消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

今こそ知りたい「消費税増税と法人税減税」の関係

※この記事は2019年9月28日に更新されました。

 

消費税収の78.1%が法人税減税の穴埋めに消えている

 来月からとうとう消費税が10%に増税されてしまうが、社会保障に使われるはずの消費税収はほとんどが法人税減税の穴埋めに消えている事実をどれほどの人が知っているだろうか?

 

 日本では消費税が導入された当時から法人税減税が急速に行われていて、法人税の基本税率は1984~86年度の43.3%から2018年度の23.2%に引き下げられ、国税地方税を合わせた法人実効税率も、1984~86年度の52.92%から2018年度の29.74%まで引き下げられている。

 1989~2018年度まで日本人が払った消費税は計371.9兆円なのに対し、法人税は国と地方合わせて、税収が29.8兆円であった1989年度と比較すると計290.4兆円も減収しており、これは消費税収の78.1%が法人税減税の穴埋めに消えた計算になる(図87を参照)。ちなみに、図87はしんぶん赤旗からの引用だが、日本共産党の機関紙が最も消費税増税に対して厳しい批判をしているのは皮肉な話である。

 また、経団連の榊原名誉会長は法人実効税率を25%に引き下げるよう政府に提言しており、安倍政権が景気を悪化させても消費税10%増税を強行するのは、法人税の大幅な減税によって税収が減ることを見越しているからだろう。

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 経団連法人税減税を推進する理由について「企業の設備投資を増やす」と言っているが、法人税を引き下げても設備投資が増加するとは限らないのが現実だ。国民経済計算の民間企業設備投資(実質値)を見ると、法人税が高かった1977~1997年の20年間では2.99倍も増加したのに対し、法人税減税が繰り返されてきた1997~2017年の20年間では1.17倍しか増加していない(図88を参照)。

 1977~1997年は一般的に日本が安定成長していた時代だと言われているが、1987~91年のバブル景気を除けば1979~80年の第二次オイルショックや1985~86年の円高不況、1992~94年のバブル崩壊など経済的に不安定な時期も多かった。

 それにも関わらず設備投資が増加したのは法人税が今より高かったことにより、企業が税引き前利益を減らして投資や人件費、交際費などに回していたからではないだろうか。

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法人税減税よりも海外進出企業に対して課税を行うべき

 更に、経団連は「法人税増税すると日本から企業が逃げ出す」と言うが、経産省の海外事業活動基本調査(2017年度)では海外に進出する企業に対して移転を決定した際のポイントについて3つまでの複数回答で聞いたところ、法人税が安いなどの「税制、融資等の優遇措置がある」を選択した企業は8.0%と一割にも満たなかった(図89を参照)。

 もし、企業の国外流出を防ぎたいのであれば、法人税減税よりも海外に進出する企業に対して課税を行うべきである。前述の海外事業活動基本調査によれば、海外に拠点を置いて活動する企業の数を表した現地法人企業数は1987年度の6647社から2017年度の25034社まで約3.8倍も増加していて、法人税の高い時代のほうが企業は国内で仕事をしていたのだ(図90を参照)。

 また、企業が海外進出を決定した理由としてトップに挙げたのは「現地の製品需要が旺盛または今後の需要が見込まれる」の68.6%だった。つまり、法人税を減税するよりも消費税を廃止して個人消費による需要を創出すれば、企業が国内に留まってくれる可能性が高いということだろう。

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 海外では米国のトランプ政権が2018年に連邦法人税率を35%から21%に引き下げた一方で、中国など海外からの輸入品の関税を引き上げて税収を増やそうとしている。トランプ氏は政治家として問題の多い人物だが貿易の保護主義を推進し、法人税減税の財源を消費税の導入に頼らなかったことは高く評価すべきだろう。

 それに対し、日本の安倍政権はトランプ氏との交渉で米以外の農産物の関税を全て撤廃しようとしている。国民に対しては消費税増税を強要する一方で、グローバル企業に対しては法人税減税や関税撤廃で優遇したいというわけだ。「もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」という発言からもわかる通り、安倍首相は日本の国益について一切考えていないのだろう。

 

 

消費税廃止と法人税増税国債発行こそ必要な政策である

 この他にも、財務省が言う消費税引き上げのメリットの一つとして、「法人税収は景気に左右されやすいが、消費税収は経済状況に関係なく安定した財源」というものがある。確かに、財務省の一般会計税収の推移を見ると、国の法人税収は1989年度の19.0兆円とバブル期にピークを迎えてその後は減少し、2018年度の法人税収は12.3兆円になっている。

 だが、法人企業統計によれば企業の経常利益は1989年度の38.9兆円から2018年度の83.9兆円まで約2.2倍も増加し、法人税収が減少する一方で経常利益はバブル崩壊後も増え続け過去最高を更新しているのだ(図91を参照)。ちなみに、2018年度は売上高が前年比マイナス0.6%だったにも関わらず、人件費を削減している影響なのか経常利益は増加に転じている。

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 もし、2018年度の経常利益に1989年当時の税率(40%)が適用された場合、単純比較で法人税収は41.0兆円にものぼっていたことが予想される。これは2018年度の法人税収と消費税収を合わせた30.0兆円より多いため、法人税率を一昔前の水準に戻せば消費税を廃止しても社会保障費を捻出することは可能なのだ。

 その上、リーマンショックのような金融危機が発生して法人税収が減少したら、国債発行や財政出動などの景気対策で経済成長を促して税収を増やせば良いだろう。例えば、安倍政権は2025年度までに国の収入と支出の釣り合い状態を表す「プライマリーバランス基礎的財政収支、以下PB)」を黒字化させる目標を掲げているが、PBを改善する方法は消費税増税や歳出削減ではなく経済成長こそが有効である。

 実際に、図92を見ると1980年代以降の名目GDP成長率とPBには相関関係があることが確認され、消費税を廃止してもデフレを脱却すれば自然にPBは改善していくだろう。そして、日本が本当の意味でデフレを脱却するためには消費税廃止と法人税増税国債発行こそ必要な政策なのである。

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<参考資料>

消費税と法人3税の減収額の推移 2018/11/1

http://nam-students.blogspot.com/2018/11/2018111.html

「日本も法人減税を」 経団連は25%要望

https://www.sankei.com/economy/news/171220/ecn1712200038-n1.html

国民経済計算 2019年4-6月期 2次速報値

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2019/qe192_2/gdemenuja.html

消費への罰と、利益への罰

https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12412460015.html

海外事業活動基本調査

https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kaigaizi/index.html

「米法人税率21%」決着 税制改革、成立の公算

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24734550W7A211C1MM0000/

報ステ】“ウィンウィン”強調 日米貿易協定合意

https://www.youtube.com/watch?v=SFpFJTn5gis

平成30年度 法人企業統計調査

https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/results/h30.pdf

一般会計税収の推移

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/010.pdf

日本の基礎的財政収支の推移

https://ecodb.net/country/JP/imf_ggxcnl.html

消費税は国税の中で最も滞納の割合が多い

※この記事は2019年9月14日に更新されました。

 

国税滞納のうち57.3%が消費税で占められている

 消費税が10%に増税されるまで残り2週間余りとなってしまったが、今こそ「消費税は国税の中で最も滞納の割合が多い」という事実について知るべきではないだろうか。「消費税になぜ滞納金が発生するのか?」については、消費税という税制の仕組みを理解する必要がある。

 私たちが買い物をするとき、レジでお金を支払っているため、消費税を納めているのは消費者だと思っている方も多いだろう。だが、これは大きな誤解で、実際に消費税を納める義務があるのは事業者だ。事業者は、決算や確定申告の際に、一定の計算による消費税額を国などに納付する義務があり、そこで消費税を販売価格に上乗せ(転嫁)することが認められている。

 

 しかし、販売価格に上乗せされた消費税を、モノを買うときに消費者が負担するのは事業者が値引きしていない場合で、中小・零細企業の中には少しでも商品を安く売るために、消費税を価格に転嫁できないこともあり、結果的に自腹を切って納税する例が少なくない。その影響もあって消費税は国税の中で最も滞納額が大きく、2018年度に発生した消費税の滞納税額は3521億円と、国税全体の滞納額(6143億円)における57.3%を占めている。

  消費税は法人税所得税と違って、年間売上高が1000万円以上の場合、事業者が赤字でも納税しなければならず、滞納税額が減らないのはそれだけ消費税を納められない企業が多いからである。消費税は事業者が預かる「間接税」ではなく、事業者が納める「直接税」と言ったほうが正しいだろう。

 

 国税の新規発生滞納税額は1992年度の1兆8903億円をピークに減少しているが、これは主に所得税法人税相続税の滞納が減ったからで、消費税だけは依然として滞納額が多いのだ(図85~86を参照)。ちなみに、図85を見ると「消費税の滞納額も1998年から減少しているのでは?」と思うかもしれないが、国税全体に占める滞納額の割合は1990年度の11.1%から2018年度の57.3%まで増加している。

 更に、消費税の滞納額は1996年から98年度、2013年から15年度へと税率が引き上げられた時期に増えており、2019~20年度は10%増税の影響で消費税を納められない事業者が増加するのは明白である。

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消費税という税制に欠陥があるから滞納が発生する

 だが、国税庁は消費税の滞納が増えているのを問題視するどころか、「自営業者=脱税」のイメージを作ることに必死だ。

 例えば、少し古いが1999年11月25日には前年の1998年に消費税の新規発生滞納税額が過去最多になったことを受けて、「消費税は消費者からの預り金的な性格を有する税であるという趣旨の広報活動を更に徹底する必要がある」という通知を出している。税金の問題に関心を持っている方なら、一度は「消費税は消費者からの預り金」という言葉を聞いたことがあるだろう。

 国税庁が子ども向けに広報活動を行っている税の学習コーナーでも、『消費税を通して私たちも納税している』という明らかな間違いを教えている。前述の通り、消費税を納税するのは消費者ではなく事業者であって、子どもたちが『消費税を通して私たちも納税している』という誤解を持つことは、逆に言えば「消費税を納められない事業者は悪質業者」と偏見を助長することにもつながりかねない。

 

 国税庁だけでなくマスコミでも、2001年5月18日の産経新聞で「消費税は私たち庶民が少しでも日本の社会が住みよい、安定した姿になりますようにとの願いから必死に納めているものです。その義務を果たさず、納税すべきお金を他に使うのは最も悪質な脱税行為と言っても過言ではありません。どうして新聞はもっと大きく報道して国民に詳しく知らせないのですか? 政治を先頭に消費税滞納の根絶方法を早急に確立することが急務だと思います」と読者から怒りの声を掲載し、「自営業者=脱税」のイメージを作るキャンペーンを展開している。

 

 2008年4月16日の衆議院財務金融委員会でも、民主党下条みつ議員が滞納された国税の徴収を急げとの趣旨で「釈迦に説法ですけれども、源泉所得税とか消費税というのはいわば中小零細事業主の一時預り金でございますよね。税金を払うのにも、目の前に来ることを先に優先して、お客さんが払った消費税や従業員から取った源泉部分を国に払わない。まず手前の自分のところで処理してしまう。この結果、こういう滞納連鎖が起きていると私は思います」と税金滞納者をけん制した。

 

 国会では消費税引き上げについて「増税したら景気が悪くなる」という反対意見はあっても、「滞納金が多いから」という反対意見は聞いたことがない。最近ではやっと山本太郎元議員が演説の中で国税滞納の約6割が消費税で占められていることを指摘してくれたが、もし政治家の方々が「消費税は国税の中で最も滞納税額が多い」という事実を知らずに増税するかどうかの議論を行っているとしたら、あまりにも勉強不足ではないだろうか。

 

 この他にも、国税庁は過去にタレントを起用したポスターで消費税の滞納者を非難したこともあるが、そもそも消費税の滞納額が国税全体の半数以上を占めているのは、どの事業者も売上に対して一律の額が徴収される「消費税」という税制に欠陥があるからだろう。

 消費税増税を批判する際は、景気の問題だけでなく滞納の問題についても取り上げていく必要があると感じる。

 

 

地方の消費税を安くして「地方創生」を実現しよう

 安倍政権が進める経済政策の一つに地方創生がある。地方創生とは、東京一極集中を是正して地方の人口減少に歯止めをかけ、日本全体の活力を上げることを目的にしている。

 2014年には、元岩手県知事の増田寛也氏が「何も対策を取らなければ、2040年までに全国896の自治体が消滅してしまう可能性がある」というレポートをまとめた『地方消滅―東京一極集中が招く人口急減』(中央公論新社)がベストセラーになった。

 その一方で、政府が進めている地方創生は必要なインフラ整備を放棄し、「各地方は自助努力せよ。成功しているところは地方交付税を厚くし、上手くいかないところは自己責任」と、各地域の競争を煽っているだけなのではないかという批判も存在する。

 

 しかし、私が注目しているのは「地方ほど消費税を滞納する割合が高い」という問題だ。各地域の国税局別に滞納額の割合(2017年度)を見ると東京が1.60%なのに対し、金沢が2.01%、広島が2.29%、名古屋が2.37%、大阪が2.41%、高松が2.63%、関東信越が3.01%、仙台が3.47%、福岡が3.52%、札幌が3.53%、熊本が3.67%、沖縄が3.76%と地方ほど割合が高くなることがわかるだろう(表12を参照)。

 消費税10%増税は政府が進めている地方創生にも大きく反する愚策なのである。

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 地方のほうが消費税を滞納する割合が多いのは、東京などの都市部よりも経済的なハンデが大きいことが原因だろう。例えば、雇用者に占める非正規雇用の割合(2017年)は東京都が32.6%なのに対し、滞納の割合が最も多い沖縄県では41.3%だ。都道府県別の平均年収(2018年)も東京都が622万2900円なのに対し、沖縄県は369万4800円(東京都の59.4%)と宮崎県の365万5300円(58.7%)に次いで少ない。子どもの貧困率(2012年)も東京都が10.3%なのに対し、沖縄県は37.5%となっている。

 

 更に、沖縄は全国の米軍専用基地のうち74%を負担してもらっている問題を忘れてはならない。だが、「沖縄の経済は米軍基地に依存している」というのも事実ではなく、県民総所得に占める基地関連収入の割合はアメリカ統治下だった1965年の30.4%から2015年の5.3%まで低下している。今後、沖縄が米軍基地に依存しない経済を築くためには、県民総所得を拡大させてこの比率を更に引き下げる必要があるだろう。

 そのためにも政府は消費税率を都道府県別にわけて、東京都は5%、沖縄県は0%、それ以外の地域は3%とすべきだと思っている。地方の消費税が東京より安くなれば、各地域の税負担が減って本当の地方創生が実現するのではないだろうか。

 

 

<参考資料>

小澤善哉 『図解 ひとめでわかる消費税のしくみ』(東洋経済新報社、2013年)

醍醐聰 『消費増税の大罪 会計学者が明かす財源の代案』(柏書房、2012年)

行政監察情報 『滞納防止策の改善求める 消費税滞納額増で国税庁に意見表示』(官庁通信社、1999年)

斎藤貴男 『消費税のカラクリ』(講談社、2010年)

大久保潤、篠原章 『沖縄の不都合な真実』(新潮社、2015年)

 

国税庁 統計情報

https://www.nta.go.jp/publication/statistics/index.htm

平成30年度租税滞納状況について

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2019/sozei_taino/index.htm

暮らしを支える税を学ぼう

https://www.youtube.com/watch?v=AM8Um27CW4Y

砂漠で金を稼げと言うのか?「地方を見捨てた」山本幸三地方創生大臣

http://www.mag2.com/p/money/274082/2

平成29年就業構造基本調査 主要統計表(都道府県)

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200532&tstat=000001107875&tclass1=000001116995

平成30年賃金構造基本統計調査 都道府県別

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450091&tstat=000001011429&cycle=0&tclass1=000001113395&tclass2=000001113397&tclass3=000001113406

子育て貧困世帯 20年で倍 39都道府県で10%以上

https://mainichi.jp/articles/20160218/k00/00m/040/108000c

米軍基地と沖縄経済について

https://www.pref.okinawa.jp/site/kikaku/chosei/kikaku/yokuaru-beigunkichiandokinawakeizai.html

アメリカ大統領選挙2020 バイデン新政権の課題とトランプ大統領の功罪

※この記事は2020年12月8日に更新されました。

 

深刻なコロナ不況からの回復がバイデン新政権の課題

 2020年11月3日に実施されたアメリカ大統領選は、最終的に306人の選挙人を獲得した民主党ジョー・バイデンが勝利した。バイデン氏は「分断ではなく結束を目指す大統領になる」と述べて国民の融和を訴え、当選が確定すれば2021年1月に第46代大統領に就任して民主党が4年ぶりに政権を奪還することになる。その一方で、トランプ大統領は選挙で不正が行われたとして法廷闘争を続ける姿勢を示し、2024年の大統領選に再出馬する可能性も示唆していて今後の対応や支持者の動向が焦点になっている。

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 アメリカの次期大統領であるジョー・バイデンとは一体どのような人物だろうか。バイデン氏は1942年にペンシルベニア州アイルランド系移民の家庭に生まれ、父親の事業の失敗から一時は経済的に厳しい環境も経験した。父親の収入が安定するとカトリック系の私立高校に進み、デラウェア大学を卒業している。高校と大学ではフットボールの名選手として知られていたようだ。

 連邦上院議員に当選した直後に妻と娘が死亡するという悲劇を経て、民主党の重鎮として存在感を高めていたバイデン氏は1987年に大統領選への立候補を表明した。しかし、演説がイギリス労働党党首のコピーであると報道され批判が集まったことで選挙戦から離脱した。バイデン氏は2008年の大統領選にも出馬し、ヒラリー・クリントン氏やバラク・オバマ氏などと争ったが早い段階で離脱を迫られた。

 

 今回の大統領選では2019年4月に出馬を表明したが、予備選が始まる前の候補者間でのテレビ討論会でバイデン氏はよろめいた。民主党の候補者の一人であるカマラ・ハリス氏がバイデンの人種問題に関する過去の言動を批判したからだ。1960年代からアメリカでは貧しい地区と豊かな地区の子供たちを同じ学校で学ばせるための努力が行われてきたが、バイデン氏はこれに反対した過去があった。

 当時は人種問題についての社会通念も今とは違っていた背景があるにも関わらず、バイデン氏はこの批判に反論することができなかった。その影響でハリス氏はバイデンから副大統領候補に選出された。

 

 バイデン氏が大統領になったらどのような経済政策が展開されるだろうか。まず貿易政策では恐らくオバマ時代の自由貿易と比べ、保護貿易寄りになるのではないかと思われる。自由貿易の結果として、中西部にあった多くの工場が海外に移転してブルーカラー層の失業につながったからだ。バイデン氏の勝利が確定してから早速、日本のマスコミは「TPP復帰論」を報じ始めたが、実際にTPP復帰には慎重な立場を示していてブルーカラー層の支持を失わせないためには保護貿易に舵を取るしかなくなっているのが現実のようだ。

 また、税制政策では「富裕層を優遇する税制は必要ない」と述べ、所得税最高税率を37%から39.6%に引き上げるほか、トランプ氏が35%から21%に下げた法人税を28%まで戻すことを公約に掲げている。トランプ陣営は「バイデンの増税によって回復しつつある経済や株式市場は崩壊するだろう」と批判したが、あくまでもバイデン氏の増税は富裕層を対象にしているのであって多くの低所得者や中間層にとっては何も関係がないのだ。

 むしろ、所得税最高税率を引き上げると企業経営者たちの中には「どうせ税金で取られるなら自分が高額の報酬を受けるより、社員に還元したほうがマシだ」と考え、従業員の給料も上昇しやすくなって経済的なメリットが大きいのである。

 

 更に、民主党の候補者たちにとって最大の課題は医療保険であり、バイデン氏はオバマ時代に成立した医療保険制度(オバマケア)を引き継いで、この制度から落ちこぼれている人々を救済する新たな制度の創設を訴えている。

 特に2020年の新型コロナウイルス以降、民主党バーニー・サンダース上院議員などが提唱している国民皆保険制度について支持する声が高まっており、調査会社のモーニングコンサルトと米政治専門紙のポリティコが3月27~29日にかけて実施した世論調査によれば回答者の55%が国民皆保険制度を評価している。コロナ感染による経済的負担を目の当たりにして、国民皆保険社会主義だとして反対してきたアメリカ人も心を動かされ始めたようだ。

 

 その一方で、バイデン新政権には課題も多い。アメリカの民主党はかつて労働組合を有力な支持母体とした政党で、炭鉱夫や自動車の組立工などラストベルトの労働者にも支えられていた。しかし、今の民主党は労働者たちの苦しい生活を直視することよりもLGBTや人種差別の問題などばかりに目を向けていて、そうしたマイノリティの問題にポリティカル・コレクトネス的な見地から関心を寄せる都市部のインテリたちとも密接に結びつくようになったと指摘されている。

 バイデン新政権はLGBTや人種差別の問題だけでなく、2016年の大統領選でトランプ氏に投票したプアホワイト(白人の低所得者層)を経済政策によって救済できるかどうかが課題になってくるだろう。

 

 

2024年の大統領選でトランプが再選される可能性

 また、今回の大統領選では敗北したトランプ氏の動向にも目が離せない。米政治専門紙ポリティコなどが11月24日に公表した世論調査で、2024年の大統領選の候補としてトランプ氏が共和党支持者の中で53%の支持を集めて首位となり、選挙後も依然として圧倒的な人気を保っているからだ。

 しかし、日本でツイッターYahoo!ニュースのコメント欄を見ていると自民党の熱烈な支持者がトランプ大統領を持てはやしているように感じられる。私は2016年に「消費税の歴史と問題点を読み解く」という本を執筆していて大統領選のことも調べていたのだが、当時は安倍首相がヒラリー・クリントン氏と会談したこともあってクリントンを支持する書き込みのほうが圧倒的に多かった。しかし、大統領選後に安倍首相とトランプ氏が親密関係をアピールするようになってからはトランプを高く評価する自民党支持者が急増したのである。

 彼らがトランプを支持する理由は、政策よりもバイデンが大統領になると日本政府と新たな関係を築かなければならないという部分があるだろう。本来の保守ならば、誰がアメリカ大統領になっても日本の国益を追求すべきなのだが、自民党の熱烈な支持者は日本政府が常にアメリカ大統領の顔色を窺っていないと気が済まないようだ。トランプ大統領自身も選挙から約1ヵ月が経ってバイデン政権への移行を認めているにも関わらず、未だに不正選挙だの言い訳している日本の自称保守派は非常に情けなく思う。

 

 とはいえ、日本でトランプを支持している著名人の中で気になっている人物もいる。それは90年代からヒップホップMCとして活動するKダブシャイン氏だ。彼は2020年4月に星野源さんのコラボ動画「うちで踊ろう」に安倍首相(当時)が便乗した際に「ちゃんと歌で政権批判しないから、こういう利用のされ方するんだよ。ポップシンガーの宿命」と批判したことが話題にもなった。

 Kダブシャイン氏がトランプ大統領を支持する理由は、彼がマイノリティのために様々な政策を行っているからだという。例えば、カニエ・ウェストの妻であるキム・カーダシアン氏が働きかけた暴力を伴わない犯罪で投獄された受刑者たちを早期に釈放することを目的とした「ファースト・ステップ・アクト」に署名したり、政治家のはじめ多くの黒人エリートを輩出している歴史的黒人大学(HBCU)のために多額の予算を確保したりした。こうした政策を受けて黒人の中には民主党支持をやめてトランプ支持に乗り換える人が増え、彼らの動きはイギリスが欧州連合から離脱したブレグジットにちなんでBLEXIT(Black Exit)と呼ばれている。

 

 私はトランプ大統領が選挙で勝てなかった理由は新型コロナウイルス対策の予算がまだまだ不足していたことにあると思う。そもそも、アメリカ経済がコロナ前まで好調だったのはトランプ氏がオバマ政権以上に財政出動を行っていたからである。2016~2020年にかけての政府総支出は日本が203.4兆円から253.3兆円まで1.25倍程度の増加なのに対して、アメリカは6兆6487億ドルから9兆8185億ドルまで1.48倍も増加しているのだ(図83を参照)。

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 共和党を熱烈に支持している幸福実現党などは、トランプ政権が法人税所得税を減税したからアメリカ経済が回復したと言っているが、それなら法人税減税を繰り返しているにも関わらずデフレ不況が長らく続いている日本はどうなってしまうのだろうか。

 日本の場合、経団連の要求によって法人税を減税する一方でプライマリーバランス黒字化目標など緊縮財政は維持しており、景気対策として減税や財政出動を推進するトランプ政権とはむしろ対照的だと言えるだろう。景気回復のためには法人税所得税を減税するよりも、財政出動を行ったほうが効果が大きいのは明らかである。

 

 しかし、アメリカの完全失業率は2020年4月の14.7%から2020年11月の6.7%まで7ヵ月連続で改善しているものの、コロナ前である2020年2月の3.5%と比べると高止まりした状況が続いている。

 景気悪化が大統領選を左右したのは今回に限った話ではなく、民主党ビル・クリントンが現職のジョージ・H・W・ブッシュに勝った1992年の大統領選でもアメリカの失業率が1989年の5.3%から1992年の7.5%まで悪化していた(図84を参照)。その点、今回の大統領選は深刻なコロナ不況の真っ只中に実施されたため、現職のトランプ氏にとって非常に不利な選挙だったと言えるだろう。

 トランプ氏は大統領を辞めてもアメリカの政治に影響を与え続けるのは確実で、バイデン新政権が4年間で経済を立て直すことができなければ2024年の大統領選でトランプ氏が再選されるかもしれない。今後も不透明さが続くアメリカの政治の動向について注目していきたいと思う。

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<参考資料>

高橋和夫 『最終決戦 トランプvs民主党』(ワニブックス、2020年)

小川寛大 「南北戦争を知らずして、アメリカを語るなかれ」 『月刊日本』(ケイアンドケイプレス、2020年12月号)

Kダブシャイン 「それでも私はトランプを支持する」(同上)

 

バイデン前副大統領が勝利宣言「分断ではなく結束を」

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201108/k10012700691000.html

TPP復帰に慎重 不透明感漂うバイデン氏の通商政策

https://www.nishinippon.co.jp/item/n/662750/

増税所得再分配のバイデンVS減税テコに成長狙うトランプ

https://www.tokyo-np.co.jp/article/53529

コロナ危機でアメリカ版「国民皆保険」への支持が急上昇

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/04/post-92970.php

トランプ氏の人気は衰えず…4年後の米大統領選、共和党候補として首位の支持53%

https://www.yomiuri.co.jp/world/uspresident2020/20201125-OYT1T50239/

米11月の失業率6.7% コロナ感染急拡大 雇用の回復ペース鈍化

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201204/k10012747301000.html

日本維新の会の政治姿勢と大阪市廃止の住民投票について

※この記事は2020年10月23日に更新されました。

 

公務員バッシングを煽って大阪を停滞させた維新の会

 大阪市選挙管理委員会は9月7日、大阪都構想の是非を問う住民投票について11月1日の投開票とする日程を決めた。しかし、住民投票で賛成票が反対票を上回ったとしても大阪府大阪都になるわけではなく、政令指定都市である大阪市が4つの特別区に分割され大阪市民は自治も権限も失うことになる。そのため、大阪都構想選挙ではなく「大阪市廃止選挙」と表現したほうが適切ではないかと思っている。

 また、大阪維新の会は2015年の住民投票で「今回が大阪の問題を解決する最後のチャンスです。二度目の住民投票の予定はありません」と発言していた。元内閣官房参与藤井聡氏は「今回の住民投票はその構想の中身についての議論を経て決定されたのではなく、ただ単に維新と公明党が自分たちの党勢の維持と拡大のための党利党略上の都合だけで決定してしまった」と述べている。仮に今回の住民投票で再び否決されても維新は三度目、四度目の住民投票を繰り返してくるだろう。

 

 私が疑問に思っているのは大阪市廃止を推進する日本維新の会の政治姿勢である。一言でまとめると、彼らは経済成長して分厚い中間層を生み出してきた戦後日本に対する激しい憎悪が存在するように感じられる。維新の会代表を務めた橋下徹氏は大阪府知事時代の2010年7月6日に「市役所は税金をむさぼり食うシロアリ。即刻解体しないとえらいことになる」と発言したが、たとえ市役所に問題があろうともそれを真摯に解決しようと努力するのではなく、府民を煽動するために市役所をシロアリに仕立て上げるのは非常に問題だろう。

 公務員・公的部門職員の人件費(対GDP比、2014年)は高負担・高負担のデンマークで16.6%、フィンランドで14.2%、小さな政府を志向するアメリカで9.9%、イギリスで9.4%なのに対し、日本は6.0%とOECD加盟国の中でも最低である(図80を参照)。特にリーマンショック新型コロナウイルスのようなデフレ不況のときはむしろ安定雇用として公務員数を増やす必要があり、民間企業の年収が下がっていることを利用して公務員へのバッシングを煽るのは国民を貧困化させたいのかと思ってしまう。

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 日本維新の会には「自民党ネットサポーターズクラブ」のような組織は存在しないが、2000年代以降に台頭してきたB層に向けて積極的な支持を呼び掛けているのが特徴的だ。B層とは自民党が2005年に規定した「具体的なことはよくわからないが、小泉純一郎のキャラクターを支持する層」であり、同年の郵政選挙ではこのB層に向けて「改革なくして成長なし」「聖域なき構造改革」といったワンフレーズ・ポリティクスが集中的にぶつけられた。その点、「日本が不況から抜け出せないのは改革が足りないからだ」と思っている日本維新の会は完全に小泉政権の亜流で、支持者を見ていても自分と異なる意見を受け入れたくない人が多いように感じられる。

 例えば前回、2015年の住民投票では維新が公権力を利用し、大阪市廃止に反対する藤井聡氏をテレビに出演させないよう圧力をかけるのと同時に、熱烈な支持者たちがネット上で藤井氏に対する個人攻撃を行った。維新支持者による誹謗中傷を観察していた経済評論家の三橋貴明氏は「まさにナチス・ドイツの突撃隊そのものにしか見えなかった」という。

 

 私も2011年にYahoo!知恵袋で「教員の長時間労働が問題になっているのに公務員の給料が引き下げられるのはおかしくないですか?」と質問したら、橋下徹氏の熱烈な支持者だと思われる回答者から「民間企業は給与も上がらずサービス残業が当たり前なんだから、週休2日でボーナスも貰える公務員は有り難く思え」と反論された。サービス残業は明らかに労働基準法違反なので会社に抗議すべきだろうが、それを公務員バッシングにすり替えるのは理解に苦しむところだ。

 90年代後半以降にデフレ不況が長引いて民間企業の年収が下がっていることについて、政府の緊縮財政を批判することなく公務員のせいにすると維新支持者になってしまうようである。

 

 2019年の統一地方選挙大阪維新の会は「大阪の成長を止めるな」というキャッチコピーを宣伝して議席を増やした。しかし、維新府政のもとで大阪が経済成長しているというのは本当だろうか?県民経済計算を見ると2006~2016年度における主要都市の県内実質GDPは10年間で東京都が103.9%、兵庫県が102.6%、愛知県が100.6%増加したが、大阪府は98.6%へとやや縮小してしまった(図81を参照)。

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 また、一人当たりの雇用者報酬に関しても2006~2016年度の10年間で東京都が95.5%、兵庫県が94.8%、愛知県が99.2%と全体的に下落しているが、大阪府は94.0%と特に落ち込みが著しいことがわかる。雇用者報酬とは、公務員や民間企業などに勤務する従業員、役員などのあらゆる生産活動により発生した付加価値のうち、その活動を提供した人(雇用者)に対して報酬の総額を表したものである。大阪の経済が停滞しているのは維新の「身を切る改革」で中小企業や製造業への支援策が大幅にカットされ、大阪の製造業の工場が他県や海外に移転した影響が指摘されている。

 大阪府の中小企業振興予算(制度融資預託金を除く)は2007年度の946.2億円から2017年度の78.1億円まで10年間で92%も削減されてしまった。もし、維新が大阪市廃止に向けてキャッチコピーを掲げるなら、「大阪の成長を止めるな」ではなく「大阪の低成長を止めろ」と言うべきではないだろうか。ちなみに、ツイッターなどでは「維新のおかげで地下鉄のトイレが綺麗になった」という書き込みが見られるが、それは大阪市を廃止して財源を大阪府に吸い上げるための選挙対策なのが現実である。

 

 

悪質なレッテル貼りが横行する大阪市廃止の住民投票

 大阪市廃止の住民投票についてツイッターで賛成派の主張を見ていたが、どうも日本維新の会の熱烈な支持者と大阪市廃止の賛成派がほぼ一体化しているように感じられた。例えば、ツイッターなどで「吉村知事のコロナ対応は良かったけど大阪市廃止には反対」とか「維新の政策には賛成できないけど大阪都構想は良いと思う」といった書き込みをほとんど見かけない。また、大阪市廃止の賛成派は必ずと言っていいほど「維新が行政改革を行って、都構想が実現したら大阪が東京みたいに豊かになる」というイメージを振りまいている。今回の住民投票で賛成票が反対票を上回ったら、大阪市が廃止される事実をどうしても隠したいようだ。

 大阪市の廃止について特に賛成派の書き込みが集まっているのはYahoo!ニュースのコメント欄(以下、ヤフコメ)である。例えば、ヤフコメでは「立憲民主党枝野幸男やれいわ新選組山本太郎が反対しているから私は都構想に賛成」という書き込みが見られる。ヤフコメは2013年に問題となった特定秘密保護法でも「民主党社民党が反対しているから私は賛成」という意見が多数だった。ヤフコメで「〇〇が反対しているから賛成」という書き込みが溢れるのは、彼らが都構想の中身について表面的な理解しかしていないからだろう。

 

 私は2010年頃からヤフコメを見ているが、彼らに共通しているのは戦後の一億総中流社会が嫌いで新自由主義や緊縮財政を信奉している姿勢だ。彼らが大阪市廃止に賛成するのも、公務員バッシングを煽って歳出削減を進める日本維新の会にシンパシーを感じているからではないだろうか。

 更に、私の予想通りヤフコメでは大阪市廃止の反対派に対して左翼扱いする書き込みが見られた。これはまるで1950年代に正力松太郎が米国との合作で実施した原子力平和利用キャンペーンで、原発の危険を訴える人間に「左翼」「共産主義者」というレッテルを貼って徹底的に社会から排除したことに通じるものがある。菅政権や維新の熱烈な支持者は大阪市廃止に限らず新自由主義に反対する者をすぐ左翼扱いするが、正力松太郎原発を推進する際に行ったプロパガンダが2020年現在でも繰り返されていると言えるかもしれない。

 この他にも、ヤフコメでは「大阪都構想に反対しているのは既得権益者だ!」といった書き込みも多い。しかし、大阪市以外に住んでいる人には是非とも考えてほしいのだが、もし自分の住んでいる市や町が廃止されて財源が県に奪われるかどうかの住民投票が強行されて、それに反対する意見が既得権益者扱いされたら貴方は怒らないだろうか。私は既得権益という言葉そのものが自分と立場の違う者に対して、ネガティブキャンペーンを行うためのレッテル貼りに使われているように思う。

 

 また、今回の大阪市廃止の住民投票でヤフコメだけでなくマスコミも反対派に対して悪質なレッテル貼りを行っているようだ。例えば、10月7日放送の読売テレビ『かんさい情報ネットten.』で日本共産党の山中智子市議団長が「この構想そのものが財源から財産から権限からむしり取ると言われた方もいましたが、そういうものなので、同じ地球に住む者が宇宙から侵略してきて支配すると言われたら、どの国も自分たちは侵略されたくないというのは同じ思いだろう」と例え話を述べたら、翌日のデイリースポーツが「吉村知事は宇宙からの侵略者?大阪都構想、反対議員の主張がスゴいことに…」とまるで反対派が全員「吉村知事は侵略者」と言っているかのように印象操作したのである。

 しかし、大阪市廃止に反対しているのは日本共産党だけではなく、元内閣官房参与藤井聡氏や大阪自民党などの保守層も多いのだ。大阪市廃止を推進する日本維新の会とそれに反対する大阪自民党の対立を見ていると、今回の住民投票小泉政権以降に台頭してきた新自由主義勢力と大きな政府によって中間層の所得を分厚くしてきた古き良き時代の保守勢力との戦いでもあると痛感する。

 

 

大阪市廃止を正しく理解する人は1割以下という現実

 日本維新の会大阪市を廃止するメリットとして「二重行政の解消」を挙げ、大阪には大阪府大阪市という二つの役所が狭い面積の中で、同じような行政サービスを行い非効率な税金の投資を繰り返してきたと説明している。

 その具体例として、りんくうゲートタワービル(1996年8月竣工)とワールドトレードセンタービル(1995年2月竣工)、グランキューブ(1999年12月竣工)とインテックス大阪(1985年3月竣工)、ドーンセンター(1994年4月設立)とクレオ大阪中央(2001年11月竣工)、府立中央図書館(1996年5月開館)と市立中央図書館(1996年7月開館)を挙げている。しかし、いずれも小泉政権が公共事業の削減を行う2001年以前に作られた施設である。

 

 政府が積極的に公共投資を行っていた90年代の日本は一人当たりの名目GDPランキングで2~6位を推移していたが、2019年にはこれが25位まで転落してしまった(図82を参照)。つまり、小泉政権以降の自民党や維新の会が強引に行政改革を行ったことで国民が貧困化してしまったのだ。もし、二重行政を解消する目的で大阪市の図書館サービスを廃止したら、大阪市の図書館で働いていた職員が所得を失うことになる。「政府や自治体が歳出削減をすると、何となく自分が得をしたように思える」というのは錯覚を利用した緊縮財政のトリックなのである。

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 大阪市長で維新の会代表の松井一郎氏は「大阪の自民党共産党は二重行政の解消プランを示して貰いたい」と言うが、そもそも二重行政は住民サービスを低下させてまで廃止しなければならないほどの悪なのだろうか?大阪市に限らず、行政とは一般に「国」「都道府県」「市町村」という三つのレベルで行われているものであり、日本国民はこの三つの役所(中央政府、県庁、市庁)から様々なサービスを複合的に受けている。つまり、行政とは全ての地域において「三重行政」なのだ。

 

 また、都構想の賛否に熱心な一部の人々を除いて、大阪市民のほとんどが都構想の中身について理解していないのではないかという問題も存在する。例えば藤井聡氏は前回、大阪市廃止の住民投票が行われた翌年の2016年に大阪在住の人々を対象に都構想の内容を正しく知っているのか調査を実施したが、それによると都構想が実現した場合、「大阪市がなくなる」ということを正確に理解している人は回答者252人のうちたったの24人と全体の1割にも満たない実情が浮かび上がった。

 それ以外の人々は「政令指定都市のまま残る」(25.5%)、「廃止されるが、大阪市と同じ力を持つ5つ(当時)の特別区が設置される」(35.8%)など事実と全く異なる選択肢を選んでおり、大阪市という制度が廃止されてなくなることを理解する人が極めて限定的だったことがわかる。ちなみに、正解の「大阪市がなくなる」と答えた人の87.5%が反対票を投じていて、住民投票の賛成派が上回るか反対派が上回るかについては都構想の中身を正しく知る人が増えるか増えないかにかかっていると言えるのだ。

 

 大阪市政令指定都市なので、255億円の「事業所税」や540億円の「都市計画税」、2600億円の「固定資産税」、1600億円の「法人市民税」を使うことができる。ところが、大阪市廃止が決定すれば大阪市の人々はこれらの巨大な予算の多くを大阪市の判断で使う権限を失ってしまうことになるだろう。

 例えば、大阪市には所得の低い家庭の子供たちが学校に通うにあたって一定の支援を行う就学援助制度や中学生までの子供の医療費を無料にする大変手厚い医療保険制度、高齢者が公共交通を非常に安く利用できる敬老パスなど豊富な財源に基づいた社会保障が存在するが、大阪市政令指定都市でなくなればそれらの行政サービスが今の水準で維持していくのができなくなることが真剣に危惧される。

 

 橋下徹氏は2011年6月の政治資金パーティーで「大阪市が持っている権限、力、お金をむしり取る」と発言しており、この一言に都構想の本質が表れていると言えるのではないだろうか。その上、いったん大阪市が廃止され4つの特別区に分割してしまえば、もう一度今のような格好で大阪市を元に戻すことは現実的に不可能である。

 私は大阪市に住んでいるわけではないが、大阪市民にとって損しかない住民投票でこれだけ賛成派と反対派が拮抗しているのは民主主義の危機だと思えてならない。もし、住民投票大阪市廃止が可決されてしまっても他の政令指定都市に「都構想」が飛び火しないことを願うばかりである。

 

 

<参考資料>

適菜収 『安倍政権とは何だったのか』(ベストセラーズ、2017年)

    『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』(講談社、2015年)

藤井聡 『都構想の真実 「大阪市廃止」が導く日本の没落』(啓文社書房、2020年)

薬師院仁志ポピュリズム 世界を覆い尽くす「魔物」の正体』(新潮社、2017年)

三橋貴明 『日本「新」社会主義宣言』(徳間書店、2016年)

大石あきこ 『「都構想」を止めて大阪を豊かにする5つの方法』(アイエス・エヌ、2020年)

安部芳裕 『世界超恐慌の正体』(晋遊舎、2012年)

 

大阪都構想」2度目の住民投票、11月1日に

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63515230X00C20A9AM1000/

大阪市解体構想と政治の腐敗

https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12623103850.html

県民経済計算(2008SNA、平成23年基準計数)

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kenmin/files/contents/main_h28.html

証券用語解説集 雇用者報酬

https://www.nomura.co.jp/terms/japan/ko/A02570.html

「豊かな大阪をつくる」学者の会シンポジウム

https://www.youtube.com/watch?v=zizUe_3D5M4

消費税増税の布石を打つ菅義偉首相と消費税廃止を推進する玉木雄一郎代表

菅首相は消費税を廃止して公営住宅を増やしていくべきだ

 菅義偉氏が9月16日に総理大臣指名選挙を経て第99代の首相に就任した。菅氏は秋田の高校を卒業した後に集団就職で上京し、世田谷のダンボール工場で働きながら大学に通い、そこで労働者の生活環境に対して問題意識を抱いて政治家を志した苦労人だと説明されているが、果たしてそのイメージは本当だろうか?

 

 菅首相は早速、9月10日放送のワールドビジネスサテライトで消費税増税について「引き上げると発言しないほうが良いだろうと思いましたが、しかしこれだけの少子高齢化社会、どんなに私ども頑張っても人口減少は避けることできません。そうした中で将来的なことを考えたらやはり行政改革は徹底して行った上で国民の皆さんにお願いをして、消費税は引き上げざるを得ないのかなということを率直に申しました」と述べている。

 つまり、菅氏は「日本は人口減少で衰退します!だから増税!」という典型的な人口減少衰退論に陥っているのだ。はっきり言って、菅義偉氏の自虐的な経済思想は2010年に菅直人首相が「もう日本は経済成長できないから、大きな不幸がないだけでも有り難い」という意味の最小不幸社会を提唱して、消費税増税を推進したのと同じように感じられる。

 

 しかし、ウクライナルーマニアなどは日本より人口減少のペースが速いにも関わらず、名目GDPは1998~2018年で20倍以上も増加している(図78を参照)。日本のデフレ不況が長期化しているのは人口減少ではなく、90年代以降の自民党が緊縮財政を続けてきたことが原因なのだ。

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 また、菅首相はその後の記者会見で「安倍前首相はかつて『今後10年くらい消費税を引き上げる必要はない』と発言している。私も同じ考えだ」と述べたが、これもすぐ裏切られる可能性が高いだろう。安倍前首相は2012年6月のメールマガジンで「名目成長率が3%、実質成長率が2%を目指すというデフレ脱却の条件が満たされなければ消費税増税を行わないことが重要」と述べていたが、実際にはデフレ脱却前に消費税を増税してしまった。菅政権でも次の衆院選が終わってから増税に向けた議論が始まると思っておいたほうが良いだろう。

 

 だが、日本政府が消費税廃止を躊躇している間にもコロナ不況はどんどん深刻化しつつある。2020年4-6月期の実質GDP成長率は1次速報値のときに年率マイナス27.8%と戦後最悪の落ち込みだったが、2次速報値ではこれが年率マイナス28.1%に悪化してしまった。リーマンショックのときは2009年1-3月期の実質GDP成長率が年率マイナス17.8%で、民間企業の平均年収が2008年の429.6万円から2009年の405.9万円まで対前年比5.5%(23.7万円)も減少したが、これをコロナ不況に当てはめると民間企業の平均年収は2019年の436.4万円から2020年の398.4万円まで対前年比8.7%(38.0万円)も減少することが予想される。

 消費者物価指数を見ても2020年8月のコアコアCPI(食料〔酒類を除く〕及びエネルギーを除く総合)は対前年比マイナス0.4%と消費税増税の影響を含めてもデフレ不況に逆戻りしていることが明らかで、この状況で消費税廃止を提言できないような政治家や経済学者は逆に国民を貧困化させたいのではないかと思ってしまう。

 

 更に、菅首相は2015年4月7日に行われた参議院内閣委員会で山本太郎議員(当時)から「最近の若者は根性が足らぬというふうにお感じになったりしますか」と質問された際に、「根性が足りないということでありましたけれども、やはり自分が何をやるのかと、そういうものをやはりしっかり持って頑張る方が少なくなっていることは、これは事実かなというふうに思っています。ただ、やはり親に頼るとかそういう方が増えてきているのかなという思いを私はしないわけじゃないです」と発言している。

 つまり菅首相は「最近の若者は親に頼ってばかりで、夢のために頑張る人が少なくなっている」と言いたいようだ。菅首相は苦労人と言われているが、高度経済成長期に青春を過ごした1948年生まれの団塊世代であり、努力は必ず報われると思い込んでいる部分があるのかもしれない。

 

 しかし、自民党改憲案の24条には「家族は互いに助け合わなければならない」という条文が新設されている。憲法に家族の助け合い義務を明記するのは、成人しても親と同居するパラサイトシングルを政府が推奨しているということでもある。社会学者の山田昌弘氏は、長引くデフレ不況の影響で賃金が上がらず弱者に転落した若者を親が面倒見ざるを得なくなっていると指摘している。

 また、親に頼らざるを得ない若者が増加しているのは政府の住宅政策が貧弱で一人暮らしができないという背景も存在するのではないだろうか。例えば、全借家に占める社会住宅の割合はオランダが75.0%、オーストリアが57.1%、スウェーデンが50.0%、イギリスが48.1%、フランスが42.2%、デンマークが42.1%、フィンランドが40.6%、イタリアが20.0%、スペインが15.3%なのに対し、日本は14.0%程度でドイツも7.1%だが、日本が住宅政策の貧弱な国の一つであることは事実だろう(表5を参照)。

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 日本で公営住宅が少ないのは国政選挙で住宅政策が争点になったことが一度もなく、住宅は最大の福祉制度だと考える人がほとんどいないことも無関係ではないのかもしれない。貧困問題に取り組むビッグイシュー基金では2014年、住まいの貧困についての調査報告書「若者の住宅問題―住宅政策提案書(調査編)」をまとめた。この調査では、首都圏・関西圏の8都道府県に住む年収200万円未満しかないワーキングプアと呼ばれる層の若者たち1767人(20~39歳の未婚者)に対して、インターネットを通してアンケートを行うというものだった。

 そこで明らかになったのはまず低所得者の雇用形態で、非正規雇用が47.1%、無職が39.1%であり、正規雇用はわずか7.8%に過ぎないという衝撃の事実だった。しかも、彼らのうち親と同居しているのは77.4%であり、実に4人に3人が実家を出られない状況に置かれていることも読み取れた。親との同居の理由(複数回答)については「住宅費を負担できない」が53.7%と高く、「住宅費の負担の軽減のため」も9.3%になっている。つまり、住宅費の負担が大きいため若者世代は実家に住み続けざるを得ないというのが現実なのだ。

 菅政権は携帯電話料金の引き下げを目玉政策に掲げているが、そうした小手先の政策だけでなく少子化対策のためにも消費税を廃止し、公営住宅を増加させていくべきではないだろうか。政府が公営住宅を増やせば、費用の問題で一人暮らしができなかった若者の自立を促すことにもつながると思っている。

 

 

国民民主党は消費税廃止を目玉政策として掲げるべきだ

 次の衆院選は早ければ今年中に実施される予定だが、最近気になっている政治家に国民民主党玉木雄一郎代表がいる。彼は極めて現実的な保守政治家で、憲法について「何も変えない、何も足さない、何も引かないという原理主義的な護憲論は、結果として安倍政権による解釈改憲を許したのです」と述べ、平和主義を再定義する改憲議論が必要だと提言している。

 今年6月に国民民主党に入党した山尾志桜里議員も「憲法9条があるにも関わらず、専守防衛を逸脱し集団的自衛権の一部を認める安保法制は成立してしまった。憲法の本質的役割は権力統制にあるにも関わらず、最も権力が先鋭化する自衛権という実力を現状の憲法9条で統制することができなかった。ならば、憲法の統制力を強化する憲法改正を本気で検討すべきではないか」と述べている。憲法改正についてタブー視しない国民民主党は、ただの護憲政党になってしまった立憲民主党とは一線を画していると言えるだろう。

 

 また、原発に関しても「廃炉を担う人材、技術、財源の問題を含めて現実的な政策を立てなければ、原発ゼロは掛け声だけで終わってしまう可能性もあります」と述べた上で、LNG液化天然ガス)などによる地域内での発電を核としたスマート・コミュニティを推進している。福島第一原発事故から9年半が経過したが、残念ながら国政選挙では原発の是非について全く議論されなくなってしまった。そのため、経済成長を重視しながら現実的な原発ゼロを目指している国民民主党原発に反対する保守派にとっても評価されるべき政党ではないだろうか。

 更に玉木氏は経済評論家の三橋貴明氏との対談で、小泉政権以降の自民党が進めてきた構造改革を批判し、「食料の安全保障を憲法に明記すべき」と発言していて、大きな政府によって中間層の所得を分厚くした1970~80年代の自民党のような政治家だとも言えるだろう。一部では国民民主党日本維新の会が合流する可能性を指摘する人もいるが、農協改革を推進する維新と農業の保護を訴える玉木氏とでは政策に明確な違いが存在するのである。

 

 この他にも、玉木氏は今年1月22日の通常国会習近平国賓来日について、「日本の主権に対する挑戦を含め、中国の覇権主義国際法や民主主義の基本的価値やルールに反する行動を容認するという誤ったメッセージを送ることにならないか」と厳しく批判している。これに対して安倍前首相は「日本と中国は地域や世界の平和と繁栄にともに大きな責任を有している。習主席の国賓訪問もその責任をしっかり果たすとの意思を内外に明確に示す機会としたい」と述べたが、それから新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化したにも関わらず安倍政権は習近平に配慮して3月5日まで中国人の入国禁止を決断できなかった。日本でコロナの感染者を8万人以上も増やしたのは中国からのインバウンドに依存していた安倍政権の責任であり、1月22日の時点で習近平国賓来日を批判した玉木氏は先見性があったと言えるのではないだろうか。

 NHK世論調査によれば2020年9月の時点で国民民主党の支持率は0.1%程度だが、これだけ保守的な政策を打ち出しているのに支持率が伸びないのは日本が「左傾化」していることが原因だと言えるかもしれない。

 

 だが、玉木氏の政策にはまだまだ不十分な部分も多いように感じられる。例えば、少子化対策について結婚したくてもできない方々への支援や、不妊治療の保険適用といった第1子対策にまず力を入れ、そうした政策を前提にしつつ、特に第3子以降の子供に一人当たり1000万円の大胆な経済支援を提案している。しかし、子供を3人以上育てられる家庭は所得に余裕のある中間層や富裕層が多く、「安倍政権の7年8ヵ月とMMT(現代貨幣理論)を検証するの記事でも述べた通り少子化の原因は90年代以降に子育て世代の男性が貧困化し、生涯未婚率が上昇しているからだろう。

 玉木氏は少子化を改善させたフランスの家族手当が第2子から支給され、第3子から大きく加算される制度になっていることを取り上げているが、フランスは日本より経済成長率が高く1998~2018年の名目GDP成長率は日本が年間平均0.13%なのに対して、フランスは年間平均2.94%にものぼっている(図79を参照)。

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 フランスでは子供が3歳になったときから義務教育が始まるなど、対GDPの公教育支出の割合(2016年)が4.5%と日本の2.9%より多く、政府の総支出も1998~2018年にかけて日本が0.98倍と縮小していったのに対し、フランスは1.84倍まで拡大を続けている。つまり、日本で少子化を改善させるためには福祉政策だけでなく、消費税廃止などの積極財政で子育て世代の所得を引き上げる必要があるのだ。

 玉木氏は今年7月にドイツやイギリスが新型コロナウイルス景気対策として付加価値税の引き下げを決定したことを受けて、「消費税を5%に減税するだけでなく、半年間0%なども検討したい」とツイッターで述べた。だが、消費税廃止を優先的に掲げるれいわ新選組と比較すると国民民主党の減税政策はまだ弱々しく、玉木氏が本当に消費税廃止を実現したいのであれば目玉政策としてもっと高らかに訴えるべきではないだろうか。

 

 また、玉木氏は「とにかく最優先で子育てや教育に国が大きく財政支援を投じる必要がある」として子ども国債の発行を提唱し、新型コロナウイルス景気対策としても国債発行を財源に真水100兆円の財政出動を行うとしている。財務省も2002年に格付け会社ムーディーズが日本国債の格下げを行ったときに、「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」と抗議する意見書を送付しており、デフレ期に国債を発行して社会保障の財源を捻出するのは真っ当な経済政策だと言えるだろう。

 最近では米国民主党の最年少下院議員であるオカシオ=コルテス氏などがインフレ率を調整しながら国債を発行して経済を成長させていくMMT(現代貨幣理論)を支持しており、日本の野党もMMTに基づいた反緊縮的な政策を積極的に取り入れる必要があるのではないだろうか。

 私はもともとれいわ新選組山本太郎代表を応援していたが、彼一人だけが消費税に反対していても消費税廃止は実現できないだろう。そのため、現職の国会議員として消費税廃止や財政出動を推進する国民民主党玉木雄一郎代表を応援しているのである。

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<参考資料>

鈴木哲夫 『ブレる日本政治』(ベストセラーズ、2014年)

藤田孝典 『貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち』(講談社、2016年)

山田昌弘 『なぜ日本は若者に冷酷なのか』(東洋経済新報社、2013年)

玉木雄一郎 『令和ニッポン改造論』(毎日新聞出版、2019年)

      『#日本ヤバイ』(文藝春秋、2019年)

山尾志桜里 『立憲的改憲』(筑摩書房、2018年)

 

菅氏 消費税「将来は引き上げ必要」

https://news.yahoo.co.jp/articles/42b07b84638b1e731137dfdf0f8d8370f3798e5e

消費増税、10年は不要 菅氏「安倍首相と同じ考え」

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020091100595&g=pol

コロナでGDP年率27.8%減 平均給与38万円ダウンの懸念

https://news.yahoo.co.jp/articles/1b7617d1000c956966714f8176539aab4dee0217

国民経済計算 2020年4-6月期2次速報値

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2020/qe202_2/gdemenuja.html

民間給与、7年ぶり減少 平均436万円

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020092901176&g=soc

消費者物価指数 時系列データ

https://www.stat.go.jp/data/cpi/historic.html

第189回国会 参議院 内閣委員会 第4号 平成27年4月7日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=118914889X00420150407&current=1

橋本駅北口デッキ れいわ新選組 山本太郎 2020年9月9日

https://www.youtube.com/watch?v=YLclp0y5i14

三橋貴明×玉木雄一郎構造改革って考え方が古いよね

https://www.youtube.com/watch?v=PcUrphzuXuw

【詳報】首相「家族で楽しめるIR」 カジノ利権批判に

https://www.asahi.com/articles/ASN1Q32C2N1PUTFK012.html

NHK世論調査 内閣支持率 NHK選挙WEB

http://www.nhk.or.jp/senkyo/shijiritsu/

Nominal GDP forecast

https://data.oecd.org/gdp/nominal-gdp-forecast.htm

フランスの合計特殊出生率の推移

https://ecodb.net/country/FR/fertility.html

人口動態調査 e-Stat 政府統計の総合窓口

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450011&tstat=000001028897

教育への公的支出、日本は35か国中最下位

https://resemom.jp/article/2019/09/11/52413.html

安倍政権の7年8ヵ月とMMT(現代貨幣理論)を検証する

経済成長率を引き下げて少子化を加速させた安倍政権の大罪

 8月28日、安倍首相が辞任する意向を表明した。そこで今回は安倍政権の7年8ヵ月の経済状況について振り返ってみたいと思う。国民経済計算を見ると、実質GDPは第二次安倍政権が始まった2012年10-12月期の498.1兆円から2020年4-6月期の484.8兆円へと逆に減少してしまった。これは新型コロナウイルスの影響だと思われがちだが、実際には消費税率を2段階も引き上げたことによって個人消費が極端に落ち込んだことが原因だろう。

 家計最終消費支出(持ち家の帰属家賃を除く)は消費税が5%だった最後の時期である2014年1-3月期の247.7兆円から2020年4-6月期の205.6兆円まで6年間で42.1兆円も下落している(図72を参照)。日経平均株価が2万円を超えても景気回復が実感できないのはこうした背景があるようだ。

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 物価変動の影響を含めた名目GDP成長率も安倍政権前期(2013年1-3月期~2015年4-6月期)は年率平均3.11%にのぼっていたのに対し、安倍政権中期(2015年7-9月期~2017年10-12月期)は年率平均1.47%、安倍政権後期(2018年1-3月期~2020年4-6月期)は年率平均マイナス2.95%と後半になるほど尻すぼみになっていったことがわかる(図73を参照)。安倍政権の中でまともに経済成長していたのは最初の1~2年だけなのだ。

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 また、マスコミもあまり取り上げていないが、安倍政権の罪の一つと言えるのが出生数を大幅に減らして少子化を加速させたことだろう。年間の出生数は2012年の103.7万人から2019年の86.5万人まで7年間で17.2万人も減少してしまったのだ(図74を参照)。先進国の中で最も公的な教育予算が少なく、毎日消費される食料品にまで8%の税率が適用される日本では20年以上続いたデフレ不況が少子化にも影響しているのではないだろうか。

 次の首相として最有力候補になっている菅義偉氏は2015年9月に人気男性歌手と女優が結婚した際に、「この結婚を機に、ママさんたちが一緒に子供を産みたいとか、そういう形で国家に貢献してくれたらいいなと思います」と発言した。菅氏はどうやら日本で少子化が進んだのは若者が結婚せず女性が子供を産まないからだと思っているようだ。実際には、90年代以降に子育て世代の男性が貧困化したことが少子化の原因であるのは『日本でタブー視されている男性の貧困問題』の記事でも述べたが、菅氏が首相になっても過去の自民党政権が繰り返してきた緊縮財政を転換せず、少子化問題について「結婚できない若者や女性が悪い」という自己責任論を煽ってくることは確実だろう。

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高齢者のワーキングプアが急増している実態を共有すべき

 安倍政権の成果として完全失業率が低下し、日本の雇用環境が大幅に改善したことが挙げられている。しかし、就業者数の内訳を見ると非常に問題があるように思う。まず、2012~2019年の就業者数について性別で見ると女性が334万人も増加したのに対し、男性は111万人程度(女性の25%)の増加に留まっている。男性は女性ほど雇用改善の恩恵を受けていないのだ。

 その上、男性の中でも2012~2019年にかけて15歳から64歳までの就業者数は合計で57万人減少したのに対し、65歳以上は166万人も増加している。安倍政権が自画自賛する雇用の改善は女性や高齢者が働かざるを得なくなったことで成り立っていると言って良いだろう。

 

 更に、65歳以上の男性の就業者数が増加する一方で、年収100万円以下で働く男性貧困層は2000年の49万9517人から2018年の97万554人まで増加して過去40年間で最多となっている(図75を参照)。男性貧困層の年齢分布は公表されていないため、筆者は当初年収100万円以下の増加について子育て世代の男性の貧困化が原因だと考えていたが、就業者数の内訳を見る限り男性貧困層が急速に増加しつつある背景には低賃金で働かされている高齢男性の実態が存在するようだ。

 今の65歳以上の男性は1970~90年代にかけて懸命に働いて家族を養ってきた世代で、そうした方々を老骨にムチ打って低賃金で働かせることが安倍政権の成果だと言って良いのだろうか。

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 また、完全失業率の低下についても景気回復より2010年以降の人口減少による影響が大きいだろう。図76を見ると失業率は2008年10月の3.8%から2009年7月の5.5%までは悪化していたものの、それ以降は人口減少と並行して緩やかに改善してきたのがわかる。

 最近は新型コロナウイルスの影響で2020年7月に2.9%とやや悪化する傾向が見られるが、それでもアメリカの10.2%と比較すると低い状態が続いている。人口が減少して高齢化が進むと介護の人手不足が深刻化して景気に関係なく完全失業率が低下しやすくなるのではないだろうか。

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 「人口が減少して失業率も改善する」という現象は難民を受け入れる前のドイツでも発生していて、ドイツの人口は2005~2011年に8134万人から8028万人へと約106万人減少し、完全失業率は11.0%から5.9%まで低下した。ドイツは日本に次いで経済成長率の低い国で、リーマンショック翌年である2009年の実質GDP成長率はマイナス5.6%と、金融危機の当事国だったアメリカのマイナス2.5%よりも悪化しており、決して好景気が失業率改善の主因ではないようだ。

 とはいえ、2014年以降も完全失業率が低下したことで安倍政権は「消費税を増税しても景気が良くなる」と国民に錯覚させるきっかけを作ったとも言えるだろう。今後、財務省新型コロナウイルスに乗じて消費税を15~20%まで引き上げることを提案するかもしれないが、その際に「安倍政権で就業者数が大幅に増加したから増税は景気に悪影響を与えない」と言ってくる可能性が高いと思われる。そのため、消費税増税の反対派は子育て世代の男性が貧困化し、高齢者のワーキングプアが急増している実態を共有する必要があるのだ。

 

 

自民党に勝つためにはMMTに基づいた反緊縮的な政策が必要

 更に、安倍政権の末期に話題となった経済理論にMMT(現代貨幣理論)がある。MMTとはアメリカの経済学者であるランダル・レイ教授が提唱した理論で、「先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは起こらない」「インフレ率を調整しながら、財政赤字を拡大して経済を成長させていく」という考え方をしている。

 実際に日本では2013年以降、日銀が金融緩和を行って民間銀行の国債を買い取り、国民に返す必要のある負債は急速に減少しつつある。2020年3月末現在、すでに日本国債の47.2%は政府の子会社である日銀が所有していて、このぶんは政府が返済や利払いを行う必要はないのだ(図77を参照)。財務省も2002年4月に格付け会社ムーディーズが日本国債の格下げを行ったことに対して、「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」と抗議する意見書を送付しており、MMTを持ち出さなくても日本政府の財政を握る財務省自身が国債の破綻を否定しているのだ。

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 デフレ期の国債発行を認めながら積極財政を推進するMMTは税金についてどのように見ているだろうか。若手の経済評論家として注目される森永康平氏の著書『MMTが日本を救う(宝島社、2020年)によれば「税によって購買力を奪い、総需要を減少させることでインフレを抑制させる」と説明されている。

 例えば、所得税累進課税制度は富裕層から多くの税金を徴収し、貧困層からは最低限の税金だけを徴収している。これは単純に貧富の格差を埋めるだけでなく、不況のときは税収が減ってインフレのときは税収も増えていくので、税収が自然と景気に連動していくような総需要の調整機能を果たすことにもなるだろう。

 しかし、MMTでは悪い税金も存在するとしている。その一つ目が社会保障税、二つ目が消費税、三つ目が法人税だ。特に消費税について、国民はモノやサービスを購入することで生活の質を向上させているのであり、国が消費税を課して国民の購買力を奪うのはおかしいと主張している。この点に関しては筆者も同感である。

 

 だが、MMTを推進する人物が藤井聡氏、三橋貴明氏、西田昌司氏、安藤裕氏など自民党の関係者ばかりなのが気になるところだ。9月14日に実施される自民党総裁選では菅義偉氏、岸田文雄氏、石破茂氏の3人が立候補したが、消費税廃止を掲げる安藤氏は総裁選に何故出馬しなかったのだろうか。安藤氏は自民党総裁を目指さない限り、本音としては増税を容認していると批判されても仕方がないだろう。

 法人税所得税最高税率を引き上げてデフレ期の国債発行を認めれば消費税を廃止することは可能だが、それを決断するのは日本政府であってMMTが消費税廃止の起爆剤になるかどうかは疑問に残るように思う。

 

 次の衆院選は早ければ今年の10月25日に実施すると予想されているが、仮に自民党が大幅に議席を減らしたとしても日本維新の会を与党入りさせて強引に政権を続けてくるだろう。そこで、野党は消費税廃止を掲げて選挙に臨むことを強く要望したい。国民民主党の玉木代表は9月2日の記者会見で、立憲民主党の枝野代表が消費税や所得税の減税を掲げることに前向きな意向を示したのに対し、非常に良いことだと歓迎した。消費税を将来的に15~20%まで引き上げたい自民党に選挙で勝つためには、MMTに基づいた反緊縮的な政策が必要なのである。

 

 

<参考資料>

藤井聡MMTによる令和「新」経済論 現代貨幣理論の真実』(晶文社、2019年)

三橋貴明財務省が日本を滅ぼす』(小学館、2017年)

 

国民経済計算 2020年4-6月期2次速報値

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2020/qe202_2/gdemenuja.html

人口動態総覧の年次推移

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai19/dl/h1.pdf

官房長官「子ども産んで貢献を」 福山さんの結婚うけ

https://www.asahi.com/articles/ASH9Y621MH9YUTFK00R.html

労働力調査 長期時系列データ

https://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.html

民間給与実態統計調査結果

https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/jikeiretsu/01_02.htm

アメリカの7月失業率 10.2% 3か月連続で改善

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200807/k10012557581000.html

ドイツの人口・就業者・失業率の推移

https://ecodb.net/country/DE/imf_persons.html

OECD Data Real GDP forecast

https://data.oecd.org/gdp/real-gdp-forecast.htm

国債等の保有者別内訳(令和2年3月末)

https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/appendix/breakdown.pdf

外国格付け会社宛意見書要旨

https://www.mof.go.jp/about_mof/other/other/rating/p140430.htm

枝野氏の消費減税発言歓迎 国民・玉木氏

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020090201190&g=pol

2017年2月28日発売「消費税の歴史と問題点を読み解く」

消費税収の86%が法人税減税に消えている」など、2017年2月までの当ブログの記事をまとめ、大幅に加筆した新書が同年2月28日に発売されました。

興味を持っていただいた方は、書店やAmazon等で購入してもらえると有り難いです。

 

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目次

第1章 消費税の歴史(近代史から橋本内閣まで)

第2章 消費税の歴史(小泉内閣から安倍内閣まで)

第3章 増税グローバリズムのここがおかしい!

第4章 世界の消費税、軽減税率、所得税の負担率

第5章 消費税は社会保障に使われていない

 

内容紹介

 消費税は身近な税金である。しかし国税のなかで消費税は滞納金が多く、増税をしていくにつれて滞納額が増加するという問題点はあまり知られていない。また、消費税引き下げの議論はない一方で、法人税減税は行われている。

 本書では、消費税の導入から増税が繰り返される日本の歴史、欧米諸国との比較、消費税増税についての問題点を明らかにする。消費税に関して改めて整理し、増税後、国民の生活にどのように影響していくのか考察していく。

 

著者 大谷 英暉  ISBN 978-4-344-91106-2

新書186ページ 価格880円

 

 

消費税の歴史と問題点を読み解く

http://www.gentosha-book.com/products/%E6%B6%88%E8%B2%BB%E7%A8%8E%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2%E3%81%A8%E5%95%8F%E9%A1%8C%E7%82%B9%E3%82%92%E8%AA%AD%E3%81%BF%E8%A7%A3%E3%81%8F/

 

Amazonへのリンク

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