期連続でマイナス成長を続けているにも関わらず、国民の側から消費税引き下げを求める世論が盛り上がらないのはこうした「国民のモラルが低下している」「家族間殺人が増加している」というデマを鵜呑みにして、高齢者を中心に経済成長が人間の心を貧しくすると勘違いした人が多いからではないだろうか。

 私は消費税に反対するだけでなく、コロナの感染者に対して自己責任論を強要したり、戦後日本を否定して道徳の教科化を推進したりする者に対しても厳しく批判していくつもりである。

 

 

<参考資料>

塚田穂高 編著 『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩書房、2017年)

下重暁子 『家族という病2』(幻冬舎、2016年)

 

「感染は自業自得」「東京人はさっさと帰れ」日本人はどうしてコロナで他人を攻撃するのか?

https://news.yahoo.co.jp/articles/99c0eee9608e7bd063d2aac5f8b06a5647ac17fb

「コロナ感染は自業自得」日本は11%、米英の10倍 阪大教授など調査

https://www.yomiuri.co.jp/national/20200629-OYT1T50107/

他殺による死亡者数の推移 社会実情データ図録

http://honkawa2.sakura.ne.jp/2776.html

あなたにとって一番大切と思うものはなんですか

https://www.ism.ac.jp/kokuminsei/table/data/html/ss2/2_7/2_7_all.htm

殺人事件における被害者と被疑者の関係の推移

https://norman-2.hatenadiary.org/entry/20080806/1218016776

平成30年の刑法犯に関する統計資料

https://www.npa.go.jp/toukei/seianki/H30/h30keihouhantoukeisiryou.pdf

国民の側から消費税引き下げを求める世論を盛り上げよう

増税とコロナの影響で戦後最悪を記録した経済成長率

 内閣府が8月17日に発表したGDP速報値によれば、物価変動の影響を除いた2020年4-6月期の実質GDP成長率は年率マイナス27.8%と戦後最悪の落ち込みだった。個別の項目を見ると、民間住宅投資が年率マイナス0.8%、民間企業設備投資が年率マイナス5.8%なのに対し、民間最終消費支出は年率マイナス28.9%、家計最終消費支出(帰属家賃を除く)は年率マイナス35.6%と、消費税10%増税新型コロナウイルスによる個人消費の極端な落ち込みが実質GDPの大幅な下落につながったと思われる。

 

 図66では2009年10-12月期から2020年4-6月期の実質GDP成長率の推移を示したが、これを見ると経済成長率は民主党政権(2009年10-12月期~2012年10-12月期)の時代に年率平均1.69%だったのに対し、安倍政権(2013年1-3月期~2020年4-6月期)では年率平均マイナス0.14%まで下落している。特に実質GDP成長率は2019年10-12月期から3期連続でマイナスを続けていて、消費税増税による景気悪化に新型コロナウイルスが追い討ちをかけたのではないだろうか。

 西村康稔経済再生担当大臣は「政府としては経済を内需主導で成長軌道に戻していくことができるよう、引き続き当面の経済財政運営に万全を期す」と発言したが、7月からキャッシュレス還元を終了してレジ袋を有料化した影響で、個人消費はほとんど回復せず2020年7-9月期の実質GDP成長率もそこまで伸びないのではないかと予想される。

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 しかし、リーマンショックを超える深刻な不況にも関わらず、自民党幹部は相変わらず消費税を引き下げることに対して否定的である。例えば、岸田文雄政調会長時事通信のインタビューで「消費税は下げるべきではない。10%に引き上げるだけで、どれだけの年月と努力が求められたか。なおかつ消費税は社会保障の重要な財源となっている。社会保障の充実が言われているときに、この基幹税を軽減することはいかがなものだろうか」と発言している。

 だが、消費税収のほとんどは法人税減税に消えていて、1989~2019年度まで日本人が払った消費税は計396.4兆円なのに対し、法人税は国と地方合わせて税収が29.8兆円であった1989年度と比較すると計297.7兆円も減収しており、これは消費税収の75.1%が法人税減税の穴埋めに消えた計算になる(図67を参照)。

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 また、内閣府の「社会保障と税の一体改革における財源使途の状況」によれば、消費税8%増税の初年度2014年度の増収分は4.95兆円だったが、このうち社会保障の充実に使われたのは0.5兆円と全体の10%に過ぎない。更に、安倍政権は2013年以降の約6年で診療報酬や介護報酬、生活保護などの社会保障費を少なくとも3兆8850億円も削減したことが明らかになっている。日本で社会保障を充実させるためには、消費税増税ではなくプライマリーバランス黒字化目標の破棄こそが必要なのだ。

 この他にも、甘利明税制会長は消費税減税について「下げた翌年にはありがたみが消える。一部相当額を現金給付したほうが経済の刺激効果がはるかに高い」と述べたが、それなら新型コロナウイルス景気対策として国民に毎月10万円を支給したほうが良いということになる。しかし、それもプライマリーバランス黒字化目標を堅持する限り実現することはないだろう。甘利氏は結局のところ、消費税引き下げを否定して緊縮財政を正当化するために現金給付を持ち出しているだけではないだろうか。

 

 

消費税引き下げが世界の潮流になりつつある

 自民党幹部が消費税引き下げを否定する一方で、世界では新型コロナウイルスの影響で付加価値税を減税する動きが相次いでいる。7月24日のしんぶん赤旗によれば、経済対策として付加価値税を引き下げた国は19ヵ国にものぼると報道された。既に述べた通り、ドイツは2020年7~12月の期間限定で付加価値税を19%から16%、軽減税率を7%から5%に引き下げ、イギリスでもレストランや娯楽施設に適用される付加価値税を2020年7月から2021年1月まで20%から5%に減税している。

 

 また、オーストリアでは接客業・文化関係などの税率を10%から5%、ベルギーではホテル・レストランなどの税率を12%から6%、ブルガリアではレストラン・書籍などの税率を21%から10%、コロンビアでは接客業・レストランなどの税率を8%から0%、コスタリカでは標準税率を13%から9%、文化イベントなどの税率を7%、キプロスではホテル・レストランなどの税率を9%から5%、チェコでは宿泊・スポーツ・文化関係などの税率を15%から10%、ギリシャでは公共交通・運輸などを24%から13%、ホテルなどを9%から5%、ケニアでは標準税率を16%から14%、リトアニアではホテル・レストランなどを21%から9%、モルドバではホテル・レストランなどを20%から15%、ノルウェーでは映画・ホテル・公共交通などを12%から6%、トルコではホテル・国内航空券などを18%から1%、ポルトガルではマスク・消毒剤を23%から6%、ウクライナでは文化イベントを20%から0%、韓国では個人事業主付加価値税納税を減額・免除、中国では中小業者の標準税率を3%から1%に引き下げた(画像を参照)。

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 消費税を減税した国々の一覧を見ると、特にホテルやレストランの税率を引き下げた国が多いことがわかる。日本では2020年7月22日から8月31日までの期間限定で、旅行代金の35%相当(上限は1人1泊あたり14000円)を割引する「Go To トラベルキャンペーン」を実施しているが、申請方法が非常にややこしくブランド総合研究所の調査によればキャンペーンを活用して旅行を予約している人は3.0%に留まるなど、その利用については理解が十分に進んでいるとは言えない状況である。政府が本当に新型コロナウイルス景気対策として国民の消費を喚起させたいのであれば、まずは消費税を5%に引き下げて短くても2021年8月まではホテルやレストランの税率を0%にすべきではないだろうか。

 

 更に、消費税引き下げを求める世論を盛り上げるためには国民がもっと政治経済の問題に関心を持つ必要があると感じる。例えば、社会心理学者の三浦麻子氏などの研究グループが今年3~4月に行った意識調査によれば、「新型コロナウイルスに感染する人は自業自得だと思う」という質問に対して「そう思う」と答えた人の割合は、アメリカが1.0%、イギリスが1.5%、イタリアが2.5%、中国が4.8%なのに対し、日本は11.5%にものぼったことが明らかになった。国民の側から消費税引き下げや粗利補償を求める声がほとんど上がらないのも、多くの人がコロナ不況を自己責任だと勘違いしているからだろう。

 こうした状況を変えて消費税引き下げを実現するためには、周囲の家族や友人と積極的に政治経済に関する会話をして、早ければ今年中の実施が予想される衆院選では自民・公明・維新以外の反緊縮を掲げる政党に投票すべきだと思う。このブログで何度も述べているように、安倍政権が「消費税を5%に戻さないと政権を失う恐れがある」と危機感を抱けば消費税引き下げを決断するきっかけになるかもしれない。

 

 

<参考資料>

国民経済計算 2020年4-6月期1次速報値

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2020/qe202/gdemenuja.html

経財相、4~6月GDP「経済を人為的に止めた影響で、厳しい結果に」

https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL17HTG_X10C20A8000000/

消費税「下げるべきでない」 自民・岸田文雄政調会長インタビュー

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020080500837&g=pol

新勢力の結集めざし熱こもる山本太郎の演説

https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/11671

社会保障費3.9兆円削減 安倍政権の6年間

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-10-26/2018102601_01_1.html

自民・甘利氏、消費減税に否定的 「現金給付した方が効果高い」

https://www.tokyo-np.co.jp/article/47823/

消費税 19カ国が減税 コロナ禍経済対策

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2020-07-24/2020072401_01_1.html

Go To トラベルキャンペーンについて

https://travel.rakuten.co.jp/special/goto/

Go To トラベルキャンペーン、予約済みはわずか3%

https://response.jp/article/2020/08/04/337218.html

「コロナ感染は自業自得」日本は11%、米英の10倍…阪大教授など調査

https://www.yomiuri.co.jp/national/20200629-OYT1T50107/

反緊縮を掲げる安藤裕議員と須藤元気議員を応援しよう

安藤裕議員は2021年の自民党総裁選に出馬して総理大臣を目指すべきだ

 最近、気になっている政治家に自民党の安藤裕議員と立憲民主党須藤元気議員がいる。安藤氏は自民党衆議院議員でありながら安倍政権が進める消費税増税法人税減税に批判的で、2018年11月には別冊クライテリオンで当時自由党参議院議員だった山本太郎氏とも対談した。その一方で、自民党の離党を求める声に対しては「離党してしまっては与党の政策を転換させることはより困難になる」と否定している。自民党に所属しながら安倍政権の緊縮財政を批判するのは非常に勇気のいることだろう。

 しかし、真っ当な経済政策を掲げる安藤氏に対して揚げ足を取ろうとしているのが自民党幹部の議員だ。新型コロナウイルスに乗じて更なる増税を目論んでいる石原伸晃元幹事長は6月4日、消費税廃止を求める党内の声に触れ、「根拠を示さずものだけ言うようなことはこれまでの我が党にはない」と発言し、ある閣僚経験者も「子や孫の世代に負担を押し付けることになる。責任政党の姿ではない」と減税勢力をけん制した。

 

 自民党幹部が言う「孫の世代に負担を押し付ける」とは国の借金が増えることなのだろうが、国際的な財政再建の定義は政府の負債対GDP比率が減少することで、名目GDPが増加すれば政府の負債が増えても財政健全化は達成できるのだ。2019年度の名目GDPは552.1兆円だが、もし橋本政権以降の自民党が緊縮財政を行わず消費税が3%のままだったら個人消費が157.8兆円も押し上げられて名目GDPは709.9兆円になっていた可能性が高いことは『消費税3%減税と公務員増加で名目GDP700兆円を目指そうの記事でも説明した。

 だが、橋本政権よりも前に1989年の竹下政権が消費税を導入しなかったらどうなっただろうか。消費税が導入される前の1981~1988年度の家計最終消費支出(帰属家賃を除く)は年平均で7兆6840億円も増加していた。2019年度の家計最終消費支出は245.9兆円だが、もし消費税が導入されなかったら家計消費が毎年7兆6840億円も増加して2019年度は415.7兆円にのぼっていたことが予想される。そうなると2019年度の名目GDPは169.8兆円も押し上げられて721.9兆円になっていた可能性が高いだろう(図62を参照)。ちなみに、消費税廃止の他にも1997年以降に削減されている公的固定資本形成を増やせば、名目GDPは750~800兆円にも達していたかもしれない。

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 名目GDPが552.1兆円から721.9兆円に増加すれば当然のことながら「政府の負債対GDP比率」も減少する。財務省によれば2020年3月末時点で国債と借入金、政府短期証券を合計した政府の負債は1114.5兆円で対GDP比率は202%となっているが、もし消費税を導入せず名目GDPが721.9兆円だったら「政府の負債対GDP比率」は154%まで縮小したことになる(図63を参照)。消費税を増税するどころか廃止したほうが名目GDPは増加して財政再建にも有効で、安藤氏の提言は極めて現実的なものだと言える。

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 ただし、消費税廃止を実現させるために安藤氏は2021年の自民党総裁選に出馬して総理大臣を目指す必要があるだろう。自民党総裁選に出馬するためには党所属の国会議員から20人の推薦をもらう必要があるが、問題なのは安藤氏を支持する自民党議員がどれほど存在するかということである。例えば、自民党幹部は麻生太郎氏、二階俊博氏、森喜朗氏、甘利明氏など自民党総裁の任期を更に延長して2021年以降も安倍首相を続投させる方針を支持していて、消費税廃止を求める党内の意見を黙殺しているのが現状だ。

 また、安藤氏は今年3月30日に青山繁晴議員が代表を務める「日本の尊厳と国益を護る会」と共同で記者会見を行ったが、青山氏は「安倍首相も将来的な消費減税を全部否定されているとは思わない」「私たちは抵抗勢力ではなく、消費税について柔軟な考えを持っている安倍首相の背中を押すという減税勢力」と中途半端な発言に終始していて、もし2021年の自民党総裁選で安藤氏が直接的に安倍首相と戦うことになったら青山氏は安倍首相を支持する可能性が高いだろう。自民党内で安藤氏を総理大臣にする声が高まらないのは、表面的に消費税を批判していても「安倍政権の増税だったら仕方ない」と思っている議員が大多数だからなのかもしれない。

 

 とはいえ、海外では新型コロナウイルス景気対策として付加価値税の引き下げを決断する国が相次いでいる。ドイツが2020年7~12月の期間限定で付加価値税を19%から16%、食料品などに適用されている軽減税率を7%から5%に引き下げたことは『日本政府はドイツと同様に消費税引き下げを決断すべきである』の記事でも述べたが、最近ではイギリスでもレストランや娯楽施設に適用される付加価値税を2020年7月から2021年1月まで20%から5%に減税することを発表した。ここで自民党増税反対派が団結し、戦後最悪の緊縮財政を強行した安倍政権を辞任させないと日本は後進国に逆戻りすることが確実となるだろう。私は今の自民党を全く支持していないが安藤氏には頑張ってほしいと思っている。

 

 

野党の増税反対派が協力して安倍政権に危機感を抱かせる必要がある

 須藤元気氏はもともと総合格闘家だったが、2019年の参院選立憲民主党から出馬して初当選した。しかし、今年7月5日に実施された東京都知事選では山本太郎氏の支持を表明し、宇都宮健児氏を支持した党の幹部と対立している。須藤氏が山本氏の応援演説でしきりに訴えたのがロストジェネレーション(以下、ロスジェネ)の救済である。

 ロスジェネとはバブル崩壊後の不況の影響を受けた主に1970年代生まれのことで、運良く高収入になれた男性を除いて夫が妻子を養う高度経済成長期の家族モデルを形成できなかった世代でもある。国税庁民間給与実態統計調査によれば、35~39歳男性の平均年収は1997年の589.1万円から2018年の527.6万円まで61.5万円(1997年比で10.4%)も減少し、40~44歳男性の平均年収は1997年の644.7万円から2018年の580.6万円まで64.1万円(1997年比で9.9%)も減少している。図64では1997年を100とする「35~44歳男性の平均年収と消費者物価指数」の推移を示した。

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 本来なら結婚して子育てに励んでいるはずの世代がなぜこれほどまでに貧困化しているのか。代表的なアンチ山本太郎である政治ジャーナリストの安積明子氏は「ロスジェネ世代がロスジェネにならざるをえなかったそもそもの原因は、日本の国際競争力が低下したことにある」と、まるで日本のグローバル化が足りないから1970年代生まれの所得が減少したと言いたいようである。しかし、実際には小泉政権以降の自民党が緊縮財政を続けてデフレ不況を長期化させてきたことが原因の一つではないだろうか。図65では2001年を100とする「主要先進国の政府支出の推移」を示したが、これを見ると日本は先進国の中で最も政府支出を増やしていない国だと言える。

 ドイツが付加価値税の引き下げを発表したときに、「厳しい歳出削減を行った上で減税するから日本とは状況が異なる」と発言した経済学者がいたが、そのドイツでも2001~2019年の18年間に政府支出を1.5倍も増加させているのだ。

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 また、安積明子氏は今回の都知事選で須藤氏が立憲民主党方針に反し、消費税廃止を掲げる山本氏を応援したことについて、「5%だった消費税を10%にすることは民主党政権時の野田内閣で決まったことだ。もし須藤氏がその事実を知らなくて同党から出馬したとするなら、あまりにも無知すぎる」と批判しているが、これは悪質なネガティブキャンペーンだろう。

 消費税10%への増税を決定したのは2016年6月1日の安倍政権だし、立憲民主党の中にも石垣のりこ氏や堀越啓仁氏など消費税に批判的な議員は少なくないのだ。安積氏をはじめとする自称保守派が増税民主党政権のせいにするのは、安倍政権のやることに何でも賛成しているからだろう。

 

 更に、安積氏は都債を発行して都民に一律10万円を支給する山本氏の政策について、「15兆円のバラマキは都政財政を破綻させる自殺行為」だと発言している。しかし、2013年以降に日銀が金融緩和を行って民間銀行の国債を買い取り、国民に返す必要のある負債は急速に減少しつつある状況でどうやったら東京都が財政破綻するのだろうか。2020年3月末現在、すでに日本国債の47.2%は政府の子会社である日銀が所有していて、このぶんは返済や利払いを行う必要はないのだ。「都債を発行すれば財政破綻する」というデマは、「消費税を増税しないと財政破綻する」という財務省プロパガンダと同じだろう。

 そもそも、安積氏は都債15兆円の発行をバラマキ扱いしているが、緊縮財政を続けてデフレ不況を長期化させてきたのがこの20年間の日本である。公共事業でも社会保障でも、「バラマキ」という言葉を使う人を絶対に信用してはいけないと思う。

 

 最近では国民民主党玉木雄一郎代表が次の衆院選に向けて、「消費税減税で野党はまとまって戦うべきだ」と主張し、野党共闘には反緊縮的な政策が必要だと提言している。玉木氏はドイツに続いてイギリスが付加価値税の引き下げを発表したことを受けて、「消費税を5%に減税するだけでなく、半年間0%なども検討したい」とツイッターで述べた。そのため、須藤元気氏は立憲民主党を離党した後に、国民民主党の玉木氏や馬淵澄夫氏など増税反対派の議員と山本太郎氏を国政に戻すよう選挙協力するのはどうだろうか。

 自民党の安藤裕氏や国民民主党の玉木氏、そして須藤氏と与党からも野党からも消費税引き下げを求める声が上がれば、安倍政権にとって「次の衆院選までに消費税を5%に戻さないと政権を失う恐れがある」と危機感を抱かせるきっかけになるかもしれない。消費税増税に賛成する自民党立憲民主党の幹部に逆らって、反緊縮を掲げる安藤氏と須藤氏を今後も応援していきたいと思う。

 

 

<参考資料>

責任政党の姿ではない

https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12607131546.html

国民経済計算 2020年1-3月期1次速報値

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2020/qe201/gdemenuja.html

国債及び借入金並びに政府保証債務現在高(令和2年3月末現在)

https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/gbb/202003.html

外食を50%割引、付加価値税は5%に減税

https://www.bbc.com/japanese/53344151

民間給与実態統計調査結果

https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/jikeiretsu/01_02.htm

都知事選、一番目立つ山本太郎でも「大旋風」を起こせない理由

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/73601?page=5

国債等の保有者別内訳(令和2年3月末速報)

https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/appendix/breakdown.pdf

国民・玉木氏「消費減税を旗印に」 合流ハードル高める

https://mainichi.jp/articles/20200717/k00/00m/010/263000c

2017年2月28日発売「消費税の歴史と問題点を読み解く」

消費税収の86%が法人税減税に消えている」など、2017年2月までの当ブログの記事をまとめ、大幅に加筆した新書が同年2月28日に発売されました。

興味を持っていただいた方は、書店やAmazon等で購入してもらえると有り難いです。

 

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目次

第1章 消費税の歴史(近代史から橋本内閣まで)

第2章 消費税の歴史(小泉内閣から安倍内閣まで)

第3章 増税グローバリズムのここがおかしい!

第4章 世界の消費税、軽減税率、所得税の負担率

第5章 消費税は社会保障に使われていない

 

内容紹介

 消費税は身近な税金である。しかし国税のなかで消費税は滞納金が多く、増税をしていくにつれて滞納額が増加するという問題点はあまり知られていない。また、消費税引き下げの議論はない一方で、法人税減税は行われている。

 本書では、消費税の導入から増税が繰り返される日本の歴史、欧米諸国との比較、消費税増税についての問題点を明らかにする。消費税に関して改めて整理し、増税後、国民の生活にどのように影響していくのか考察していく。

 

著者 大谷 英暉  ISBN 978-4-344-91106-2

新書186ページ 価格880円

 

 

消費税の歴史と問題点を読み解く

http://www.gentosha-book.com/products/%E6%B6%88%E8%B2%BB%E7%A8%8E%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2%E3%81%A8%E5%95%8F%E9%A1%8C%E7%82%B9%E3%82%92%E8%AA%AD%E3%81%BF%E8%A7%A3%E3%81%8F/

 

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