消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

麻生財務大臣などコロナ不況を根性論で語る自称保守派に対する批判

定額給付金や消費税減税を否定する麻生財務大臣

 安倍首相は4月16日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急経済対策として、国民1人当たり10万円の現金を一律給付するため、2020年度の補正予算案を組み替えることを決定した。しかし、この期に及んでも現金の一律給付に懐疑的なのが財務大臣麻生太郎氏である。彼は17日の記者会見で「手を上げた方に1人10万円ということになる」と述べ、申請に基づいて給付する自己申告制になるとの見方を示した。つまり、「愛国心のある人は給付を辞退しろ」と言いたいのだろう。

 

 また、麻生氏はリーマンショック後の2009年3月に実施した「定額給付金」(全国民に1万2000円、若年者と高齢者は2万円を配布)について、今年4月1日の参院決算委員会で「国民に受けなかった。二度と同じ失敗はしたくない」と否定する発言をしている。だが、国民経済計算によれば2009年4-6月期の実質GDP成長率は年率8.7%とリーマンショックの中でも高い数値を示していて、次にこの水準を超えたのは東日本大震災からの復興が始まった2011年7-9月期の年率10.3%である(図31を参照)。

 2009年4-6月期の実質GDPの内訳を見ると民間企業設備投資が年率マイナス11.8%、民間住宅投資がマイナス34.8%だったのに対し、家計最終消費支出(帰属家賃を除く)は年率プラス5.0%にのぼっている。2009年4-6月期のGDPを下支えしたのは国民の個人消費であって、当時の定額給付金や休日高速道路料金の大幅引き下げなど矢継ぎ早な経済対策が一定の成果を上げたのではないだろうか。

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 麻生氏が言う「失敗だった」というのは2009年の衆院選自民党が大敗したことなのだろうが、それは定額給付金ではなくデフレ不況下に消費税増税行政改革などを断行しようとしたからである。1979年の大平内閣から消費税に関わった政権は必ず選挙で負けていて、最近でも2019年の参院選自民党は9議席も減らしている。麻生氏が現金の一律給付を否定するために首相時代の政策まで失敗だったと言い張るのは、彼自身が2009年当時より政治家として劣化してしまったからなのかもしれない。

 今回の現金給付はコロナウイルスの感染拡大を防止するための生活支援策であって、経済対策とは異なり国民に自粛を強制させるなら所得補償を行うのが当然のことである。

 

 更に、麻生氏は4月13日に感染拡大を受けた経済対策として消費税の減税を求める声があることについて「今の段階で消費税を引き下げることは考えていない」と述べ、2025年度までに国の収入と支出の釣り合い状態を表すプライマリーバランス基礎的財政収支、以下PB)を黒字化させる目標についても「今回、借入金が増えるのでPBが悪くなるが、この目標を放棄するという考えはない」と発言した。

 『今こそ知りたい「消費税増税と法人税減税」の関係』の記事でも書いた通り、1980年代以降の名目GDP成長率とPBは相関関係があることが確認され、コロナウイルスの影響で経済成長率が落ち込んだらPBを強引に改善させるために、今後消費税を15~20%まで引き上げる話が出てくるかもしれない。

 

 その上、麻生氏は「国の借金(政府の負債)を返していくという姿勢がなければ、マーケットでとたんに日本の国債が売りを浴びせられかねない」とも言ったが、消費税10%増税の時期が2015年10月から2019年10月に変更されても国債が暴落するような事態は発生しなかった。

 麻生氏は自民党幹事長時代の2008年8月に、国・地方を合わせた財政赤字に関して「800兆円の借金があって大変だという話が出回っているが、あれは総負債だ。総負債と、(資産を含めた)純負債を取り違えるかのごとき話は、不必要に世の中の不安をあおっている」と政府の負債は問題ないと発言しており、幹事長から財務大臣に出世して真逆の主張をするのは卑怯である。

 

 

安倍政権を擁護するために根性論を煽る自称保守派

 しかし、こうした経済の現状認識が全くできておらず、主張をどんどん変える麻生氏を必死で擁護しているのが高須克弥氏をはじめとする安倍政権の熱烈な支持者たちだ。高須氏は4月12日、コロナウイルスによる休業などで生活が困難になった人々が「国民全員に現金給付を」と声を上げ、安倍首相や麻生氏の私邸など高級住宅街を歩くデモを決行したことに対して、「みんなが一丸となって我慢しているときに、わがまま言って邪魔するのは非常に悪いことです」とツイッターで述べた。

 

 だが、高須氏は2019年1月の夕刊フジの記事で「消費税を50%くらいにして、それ以外の税は一切無しにすべき」と発言しており、積極財政を求める声を黙らせるために現金給付を求めるデモを非難したのではないかと思ってしまう。私は2012年から消費税増税反対のデモに参加しているが、いよいよ増税に反対すると安倍政権の支持者から「非国民」扱いされる時代が来てしまったようだ。

 麻生氏のような政治家や高須氏のような著名人が「国に頼らずコロナ不況を乗り越えろ」と根性論に基づく発言をしているのを見る度に、どうしても戦時中の「欲しがりません勝つまでは」「ぜいたくは敵だ!」といったスローガンを連想してしまう。

 

 また、今回のコロナウイルスでは自称保守の劣化も改めて浮き彫りにしたように感じる。例えば、産経新聞編集委員宮本雅史氏は若者が外出制限を守らずに行動し、他人に感染させるリスクを考えていないとして「義務を軽視、自分さえ良ければいいという間違った個人主義を注入し続けてきた戦後教育の末路を見る思いだ」と極論を述べている。

 しかし、クロス・マーケティングが3月27~29日にかけて「現在、どんな行動を実行できているか」と各年代の男女に聞いたところ、「商業施設への買い物」と答えた人が60代の男性で42.8%、女性で42.0%にのぼったのに対し、20代の男性で25.6%、女性で26.8%と高齢者よりも若者のほうが外出自粛に積極的な結果が出た。結局のところ、産経新聞コロナウイルスに便乗して根拠なく若者へのバッシングを煽りたいだけだろう。

 

 その上、宮本氏は国民に過剰な自粛を強制したら、経済的に困窮する人も多くなるという事実をわかって前述の発言をしているのか。家計最終消費支出(帰属家賃を除く)は2014年1-3月期の247.7兆円から2019年10-12月期の231.5兆円まで5年半で16.2兆円も減少していて、個人消費コロナウイルス以前から著しく落ち込んでいるのだ(図32を参照)。これが更にゴールドマン・サックスの予想通り、実質GDPが25%も減少したら2020年4-6月期の家計最終消費支出は173.6兆円まで落ち込んで日本は後進国に逆戻りすることが確実となるだろう。

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 2011年の東日本大震災のときは元航空幕僚長田母神俊雄氏が「自粛が長期間続いてはどんどん景気が悪くなり、震災復興にさえ悪影響が出てくる」と発言し、政府が過剰な自粛を求めていたことを批判する動きもあった。だが、今回のコロナウイルスでは自称保守派が安倍政権を擁護するために根性論を煽り、仕事などでやむを得ず外出する人まで政府に協力しない非国民であるかのように誹謗中傷しているのが非常に残念である。

 日本がコロナウイルスから早期に復興するために政府はPB黒字化目標を破棄して消費税の廃止を決断し、イギリスが実施しているように休業要請に協力してくれた企業に対して従業員の給与を8割以上補償すべきだろう。

 

 

<参考資料>

上念司 『デフレと円高の何が「悪」か』(光文社、2010年)

田母神俊雄 『ほんとうは強い日本』(PHP研究所、2011年)

 

首相、令和2年度補正予算案の組み換え指示

https://www.sankei.com/politics/news/200416/plt2004160032-n1.html

麻生氏「手あげたら10万円」 給付は自己申告との見方

https://www.asahi.com/articles/ASN4K4CF2N4KULFA00P.html

麻生氏「同じ失敗したくない」 現金給付、一律では実施せず

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020040101191&g=eco

国民経済計算 2019年10-12月期2次速報値

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2019/qe194_2/gdemenuja.html

麻生財務相「消費税引き下げ 考えていない」

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200413/k10012383901000.html

高須院長 安倍首相私邸付近での「金を出せ!」デモに怒り

https://news.nifty.com/article/entame/showbizd/12278-628322/

軽減税率なんて混乱のもとだよ 消費増税の問題点

https://www.zakzak.co.jp/soc/news/190108/soc1901080008-n1.html

【喝!日本】なぜ若者はコロナ感染に“無関心”?

http://www.zakzak.co.jp/soc/news/200407/dom2004070003-n1.html

新型コロナで外出自粛でも「買い物・旅行」、60代が最も活発

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2004/03/news098.html

新型コロナの補償は英国を見習え!

https://www.youtube.com/watch?v=pNulzxJunhc