消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

デフレーションが20年以上続く日本は国民負担率が低くても「高負担・低福祉」の社会である

世界的なインフレでも日本のコアコアCPIはOECD加盟国の中で最も低い

 内閣府が2022年12月8日に発表した同年7~9月期のGDP成長率は物価変動の影響を除いた実質が年率マイナス0.8%、物価変動の影響を含めた名目が年率マイナス2.9%だった。岸田政権になってから緊急事態宣言を発令していない影響で、名目GDP成長率は2021年10~12月期から2022年4~6月期まで3期連続でプラス成長が続いていたが、今回は1年ぶりにマイナス成長となってしまった。

 その一方で、2022年10月の消費者物価指数は世界的なインフレの影響で、対前年比プラス3.7%と消費税を5%から8%に増税した翌月である2014年5月以来の高水準となっている。特に品目別に見ると、生鮮魚介や生鮮野菜などの生鮮食品の価格がプラス8.1%、ガソリンや電気代などのエネルギーの価格がプラス15.2%、水道光熱費の価格がプラス14.6%、ガス代の価格がプラス20.0%と生活必需品が非常に高騰している。今年に入ってからは景気が後退していく中で物価上昇が同時進行する「スタグフレーション」という言葉もよく耳にするようになった。

 

 だが、消費者物価指数の中で最も重要なコアコアCPI(食料〔酒類を除く〕及びエネルギーを除く総合)は、2022年10月に対前年比プラス1.5%とOECDに加盟している36ヵ国の中で最も低い。主要先進国のコアコアCPI(対前年比)はフランスが3.3%、ドイツが5.0%、デンマークが5.1%、カナダが5.4%、イギリスが5.8%、アメリカが6.3%、スウェーデンが8.2%、ハンガリーが13.2%である。特に激しい物価上昇に見舞われているトルコはコアコアCPIの対前年比が71.7%とOECD加盟国の中でも突出して高くなっている(図39を参照)。

 

 インフレには原材料費の急激な上昇により引き起こされる「コストプッシュインフレ」と、景気の拡大に伴って総需要の伸びが総供給に追いつかなくなるために生じる「デマンドプルインフレ」があるが、日本の場合はコストプッシュインフレが起こってもデマンドプルインフレはほとんど発生していないのが現状だろう。ちなみに、コアコアCPIが1.6%と日本の次に低いスイスでは付加価値税の標準税率が7.7%、食料品などの軽減税率が2.5%とヨーロッパの中で最も消費税の安い国となっている。

 

 しかし、日本政府は2022年2月24日から始まったロシア軍のウクライナ侵攻を利用して更なる消費税増税の布石を打とうとしている。例えば、防衛力強化に関する政府の有識者会議は11月22日に、防衛費の安定財源確保に向けて国民全体の負担が必要だとして増税を提起する報告書を岸田首相に渡した。また、経団連の十倉雅和会長は11月21日に防衛費の財源として法人税が議論されていることについて「広く薄く、社会全体、国民全体で負担するのが適切だ」と批判しており、このままでは「軍事費を捻出するために消費税を15~20%に増税しろ」という流れになるのは確実だろう。

 だが、軍事費拡大のために国民の消費を冷え込ませて日本経済を弱体化させる政策は戦時中の「欲しがりません勝つまでは」「ぜいたくは敵だ!」といったスローガンを連想してしまう。日本は戦後70年以上も民主主義国家のアメリカと同盟関係を続けているにも関わらず、政府や財界の発想が中国や北朝鮮のような全体主義国家と変わらないのは非常に問題であることを指摘しておきたい。

 

 

消費税増税による国民負担率の急速な上昇が世代間対立を生み出す

 消費税増税の賛成派がよく言う主張に「日本は国民負担率が低い」というものがある。国民負担率とは、その国の国民が税金と社会保険料をどの程度払っているのかという指標で、日本は2022年度現在で46.5%となっている。国民負担率の推移を見ると高度経済成長期のピークである1970年度が24.3%、消費税が3%だった最後の年である1996年度が35.2%だったことから日本が「重税化」してきたのはこの20~30年間の話だと言える。

 国民負担率の急速な上昇について「日本が福祉国家になるなら良いじゃないか」と思っている人も多いかもしれないが、実際には日本経済の認識に関して世代間対立を生み出す原因にもなっているのではないだろうか。

 

 例えば、2021年の衆院選でNNN(日本ニュースネットワーク)が行った出口調査によれば、「政府の負債が増えても経済対策を優先すべき」と回答した人は36.3%だったのに対し、「政府の負債が増えないように財政再建を優先すべき」と回答した人は56.1%にのぼり、全体では経済対策より財政再建を重視する割合が多かった。

 その一方で、年代別に見ると「経済対策を優先すべき」と回答した人は20代が50.1%、70代以上が22.7%なのに対し、「財政再建を優先すべき」と回答した人は20代が44.6%、70代以上が61.6%と割合が逆転している。若者は財政再建より経済対策を重視し、高齢者は経済対策より財政再建を重視しているようだ(図40を参照)。

 

 若者と高齢者で日本経済の認識に関して大きな隔たりがあるのは、過ごしてきた時代背景の違いが原因の一つとして考えられるだろう。私は大学時代の2013年にコンビニでアルバイトをしていたが、そのときに恐らく70~80代と思われる高齢の女性のお客さんがありとあらゆる商品が揃っているコンビニを見て「今は便利な世の中になったものだねえ」と言っていたのを覚えている。

 だが、高齢者と違って1990年代以降に生まれた若者がコンビニを見て、いちいち「今は便利な世の中になった」とは思わないだろう。高度経済成長期を過ごした世代とバブル崩壊後の日本しか知らない世代とではそれだけ価値観の相違が生じているのだ。

 

 また、大学時代から消費税に反対する活動を10年近く続ける中で、高齢者のほうが支持政党に関係なく財政破綻を心配して消費税増税に賛成する人が多いのは実感としてわかる。私は2022年6月に「日本は数年後に財政破綻する」と主張する70代の方と会って話したのだが、具体的なデータを示して「国際的な財政再建の定義は政府の負債対GDP比率の減少であり、消費税を引き下げて名目GDPが増加すれば政府の負債が増えても財政再建は可能」だということを説明しても、若造の戯言だと思われたみたいで全く話が噛み合わなかった。財政破綻論はどうやら世代間対立の問題としての側面もあるようだ。

 NNNの出口調査だけを見ると「若い世代が経済対策を優先すべきと回答しているのだから良いじゃないか」と思われるかもしれない。しかし、2022年の参院選における年代別投票率は20代が33.99%、30代が44.80%、40代が50.76%、50代が57.33%、60代が65.69%、70代以上が55.72%と中高年層のほうが高い。つまり、深刻なコロナ不況であっても消費税引き下げの議論が進まないのは、残念ながら政治的な影響力が大きい世代に経済対策を軽視した人が多いというのも原因の一つなのだ。高齢者のほうが消費税増税に賛成しているのは、高度経済成長期からバブル期にかけて長らく税金の安い時代を過ごしてきたことも無関係ではないだろう。

 

 

若者向けのセーフティネットが脆弱な「高負担・低福祉」の日本

 経済ジャーナリストの岡本一道氏が書いた『日本の税金は高すぎる?税金の国民負担率ランキング、1位は驚愕のあの国』の記事では、「OECD加盟35ヵ国における国民負担率のランキング(2018年度)」を公表している。

 このランキングによれば、国民負担率の高い国はルクセンブルクの100.8%、フランスの68.3%、ベルギーの64.1%、デンマークの63.0%、ギリシャの62.6%、オーストリアの62.2%、フィンランドの61.5%、イタリアの59.3%、スウェーデンの58.8%、ハンガリーの57.5%なのに対し、国民負担率の低い国は日本の44.3%、イスラエルの43.1%、オーストラリアの41.1%、リトアニアの40.5%、韓国の39.0%、スイスの36.7%、トルコの34.5%、アメリカの31.8%、チリの24.2%、メキシコの21.3%となっている。このランキングだけを見ると「日本はまだまだ国民負担率の低い国だから消費税を15~20%に増税しても良いじゃないか」と勘違いしてしまうだろう。

 

 しかし、世界には経済成長率の高い国もあれば低い国もあって国民負担率だけでその国の税金の重さを判断するのは不適切である。例えば、2002~2022年の名目GDPの伸び率を比較すると国民負担率が高い10ヵ国の平均は2.11倍だったのに対し、国民負担率が低い10ヵ国の平均は6.68倍にものぼっていて、国民負担率が高い国より低い国のほうが3倍近く経済成長しているのだ(図41を参照)。

 

 国民負担率が低い国の名目GDPの伸び率はトルコが39.47倍、チリが5.48倍、リトアニアが4.24倍、メキシコが3.87倍、オーストラリアが3.11倍、イスラエルが2.94倍、韓国が2.81倍、アメリカが2.29倍、スイスが1.59倍、日本が1.05倍となっている。トルコの名目GDPの伸び率が突出して高いのは激しい物価上昇が続いているだけでなく、政府総支出を2002年の1485億トルコリラから2022年の4兆7531億トルコリラまで20年間で32倍も増加させたことが大きいようだ。トルコは急速な都市化と所得の増加によって経済基盤を強化すると共に、多くの法規制を欧州連合EU)の基準と調和させ、金融や貿易を拡大して名目GDPを増やしている。

 消費税増税の賛成派は日本の国民負担率を大幅に引き上げればスウェーデンデンマークのような福祉国家がすぐに実現できると勘違いしているようだが、税金の安い国でも高負担・高福祉の国でも経済成長率が高いのは政府が社会保障や公共事業などに積極的に投資を行っているからなのだ。

 

 更に、日本の場合は高齢者向けの社会保障はある程度充実しているが、若者向けのセーフティネットは脆弱という世代間格差の問題も存在する。例えば、生活保護の利用者数(2018年度)は全体で206万8958人、75~79歳の高齢者は22万8606人なのに対し、20~24歳の若者は2万4165人程度に過ぎない。2018年の日本の総人口は1億2674.9万人、75~79歳は691.3万人、20~24歳は633.1万人なので、生活保護の利用率は全体で1.63%、75~79歳は3.31%なのに対し、20~24歳は0.38%と高齢者と若者の間で大きな差が開いている。

 生活保護を受給する資格のある人のうち実際に利用している人の割合を「捕捉率」と言って、日本の捕捉率は2018年現在で22%程度となっているが、これを年代別に算出すると75~79歳は44.6%にのぼっているのに対し、20~24歳は5.1%しかないことになってしまう。海外の捕捉率はイギリスが87%、ドイツが85%であることから日本の若者がいかに生活保護を利用できていないのかがわかるだろう。

 

 日本は長らくデフレーションが続いている影響で2002~2022年の名目GDPの伸び率がOECD加盟国の中で最低であり、若者向けのセーフティネットが脆弱なことから国民負担率が低くても十分に「高負担・低福祉」の社会だと言えるのではないだろうか。このままコロナ禍やウクライナ危機に便乗して消費税を15~20%まで増税すれば、経済が急速に弱体化して行き着く先はスウェーデンデンマークのような福祉国家ではなく北朝鮮以下の三流国だと思えてならない。

 

 

<参考資料>

国民経済計算 2022年7-9月期2次速報値

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2022/qe223_2/gdemenuja.html

消費者物価指数(CPI) 時系列データ

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00200573&tstat=000001150147

OECD Inflation(CPI)

https://data.oecd.org/price/inflation-cpi.htm

税制 スイス - 欧州 - 国・地域別に見る - ジェトロ

https://www.jetro.go.jp/world/europe/ch/invest_04.html

防衛費財源に増税提起 有識者提言「国民全体で負担を」

https://news.yahoo.co.jp/articles/e8317b917ae0ba574d31a73f50859afb6f3597e3

経団連会長 防衛費財源は負担は国民で「広く薄く」

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/209948?display=1

令和4年度の国民負担率を公表します

https://www.mof.go.jp/policy/budget/topics/futanritsu/20220217.html

若い世代は財政再建より経済対策を優先

https://news.ntv.co.jp/category/politics/966229

国政選挙における年代別投票率について

https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/

トルコの歳入・歳出の推移

https://ecodb.net/country/TR/imf_ggrx.html

トルコ経済の現状や今後の見通し、産業の特徴を徹底解説

https://turkish.jp/turkey/%e3%83%88%e3%83%ab%e3%82%b3%e7%b5%8c%e6%b8%88/

平成30年度被保護者調査

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450312&tstat=000001137806

人口推計 長期時系列データ

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00200524&tstat=000000090001

菅義偉総理大臣 あんたホントに人間か?

https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12653033504.html