消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

消費税は国税の中で最も滞納の割合が多く、インボイス制度の導入で更に滞納が増加する可能性もある

この記事は、2019年9月14日に更新された「消費税は国税の中で最も滞納の割合が多い」の最新版です。

 

国税滞納のうち53.1%が消費税で占められている

 統一地方選挙の前半戦が2023年4月9日、後半戦が4月23日に実施される予定である。また、同年10月1日から導入が予定され、年間売上高1000万円以下の事業者にとって実質的な増税となるインボイス制度(適格請求書等保存方式)が物議を醸している今だからこそ、「消費税は国税の中で最も滞納の割合が多い」という事実について知るべきではないだろうか。

 

 「消費税になぜ滞納金が発生するのか?」については、消費税という税制の仕組みを理解する必要がある。私たちが買い物をするとき、レジでお金を支払っているため、消費税を納めているのは消費者だと思っている方も多いだろう。

 だが、これは大きな誤解で実際に消費税を納める義務があるのは事業者だ。事業者は、決算や確定申告の際に、一定の計算による消費税額を国などに納付する義務があり、そこで消費税を販売価格に上乗せ(転嫁)することが認められている。

 

 しかし、販売価格に上乗せされた消費税を、モノを買うときに消費者が負担するのは事業者が値引きしていない場合で、中小・零細企業の中には少しでも商品を安く売るために、消費税を価格に転嫁できないこともあり、結果的に自腹を切って納税する例が少なくない。その影響もあって消費税は国税の中で最も滞納額が大きく、2021年度に発生した消費税の滞納税額は3997億円と、国税全体の滞納額(7527億円)における53.1%を占めている。

 消費税は法人税所得税と違って、年間売上高が1000万円以上の場合、事業者が赤字でも納税しなければならず、滞納税額が減らないのはそれだけ消費税を納められない企業が多いからである。消費税は事業者が預かる「間接税」ではなく、事業者が納める「直接税」と言ったほうが正しいだろう。

 

 国税全体の新規発生滞納額に占める消費税の割合は1990年度の11.1%から2015年度の64.0%まで増加して近年は53.1%へとやや減少している。だが、これは主に申告所得税の滞納が増えたからで、消費税の新規発生滞納額は税率を10%に増税した影響で2019年度の3202億円から2021年度の3997億円まで増加しているのだ(図47~48を参照)。

 仮に2023年10月からインボイス制度が導入されたら、年間売上高1000万円以下の事業者が消費税を納められなくて、2024~2025年度に新規発生滞納額が更に増加してしまうのは明白である。

 

 

 

消費税という税制に欠陥があるから滞納が発生する

 だが、国税庁は消費税の滞納が増えているのを問題視するどころか、「自営業者=脱税」のイメージを作ることに必死だ。

 例えば、少し古いが1999年11月25日には前年の1998年に消費税の新規発生滞納額が過去最多になったことを受けて、「消費税は消費者からの預り金的な性格を有する税であるという趣旨の広報活動を更に徹底する必要がある」という通知を出している。税金の問題に関心を持っている方なら、一度は「消費税は消費者からの預り金」という言葉を聞いたことがあるだろう。

 

 国税庁が子ども向けに広報活動を行っている税の学習コーナーでも、『消費税を通して私たちも納税している』という明らかな間違いを教えている。前述の通り、消費税を納税するのは消費者ではなく年間売上高1000万円以上の事業者であって、子どもたちが『消費税を通して私たちも納税している』という誤解を持つことは、逆に言えば「消費税を納められない事業者は悪質業者」と偏見を助長することにもつながりかねない。

 

 また、2001年5月18日の産経新聞でも「消費税は私たち庶民が少しでも日本の社会が住みよい、安定した姿になりますようにとの願いから必死に納めているものです。その義務を果たさず、納税すべきお金を他に使うのは最も悪質な脱税行為と言っても過言ではありません。どうして新聞はもっと大きく報道して国民に詳しく知らせないのですか? 政治を先頭に消費税滞納の根絶方法を早急に確立することが急務だと思います」と読者から怒りの声を掲載し、「自営業者=脱税」のイメージを作るキャンペーンを展開している。

 

 比較的最近の事例でも、2019年10月1日から消費税が10%に引き上げられると共に軽減税率が導入された際にSNS上で「イートイン脱税」という造語が広まった。これは飲食料品の軽減税率制度のもとコンビニの会計を税率8%の持ち帰り価格で済ませ、外食だと10%になる税率の差額を支払わず店内で飲食する行為を指して生まれた用語である。

 コンビニは持ち帰りが基本的な業務であるため、会計の際に店内飲食(イートイン)の有無をいちいち尋ねたりはしない。イートインを自己申告した者だけが10%分を負担する、つまりは正直者が馬鹿を見るという「不公平感」から生まれた用語で、「脱税」という言葉にインパクトがあったのか瞬く間に流布した。

 

 しかし、消費税の納税義務者は事業者であり、持ち帰りと見せかけて店内で飲食した消費者ではない。消費者同士で「ずるい」などといがみ合うのではなく、事業者(店側)が客の全員に8%の税率で商品を販売した事実通りに確定申告すれば済む話なのである。「消費税」というネーミングにも問題があるが、大多数の国民が消費税の基本的な仕組みや本質を理解していないことを象徴する造語であった。

 

 この他にも、国税庁は過去にタレントを起用したポスターで消費税の滞納者を非難したこともあるが、そもそも消費税の滞納額が国税全体の半数以上を占めているのは、どの事業者も売上に対して一律の額が徴収される「消費税」という税制に欠陥があるからだろう。

 消費税増税を批判する際は、景気の問題だけでなく滞納の問題についても取り上げていく必要があると感じる。

 

 

地方の消費税を安くして「地方創生」を実現しよう

 自民党公明党が進める経済政策の一つに地方創生がある。地方創生とは、東京一極集中を是正して地方の人口減少に歯止めをかけ、日本全体の活力を上げることを目的にしている。

 2014年には、元岩手県知事の増田寛也氏が「何も対策を取らなければ、2040年までに全国896の自治体が消滅してしまう可能性がある」というレポートをまとめた『地方消滅―東京一極集中が招く人口急減』(中央公論新社)がベストセラーになった。

 その一方で、政府が進めている地方創生は必要なインフラ整備を放棄し、「各地方は自助努力せよ。成功しているところは地方交付税を厚くし、上手くいかないところは自己責任」と、各地域の競争を煽っているだけなのではないかという批判も存在する。

 

 だが、私が注目しているのは「地方ほど消費税を滞納する割合が高い」という問題だ。各地域の国税局別に滞納額の割合(2020年度)を見ると金沢が1.30%、名古屋が1.36%、高松が1.59%、広島が1.60%、東京が1.71%、大阪が1.78%、仙台が2.18%、関東信越が2.23%、熊本が2.26%、札幌が2.31%、福岡が2.65%、沖縄が3.07%と地域によってバラつきが存在し、地方ほど割合が高くなることもわかるだろう(表6を参照)。

 消費税増税インボイス制度の導入は政府が進めている地方創生にも大きく反する愚策なのである。

 

 地方のほうが消費税を滞納する割合が多いのは、東京などの都市部よりも経済的なハンデが大きいことが原因だろう。例えば、雇用者に占める非正規雇用の割合(2017年)は東京都区部が30.8%なのに対し、滞納の割合が最も多い沖縄県では41.3%だ。都道府県別の平均年収(2022年)も東京都が598万9500円なのに対し、沖縄県375万4200円(東京都の62.7%)と220万円以上の差がある。

 

 更に、沖縄は全国の米軍専用基地のうち70.3%を負担してもらっている問題を忘れてはならない。しかし、「沖縄の経済は米軍基地に依存している」というのも事実ではなく、県民総所得に占める基地関連収入の割合はアメリカ統治下だった1965年の30.4%から2019年の5.5%まで低下している。今後、沖縄が米軍基地に依存しない経済を築くためには、県民総所得を拡大させてこの比率を更に引き下げる必要があるだろう。

 そのためにも政府は消費税率を都道府県別にわけて、東京都は5%、沖縄県は0%、それ以外の地域は3%とすべきだと思っている。地方の消費税が東京より安くなれば、各地域の税負担が減って本当の地方創生が実現するのではないだろうか。

 

 

<参考資料>

小澤善哉 『図解 ひとめでわかる消費税のしくみ』(東洋経済新報社、2013年)

醍醐聰 『消費増税の大罪 会計学者が明かす財源の代案』(柏書房、2012年)

行政監察情報 『滞納防止策の改善求める 消費税滞納額増で国税庁に意見表示』(官庁通信社、1999年)

斎藤貴男 『消費税のカラクリ』(講談社、2010年)

伊藤周平 『消費税増税社会保障改革』(筑摩書房、2020年)

 

統⼀地⽅選2023特設サイト

https://www.nhk.or.jp/senkyo/database/touitsu/

国税庁 統計情報

https://www.nta.go.jp/publication/statistics/index.htm

暮らしを支える税を学ぼう

https://www.youtube.com/watch?v=AM8Um27CW4Y

砂漠で金を稼げと言うのか?「地方を見捨てた」山本幸三地方創生大臣

http://www.mag2.com/p/money/274082/2

平成29年就業構造基本調査 主要統計表(都道府県)

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200532&tstat=000001107875&tclass1=000001116995

令和4年賃金構造基本統計調査 都道府県別

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450091&tstat=000001011429

沖縄から伝えたい。米軍基地の話。Q&A Book 令和5年版

https://www.pref.okinawa.jp/site/chijiko/kichitai/tyosa/qanda_r5.html