消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

日本の安全保障を強化するためには、消費税引き下げと財政出動を実施するしかない

国民が物価上昇に困っているにも関わらず防衛増税を目論む経団連

 2024年2月15日に発表された2023年のGDP成長率は、物価の変動を除いた実質がプラス1.9%、物価の変動を含めた名目がプラス5.7%だった。特に、年間の名目GDP成長率が5%を超えるのはバブル末期だった1991年以来のことで、名目から実質を引いたGDPデフレーターは3.8%と1980年以来の高さとなっている。

 その一方で、四半期別の実質GDP成長率は2023年7~9月期が年率マイナス3.3%、同年10~12月期が年率マイナス0.4%と2期連続のマイナス成長だった。2023年10~12月期の実質GDP成長率の内訳を見ると、民間企業設備投資が年率マイナス0.3%、政府最終消費支出が年率マイナス0.5%、家計最終消費支出(帰属家賃を除く)が年率マイナス1.2%、公的固定資本形成が年率マイナス2.8%、民間住宅投資が年率マイナス4.0%と、政府の公共投資と民間企業の住宅投資の落ち込みが実質GDPを押し下げる原因になっている。

 

 しかし、名目GDP成長率がバブル期並みに高くなったとしても好景気を実感している人はほとんどいないだろう。実質の家計最終消費支出(帰属家賃を除く)は2023年が0.8%なのに対し、バブル期だった1987~1991年の平均は4.5%となっている。バブル期に成長率が上昇していたのは好景気による消費の拡大だが、2023年に成長率が上昇したのは輸出の増加による外需の拡大だと言えるだろう。

 また、家計の消費支出に占める飲食費の割合を「エンゲル係数」と言って、このエンゲル係数は1965年の38.1%から2005年の22.9%まで緩やかに減少していたが、その後は徐々に上昇していき、2023年12月には30.2%と1978年以来の高さになった。消費税増税に加えて、生活必需品の高騰によって趣味や娯楽などにお金を使える人が減っているのだろう。

 

 だが、国民がこれだけコストプッシュインフレに困っている状況にも関わらず、政府は更なる増税を目論んでいる。防衛省は2024年2月19日、防衛政策の企画立案機能の強化に向けた「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」(座長・榊原定征経団連名誉会長)の初会合を省内で開いた。政府は2023年度から5年間の防衛費を計43兆円程度としているが、榊原氏は円安や物価高、人件費高騰などを踏まえ「43兆円の枠の中で求められる防衛力装備の強化が本当にできるのか、現実的な視点で見直す必要がある」と述べ、さらなる増額の可能性に言及した。

 また、「見直しをタブーとせず、現実を踏まえた実効的な水準や国民負担、具体的な財源を本音ベースで議論すべきだ」と言い放ったのである。防衛費増額の財源は歳出改革、決算剰余金の活用、防衛力強化資金、所得税法人税・たばこ税の増税の4つ。積み増しになれば当然、国民はさらなる増税を強いられる可能性が高い。更に、上記4つの増税で財源が足りないと判断された場合は消費税を15~20%まで引き上げてくることも予想されるだろう。

 

 防衛増税に関しては2022年末から議論されていた。同年12月15日、自民党税制調査会は防衛費増額の財源を賄う増税策をめぐって、「復興特別所得税2.1%を所得税1.1%と新たな付加税1%にわけ、徴収時期を2037年以降に延長する」「法人税の納税額に4%から4.5%を一律に上乗せする付加税を課す」「たばこ税を1本3円相当の引き上げを段階的に行う」という3つの増税を組み合わせる案を了承している。

 しかし、私は仮に防衛増税が実施されたとしても、法人税増税については経団連の指示によって1~2年程度で廃止されるのではないかと予想している。実際に、東日本大震災のときも復興財源の確保を目的として2012年から復興特別法人税が導入されたが、2013年12月の与党税制協議会が2014年3月に前倒し廃止することを決定した。個人が負担する復興特別所得税2037年まで25年間も続けられるのに対して、復興特別法人税をたった2年で廃止してしまうのは明らかにおかしな法人優遇だったと言えるだろう。

 

 その上、日本政府としても社会保障より軍事を人質に取ったほうが消費税増税所得税増税は進めやすいと考えているのではないだろうか。実際に、明治時代から昭和初期まで税金は戦費調達のために存在していて、消費税の前身である「物品税」や給料から所得税を控除する「源泉徴収」は第二次世界大戦中の1940年に導入されているからだ。

 それより少し前の1920年代には商工業者に課税されていた「営業税」の大規模な反対運動が起こったが、戦時中の物品税や源泉徴収に対して特に反対運動が起こったという記録は残っていない。「ぜいたくは敵だ!」「欲しがりません勝つまでは」などのスローガンを前にすると、不満を口にすることを委縮してしまう国民性のようである。

 

 戦後でも大平政権(1978~1980年)の「一般消費税構想」に寄与した保守派知識人の集まりであるグループ一九八四年が、著書『日本の自殺』(PHP研究所、1976年)の中で「戦後日本の繁栄は、他方で人々の欲求不満とストレスを増大させ、日本人の精神状態を非常に不安定で無気力、無感動、無責任なものに変質させてしまった」と発言している。

 それから30年が経って、安倍元首相も第一次政権のときに出版した著書『美しい国へ』(文藝春秋、2006年)の中で、「戦後の日本は経済を優先させることで、物質的に大きなものを得たが精神的には失ったものも大きかったのではないか」「自主憲法を制定しなかったことで損得が価値判断の重要な基準となり、家族の絆や生まれ育った地域への愛着、国に対する想いが軽視されるようになってしまった」と述べている。

 

 榊原定征氏が防衛費について、「現実を踏まえた実効的な水準や国民負担、具体的な財源を本音ベースで議論すべきだ」と発言したのは、逆に言えば「日本の安全保障が弱体化しているのは国民が甘ったれて増税を受け入れないからだ」と表現することも可能なのである。

 

 

日本の安全保障を強化するためには消費税引き下げと財政出動が必要

 だが、日本の安全保障が弱体化したと言われるのは別に増税していないからではなく、1990年代以降にほとんど経済成長していないことが原因だろう。例えば、日本の名目GDPを国際基準で見ると1981年の1兆2437.9億ドルから1995年の5兆5455.7億ドルまで急速に増加していたが、その後は2023年の4兆2308.6億ドルまで低迷している。

 1995年当時であれば日本の名目GDPアメリカの72.6%、中国の758.6%にものぼっていたため、アメリカにとって日本は安全保障上の重要なパートナーであり、中国にとっては「ラスボス」のような存在だったと言えるだろう。その一方で、2023年の名目GDPアメリカの15.7%、中国の23.9%まで減少しているため、これでは今の日本はアメリカにとってアジアの小さな国、中国にとっては「雑魚キャラ」の一つにしか見なされていなくても仕方がないだろう(図81を参照)。

 

 日本経済を強くして、アメリカや中国との名目GDPとの差を埋めるためにはどうすれば良いだろうか。私が提案したいのは日本の消費税率を3%まで減税することである。1990年代後半以降の自民党が緊縮財政を行わず、消費税が3%のままだったら名目GDPは今頃700兆円を超えていた可能性が高いからだ。

 日本経済はバブル崩壊と言われていた90年代半ばまで着実に成長していて、1989~1996年度の名目家計最終消費支出(持ち家の帰属家賃を除く)は年平均で7兆1789億円も増加していた。2022年度の家計最終消費支出は259.5兆円だが、もし消費税が3%のままで家計消費が毎年7兆1789億円も増加したら2022年度は426.7兆円にのぼっていたことが予想される。消費税が3%のままだったら家計最終消費支出は167.2兆円も増加していたのだ。そうなると2022年度の名目GDPは566.5兆円だが、消費税が3%のままだったらGDPは167.2兆円も押し上げられて733.7兆円になっていただろう(図82を参照)。

 

 また、消費税率を3%に減税する他にも日本経済を強くするためには政府支出を増やす必要があるだろう。図83では2001年を100とする「主要先進国の政府支出の推移」を示したが、これを見ると日本は先進国の中で最も政府支出を増やしていない国だと言える。他の先進国を見ると2001~2023年にかけて政府支出の伸び率はイギリスが2.96倍、アメリカが2.91倍、カナダが2.50倍、フランスが2.00倍、ドイツが1.95倍なのに対し、日本は1.32倍程度となっている。

 日本の2001年の名目GDPは531.7兆円だが、2023年までに政府支出を1.32倍増やして名目GDPが591.5兆円になっているので、仮にアメリカの2.91倍並みに政府支出を増やした場合は2023年の名目GDPは1173.8兆円になっていたことが予想される。政府支出をアメリカ並みに増やしたら日本の名目GDPは582.3兆円も増加していたのだ。

 

 日本の消費税を3%に減税して、政府支出をアメリカ並みに増やしたら当然のことながら、アメリカや中国との経済力の差も縮まることになる。先ほど2023年の日本の名目GDPアメリカの15.7%、中国の23.9%まで減少していると説明した。しかし、消費税を3%に減税した場合の名目GDPの増加分167.2兆円と、政府支出をアメリカ並みに増やした場合の名目GDPの増加分582.3兆円を合わせると2023年の日本の名目GDPは1341.0兆円と1.98倍にのぼっていたことが予想される。そうなると、国際基準で見た日本の名目GDPは2023年に4兆2308.6億ドルなので、消費税を3%に減税して政府支出をアメリカ並みに増やしたら名目GDPは1.98倍も増加して8兆3960.2億ドルとなり、アメリカの31.2%、中国の47.4%まで差が縮まったことが予想される。

 日本の安全保障を強化するためには「防衛増税」ではなく、消費税引き下げと財政出動を実施して日本国内の経済を強くするしかないと思っている。

 

 

<参考資料>

森永卓郎 『消費税は下げられる』(角川新書、2017年)

北野弘久・湖東京至 『消費税革命 ゼロパーセントへの提言』(こうち書房、1994年)

 

国民経済計算 2023年10-12月期1次速報値

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2023/qe234/gdemenuja.html

家計調査(家計収支編) 時系列データ(二人以上の世帯)

https://www.stat.go.jp/data/kakei/longtime/index.html

忍び寄る「防衛増税」拡大…有識者会議で「43兆円から積み増し」提言相次ぐ仰天

https://news.yahoo.co.jp/articles/8c4bb17242a9468d57e376f2941585913e71fd80

自民税調 防衛増税案 了承 実施時期は来年議論に先送り

https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/93421.html