消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

消費税が3%のままだったら2021年度の名目GDPは730.5兆円になっていた

消費税を引き下げてGDPが増加すれば財政再建は可能

 2023年3月9日に内閣府が発表した2022年のGDP成長率は物価変動の影響を除いた実質が1.0%、物価変動の影響を含めた名目が1.3%だった。2020~2021年は新型コロナウイルスの感染拡大で世界的に経済が落ち込んだが、2022年の主要先進国の名目GDP成長率はカナダが11.8%、イギリスが9.5%、スウェーデンが9.4%、アメリカが8.9%、ドイツが7.6%、イタリアが7.0%、フランスが5.0%と日本よりはるかに高くなっている。

 

 しかし、日本では消費税の廃止を求めるデモがほとんど起こっておらず、「財政破綻に向かっているから消費税を15~20%まで増税しなければならない」と発言する政治家や評論家も多い。特に近年話題となった財政破綻論の中で有名なのは、財務省事務次官である矢野康治氏が文藝春秋の2021年11月号に寄稿した『財務次官、モノ申す このままでは国家財政は破綻する』という論文だろう。

 矢野氏は自らを「財政をあずかり国庫の管理を任された立場」にいる者と位置付け、「あえて今の日本の状況を喩えればタイタニック号が氷山に向かって突進しているようなものです。ただ、霧に包まれているせいでいつ目の前に現れるかがわからない。そのため衝突を回避しようとする緊張感が緩んでいるのです」と述べている。だが、2001~2021年の主要先進国の政府債務残高は日本が1.84倍程度の増加だったのに対し、ドイツが1.98倍、カナダが3.02倍、フランスが3.13倍、アメリカが5.24倍、イギリスが5.71倍の増加にものぼっている。日本が氷山に向かって突進するタイタニック号なら、アメリカやイギリスはとっくに激突して財政破綻している状態でないとおかしい話だろう。

 

 政府債務残高の増加のペースが日本よりはるかに早い他の先進国が財政破綻しないのは負債と共に名目GDPも大幅に増加しているからだろう。実際に、2001~2021年の名目GDPの伸び率は日本が1.02倍、フランスが1.62倍、ドイツが1.66倍、イギリスが2.03倍、アメリカが2.17倍、カナダが2.18倍となっている。国際的な財政再建の定義は「政府の負債対GDP比率の減少」であり、消費税を引き下げて個人消費が伸びることで、名目GDPが増加すれば政府の負債が増えても財政再建は可能なのだ(図49~50を参照)。

 

 

 

現代において高齢者の消費意欲が乏しいとは言えない

 また、矢野康治氏とは別に新たな財政破綻論者として警戒すべき人物に京都大学教授の柴田悠氏がいる。彼は著書『子育て支援が日本を救う』(勁草書房、2016年)の中で、「日本社会が抱えている重大な問題としてまず挙げなければならないのが財政難である。人口が高齢化すると、消費の盛んな生産年齢人口の比較が小さくなるため、需要が減って失業率が増えて税収が減るだろう。あるいは主に年金・介護・医療の領域で社会保障支出が増えるだろう。それらにより、財政余裕は減ると考えられる」と述べている。

 消費税増税の賛成派は今まで債務不履行ハイパーインフレを理由に財政破綻を煽っていたが、柴田氏は「少子高齢化による財政難」という新たな理論を提起している。2023年に入ってから岸田政権が「異次元の少子化対策を行う財源として消費税増税が必要」と言い出したのも、彼のような評論家の影響が大きいだろう。

 

 しかし、本書では「高齢者の消費意欲が乏しいというのは本当なのか?」という検証が全く行われていない。人口推計と国民経済計算を見ると、総人口に占める65歳以上の割合は1981年の9.3%から2018年の28.0%まで増加する一方で、名目家計最終消費支出(持ち家の帰属家賃を除く)も1981年度の124.2兆円から2018年度の249.3兆円まで増加している。「高齢者は消費意欲が乏しい」というのが本当なら、高齢化率が高まるほど消費が減少していなければならないが日本ではそうなっていないのだ。

 それに対し、2019年度以降は消費税10%増税新型コロナウイルスの感染拡大によって消費が減少していて、2021年度の家計最終消費支出は239.6兆円になっている。2018~2021年の3年間でどの世代が最も1か月あたりの消費支出の落ち込みが深刻なのか調べたところ、子育て世代に当たる35~39歳では1万7582円も減少していた一方で、高齢者世代の80~84歳では6887円増加とバラつきがあることがわかった。つまり、現代においては必ずしも「高齢者の消費意欲が乏しい」とは言えないのではないだろうか(図51と表7を参照)。

 

 

 

4月23日の選挙では消費税廃止の候補者に投票すべき

 2015年9月24日、当時の安倍政権は「アベノミクス新三本の矢」を発表し、希望を生み出す強い経済として2020年までに名目GDPを600兆円にする目標を掲げていた。

 だが、日本の名目GDP新型コロナウイルスが感染拡大する前の2019年度でも556.8兆円であり、その後も2020年度が537.6兆円、2021年度が550.5兆円と政府の目標には達成していない。しかし、90年代後半以降の自民党が緊縮財政を行わず、消費税が3%のままだったら名目GDPは今頃700兆円を超えていた可能性が高いことは経済学者もなかなか指摘しないのではないだろうか。

 

 日本経済はバブル崩壊と言われていた90年代半ばまで着実に成長していて、1989~1996年度の名目家計最終消費支出(持ち家の帰属家賃を除く)は年平均で7兆1789億円も増加していた。2021年度の家計最終消費支出は239.5兆円だが、もし消費税が3%のままで家計消費が毎年7兆1789億円も増加したら2021年度は419.5兆円にのぼっていたことが予想される。そうなると2021年度の名目GDPは550.5兆円だが、消費税が3%のままだったらGDPは180.0兆円も押し上げられて730.5兆円になっていただろう(図52を参照)。

 

 名目GDPが550.5兆円から730.5兆円に増加すれば当然のことながら「政府の負債対GDP比率」も減少する。財務省によれば2022年3月末時点で国債と借入金、政府短期証券を合計した政府の負債は1241.3兆円で対GDP比率は255.5%となっているが、もし消費税が3%のままで2021年度の名目GDPが730.5兆円だったら「政府の負債対GDP比率」は169.9%まで縮小したことになる(図53を参照)。

 矢野康治氏は論文の中で「今後も謙虚にひたむきに、財政再建に取り組んでいきたいと思っています」と述べているが、実際には消費税を増税するどころか3%以下に減税したほうが名目GDPは増加して財政再建にも有効なのだ。2023年4月23日に実施される統一地方選挙の後半戦では、消費税の廃止や引き下げを掲げている候補者に投票すべきだろう。

 

 

<参考資料>

国民経済計算 統計表(四半期別GDP速報)2022年

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2022/toukei_2022.html

OECD Nominal GDP forecast

https://data.oecd.org/gdp/nominal-gdp-forecast.htm

人口推計 長期時系列データ

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00200524&tstat=000000090001

家計調査 家計収支編

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00200561&tstat=000000330001&tclass1=000000330001

アベノミクス「新3本の矢」を読み解く

https://www.nikkei.com/article/DGXZZO92034300U5A920C1000000/

国債及び借入金並びに政府保証債務現在高

https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/gbb/data.htm