消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

消費税を廃止するためには経済成長の大切さを認識しよう

人口が減少している国でも経済成長は可能

 日本の消費税は1989年4月に税率3%で導入され、1997年4月に5%、2014年4月に8%、2019年10月に10%へと引き上げられ、増税するたびに景気を悪化させている。2019年10月の「実質家計消費」は前年比マイナス5.1%と、消費税が8%に増税された2014年4月の前年比マイナス4.6%よりも悪化し、中小企業の景況感を表す「中小企業DI」も2019年10~12月期はマイナス21.1と、マイナス20を下回ったのは8%増税時の2014年4~6月期以来(マイナス23.2)のことである。

 また、2019年11月には「景気動向指数(先行指数)」が90.9とリーマンショック真っ只中だった2009年11月の90.5に匹敵するほどまで落ち込んでしまった。

 

 しかし、日本では消費税の廃止を求めるデモがほとんど起こっておらず、香港やフランスのような反政府運動に発展する気配が全く感じられない。その理由は政治に無関心な人が多いだけでなく、「日本のような人口が減少する国ではもう経済成長できない」という勘違いが国民の間で広く共有されているからではないだろうか。

 例えば、財務官僚の森信茂樹氏は著書『消費税、常識のウソ』(朝日新聞出版、2012年)の中で「経済の成長は、基本的に労働人口の増加と生産性の向上によるものです。したがって、人口減少=経済成長の減速です。成熟した我が国の経済を考える場合、名目成長で4~5%を想定することはないものねだりと言えましょう」と述べている。

 こうした人口減少衰退論は森信氏だけでなく、私が様々な方と政治の話をしていて消費税増税の反対派でも「日本は人口が減少しているからもう経済成長できないよね」と言う人が多いように思う。

 

 だが、世界では日本より人口が減少している国はいくらでも存在し、1998~2018年の人口増加率はリトアニアがマイナス20.8%、ラトビアがマイナス20.2%、ウクライナがマイナス15.2%、ブルガリアがマイナス13.7%、ルーマニアがマイナス13.5%、ジョージアがマイナス13.1%、クロアチアがマイナス9.1%、アルバニアがマイナス8.3%、ベラルーシがマイナス5.6%、エストニアがマイナス5.0%なのに対し、日本はプラス0.1%とほとんど横ばいになっている(図11を参照)。

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 その一方で、1998~2018年の名目GDPの伸び率はウクライナが3354%、ルーマニアが2501%、ジョージアが818%、エストニアが512%、ラトビアが490%、ブルガリアが463%、アルバニアが423%、リトアニアが346%、クロアチアが236%と大なり小なり差があるものの、日本の104%よりもはるかに経済成長していることがわかる。

 更に、1998~2018年の政府総支出の伸び率はウクライナが3775%、ルーマニアが2321%、ジョージアが1238%、エストニアが510%、ラトビアが498%、ブルガリアが466%、アルバニアが336%、リトアニアが313%、クロアチアが224%なのに対し、日本は98%である(図12を参照)。

 ベラルーシは2001年以降のデータしか公表されていないが、それでも2001~2018年の名目GDPの伸び率は7068%、政府総支出の伸び率は6073%となっている。

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 諸外国と比べて日本だけが経済成長できないのは人口が減少しているからではなく、政府の公共投資を削減してきたからだということは「増税賛成派の井手英策氏に反論する(前編)」の中でも指摘したが、その他にも消費税が日本経済を蝕んでいるという現実があるのではないだろうか。

 過去60年間のGDPを見ると、昭和後期の1959~1988年では名目GDP成長率の平均が12.5%、実質GDP成長率の平均が6.8%と高かったのに対し、平成の1989~2018年では名目GDP成長率の平均が1.0%、実質GDP成長率の平均が1.2%と大幅に下落している。つまり、物品税の時代と比べて消費税を導入してからの30年間は名目では10分の1以下、実質では5分の1以下しか成長していないのだ(図13を参照)。

 「人口が減少する国ではもう経済成長できない」という通説は、「消費税のせいで日本は経済成長できない」という現実から目を逸らすために唱えられている部分もあるだろう。

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経済成長が人々の心を豊かにしている

 また、昔から言われている通説に、「物質的な豊かさを追求すると人々の心が貧しくなる」というものがある。

 古くは1970年代に論争を巻き起こし、大平内閣(1978~1980年)の「一般消費税構想」にも寄与した保守派知識人の集まりであるグループ一九八四年が、著書『日本の自殺』(PHP研究所、1976年)の中で「戦後日本の繁栄は、他方で人々の欲求不満とストレスを増大させ、日本人の精神状態を非常に不安定で無気力、無感動、無責任なものに変質させてしまった」と発言している。

 それから30年が経って、安倍首相も第一次政権のときに出版した著書『美しい国へ』(文藝春秋、2006年)の中で、「戦後の日本は経済を優先させることで、物質的に大きなものを得たが精神的には失ったものも大きかったのではないか」「自主憲法を制定しなかったことで損得が価値判断の重要な基準となり、家族の絆や生まれ育った地域への愛着、国に対する想いが軽視されるようになってしまった」と述べている。

 

 しかし、実際に戦後の名目GDPは1955年の8.4兆円(平成2年基準)から2018年の513.9兆円(平成17年基準)まで60倍以上も増加したのに対し、他殺による死亡者数は1955年の2119人から2018年の272人まで減少している。つまり、戦後の経済成長は殺人事件の件数を減らし、人々の心を豊かにしたというのが事実なのだ(図14を参照)。

 最近では、「家族間殺人が増加している」という報道をよく目にするが、増えているのはあくまでも殺人事件全体に占める割合であって、未遂を含めた家族間殺人の件数は2008年の558件から2018年の418件まで減少しているのである。

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 更に、作家の曽野綾子氏は自伝本『この世に恋して』(ワック、2012年)の中で「今、日本人はお坊ちゃま、お嬢ちゃまの集団になっています。貧困の中で生きるアフリカの人々のほうが、物質的に恵まれた社会に暮らす私たちよりも人間として豊かなのかもしれません」と経済成長を真っ向から否定した主張をしている。

 彼女は2013年に安倍政権が発足した教育再生実行会議の有識者メンバーに選任されたことから、2018年度から始まった道徳の教科化に関しても「今の子供たちは物質的に豊かになって甘やかされているから道徳教育の強化が必要」という俗流若者論が背景に存在することは確実だろう。

 

 だが、2019年に国連が発表した世界の幸福度ランキングを見ると1~5位はフィンランドデンマークノルウェーアイスランド、オランダと福祉や教育が充実している欧州の国々が上位に並び、6位のスイスも一人当たりの名目GDPランキングがルクセンブルクに次いで第2位だ。7~10位のスウェーデンニュージーランド、カナダ、オーストリアも1998~2018年の20年間で名目GDPが2倍近く成長している国々である(表1を参照)。

 その一方で、ランキング下位には南スーダン中央アフリカ共和国アフガニスタンなど物質的に貧しく戦争や紛争が絶えない発展途上国が並んでいて、「アフリカの国々のほうが人間として豊か」という曽野綾子氏の主張は全くのデタラメだろう。ちなみに、日本の幸福度ランキングは58位と高くないが、これも1998年から20年以上デフレ不況が続いて経済成長していないことが原因だと考えられる。

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 しかし、一体どれほどの日本人が「戦後の経済成長によって人々の心が豊かになり、治安も大幅に改善した」という事実を共有しているだろうか。例えば、2017年2月にSF作家の山本弘氏が大阪府箕面市の中学生に実施したアンケート調査では『50年前に比べて、日本の少年犯罪は大幅に増えている』という質問に「信じている」「やや信じている」と回答した生徒は合わせて57.4%にものぼったのに対し、「信じない」「やや疑っている」と回答した生徒は合わせて10.1%しかいなかったという。

 実際に、未成年の検挙人数は1983年の26万1634人から2018年の3万458人(少年人口比では10万人当たり1413.5人から269.6人)まで減少したにも関わらず、長年マスコミが「日本の治安は悪化している」というデマを流し続けている影響で、少年犯罪が凶悪化していると勘違いする中学生が多いのかもしれない。

 

 この誤解を解くためには、中学や高校の授業で前述の図14のグラフを提示して「経済成長が人々の心を豊かにしている」という事実を教えるべきではないだろうか。学校教育では常に政治的中立性が議論の対象となっているが、日本の治安が大幅に改善したという事実を教えることに全く問題はないだろう。消費税を廃止する世論を盛り上げるためには、経済成長の大切さを国民に広く共有してもらう必要があると言える。

 

 

<参考資料>

アベ・ショックが始まった(前編)

https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12555242525.html

中小企業庁 中小企業景況調査報告書

https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/keikyo/index.htm

統計表一覧 景気動向指数 結果

https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/di/di.html

図録 他殺による死亡者数の推移

https://honkawa2.sakura.ne.jp/2776.html

平成30年の刑法犯に関する統計資料

https://www.npa.go.jp/toukei/seianki/H30/h30keihouhantoukeisiryou.pdf

世界幸福度ランキング2019

https://yorozu-do.com/happiness-ranking/

中学生の6割は「月は西からのぼる」と信じている。(2)

http://hirorin.otaden.jp/e439925.html

犯罪白書 令和元年版 少年による刑法犯

http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/66/nfm/n66_2_2_2_1_1.html