消費税増税に反対するブログ

れいわ新選組のボランティアとして消費税の問題点などを発信するブログです。たまに発達障害についても書きます。(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

2025年の参院選で30~50代が参政党に投票した理由と財務省解体デモとの関係

30代の参政党の投票率が高く、れいわ新選組投票率が少ない理由

 2025年7月20日に実施された参院選では神谷宗幣氏が代表を務める参政党が13議席を増やして躍進した。今回の参院選でマスコミは参政党が大幅に議席を増やしたのは若者に支持されたからだと報道している。しかし、私はこれにはカラクリがあると思っている。

 まず、日本テレビ出口調査によれば参政党の年代別支持率は18~19歳が23.2%、20代が24.2%、30代が23.2%、40代が18.7%、50代が15.3%、60代が11.6%、70歳以上が5.5%だった。総務省のホームページを見ると前回の2022年の参院選における年代別投票率は18~19歳が35.42%、20代が33.99%、30代が44.80%、40代が50.76%、50代が57.33%、60代が65.69%、70歳以上が55.72%なので、これに参政党の年代別投票率を掛けると18~19歳が8.2%、20代が8.2%、30代が10.4%、40代が9.5%、50代が8.8%、60代が7.6%、70歳以上が3.1%になる。

 ちなみに、同様の手法で計算した国民民主党の年代別投票率は18~19歳が8.3%、20代が8.4%、30代が8.4%、40代が7.2%、50代が6.7%、60代が5.8%、70歳以上が3.2%になっており、れいわ新選組の年代別投票率は18~19歳が2.2%、20代が2.2%、30代が3.9%、40代が5.9%、50代が6.1%、60代が4.3%、70歳以上が1.5%になっている(図61を参照)。

 

 この結果を見ると国民民主党は若者に支持されたと言えるかもしれないが、参政党のメインの支持層は30~50代であることがわかるだろう。まず、40~50代が参政党を支持した背景には1990年代の就職氷河期に加えて、「1999年7月に人類が滅亡する」というノストラダムスの大予言が流行した時代に若者だったことで、「ワクチンを打つとマイクロチップが埋め込まれる」といった彼らの陰謀論的な主張にシンパシーを感じたのではないだろうか。その上、40~50代は参政党の他にも純粋に消費税廃止を掲げているれいわ新選組投票率が高く、自民党立憲民主党を信頼できない層の票が参政党とれいわ新選組に分散されたと言うことができるかもしれない。

 

 その一方で、30代の参政党の投票率が突出して高く、れいわ新選組投票率が少なかったのは同世代として深刻な問題だと思っている。30代が参政党を支持した間接的な理由は、バブル崩壊の時代に物心ついて高校生や大学生のときにリーマンショックの影響を受けた広義の失われた世代だと言うことはできるかもしれない。それに加えて、教育課程審議会の会長としてゆとり教育を推進していた作家の三浦朱門氏は2000年に「できない者はできないままで結構」と発言している。2000年当時の小中学生は1985~1993年度生まれであり、2025年現在では32~40歳になっているため、主に30代で参政党に投票した人が多かったのは三浦氏が提唱した愚民化教育が25年経って功を奏してしまった部分も大きいだろう。例えば、10代の子がSNSの影響で参政党を支持しているのは大人になってから修正が効くかもしれないが、社会人としてそれなりに責任ある立場である30代以上がSNSの影響だけで参政党を支持してしまっているのは取り返しがつかないと思っている。

 それに対し、産経新聞を愛読しているような右派層はゆとり教育に関して「子供たちの学力が低下した」「若者が打たれ弱くなった」などと否定的な見解を示すことがほとんどだが、実際に今回の参院選ではゆとり教育を受けた30代の間で参政党に投票した人が多かった。そのため、皮肉を込めた表現をすれば参政党の支持者にとってゆとり教育は成功したと言えるのではないだろうか。三浦朱門氏は2004年3月号の文藝春秋で行われた自衛隊イラク派遣の是非を問うアンケートで「北朝鮮拉致問題すら当事者として解決する力のない日本にとって、対米追従以外の選択肢はありえない」「もし戦死者が出れば、それは憲法改正のための尊い犠牲なのだと考えたい」と発言しており、日米同盟の強化や教育目的での徴兵制の導入など参政党の政策にも合致しているだろう。

 

 

財務省解体デモは消費税廃止を目指して行われているデモではない

 2025年に話題となった政治運動の一つに「財務省解体デモ」がある。これは財政均衡主義の立場から減税に反対している財務省を敵視してその解体を訴えるという内容のデモだ。このデモは元来、2023年9月から経済評論家の池戸万作氏を中心とするグループにより霞が関での「財務省前デモ」として始められたものだった。その後、2024年10月の衆院選を経ていわゆる「103万円の壁」が問題となり、財務省が減税に難色を示していることが伝えられると、その「解体」を訴える別のグループによるデモが12月に行われる。それを受け、更に別のグループの呼び掛けで2025年2月に行われたデモには1000人にも及ぶ人々が参加した。3月には国会でも議論になり、「等閑視すべきではない」などと石破首相が発言したことが大きな話題を呼んだ。

 

 このデモの背景にあり、その理論的な裏付けとなっているのはMMT(現代貨幣理論)と呼ばれる経済理論だ。それによれば通貨の発行権が有する国は、いくら国債を発行してもその返済のために通貨を発行すれば良いので、債務不履行に陥ることはないという。そのため財政規律に縛られることなく国債の発行を続けて積極財政を行うべきだが、しかし際限なく支出を拡大していくとインフレが止まらなくなるので、インフレが高水準に達したら支出を抑制して富裕層に対する増税を行う必要があるという。財務省解体デモの理論的な支柱となっているMMTは元来、左派的なバックグラウンドを強く持つものだ。MMTの提唱者のステファニー・ケルトン氏は2016年と2020年のアメリカ大統領選挙の予備選で最左派の上院議員バーニー・サンダース氏の政策顧問を務めている。

 しかし、財務省解体デモの現場では実際に左派色はほとんど見られず、それどころか逆に右派色が濃く見られる。あちこちで日の丸が打ち振られ、中には旭日旗を掲げている者もいる。外国人排斥のコールや日本人を称賛するコールが繰り返され、財務省を「反日」、更には「在日」として攻撃するコールもしばしば聞かれた。週刊現代の取材では「米国の歴代の民主党政権の大統領はディープステート(闇の政府)の手先で、世界中で人殺しをしてきたわけでしょ。トランプが大統領に就任して世界を大改革しようとしている」と滑稽な陰謀論を展開する参加者がいたことも確認されている。

 

 また、2025年に入ってから財務省解体デモが盛り上がった背景として参政党の存在を挙げてもいいだろう。このデモの中心人物であった池戸万作氏はもともと国民民主党やれいわ新選組を支持していたが、8月4日のツイートで「れいわ新選組より、参政党のほうが積極財政と消費税廃止の実現に期待できます」と発言している。2025年2~3月にかけて財務省解体デモの参加者が急速に増加したのと、参政党の支持率の上昇が始まった時期は一致している。参政党は「日本人ファースト」として移民受け入れや外国人参政権に反対しているが、実際に埼玉県川口市で在日クルド人の排斥を訴えている排外主義運動の指導者が財務省解体デモに参加して「財務省をぶっ壊し、そして誇りある日本を取り戻すんだ」などと訴えていたこともある。

 だが、参政党の神谷宗幣代表は7月13日の演説で「今回の参院選で躍進してもいきなり50~60議席になるわけではない。次の解散総選挙で、一気に与党入りを目指して頑張りましょう」と発言し、次期衆院選で与党入りを目指す考えを示している。参政党はもともと積極財政を掲げていたが、次の衆院選で与党入りするために消費税廃止の主張も取り下げると予想されるだろう。

 

 それとは逆に私は2025年の都議選と参院選でれいわ新選組のボランティアに入っていたが、れいわの支持者の中で財務省解体デモに参加しているのは一部だけであり大半は冷やかだった。実際に今回の参院選でれいわは1議席しか増やしておらず、財務省解体デモがれいわの党勢拡大につながっていないのは明らかである。8月8日には財務省前でどのようなデモが開催されているのか見学に行ったが、数人が街宣右翼のようにスピーカーで怒鳴っていて近寄りがたく異様な雰囲気を感じてしまった。2025年2~3月と比較して財務省解体デモが退潮したのは参加者のうち参政党の支持者が参院選の結果に満足して離れたことや、当初は左右のイデオロギーに関係ないデモだったが過熱することによって右派層が先鋭化していった可能性も考えられるだろう。財務省解体デモは純粋に消費税廃止を目指して行われているデモではなく、1990年代以降の自民党の経済政策の失敗を財務省に責任転嫁したい目的があるのかもしれない。

 

 

<参考資料>

川口穣、上田耕司、大谷百合絵 「躍進する参政党の正体とは? 『オレンジ旋風』が来た」 『AERA』(朝日新聞出版、2025年7月28日)

伊藤昌亮 「取り残された人々の財政ポピュリズム 財務省解体デモの論理と心情」 『世界』(岩波書店、2025年7月号)

週刊現代財務省解体デモ いったい誰が支持しているのか?」 『週刊現代』(講談社、2025年4月5日)

斎藤貴男 「教育改革と新自由主義」(子どもの未来社、2004年)

 

第27回参議院議員通常選挙Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC27%E5%9B%9E%E5%8F%82%E8%AD%B0%E9%99%A2%E8%AD%B0%E5%93%A1%E9%80%9A%E5%B8%B8%E9%81%B8%E6%8C%99

zero選挙2025(参議院選挙) 全国出口調査

https://www.ntv.co.jp/election2025/exitpoll/all.html

参議院議員通常選挙における年代別投票率の推移

https://www.soumu.go.jp/main_content/000646811.pdf

ノストラダムスの大予言Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%80%E3%83%A0%E3%82%B9%E3%81%AE%E5%A4%A7%E4%BA%88%E8%A8%80

三浦朱門Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E6%B5%A6%E6%9C%B1%E9%96%80

池戸万作氏のツイート(2025年8月4日)

https://x.com/mansaku_ikedo/status/1952368790974714134

参政党・神谷代表「次の解散総選挙で与党入りを目指す」

https://mainichi.jp/articles/20250714/k00/00m/010/002000c