消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

消費税5%減税と現金給付がコロナ危機から日本経済を救う

増税とコロナは関東大震災クラスの経済的損失をもたらした

 内閣府が6月8日に発表した2020年度のGDP成長率は物価の変動を除いた実質がマイナス4.6%、物価の変動を含めた名目がマイナス3.9%の落ち込みだった。特に実質GDP成長率はリーマンショックだった2008年度のマイナス3.6%を超える下落幅で、消費税10%増税個人消費が疲弊していたところに新型コロナウイルスが追い討ちをかけたのが明らかだろう(図1を参照)。

 財務省は数年前まで明治時代以降のGDPの長期時系列データを公表していて現在は削除されてしまったようだが、私のExcelに保存してあった数字を確認すると関東大震災が発生した1923年の実質GDP成長率もマイナス4.6%となっている。つまり、増税とコロナは10万人以上が犠牲になった関東大震災クラスの経済的損失をもたらしたことになる。

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 国民経済計算では5年ごとに基準となる年を変更してGDPを公表しているが、平成17年基準の名目GDPは消費税を5%に増税した1997年の523.2兆円が過去最高で2020年は500.3兆円である。また、国際基準の研究開発費とは関係ない「その他」の部分を大幅に加算したと言われている平成27年基準の名目GDPも消費税を10%に増税した2019年の559.8兆円をピークに2020年の538.6兆円まで落ち込んでいる(図2を参照)。

 政府は今後、消費税引き下げや毎月の現金給付など大規模な景気対策を打ち出さない限り、コロナ収束後もデフレ不況が続いて平成27年基準の名目GDPは永遠に2019年の水準を超えない可能性が高いだろう。

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 もともと日本経済は2019年に入ってから米中貿易摩擦を発端とした世界経済不安の影響で落ち込みが見られるようになっていて、藤井聡氏や松尾匡氏など反緊縮の経済学者がこれ以上景気を冷え込ませないために消費税10%増税の中止を提案していた。しかし、当時の安倍政権は聞く耳を持たず予定通り10月に増税を強行した結果、2019年10~12月期の名目GDP成長率は年率マイナス4.6%と前回8%に引き上げた2014年4~6月期の年率プラス0.9%と比較しても大幅に悪化してしまったのである。

 そして、2020年には新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化して名目GDP成長率は1~3月期が年率マイナス2.2%、4~6月期が年率マイナス27.7%と3期連続でマイナス成長が続いていたのは周知の通りである。

 

 しかし、1回目の緊急事態宣言が発令された2020年4月に政府は国民全員に一律10万円を支給する特別定額給付金の実施を決定し、7~9月期の名目GDP成長率は年率プラス24.1%まで回復する。特に、名目GDPの内訳を見ると民間企業設備投資が年率マイナス7.2%、民間住宅投資が年率マイナス18.6%の落ち込みだった一方で、個人消費を表す家計最終消費支出(帰属家賃を除く)は年率プラス27.8%と大幅に増加した。

 2020年7~9月期の名目GDPを下支えしたのは国民の個人消費であって、10万円の特別定額給付金はコロナ後の景気対策として一定の成果を上げたのではないだろうか。

 

 麻生財務相は「10万円を給付しても貯金に回っただけ」と発言しているが、これもデータを見れば嘘だということがわかる。例えば、総務省の家計調査によれば二人以上の世帯における食料の支出は1回目の緊急事態宣言が発令された後の2020年5月が7万8272円、6月が7万7246円、7月が7万9290円と3ヵ月の累計で23万4808円となっている。つまり、2人世帯が合計20万円を受け取ったとしても3ヵ月経てば食費で全て消えてしまうのだ。

 

 2021年には東京で新型コロナウイルスの感染が再拡大し、政府は1月8日から3月21日まで2回目の緊急事態宣言を発令していた。その影響で2020年10~12月期に年率プラス10.1%と好調だった名目GDP成長率は、2021年1~3月期に年率マイナス5.1%まで落ち込んでいる。日本経済は2020年後半に回復の兆しを見せていたが、今年に入ってから消費税引き下げや特別定額給付金の再支給など景気対策を伴わない緊急事態宣言で再び不況に戻ってしまったのが実情だろう。

 

 

現金給付を行えば2022年には名目GDPが640兆円にも達する

 それにも関わらず、菅政権はコロナに便乗して消費税を15~20%まで引き上げようとしている。2021年1月18日、菅首相は施政方針演説で「今後は右肩上がりの高度経済成長の時代と違って、少子高齢化と人口減少が進み、経済はデフレとなる。その中で国民に負担をお願いする政策も必要になる。その必要性を国民に説明し、理解してもらわなければならない」と発言した。政府はコロナ前まで散々「アベノミクスで景気が回復した」と自画自賛していたくせに、コロナで景気が悪化すると政策の失敗を認めることなく日本社会の構造のせいにするのは無責任だろう。

 

 その上、日本は2007年から高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)が21%を超える「超高齢社会」に入って人口の減少が始まったが、個人消費東日本大震災が発生した2011年3月から消費税が8%に増税される直前の2014年3月まで3年間で約15%も増加している(図3を参照)。

 もし、安倍政権が消費税増税を中止して税率が5%のままだったら2014年4月以降も個人消費が増加を続けてコロナによる経済の落ち込みは今ほど酷くなかった可能性が高いだろう。日本経済が成長していないのは少子高齢化ではなく、消費税増税をはじめとする政府の緊縮財政が原因である。

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 アメリカではコロナ危機が深刻になった2020年3月にまず1人最大1200ドル(約12.8万円)の支給を決定し、2020年12月には最大600ドル(約6.4万円)、2021年3月には最大1400ドル(約15万円)と3回の合計で最大3200ドル(約34.2万円)の大規模な現金給付を実施している。その影響で2021年1~3月の実質GDP成長率は年率プラス6.4%と2020年7~9月期から3期連続でプラス成長が続き、2021年4月の消費者物価上昇率も前年同月比プラス4.2%と急速に景気回復の兆しを見せている。アメリカは1980年代から小さな政府を推進してきたが、コロナ危機の影響で経済政策が転換しつつあるようだ。

 

 それに対し、日本では2020年度に持続化給付金や特別定額給付金などの景気対策を実施して国債発行額が前年度の36.6兆円から112.6兆円まで増加したが、2020年度の消費者物価上昇率は対前年比マイナス0.2%とインフレは全く発生していない。「現金給付を繰り返し実施するとハイパーインフレになる」と脅す経済学者もいるが、実際にはれいわ新選組の舩後靖彦議員が参議院調査情報担当室を通して行った試算によれば、国民全員に毎月10万円を給付したとしても物価上昇率は1年目で1.22%、2年目で1.44%、3年目で1.81%、4年目で1.75%と日銀が目標に定めている年率2%のインフレには達しないという。

 

 逆に、国民全員に一律の現金給付を行うメリットは大きい。日本経済復活の会の小野盛司氏はコロナ以前の経済状況を名目550兆円だとすると、国民に配る金額によってその後の経済が回復するスピードも変わってくると指摘している。例えば、何も配らなかった場合は3年が経ってもコロナ以前の経済規模には戻らないが、年間40万円を配った場合は1年ほど、年間80万円を配った場合は半年ほどでコロナ以前の水準に戻り、年間120万円を配った場合は名目GDPが急速に伸びていって2022年にはもう640兆円に達することが予想される(画像を参照)。

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生活困窮世帯に限定した現金給付は景気対策にならない

 深刻なコロナ危機であるにも関わらず、日本政府は何故これほどまで消費税引き下げや現金の再給付を頑なに拒否し続けるのだろうか。それには、まず2020年4月の緊急事態宣言で10万円の特別定額給付金が支給された本当の理由について振り返っておく必要があるだろう。

 2020年3月31日に自民党政務調査会が政府に提出した提言には、「消費税5%減税分に相当する約10兆円を上回る給付措置を、現金支給を中心に全体として実現すること」と書かれている。当時は自民党の安藤裕議員が代表を務める「日本の未来を考える勉強会」がコロナの景気対策として消費税を5%に減税する案を提言していた。つまり、自民党政調が決めた10万円給付というのは安藤議員に対して「現金給付でその分を国民に還元するから消費税引き下げをあきらめなさい」というメッセージでもあるのだ。

 

 2021年3月21日に2回目の緊急事態宣言が解除された後もコロナの感染拡大は収束せず、4月25日には東京、大阪、京都、兵庫を対象に5月11日まで特別措置法に基づく緊急事態宣言を再び発令した。しかし、「短期集中型」と言われた3回目の緊急事態宣言はまず5月31日までに延長され、5月28日には更に6月20日まで延長することを決定した。2021年に入ってから既に5ヵ月半が経過したが、そのうちの約4ヵ月間は緊急事態宣言が発令されていることになる。

 

 だが、5月14日には経済財政諮問会議の民間議員が国と地方の基礎的財政収支プライマリーバランス)を2025年度までに黒字化するとの従来目標を堅持すべきだと提言し、自民党財政再建推進本部も新型コロナウイルス対策のための財政出動を重視しつつ、コロナ収束後を見据えて来年度以降3年間の歳出削減目標の策定を求めている。

 

 その結果、3回目の緊急事態宣言では生活困窮世帯に限定して3ヵ月間で最大30万円を給付する合計約500億円のみの支援金を決定した。また、政府はまん延防止等重点措置で午後8時までの営業時間の短縮要請に応じた飲食店に対し、中小企業には売上高に応じて1店舗当たり日額4~10万円、大企業の店舗へは売上高の減少額に応じて最大日額20万円の協力金を支給している。

 しかし、2021年1~3月に実施した2回目の緊急事態宣言における時短協力金の支給率は兵庫が9割にのぼる一方で、東京や大阪、京都は4~5割程度と地域間格差が顕著に表れているようだ。

 

 ベーシックインカムを推進する経済学者の井上智洋氏は「シングルマザーや生活が苦しい学生などピンポイントで困っている人だけを救済すると、政府が想定しているような困っている人以外は救済されないことになる」と指摘している。例えば、生活に困っている一人暮らしのフリーターはシフトが入っていない状態にされているためコロナによる休業手当てを貰えない場合も非常に多い。その上、現金給付に所得制限を設けると対象になる国民と対象にならない国民が分断することにもなりかねないだろう。

 

 私は深刻なコロナ危機から日本経済を救うためにまず消費税を5%に減税し、日銀が定めている年率2%のインフレ目標に達するまで国民全員に毎月10万円の現金給付を続けることが最も適切な景気対策だと思っている。

 

 

<参考資料>

松尾匡 『左翼の逆襲 社会破壊に屈しないための経済学』(講談社、2020年)

井上智洋、小野盛司 『毎年120万円を配れば日本が幸せになる』(扶桑社、2021年)

森永卓郎 『なぜ日本経済は後手に回るのか』(KADOKAWA、2020年)

 

国民経済計算 2021年1-3月期 2次速報値

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2021/qe211_2/gdemenuja.html

家計調査(家計収支編) 時系列データ(二人以上の世帯)

https://www.stat.go.jp/data/kakei/longtime/index.html

3回の「緊急事態宣言」違いは? 「期間・地域・対策」を比較

https://news.yahoo.co.jp/articles/d846179297733caaf4293f11619c3d2e6053a1a4

第二百四回国会における菅内閣総理大臣施政方針演説

https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2021/0118shoshinhyomei.html

米、1人15万円を月内追加給付 200兆円対策を上院可決

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN064Z30W1A300C2000000/

GDP プラス6.4% 3期連続で改善

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210429/k10013005491000.html

消費者物価「市場予想超え」4.2%上昇でも、アメリカは金融政策「正常化」に動かないと言える理由

https://www.businessinsider.jp/post-234707

戦後の国債管理政策の推移

https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/appendix/hakkou01.pdf

<野党は減税でまとまれ>れいわ新選組 下関でゲリラ街宣 熱気帯びる意見交換

http://www.asyura2.com/20/senkyo275/msg/894.html

緊急経済対策第3弾への提言~未曾有の国難「命を守り、生活を守る」ために~

https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/news/policy/200009_1.pdf

25年度黒字化目標、苦肉の「堅持」 諮問会議で確認

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA13BKK0T10C21A5000000/

来年度以降3年間の歳出改革目標策定を 自民・財政再建本部提言案判明

https://www.sankei.com/politics/news/210512/plt2105120034-n1.html

困窮世帯へ最大30万円の給付金 政府が新たな支援策

https://www.asahi.com/articles/ASP5X6G7ZP5XUTFL00N.html

政府、百貨店などに日額20万円 休業要請、テナントは2万円

https://www.jiji.com/jc/article?k=2021042300969&g=eco

支援金すら速やかに配れない後進国

https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12670196379.html

今こそ知りたい「消費税増税と法人税減税」の関係

※この記事は2019年9月28日に更新されました。

 

消費税収の78.1%が法人税減税の穴埋めに消えている

 来月からとうとう消費税が10%に増税されてしまうが、社会保障に使われるはずの消費税収はほとんどが法人税減税の穴埋めに消えている事実をどれほどの人が知っているだろうか?

 

 日本では消費税が導入された当時から法人税減税が急速に行われていて、法人税の基本税率は1984~86年度の43.3%から2018年度の23.2%に引き下げられ、国税地方税を合わせた法人実効税率も、1984~86年度の52.92%から2018年度の29.74%まで引き下げられている。

 1989~2018年度まで日本人が払った消費税は計371.9兆円なのに対し、法人税は国と地方合わせて、税収が29.8兆円であった1989年度と比較すると計290.4兆円も減収しており、これは消費税収の78.1%が法人税減税の穴埋めに消えた計算になる(図87を参照)。ちなみに、図87はしんぶん赤旗からの引用だが、日本共産党の機関紙が最も消費税増税に対して厳しい批判をしているのは皮肉な話である。

 また、経団連の榊原名誉会長は法人実効税率を25%に引き下げるよう政府に提言しており、安倍政権が景気を悪化させても消費税10%増税を強行するのは、法人税の大幅な減税によって税収が減ることを見越しているからだろう。

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 経団連法人税減税を推進する理由について「企業の設備投資を増やす」と言っているが、法人税を引き下げても設備投資が増加するとは限らないのが現実だ。国民経済計算の民間企業設備投資(実質値)を見ると、法人税が高かった1977~1997年の20年間では2.99倍も増加したのに対し、法人税減税が繰り返されてきた1997~2017年の20年間では1.17倍しか増加していない(図88を参照)。

 1977~1997年は一般的に日本が安定成長していた時代だと言われているが、1987~91年のバブル景気を除けば1979~80年の第二次オイルショックや1985~86年の円高不況、1992~94年のバブル崩壊など経済的に不安定な時期も多かった。

 それにも関わらず設備投資が増加したのは法人税が今より高かったことにより、企業が税引き前利益を減らして投資や人件費、交際費などに回していたからではないだろうか。

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法人税減税よりも海外進出企業に対して課税を行うべき

 更に、経団連は「法人税増税すると日本から企業が逃げ出す」と言うが、経産省の海外事業活動基本調査(2017年度)では海外に進出する企業に対して移転を決定した際のポイントについて3つまでの複数回答で聞いたところ、法人税が安いなどの「税制、融資等の優遇措置がある」を選択した企業は8.0%と一割にも満たなかった(図89を参照)。

 もし、企業の国外流出を防ぎたいのであれば、法人税減税よりも海外に進出する企業に対して課税を行うべきである。前述の海外事業活動基本調査によれば、海外に拠点を置いて活動する企業の数を表した現地法人企業数は1987年度の6647社から2017年度の25034社まで約3.8倍も増加していて、法人税の高い時代のほうが企業は国内で仕事をしていたのだ(図90を参照)。

 また、企業が海外進出を決定した理由としてトップに挙げたのは「現地の製品需要が旺盛または今後の需要が見込まれる」の68.6%だった。つまり、法人税を減税するよりも消費税を廃止して個人消費による需要を創出すれば、企業が国内に留まってくれる可能性が高いということだろう。

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 海外では米国のトランプ政権が2018年に連邦法人税率を35%から21%に引き下げた一方で、中国など海外からの輸入品の関税を引き上げて税収を増やそうとしている。トランプ氏は政治家として問題の多い人物だが貿易の保護主義を推進し、法人税減税の財源を消費税の導入に頼らなかったことは高く評価すべきだろう。

 それに対し、日本の安倍政権はトランプ氏との交渉で米以外の農産物の関税を全て撤廃しようとしている。国民に対しては消費税増税を強要する一方で、グローバル企業に対しては法人税減税や関税撤廃で優遇したいというわけだ。「もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」という発言からもわかる通り、安倍首相は日本の国益について一切考えていないのだろう。

 

 

消費税廃止と法人税増税国債発行こそ必要な政策である

 この他にも、財務省が言う消費税引き上げのメリットの一つとして、「法人税収は景気に左右されやすいが、消費税収は経済状況に関係なく安定した財源」というものがある。確かに、財務省の一般会計税収の推移を見ると、国の法人税収は1989年度の19.0兆円とバブル期にピークを迎えてその後は減少し、2018年度の法人税収は12.3兆円になっている。

 だが、法人企業統計によれば企業の経常利益は1989年度の38.9兆円から2018年度の83.9兆円まで約2.2倍も増加し、法人税収が減少する一方で経常利益はバブル崩壊後も増え続け過去最高を更新しているのだ(図91を参照)。ちなみに、2018年度は売上高が前年比マイナス0.6%だったにも関わらず、人件費を削減している影響なのか経常利益は増加に転じている。

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 もし、2018年度の経常利益に1989年当時の税率(40%)が適用された場合、単純比較で法人税収は41.0兆円にものぼっていたことが予想される。これは2018年度の法人税収と消費税収を合わせた30.0兆円より多いため、法人税率を一昔前の水準に戻せば消費税を廃止しても社会保障費を捻出することは可能なのだ。

 その上、リーマンショックのような金融危機が発生して法人税収が減少したら、国債発行や財政出動などの景気対策で経済成長を促して税収を増やせば良いだろう。例えば、安倍政権は2025年度までに国の収入と支出の釣り合い状態を表す「プライマリーバランス基礎的財政収支、以下PB)」を黒字化させる目標を掲げているが、PBを改善する方法は消費税増税や歳出削減ではなく経済成長こそが有効である。

 実際に、図92を見ると1980年代以降の名目GDP成長率とPBには相関関係があることが確認され、消費税を廃止してもデフレを脱却すれば自然にPBは改善していくだろう。そして、日本が本当の意味でデフレを脱却するためには消費税廃止と法人税増税国債発行こそ必要な政策なのである。

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<参考資料>

消費税と法人3税の減収額の推移 2018/11/1

http://nam-students.blogspot.com/2018/11/2018111.html

「日本も法人減税を」 経団連は25%要望

https://www.sankei.com/economy/news/171220/ecn1712200038-n1.html

国民経済計算 2019年4-6月期 2次速報値

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2019/qe192_2/gdemenuja.html

消費への罰と、利益への罰

https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12412460015.html

海外事業活動基本調査

https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kaigaizi/index.html

「米法人税率21%」決着 税制改革、成立の公算

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24734550W7A211C1MM0000/

報ステ】“ウィンウィン”強調 日米貿易協定合意

https://www.youtube.com/watch?v=SFpFJTn5gis

平成30年度 法人企業統計調査

https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/results/h30.pdf

一般会計税収の推移

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/010.pdf

日本の基礎的財政収支の推移

https://ecodb.net/country/JP/imf_ggxcnl.html

消費税は国税の中で最も滞納の割合が多い

※この記事は2019年9月14日に更新されました。

 

国税滞納のうち57.3%が消費税で占められている

 消費税が10%に増税されるまで残り2週間余りとなってしまったが、今こそ「消費税は国税の中で最も滞納の割合が多い」という事実について知るべきではないだろうか。「消費税になぜ滞納金が発生するのか?」については、消費税という税制の仕組みを理解する必要がある。

 私たちが買い物をするとき、レジでお金を支払っているため、消費税を納めているのは消費者だと思っている方も多いだろう。だが、これは大きな誤解で、実際に消費税を納める義務があるのは事業者だ。事業者は、決算や確定申告の際に、一定の計算による消費税額を国などに納付する義務があり、そこで消費税を販売価格に上乗せ(転嫁)することが認められている。

 

 しかし、販売価格に上乗せされた消費税を、モノを買うときに消費者が負担するのは事業者が値引きしていない場合で、中小・零細企業の中には少しでも商品を安く売るために、消費税を価格に転嫁できないこともあり、結果的に自腹を切って納税する例が少なくない。その影響もあって消費税は国税の中で最も滞納額が大きく、2018年度に発生した消費税の滞納税額は3521億円と、国税全体の滞納額(6143億円)における57.3%を占めている。

  消費税は法人税所得税と違って、年間売上高が1000万円以上の場合、事業者が赤字でも納税しなければならず、滞納税額が減らないのはそれだけ消費税を納められない企業が多いからである。消費税は事業者が預かる「間接税」ではなく、事業者が納める「直接税」と言ったほうが正しいだろう。

 

 国税の新規発生滞納税額は1992年度の1兆8903億円をピークに減少しているが、これは主に所得税法人税相続税の滞納が減ったからで、消費税だけは依然として滞納額が多いのだ(図85~86を参照)。ちなみに、図85を見ると「消費税の滞納額も1998年から減少しているのでは?」と思うかもしれないが、国税全体に占める滞納額の割合は1990年度の11.1%から2018年度の57.3%まで増加している。

 更に、消費税の滞納額は1996年から98年度、2013年から15年度へと税率が引き上げられた時期に増えており、2019~20年度は10%増税の影響で消費税を納められない事業者が増加するのは明白である。

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消費税という税制に欠陥があるから滞納が発生する

 だが、国税庁は消費税の滞納が増えているのを問題視するどころか、「自営業者=脱税」のイメージを作ることに必死だ。

 例えば、少し古いが1999年11月25日には前年の1998年に消費税の新規発生滞納税額が過去最多になったことを受けて、「消費税は消費者からの預り金的な性格を有する税であるという趣旨の広報活動を更に徹底する必要がある」という通知を出している。税金の問題に関心を持っている方なら、一度は「消費税は消費者からの預り金」という言葉を聞いたことがあるだろう。

 国税庁が子ども向けに広報活動を行っている税の学習コーナーでも、『消費税を通して私たちも納税している』という明らかな間違いを教えている。前述の通り、消費税を納税するのは消費者ではなく事業者であって、子どもたちが『消費税を通して私たちも納税している』という誤解を持つことは、逆に言えば「消費税を納められない事業者は悪質業者」と偏見を助長することにもつながりかねない。

 

 国税庁だけでなくマスコミでも、2001年5月18日の産経新聞で「消費税は私たち庶民が少しでも日本の社会が住みよい、安定した姿になりますようにとの願いから必死に納めているものです。その義務を果たさず、納税すべきお金を他に使うのは最も悪質な脱税行為と言っても過言ではありません。どうして新聞はもっと大きく報道して国民に詳しく知らせないのですか? 政治を先頭に消費税滞納の根絶方法を早急に確立することが急務だと思います」と読者から怒りの声を掲載し、「自営業者=脱税」のイメージを作るキャンペーンを展開している。

 

 2008年4月16日の衆議院財務金融委員会でも、民主党下条みつ議員が滞納された国税の徴収を急げとの趣旨で「釈迦に説法ですけれども、源泉所得税とか消費税というのはいわば中小零細事業主の一時預り金でございますよね。税金を払うのにも、目の前に来ることを先に優先して、お客さんが払った消費税や従業員から取った源泉部分を国に払わない。まず手前の自分のところで処理してしまう。この結果、こういう滞納連鎖が起きていると私は思います」と税金滞納者をけん制した。

 

 国会では消費税引き上げについて「増税したら景気が悪くなる」という反対意見はあっても、「滞納金が多いから」という反対意見は聞いたことがない。最近ではやっと山本太郎元議員が演説の中で国税滞納の約6割が消費税で占められていることを指摘してくれたが、もし政治家の方々が「消費税は国税の中で最も滞納税額が多い」という事実を知らずに増税するかどうかの議論を行っているとしたら、あまりにも勉強不足ではないだろうか。

 

 この他にも、国税庁は過去にタレントを起用したポスターで消費税の滞納者を非難したこともあるが、そもそも消費税の滞納額が国税全体の半数以上を占めているのは、どの事業者も売上に対して一律の額が徴収される「消費税」という税制に欠陥があるからだろう。

 消費税増税を批判する際は、景気の問題だけでなく滞納の問題についても取り上げていく必要があると感じる。

 

 

地方の消費税を安くして「地方創生」を実現しよう

 安倍政権が進める経済政策の一つに地方創生がある。地方創生とは、東京一極集中を是正して地方の人口減少に歯止めをかけ、日本全体の活力を上げることを目的にしている。

 2014年には、元岩手県知事の増田寛也氏が「何も対策を取らなければ、2040年までに全国896の自治体が消滅してしまう可能性がある」というレポートをまとめた『地方消滅―東京一極集中が招く人口急減』(中央公論新社)がベストセラーになった。

 その一方で、政府が進めている地方創生は必要なインフラ整備を放棄し、「各地方は自助努力せよ。成功しているところは地方交付税を厚くし、上手くいかないところは自己責任」と、各地域の競争を煽っているだけなのではないかという批判も存在する。

 

 しかし、私が注目しているのは「地方ほど消費税を滞納する割合が高い」という問題だ。各地域の国税局別に滞納額の割合(2017年度)を見ると東京が1.60%なのに対し、金沢が2.01%、広島が2.29%、名古屋が2.37%、大阪が2.41%、高松が2.63%、関東信越が3.01%、仙台が3.47%、福岡が3.52%、札幌が3.53%、熊本が3.67%、沖縄が3.76%と地方ほど割合が高くなることがわかるだろう(表12を参照)。

 消費税10%増税は政府が進めている地方創生にも大きく反する愚策なのである。

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 地方のほうが消費税を滞納する割合が多いのは、東京などの都市部よりも経済的なハンデが大きいことが原因だろう。例えば、雇用者に占める非正規雇用の割合(2017年)は東京都が32.6%なのに対し、滞納の割合が最も多い沖縄県では41.3%だ。都道府県別の平均年収(2018年)も東京都が622万2900円なのに対し、沖縄県は369万4800円(東京都の59.4%)と宮崎県の365万5300円(58.7%)に次いで少ない。子どもの貧困率(2012年)も東京都が10.3%なのに対し、沖縄県は37.5%となっている。

 

 更に、沖縄は全国の米軍専用基地のうち74%を負担してもらっている問題を忘れてはならない。だが、「沖縄の経済は米軍基地に依存している」というのも事実ではなく、県民総所得に占める基地関連収入の割合はアメリカ統治下だった1965年の30.4%から2015年の5.3%まで低下している。今後、沖縄が米軍基地に依存しない経済を築くためには、県民総所得を拡大させてこの比率を更に引き下げる必要があるだろう。

 そのためにも政府は消費税率を都道府県別にわけて、東京都は5%、沖縄県は0%、それ以外の地域は3%とすべきだと思っている。地方の消費税が東京より安くなれば、各地域の税負担が減って本当の地方創生が実現するのではないだろうか。

 

 

<参考資料>

小澤善哉 『図解 ひとめでわかる消費税のしくみ』(東洋経済新報社、2013年)

醍醐聰 『消費増税の大罪 会計学者が明かす財源の代案』(柏書房、2012年)

行政監察情報 『滞納防止策の改善求める 消費税滞納額増で国税庁に意見表示』(官庁通信社、1999年)

斎藤貴男 『消費税のカラクリ』(講談社、2010年)

大久保潤、篠原章 『沖縄の不都合な真実』(新潮社、2015年)

 

国税庁 統計情報

https://www.nta.go.jp/publication/statistics/index.htm

平成30年度租税滞納状況について

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2019/sozei_taino/index.htm

暮らしを支える税を学ぼう

https://www.youtube.com/watch?v=AM8Um27CW4Y

砂漠で金を稼げと言うのか?「地方を見捨てた」山本幸三地方創生大臣

http://www.mag2.com/p/money/274082/2

平成29年就業構造基本調査 主要統計表(都道府県)

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200532&tstat=000001107875&tclass1=000001116995

平成30年賃金構造基本統計調査 都道府県別

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450091&tstat=000001011429&cycle=0&tclass1=000001113395&tclass2=000001113397&tclass3=000001113406

子育て貧困世帯 20年で倍 39都道府県で10%以上

https://mainichi.jp/articles/20160218/k00/00m/040/108000c

米軍基地と沖縄経済について

https://www.pref.okinawa.jp/site/kikaku/chosei/kikaku/yokuaru-beigunkichiandokinawakeizai.html

オウム真理教よりも統一教会のほうが悪質な宗教である

※この記事は2018年9月20日に更新されました。

 

国際勝共連合は反共を装った「隠れ共産主義」の団体

 7月6日と26日に麻原彰晃をはじめとするオウム真理教の元幹部13人の死刑が執行された。私は麻原の死刑について否定しないが、果たして日本人にとって凶悪なカルト宗教はオウム真理教だけなのだろうかとも思う。

 

 例えば、自民党岸信介の時代から韓国の統一教会国際勝共連合、世界平和統一家庭連合)と親密な関係を築いてきた。

 岸信介の孫の安倍首相も2006年5月、統一教会の関連団体「天宙平和連合」に祝電を送っていたことが明らかになっており、国際勝共連合が発行している雑誌『世界思想』の2013年3月号と9月号では「強靭な国・日本」「救国ロードマップ」というタイトルで、勇ましい安倍首相の写真が表紙を飾っている。それはまるで、2012年9月に死去した教祖の文鮮明の後継者として安倍首相を指名しているかのような気味の悪さを感じてしまう(写真を参照)。

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 また、国際勝共連合は消費税増税、TPP協定、原発再稼働、共謀罪テロ等準備罪)、特定秘密保護法、日本版NSC集団的自衛権、安保法制、緊急事態条項、憲法の家族条項、小中学校の道徳教科化など安倍政権の様々な政策を熱烈に支持し、2016年1月には安倍首相を応援して自民党改憲案を推進する学生団体の「UNITE」を結成した。

 この他にも、長年の悲願だった共謀罪の制定について2017年4月のコラムで「先ほどロンドンの国会周辺でテロ事件が発生したようにテロ対策は焦眉の急だ。2020年の東京五輪に向けてテロ対策の強化が急がれる。同法案は今国会で必ず成立させねばならない」と高く評価している。

 

 しかし、先祖の因縁や霊障を取り除くためと言って信者に朝鮮人参茶や大理石壺などを高価で売りつける霊感商法や、女性信者を騙して見ず知らずの外国人と結婚させる合同結婚式など、今まで散々共謀罪に該当するような犯罪行為を繰り返してきた統一教会共謀罪の制定を推進するのは何とも皮肉な話である。

 共謀罪の真の狙いは、自民党統一教会に批判的な人々を取り締まることにあるのだろうか。

 

 更に、自民党議員の加藤寛治氏が今年5月10日に「女性に必ず3人以上子供を産み育てていただきたい」「結婚しなければ子供が生まれず人様の税金で老人ホームに行くことになる」と発言して問題になったが、国際勝共連合はこれに関しても「少子化が深刻な日本の50年後、100年後を考えたら極めて真っ当な正論である」「結婚しなくてもシングルで子供を持てるというフェミニスト社会保障だけ手厚くやれば良いと言うが、それではますます他人様の税金の投入が必要になるだけだ」と擁護している。

 だが、加藤氏の「結婚しなければ人様の税金で老人ホームに行くことになる」という発言は明らかにデタラメである。老人ホームのほとんどは有料であって、国が無償で提供しているわけではないからだ。加藤氏の発言には「政府が国民を養ってやっているのだから、子供を産んで国に貢献しろ」という統治意識が強く感じられる。

 

 こうした女性に出産を強要する発想は、実は国際勝共連合が忌み嫌っているはずの共産主義と非常に相性が良いことをご存知だろうか。有名な例は、独裁政権として知られるルーマニア共産党のニコラエ・チャウシェスク(1918~1989年)である(写真を参照)。

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 チャウシェスクは、ルーマニア出生率の低さを由々しき問題だと考えて1966年から女性の人工妊娠中絶を法律で禁止し、離婚にも大きな制約を設け5人以上の子供を産んだ女性を公的に優遇したが、ヨーロッパの中で最も貧しい部類に入るルーマニアでは大家族を養うことができず、育児放棄によって孤児院に引き取られる子供やエイズに感染する子供が急増するという問題が発生した。

 こうした極端な人口増加策で生まれた孤児たちは「チャウシェスクの落とし子」と呼ばれ、ストリートチルドレン化するなど後々までルーマニアの深刻な社会問題となっている。

 

 つまり、歴史的に見れば女性に出産を強要していたのは共産党であって、ニコラエ・チャウシェスクと同様の主張をする国際勝共連合は反共を装った「隠れ共産主義」の団体ではないだろうか。国際勝共連合が実際は共産主義の団体であることは、既に一水会鈴木邦男氏が1985年2月に寄稿した『朝日ジャーナル』の論文で指摘している。

 

 しかし、自民党議員の間では加藤氏だけでなく、山東昭子氏が「子供を4人以上産んだ女性を厚労省で表彰することを検討してはどうか」と発言したり、二階俊博氏が「この頃、子供を産まないほうが幸せじゃないかと勝手なことを考える人がいる」と発言したり、杉田水脈氏が「LGBTは子供を作らない、つまり『生産性』がないのです」と発言するなど、日本の出生率が低下したのを結婚しない若者やLGBTのせいにし、女性に出産を強要する共産主義的なイデオロギーが蔓延しつつある。

 

 

少子化の改善には消費税引き下げと財政出動しかない

 日本で少子化が進んだのは、所得税減税や国営企業の民営化、消費税導入、労働者派遣法の施行など中曽根政権以降の小さな政府というデフレ促進策によって名目GDP成長率が下がり、子育て世代の収入が激減したからではないだろうか。

 1980年代はまだインフレの時代だったので小さな政府を進めても経済に悪影響を与えることは少なかったが、1990年代のバブル崩壊後にデフレ不況が深刻化する中で消費税増税や歳出削減を断行してしまったのは問題だった。厚労省国民生活基礎調査によれば、児童のいる世帯の平均所得金額は消費税が3%だった最後の年である1996年の781.6万円から2016年の739.8万円まで約42万円も下落している。

 

 児童のいる世帯の所得が大幅に減ったのは、『消費税増税が少子高齢化を加速させる』でも指摘したように子育て世代に当たる30代後半~40代前半の男性の平均年収が1997~2016年の19年間に70万円以上も減少し、夫が妻子を養える経済状況ではなくなったことが最大の原因だと言えるだろう。

 

 また、過去60年間(1957~2017年)の「名目GDP成長率と出生数の推移」には強い相関関係が見られ、最後に出生数が100万人を超えた2015年も名目GDP成長率が2.5%(平成17年基準)と比較的高い数字を示している(図66を参照)。

 政府が本当に少子化を改善させたいのならば、消費税引き下げと財政出動によって子育て世代の所得を増やし、年間の名目GDP成長率が5%を超えるような経済状況を3年以上続けるべきである。

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 だが、国際勝共連合少子化とデフレ不況の関係をどうしても認めたくないように見受けられる。

 『世界思想』の2013年3月号では、男女共同参画社会に関する世論調査の「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方に賛成する割合が2009年の41.3%から2012年の51.6%まで増加したことについて、女性の貧困や若者の労働環境の過酷さが原因だとする村松泰子氏、山田昌弘氏、開沼博氏の主張に反論し、「結婚と出産に経済的な関わりがあることは否定できないが、子供に寄り添いたい親の心情をことさら無視するのは家族軽視やジェンダーフリー思想の表れである」と述べている。

 

 しかし、2012年以降の「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方に賛成する割合の推移を見ていくと2014年は44.6%、2016年は40.6%と徐々に減少していることがわかる。2012年の調査で一時的に賛成派の割合が高まったのは、夫が妻子を養う高度経済成長期の家族モデルに回帰したのではなく、東日本大震災の影響で将来に不安を感じる女性や若者が増加したからではないだろうか。

 

 更に、『世界思想』の2018年6月号では戦後の歴代内閣をA~Eの5段階で格付けしていたが、これにも強い疑問を感じる(表11を参照)。

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 岸と安倍はもともと勝共連合と蜜月関係を築いていたので高い評価を受けるのは仕方ないが、法人税増税や公共事業の拡大、高齢者医療の無償化、公務員給与の引き上げなど大きな政府オイルショック後の安定成長に貢献した田中角栄が何故、C評価なのだろうか?

 田中角栄が首相だった時代(1972~74年)は、それこそ安定した収入を得た団塊世代が次々に結婚して第二次ベビーブームが発生していたにも関わらずである。

 

 そもそも、政府が公共事業を拡大すれば国民経済計算の「公的固定資本形成」が増加し、社会保障を充実させれば「政府最終消費支出」が増加して名目GDPも増え、国の経済成長にもつながるのだ。長引くデフレ不況においても小さな政府ばかり信奉する国際勝共連合は、そうした経済的な知識を一切持っていないのかと呆れてしまう。

 

 オウム真理教は1990年に「真理党」として衆院選に出馬したが、全員落選して供託金も没収され政界進出に失敗している。その一方で統一教会は長年、自民党新自由主義的な政策や家族の助け合い義務の強化を要求し、安倍政権の6年間で彼らの悲願が次々に実現されつつある状況だ。

 麻原彰晃は63歳で死刑となり一連のオウム事件についてある程度の償いをしたと言えるが、文鮮明は92歳までのうのうと生きて霊感商法合同結婚式の被害について全く責任を取っていない。その点では、オウム真理教より統一教会のほうがもっと悪質な宗教なのかもしれない。

 今後、もし安倍政権がスパイ防止法の制定を推進してきたら、野党議員は「犯罪集団の統一教会が1980年代からスパイ防止法の成立に関わってきたこと」を明確に提示して断固反対すべきだろう。

 

 

<参考資料>

櫻井義秀 『霊と金 スピリチュアル・ビジネスの構造』(新潮社、2009年)

山口広、滝本太郎紀藤正樹 『Q&A宗教トラブル110番』(民事法研究会、2015年)

ジョン・D・スターマン 『システム思考 複雑な問題の解決技法』(小田理一郎・枝廣淳子 訳著、東洋経済新報社、2009年)

国際勝共連合 「特集 強靭な国・日本 安倍政権の歴史的使命」 『世界思想』(世界思想出版、2013年3月号)

同上 「特集 歴代内閣を格付けする 安倍政権を戦後政治に位置づける試み」 『世界思想』(世界思想出版、2018年6月号)

 

死刑確定囚13人、全員執行 オウム真理教事件

https://www.asahi.com/articles/ASL787HXWL78UTIL01K.html

安倍首相と統一教会=家庭連合の関係がわかる8つの出来事

http://poligion.wpblog.jp/archives/5522

街頭デモで安倍政権を応援 旧統一教会系の国際勝共連合が支援する大学生集団「UNITE」の正体

https://dot.asahi.com/wa/2016062900245.html

「テロ準備罪法案」の成立を期せ

http://www.ifvoc.org/monthly/2017_04.html

「3人産んで」で人口急激社会への処方箋

http://www.ifvoc.org/news/shiso-np180601/

ニコラエ・チャウシェスク 堕胎と離婚の禁止

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%82%A8%E3%83%BB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%82%A6%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%82%B9%E3%82%AF

勝共連合統一教会)と愛国詐欺

http://wondrousjapanforever.blog.fc2.com/blog-entry-234.html

「子無し税」で炎上中に山東昭子「4人以上産んだら表彰」発言の時代錯誤

http://bunshun.jp/articles/-/5081

自民・二階俊博幹事長「子供を産まない方が幸せだと勝手なこと考える人がいる」

https://www.sankei.com/politics/news/180626/plt1806260029-n1.html

LGBT“生産性”発言で大炎上 自民党杉田水脈の“脈々”と続く問題発言まとめ

http://bunshun.jp/articles/-/8326

平成29年 国民生活基礎調査の概況

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa17/dl/03.pdf

「夫は外で働き、妻は家庭を守る」という意識の変化

http://honkawa2.sakura.ne.jp/2410.html

消費税増税の布石を打つ菅義偉首相と消費税廃止を推進する玉木雄一郎代表

菅首相は消費税を廃止して公営住宅を増やしていくべきだ

 菅義偉氏が9月16日に総理大臣指名選挙を経て第99代の首相に就任した。菅氏は秋田の高校を卒業した後に集団就職で上京し、世田谷のダンボール工場で働きながら大学に通い、そこで労働者の生活環境に対して問題意識を抱いて政治家を志した苦労人だと説明されているが、果たしてそのイメージは本当だろうか?

 

 菅首相は早速、9月10日放送のワールドビジネスサテライトで消費税増税について「引き上げると発言しないほうが良いだろうと思いましたが、しかしこれだけの少子高齢化社会、どんなに私ども頑張っても人口減少は避けることできません。そうした中で将来的なことを考えたらやはり行政改革は徹底して行った上で国民の皆さんにお願いをして、消費税は引き上げざるを得ないのかなということを率直に申しました」と述べている。

 つまり、菅氏は「日本は人口減少で衰退します!だから増税!」という典型的な人口減少衰退論に陥っているのだ。はっきり言って、菅義偉氏の自虐的な経済思想は2010年に菅直人首相が「もう日本は経済成長できないから、大きな不幸がないだけでも有り難い」という意味の最小不幸社会を提唱して、消費税増税を推進したのと同じように感じられる。

 

 しかし、ウクライナルーマニアなどは日本より人口減少のペースが速いにも関わらず、名目GDPは1998~2018年で20倍以上も増加している(図78を参照)。日本のデフレ不況が長期化しているのは人口減少ではなく、90年代以降の自民党が緊縮財政を続けてきたことが原因なのだ。

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 また、菅首相はその後の記者会見で「安倍前首相はかつて『今後10年くらい消費税を引き上げる必要はない』と発言している。私も同じ考えだ」と述べたが、これもすぐ裏切られる可能性が高いだろう。安倍前首相は2012年6月のメールマガジンで「名目成長率が3%、実質成長率が2%を目指すというデフレ脱却の条件が満たされなければ消費税増税を行わないことが重要」と述べていたが、実際にはデフレ脱却前に消費税を増税してしまった。菅政権でも次の衆院選が終わってから増税に向けた議論が始まると思っておいたほうが良いだろう。

 

 だが、日本政府が消費税廃止を躊躇している間にもコロナ不況はどんどん深刻化しつつある。2020年4-6月期の実質GDP成長率は1次速報値のときに年率マイナス27.8%と戦後最悪の落ち込みだったが、2次速報値ではこれが年率マイナス28.1%に悪化してしまった。リーマンショックのときは2009年1-3月期の実質GDP成長率が年率マイナス17.8%で、民間企業の平均年収が2008年の429.6万円から2009年の405.9万円まで対前年比5.5%(23.7万円)も減少したが、これをコロナ不況に当てはめると民間企業の平均年収は2019年の436.4万円から2020年の398.4万円まで対前年比8.7%(38.0万円)も減少することが予想される。

 消費者物価指数を見ても2020年8月のコアコアCPI(食料〔酒類を除く〕及びエネルギーを除く総合)は対前年比マイナス0.4%と消費税増税の影響を含めてもデフレ不況に逆戻りしていることが明らかで、この状況で消費税廃止を提言できないような政治家や経済学者は逆に国民を貧困化させたいのではないかと思ってしまう。

 

 更に、菅首相は2015年4月7日に行われた参議院内閣委員会で山本太郎議員(当時)から「最近の若者は根性が足らぬというふうにお感じになったりしますか」と質問された際に、「根性が足りないということでありましたけれども、やはり自分が何をやるのかと、そういうものをやはりしっかり持って頑張る方が少なくなっていることは、これは事実かなというふうに思っています。ただ、やはり親に頼るとかそういう方が増えてきているのかなという思いを私はしないわけじゃないです」と発言している。

 つまり菅首相は「最近の若者は親に頼ってばかりで、夢のために頑張る人が少なくなっている」と言いたいようだ。菅首相は苦労人と言われているが、高度経済成長期に青春を過ごした1948年生まれの団塊世代であり、努力は必ず報われると思い込んでいる部分があるのかもしれない。

 

 しかし、自民党改憲案の24条には「家族は互いに助け合わなければならない」という条文が新設されている。憲法に家族の助け合い義務を明記するのは、成人しても親と同居するパラサイトシングルを政府が推奨しているということでもある。社会学者の山田昌弘氏は、長引くデフレ不況の影響で賃金が上がらず弱者に転落した若者を親が面倒見ざるを得なくなっていると指摘している。

 また、親に頼らざるを得ない若者が増加しているのは政府の住宅政策が貧弱で一人暮らしができないという背景も存在するのではないだろうか。例えば、全借家に占める社会住宅の割合はオランダが75.0%、オーストリアが57.1%、スウェーデンが50.0%、イギリスが48.1%、フランスが42.2%、デンマークが42.1%、フィンランドが40.6%、イタリアが20.0%、スペインが15.3%なのに対し、日本は14.0%程度でドイツも7.1%だが、日本が住宅政策の貧弱な国の一つであることは事実だろう(表5を参照)。

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 日本で公営住宅が少ないのは国政選挙で住宅政策が争点になったことが一度もなく、住宅は最大の福祉制度だと考える人がほとんどいないことも無関係ではないのかもしれない。貧困問題に取り組むビッグイシュー基金では2014年、住まいの貧困についての調査報告書「若者の住宅問題―住宅政策提案書(調査編)」をまとめた。この調査では、首都圏・関西圏の8都道府県に住む年収200万円未満しかないワーキングプアと呼ばれる層の若者たち1767人(20~39歳の未婚者)に対して、インターネットを通してアンケートを行うというものだった。

 そこで明らかになったのはまず低所得者の雇用形態で、非正規雇用が47.1%、無職が39.1%であり、正規雇用はわずか7.8%に過ぎないという衝撃の事実だった。しかも、彼らのうち親と同居しているのは77.4%であり、実に4人に3人が実家を出られない状況に置かれていることも読み取れた。親との同居の理由(複数回答)については「住宅費を負担できない」が53.7%と高く、「住宅費の負担の軽減のため」も9.3%になっている。つまり、住宅費の負担が大きいため若者世代は実家に住み続けざるを得ないというのが現実なのだ。

 菅政権は携帯電話料金の引き下げを目玉政策に掲げているが、そうした小手先の政策だけでなく少子化対策のためにも消費税を廃止し、公営住宅を増加させていくべきではないだろうか。政府が公営住宅を増やせば、費用の問題で一人暮らしができなかった若者の自立を促すことにもつながると思っている。

 

 

国民民主党は消費税廃止を目玉政策として掲げるべきだ

 次の衆院選は早ければ今年中に実施される予定だが、最近気になっている政治家に国民民主党玉木雄一郎代表がいる。彼は極めて現実的な保守政治家で、憲法について「何も変えない、何も足さない、何も引かないという原理主義的な護憲論は、結果として安倍政権による解釈改憲を許したのです」と述べ、平和主義を再定義する改憲議論が必要だと提言している。

 今年6月に国民民主党に入党した山尾志桜里議員も「憲法9条があるにも関わらず、専守防衛を逸脱し集団的自衛権の一部を認める安保法制は成立してしまった。憲法の本質的役割は権力統制にあるにも関わらず、最も権力が先鋭化する自衛権という実力を現状の憲法9条で統制することができなかった。ならば、憲法の統制力を強化する憲法改正を本気で検討すべきではないか」と述べている。憲法改正についてタブー視しない国民民主党は、ただの護憲政党になってしまった立憲民主党とは一線を画していると言えるだろう。

 

 また、原発に関しても「廃炉を担う人材、技術、財源の問題を含めて現実的な政策を立てなければ、原発ゼロは掛け声だけで終わってしまう可能性もあります」と述べた上で、LNG液化天然ガス)などによる地域内での発電を核としたスマート・コミュニティを推進している。福島第一原発事故から9年半が経過したが、残念ながら国政選挙では原発の是非について全く議論されなくなってしまった。そのため、経済成長を重視しながら現実的な原発ゼロを目指している国民民主党原発に反対する保守派にとっても評価されるべき政党ではないだろうか。

 更に玉木氏は経済評論家の三橋貴明氏との対談で、小泉政権以降の自民党が進めてきた構造改革を批判し、「食料の安全保障を憲法に明記すべき」と発言していて、大きな政府によって中間層の所得を分厚くした1970~80年代の自民党のような政治家だとも言えるだろう。一部では国民民主党日本維新の会が合流する可能性を指摘する人もいるが、農協改革を推進する維新と農業の保護を訴える玉木氏とでは政策に明確な違いが存在するのである。

 

 この他にも、玉木氏は今年1月22日の通常国会習近平国賓来日について、「日本の主権に対する挑戦を含め、中国の覇権主義国際法や民主主義の基本的価値やルールに反する行動を容認するという誤ったメッセージを送ることにならないか」と厳しく批判している。これに対して安倍前首相は「日本と中国は地域や世界の平和と繁栄にともに大きな責任を有している。習主席の国賓訪問もその責任をしっかり果たすとの意思を内外に明確に示す機会としたい」と述べたが、それから新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化したにも関わらず安倍政権は習近平に配慮して3月5日まで中国人の入国禁止を決断できなかった。日本でコロナの感染者を8万人以上も増やしたのは中国からのインバウンドに依存していた安倍政権の責任であり、1月22日の時点で習近平国賓来日を批判した玉木氏は先見性があったと言えるのではないだろうか。

 NHK世論調査によれば2020年9月の時点で国民民主党の支持率は0.1%程度だが、これだけ保守的な政策を打ち出しているのに支持率が伸びないのは日本が「左傾化」していることが原因だと言えるかもしれない。

 

 だが、玉木氏の政策にはまだまだ不十分な部分も多いように感じられる。例えば、少子化対策について結婚したくてもできない方々への支援や、不妊治療の保険適用といった第1子対策にまず力を入れ、そうした政策を前提にしつつ、特に第3子以降の子供に一人当たり1000万円の大胆な経済支援を提案している。しかし、子供を3人以上育てられる家庭は所得に余裕のある中間層や富裕層が多く、「安倍政権の7年8ヵ月とMMT(現代貨幣理論)を検証するの記事でも述べた通り少子化の原因は90年代以降に子育て世代の男性が貧困化し、生涯未婚率が上昇しているからだろう。

 玉木氏は少子化を改善させたフランスの家族手当が第2子から支給され、第3子から大きく加算される制度になっていることを取り上げているが、フランスは日本より経済成長率が高く1998~2018年の名目GDP成長率は日本が年間平均0.13%なのに対して、フランスは年間平均2.94%にものぼっている(図79を参照)。

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 フランスでは子供が3歳になったときから義務教育が始まるなど、対GDPの公教育支出の割合(2016年)が4.5%と日本の2.9%より多く、政府の総支出も1998~2018年にかけて日本が0.98倍と縮小していったのに対し、フランスは1.84倍まで拡大を続けている。つまり、日本で少子化を改善させるためには福祉政策だけでなく、消費税廃止などの積極財政で子育て世代の所得を引き上げる必要があるのだ。

 玉木氏は今年7月にドイツやイギリスが新型コロナウイルス景気対策として付加価値税の引き下げを決定したことを受けて、「消費税を5%に減税するだけでなく、半年間0%なども検討したい」とツイッターで述べた。だが、消費税廃止を優先的に掲げるれいわ新選組と比較すると国民民主党の減税政策はまだ弱々しく、玉木氏が本当に消費税廃止を実現したいのであれば目玉政策としてもっと高らかに訴えるべきではないだろうか。

 

 また、玉木氏は「とにかく最優先で子育てや教育に国が大きく財政支援を投じる必要がある」として子ども国債の発行を提唱し、新型コロナウイルス景気対策としても国債発行を財源に真水100兆円の財政出動を行うとしている。財務省も2002年に格付け会社ムーディーズが日本国債の格下げを行ったときに、「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」と抗議する意見書を送付しており、デフレ期に国債を発行して社会保障の財源を捻出するのは真っ当な経済政策だと言えるだろう。

 最近では米国民主党の最年少下院議員であるオカシオ=コルテス氏などがインフレ率を調整しながら国債を発行して経済を成長させていくMMT(現代貨幣理論)を支持しており、日本の野党もMMTに基づいた反緊縮的な政策を積極的に取り入れる必要があるのではないだろうか。

 私はもともとれいわ新選組山本太郎代表を応援していたが、彼一人だけが消費税に反対していても消費税廃止は実現できないだろう。そのため、現職の国会議員として消費税廃止や財政出動を推進する国民民主党玉木雄一郎代表を応援しているのである。

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<参考資料>

鈴木哲夫 『ブレる日本政治』(ベストセラーズ、2014年)

藤田孝典 『貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち』(講談社、2016年)

山田昌弘 『なぜ日本は若者に冷酷なのか』(東洋経済新報社、2013年)

玉木雄一郎 『令和ニッポン改造論』(毎日新聞出版、2019年)

      『#日本ヤバイ』(文藝春秋、2019年)

山尾志桜里 『立憲的改憲』(筑摩書房、2018年)

 

菅氏 消費税「将来は引き上げ必要」

https://news.yahoo.co.jp/articles/42b07b84638b1e731137dfdf0f8d8370f3798e5e

消費増税、10年は不要 菅氏「安倍首相と同じ考え」

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020091100595&g=pol

コロナでGDP年率27.8%減 平均給与38万円ダウンの懸念

https://news.yahoo.co.jp/articles/1b7617d1000c956966714f8176539aab4dee0217

国民経済計算 2020年4-6月期2次速報値

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2020/qe202_2/gdemenuja.html

民間給与、7年ぶり減少 平均436万円

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020092901176&g=soc

消費者物価指数 時系列データ

https://www.stat.go.jp/data/cpi/historic.html

第189回国会 参議院 内閣委員会 第4号 平成27年4月7日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=118914889X00420150407&current=1

橋本駅北口デッキ れいわ新選組 山本太郎 2020年9月9日

https://www.youtube.com/watch?v=YLclp0y5i14

三橋貴明×玉木雄一郎構造改革って考え方が古いよね

https://www.youtube.com/watch?v=PcUrphzuXuw

【詳報】首相「家族で楽しめるIR」 カジノ利権批判に

https://www.asahi.com/articles/ASN1Q32C2N1PUTFK012.html

NHK世論調査 内閣支持率 NHK選挙WEB

http://www.nhk.or.jp/senkyo/shijiritsu/

Nominal GDP forecast

https://data.oecd.org/gdp/nominal-gdp-forecast.htm

フランスの合計特殊出生率の推移

https://ecodb.net/country/FR/fertility.html

人口動態調査 e-Stat 政府統計の総合窓口

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450011&tstat=000001028897

教育への公的支出、日本は35か国中最下位

https://resemom.jp/article/2019/09/11/52413.html

安倍政権の7年8ヵ月とMMT(現代貨幣理論)を検証する

経済成長率を引き下げて少子化を加速させた安倍政権の大罪

 8月28日、安倍首相が辞任する意向を表明した。そこで今回は安倍政権の7年8ヵ月の経済状況について振り返ってみたいと思う。国民経済計算を見ると、実質GDPは第二次安倍政権が始まった2012年10-12月期の498.1兆円から2020年4-6月期の484.8兆円へと逆に減少してしまった。これは新型コロナウイルスの影響だと思われがちだが、実際には消費税率を2段階も引き上げたことによって個人消費が極端に落ち込んだことが原因だろう。

 家計最終消費支出(持ち家の帰属家賃を除く)は消費税が5%だった最後の時期である2014年1-3月期の247.7兆円から2020年4-6月期の205.6兆円まで6年間で42.1兆円も下落している(図72を参照)。日経平均株価が2万円を超えても景気回復が実感できないのはこうした背景があるようだ。

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 物価変動の影響を含めた名目GDP成長率も安倍政権前期(2013年1-3月期~2015年4-6月期)は年率平均3.11%にのぼっていたのに対し、安倍政権中期(2015年7-9月期~2017年10-12月期)は年率平均1.47%、安倍政権後期(2018年1-3月期~2020年4-6月期)は年率平均マイナス2.95%と後半になるほど尻すぼみになっていったことがわかる(図73を参照)。安倍政権の中でまともに経済成長していたのは最初の1~2年だけなのだ。

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 また、マスコミもあまり取り上げていないが、安倍政権の罪の一つと言えるのが出生数を大幅に減らして少子化を加速させたことだろう。年間の出生数は2012年の103.7万人から2019年の86.5万人まで7年間で17.2万人も減少してしまったのだ(図74を参照)。先進国の中で最も公的な教育予算が少なく、毎日消費される食料品にまで8%の税率が適用される日本では20年以上続いたデフレ不況が少子化にも影響しているのではないだろうか。

 次の首相として最有力候補になっている菅義偉氏は2015年9月に人気男性歌手と女優が結婚した際に、「この結婚を機に、ママさんたちが一緒に子供を産みたいとか、そういう形で国家に貢献してくれたらいいなと思います」と発言した。菅氏はどうやら日本で少子化が進んだのは若者が結婚せず女性が子供を産まないからだと思っているようだ。実際には、90年代以降に子育て世代の男性が貧困化したことが少子化の原因であるのは『日本でタブー視されている男性の貧困問題』の記事でも述べたが、菅氏が首相になっても過去の自民党政権が繰り返してきた緊縮財政を転換せず、少子化問題について「結婚できない若者や女性が悪い」という自己責任論を煽ってくることは確実だろう。

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高齢者のワーキングプアが急増している実態を共有すべき

 安倍政権の成果として完全失業率が低下し、日本の雇用環境が大幅に改善したことが挙げられている。しかし、就業者数の内訳を見ると非常に問題があるように思う。まず、2012~2019年の就業者数について性別で見ると女性が334万人も増加したのに対し、男性は111万人程度(女性の25%)の増加に留まっている。男性は女性ほど雇用改善の恩恵を受けていないのだ。

 その上、男性の中でも2012~2019年にかけて15歳から64歳までの就業者数は合計で57万人減少したのに対し、65歳以上は166万人も増加している。安倍政権が自画自賛する雇用の改善は女性や高齢者が働かざるを得なくなったことで成り立っていると言って良いだろう。

 

 更に、65歳以上の男性の就業者数が増加する一方で、年収100万円以下で働く男性貧困層は2000年の49万9517人から2018年の97万554人まで増加して過去40年間で最多となっている(図75を参照)。男性貧困層の年齢分布は公表されていないため、筆者は当初年収100万円以下の増加について子育て世代の男性の貧困化が原因だと考えていたが、就業者数の内訳を見る限り男性貧困層が急速に増加しつつある背景には低賃金で働かされている高齢男性の実態が存在するようだ。

 今の65歳以上の男性は1970~90年代にかけて懸命に働いて家族を養ってきた世代で、そうした方々を老骨にムチ打って低賃金で働かせることが安倍政権の成果だと言って良いのだろうか。

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 また、完全失業率の低下についても景気回復より2010年以降の人口減少による影響が大きいだろう。図76を見ると失業率は2008年10月の3.8%から2009年7月の5.5%までは悪化していたものの、それ以降は人口減少と並行して緩やかに改善してきたのがわかる。

 最近は新型コロナウイルスの影響で2020年7月に2.9%とやや悪化する傾向が見られるが、それでもアメリカの10.2%と比較すると低い状態が続いている。人口が減少して高齢化が進むと介護の人手不足が深刻化して景気に関係なく完全失業率が低下しやすくなるのではないだろうか。

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 「人口が減少して失業率も改善する」という現象は難民を受け入れる前のドイツでも発生していて、ドイツの人口は2005~2011年に8134万人から8028万人へと約106万人減少し、完全失業率は11.0%から5.9%まで低下した。ドイツは日本に次いで経済成長率の低い国で、リーマンショック翌年である2009年の実質GDP成長率はマイナス5.6%と、金融危機の当事国だったアメリカのマイナス2.5%よりも悪化しており、決して好景気が失業率改善の主因ではないようだ。

 とはいえ、2014年以降も完全失業率が低下したことで安倍政権は「消費税を増税しても景気が良くなる」と国民に錯覚させるきっかけを作ったとも言えるだろう。今後、財務省新型コロナウイルスに乗じて消費税を15~20%まで引き上げることを提案するかもしれないが、その際に「安倍政権で就業者数が大幅に増加したから増税は景気に悪影響を与えない」と言ってくる可能性が高いと思われる。そのため、消費税増税の反対派は子育て世代の男性が貧困化し、高齢者のワーキングプアが急増している実態を共有する必要があるのだ。

 

 

自民党に勝つためにはMMTに基づいた反緊縮的な政策が必要

 更に、安倍政権の末期に話題となった経済理論にMMT(現代貨幣理論)がある。MMTとはアメリカの経済学者であるランダル・レイ教授が提唱した理論で、「先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは起こらない」「インフレ率を調整しながら、財政赤字を拡大して経済を成長させていく」という考え方をしている。

 実際に日本では2013年以降、日銀が金融緩和を行って民間銀行の国債を買い取り、国民に返す必要のある負債は急速に減少しつつある。2020年3月末現在、すでに日本国債の47.2%は政府の子会社である日銀が所有していて、このぶんは政府が返済や利払いを行う必要はないのだ(図77を参照)。財務省も2002年4月に格付け会社ムーディーズが日本国債の格下げを行ったことに対して、「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」と抗議する意見書を送付しており、MMTを持ち出さなくても日本政府の財政を握る財務省自身が国債の破綻を否定しているのだ。

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 デフレ期の国債発行を認めながら積極財政を推進するMMTは税金についてどのように見ているだろうか。若手の経済評論家として注目される森永康平氏の著書『MMTが日本を救う(宝島社、2020年)によれば「税によって購買力を奪い、総需要を減少させることでインフレを抑制させる」と説明されている。

 例えば、所得税累進課税制度は富裕層から多くの税金を徴収し、貧困層からは最低限の税金だけを徴収している。これは単純に貧富の格差を埋めるだけでなく、不況のときは税収が減ってインフレのときは税収も増えていくので、税収が自然と景気に連動していくような総需要の調整機能を果たすことにもなるだろう。

 しかし、MMTでは悪い税金も存在するとしている。その一つ目が社会保障税、二つ目が消費税、三つ目が法人税だ。特に消費税について、国民はモノやサービスを購入することで生活の質を向上させているのであり、国が消費税を課して国民の購買力を奪うのはおかしいと主張している。この点に関しては筆者も同感である。

 

 だが、MMTを推進する人物が藤井聡氏、三橋貴明氏、西田昌司氏、安藤裕氏など自民党の関係者ばかりなのが気になるところだ。9月14日に実施される自民党総裁選では菅義偉氏、岸田文雄氏、石破茂氏の3人が立候補したが、消費税廃止を掲げる安藤氏は総裁選に何故出馬しなかったのだろうか。安藤氏は自民党総裁を目指さない限り、本音としては増税を容認していると批判されても仕方がないだろう。

 法人税所得税最高税率を引き上げてデフレ期の国債発行を認めれば消費税を廃止することは可能だが、それを決断するのは日本政府であってMMTが消費税廃止の起爆剤になるかどうかは疑問に残るように思う。

 

 次の衆院選は早ければ今年の10月25日に実施すると予想されているが、仮に自民党が大幅に議席を減らしたとしても日本維新の会を与党入りさせて強引に政権を続けてくるだろう。そこで、野党は消費税廃止を掲げて選挙に臨むことを強く要望したい。国民民主党の玉木代表は9月2日の記者会見で、立憲民主党の枝野代表が消費税や所得税の減税を掲げることに前向きな意向を示したのに対し、非常に良いことだと歓迎した。消費税を将来的に15~20%まで引き上げたい自民党に選挙で勝つためには、MMTに基づいた反緊縮的な政策が必要なのである。

 

 

<参考資料>

藤井聡MMTによる令和「新」経済論 現代貨幣理論の真実』(晶文社、2019年)

三橋貴明財務省が日本を滅ぼす』(小学館、2017年)

 

国民経済計算 2020年4-6月期2次速報値

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2020/qe202_2/gdemenuja.html

人口動態総覧の年次推移

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai19/dl/h1.pdf

官房長官「子ども産んで貢献を」 福山さんの結婚うけ

https://www.asahi.com/articles/ASH9Y621MH9YUTFK00R.html

労働力調査 長期時系列データ

https://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.html

民間給与実態統計調査結果

https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/jikeiretsu/01_02.htm

アメリカの7月失業率 10.2% 3か月連続で改善

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200807/k10012557581000.html

ドイツの人口・就業者・失業率の推移

https://ecodb.net/country/DE/imf_persons.html

OECD Data Real GDP forecast

https://data.oecd.org/gdp/real-gdp-forecast.htm

国債等の保有者別内訳(令和2年3月末)

https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/appendix/breakdown.pdf

外国格付け会社宛意見書要旨

https://www.mof.go.jp/about_mof/other/other/rating/p140430.htm

枝野氏の消費減税発言歓迎 国民・玉木氏

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020090201190&g=pol

2017年2月28日発売「消費税の歴史と問題点を読み解く」

消費税収の86%が法人税減税に消えている」など、2017年2月までの当ブログの記事をまとめ、大幅に加筆した新書が同年2月28日に発売されました。

興味を持っていただいた方は、書店やAmazon等で購入してもらえると有り難いです。

 

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目次

第1章 消費税の歴史(近代史から橋本内閣まで)

第2章 消費税の歴史(小泉内閣から安倍内閣まで)

第3章 増税グローバリズムのここがおかしい!

第4章 世界の消費税、軽減税率、所得税の負担率

第5章 消費税は社会保障に使われていない

 

内容紹介

 消費税は身近な税金である。しかし国税のなかで消費税は滞納金が多く、増税をしていくにつれて滞納額が増加するという問題点はあまり知られていない。また、消費税引き下げの議論はない一方で、法人税減税は行われている。

 本書では、消費税の導入から増税が繰り返される日本の歴史、欧米諸国との比較、消費税増税についての問題点を明らかにする。消費税に関して改めて整理し、増税後、国民の生活にどのように影響していくのか考察していく。

 

著者 大谷 英暉  ISBN 978-4-344-91106-2

新書186ページ 価格880円

 

 

消費税の歴史と問題点を読み解く

http://www.gentosha-book.com/products/%E6%B6%88%E8%B2%BB%E7%A8%8E%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2%E3%81%A8%E5%95%8F%E9%A1%8C%E7%82%B9%E3%82%92%E8%AA%AD%E3%81%BF%E8%A7%A3%E3%81%8F/

 

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