消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

国民の側から消費税引き下げを求める世論を盛り上げよう

増税とコロナの影響で戦後最悪を記録した経済成長率

 内閣府が8月17日に発表したGDP速報値によれば、物価変動の影響を除いた2020年4-6月期の実質GDP成長率は年率マイナス27.8%と戦後最悪の落ち込みだった。個別の項目を見ると、民間住宅投資が年率マイナス0.8%、民間企業設備投資が年率マイナス5.8%なのに対し、民間最終消費支出は年率マイナス28.9%、家計最終消費支出(帰属家賃を除く)は年率マイナス35.6%と、消費税10%増税新型コロナウイルスによる個人消費の極端な落ち込みが実質GDPの大幅な下落につながったと思われる。

 

 図66では2009年10-12月期から2020年4-6月期の実質GDP成長率の推移を示したが、これを見ると経済成長率は民主党政権(2009年10-12月期~2012年10-12月期)の時代に年率平均1.69%だったのに対し、安倍政権(2013年1-3月期~2020年4-6月期)では年率平均マイナス0.14%まで下落している。特に実質GDP成長率は2019年10-12月期から3期連続でマイナスを続けていて、消費税増税による景気悪化に新型コロナウイルスが追い討ちをかけたのではないだろうか。

 西村康稔経済再生担当大臣は「政府としては経済を内需主導で成長軌道に戻していくことができるよう、引き続き当面の経済財政運営に万全を期す」と発言したが、7月からキャッシュレス還元を終了してレジ袋を有料化した影響で、個人消費はほとんど回復せず2020年7-9月期の実質GDP成長率もそこまで伸びないのではないかと予想される。

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 しかし、リーマンショックを超える深刻な不況にも関わらず、自民党幹部は相変わらず消費税を引き下げることに対して否定的である。例えば、岸田文雄政調会長時事通信のインタビューで「消費税は下げるべきではない。10%に引き上げるだけで、どれだけの年月と努力が求められたか。なおかつ消費税は社会保障の重要な財源となっている。社会保障の充実が言われているときに、この基幹税を軽減することはいかがなものだろうか」と発言している。

 だが、消費税収のほとんどは法人税減税に消えていて、1989~2019年度まで日本人が払った消費税は計396.4兆円なのに対し、法人税は国と地方合わせて税収が29.8兆円であった1989年度と比較すると計297.7兆円も減収しており、これは消費税収の75.1%が法人税減税の穴埋めに消えた計算になる(図67を参照)。

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 また、内閣府の「社会保障と税の一体改革における財源使途の状況」によれば、消費税8%増税の初年度2014年度の増収分は4.95兆円だったが、このうち社会保障の充実に使われたのは0.5兆円と全体の10%に過ぎない。更に、安倍政権は2013年以降の約6年で診療報酬や介護報酬、生活保護などの社会保障費を少なくとも3兆8850億円も削減したことが明らかになっている。日本で社会保障を充実させるためには、消費税増税ではなくプライマリーバランス黒字化目標の破棄こそが必要なのだ。

 この他にも、甘利明税制会長は消費税減税について「下げた翌年にはありがたみが消える。一部相当額を現金給付したほうが経済の刺激効果がはるかに高い」と述べたが、それなら新型コロナウイルス景気対策として国民に毎月10万円を支給したほうが良いということになる。しかし、それもプライマリーバランス黒字化目標を堅持する限り実現することはないだろう。甘利氏は結局のところ、消費税引き下げを否定して緊縮財政を正当化するために現金給付を持ち出しているだけではないだろうか。

 

 

消費税引き下げが世界の潮流になりつつある

 自民党幹部が消費税引き下げを否定する一方で、世界では新型コロナウイルスの影響で付加価値税を減税する動きが相次いでいる。7月24日のしんぶん赤旗によれば、経済対策として付加価値税を引き下げた国は19ヵ国にものぼると報道された。既に述べた通り、ドイツは2020年7~12月の期間限定で付加価値税を19%から16%、軽減税率を7%から5%に引き下げ、イギリスでもレストランや娯楽施設に適用される付加価値税を2020年7月から2021年1月まで20%から5%に減税している。

 

 また、オーストリアでは接客業・文化関係などの税率を10%から5%、ベルギーではホテル・レストランなどの税率を12%から6%、ブルガリアではレストラン・書籍などの税率を21%から10%、コロンビアでは接客業・レストランなどの税率を8%から0%、コスタリカでは標準税率を13%から9%、文化イベントなどの税率を7%、キプロスではホテル・レストランなどの税率を9%から5%、チェコでは宿泊・スポーツ・文化関係などの税率を15%から10%、ギリシャでは公共交通・運輸などを24%から13%、ホテルなどを9%から5%、ケニアでは標準税率を16%から14%、リトアニアではホテル・レストランなどを21%から9%、モルドバではホテル・レストランなどを20%から15%、ノルウェーでは映画・ホテル・公共交通などを12%から6%、トルコではホテル・国内航空券などを18%から1%、ポルトガルではマスク・消毒剤を23%から6%、ウクライナでは文化イベントを20%から0%、韓国では個人事業主付加価値税納税を減額・免除、中国では中小業者の標準税率を3%から1%に引き下げた(画像を参照)。

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 消費税を減税した国々の一覧を見ると、特にホテルやレストランの税率を引き下げた国が多いことがわかる。日本では2020年7月22日から8月31日までの期間限定で、旅行代金の35%相当(上限は1人1泊あたり14000円)を割引する「Go To トラベルキャンペーン」を実施しているが、申請方法が非常にややこしくブランド総合研究所の調査によればキャンペーンを活用して旅行を予約している人は3.0%に留まるなど、その利用については理解が十分に進んでいるとは言えない状況である。政府が本当に新型コロナウイルス景気対策として国民の消費を喚起させたいのであれば、まずは消費税を5%に引き下げて短くても2021年8月まではホテルやレストランの税率を0%にすべきではないだろうか。

 

 更に、消費税引き下げを求める世論を盛り上げるためには国民がもっと政治経済の問題に関心を持つ必要があると感じる。例えば、社会心理学者の三浦麻子氏などの研究グループが今年3~4月に行った意識調査によれば、「新型コロナウイルスに感染する人は自業自得だと思う」という質問に対して「そう思う」と答えた人の割合は、アメリカが1.0%、イギリスが1.5%、イタリアが2.5%、中国が4.8%なのに対し、日本は11.5%にものぼったことが明らかになった。国民の側から消費税引き下げや粗利補償を求める声がほとんど上がらないのも、多くの人がコロナ不況を自己責任だと勘違いしているからだろう。

 こうした状況を変えて消費税引き下げを実現するためには、周囲の家族や友人と積極的に政治経済に関する会話をして、早ければ今年中の実施が予想される衆院選では自民・公明・維新以外の反緊縮を掲げる政党に投票すべきだと思う。このブログで何度も述べているように、安倍政権が「消費税を5%に戻さないと政権を失う恐れがある」と危機感を抱けば消費税引き下げを決断するきっかけになるかもしれない。

 

 

<参考資料>

国民経済計算 2020年4-6月期1次速報値

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2020/qe202/gdemenuja.html

経財相、4~6月GDP「経済を人為的に止めた影響で、厳しい結果に」

https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL17HTG_X10C20A8000000/

消費税「下げるべきでない」 自民・岸田文雄政調会長インタビュー

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020080500837&g=pol

新勢力の結集めざし熱こもる山本太郎の演説

https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/11671

社会保障費3.9兆円削減 安倍政権の6年間

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-10-26/2018102601_01_1.html

自民・甘利氏、消費減税に否定的 「現金給付した方が効果高い」

https://www.tokyo-np.co.jp/article/47823/

消費税 19カ国が減税 コロナ禍経済対策

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2020-07-24/2020072401_01_1.html

Go To トラベルキャンペーンについて

https://travel.rakuten.co.jp/special/goto/

Go To トラベルキャンペーン、予約済みはわずか3%

https://response.jp/article/2020/08/04/337218.html

「コロナ感染は自業自得」日本は11%、米英の10倍…阪大教授など調査

https://www.yomiuri.co.jp/national/20200629-OYT1T50107/