消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

消費税3%減税と公務員増加で名目GDP700兆円を目指そう

消費税が3%なら名目GDPは700兆円を超えていた

 内閣府が5月18日に発表したGDP速報値によれば、物価変動の影響を含めた2020年1~3月期の名目GDP成長率は年率マイナス3.1%の落ち込みだった。個別の項目を見ると、民間最終消費支出が年率マイナス3.6%、家計最終消費支出(帰属家賃を除く)が年率マイナス4.8%、民間企業設備投資が年率マイナス3.8%、民間住宅投資が年率マイナス16.9%と個人消費より住宅投資の下落が大きい結果となった。

 しかし、2019年10~12月期の名目GDP成長率は年率マイナス6.0%、家計最終消費支出(帰属家賃を除く)は年率マイナス11.4%だったので、新型コロナウイルスよりも消費税増税の影響のほうが大きかったと言うこともできるだろう。

 

 安倍政権は2015年9月24日に「アベノミクス新三本の矢」を発表し、希望を生み出す強い経済として2020年までに名目GDPを600兆円にする目標を掲げた。だが、日本経済研究センターによれば2020年度の名目GDP成長率はマイナス7.3%に落ち込むと予想していて、この目標が達成されることはないと思われる。そもそも日本の名目GDPは90年代後半以降の自民党が緊縮財政を行わず、消費税が3%のままだったら今頃700兆円を超えていた可能性が高いことは経済学者もなかなか指摘しないのではないだろうか。

 日本経済はバブル崩壊と言われていた90年代半ばまで着実に成長していて、1989~1996年度の家計最終消費支出(帰属家賃を除く)は年平均で7兆1528億円も増加していた。2019年度の家計最終消費支出は245.9兆円だが、もし消費税が3%のままで家計消費が毎年7兆1528億円も増加したら2019年度は403.7兆円にのぼっていたことが予想される。そうなると2019年度の名目GDPは552.1兆円だが、消費税が3%のままだったらGDPは157.8兆円も押し上げられて709.9兆円になっていただろう(図39を参照)。

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 また、「消費税増税後の景気悪化から逃げ続ける安倍政権」の記事でも説明した通り、安倍政権ではGDPの算出方法を平成17年基準から平成23年基準に変更した際に、研究開発費とは関係ない「その他」の部分を大幅に加算したことが問題になっている。平成23年基準で2019年の名目GDPは553.7兆円と安倍政権以前に過去最高だった1997年の534.1兆円を超えているが、平成17年基準では520.5兆円とまだ1997年の523.2兆円を超えていない(図40を参照)。

 安倍政権は名目GDPを33兆円もかさ上げした以上、GDPの目標値を600兆円から630兆円に再設定すべきではないだろうか。

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 最近では「先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは起こらない」「インフレ率を調整しながら、財政赤字を拡大して経済を成長させていく」という考え方をMMT(現代貨幣理論)と呼ぶが、もし2000年代までにMMTの考え方が一般化していたら消費税10%増税はなく、デフレ不況が20年以上続くこともなかっただろう。MMTの考え方は全く正しいが、消費税増税が決定されてから台頭するのでは「時すでに遅し」というのが現実である。

 新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化してから早くも3ヵ月が経とうとしているが、安倍政権は未だに消費税引き下げを決断できずにいる。政府が消費税引き下げを決定しないのであれば野党が言うしかない。野党は消費税を3%に減税して、2030年までに名目GDPを700兆円にする独自の経済目標を発表すべきではないだろうか。安藤裕氏や玉木雄一郎氏のような消費税減税に言及する国会議員がもっと増えることを願うばかりである。

 

 

公務員人件費を増やせば名目GDPも増加する

 2019年5月に設立した新政党の「オリーブの木」の代表を務める黒川敦彦氏がれいわ新選組の公務員を増やす政策を痛烈に批判した動画が今年2月に話題になった。黒川氏は2017年の衆院選で無所属として出馬した際に山本太郎氏と共闘しており、私も2018年4月に上野で行われた政治イベントで彼と会ったことがある。安倍政権を鋭く批判していた頃の黒川氏を知っているからこそ、「オリーブの木」の最近の動画を見ていて変節ぶりが非常に残念に思う。

 黒川氏は「世界と比べて日本の公務員給与が異常に高いのにこれ以上公務員を増やすとか正気か?」と述べているが、問題にすべきなのは公務員の給与が高いことではなく1997年以降に民間企業の平均年収が減少してきていることだろう。また、黒川氏は「国民の平均所得が440.7万円なのに対し、東京都の公務員は752.6万円、国家公務員は911.1万円、地方公務員は881.8万円」とデータを示しているが、正しいのは「国民の平均所得」だけで後の公務員給与は少し調べれば嘘であることがわかる。

 

 人事院の公務員白書によれば、2018年の国家公務員の平均月収は41万7230円なのでこれに12を掛けると500万6760円、管理職を除く行政職員の期末・勤勉手当は136万2600円なので合計636万9360円と黒川氏が示したデータより100万円以上も少ない。その上、バブル期の1989年には国家公務員の平均年収(458.3万円)よりも民間企業に勤める男性の平均年収(492.8万円)のほうが多かった。

 この間、資本金10億円以上の大企業の内部留保は1989年の99兆円から2018年の369兆円まで3.7倍も増加していて、公務員と民間企業の「官民格差」が広がったのは公務員の給与を決める人事院勧告のせいではなく、デフレ不況が長期化して企業が内部留保をため込んでいるからである(図41を参照)。高校生や大学生の就職希望先ランキングで常に「国家公務員」と「地方公務員」が上位に来ているのも、民間企業が内部留保を活用して賃上げすることをせず、業績が悪化すれば整理解雇やコスト削減を行うことばかり必死になっているからこそ、安定した公務員が人気なのではないか。

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 更に、政府が公務員数を増やして失業者や低所得者を雇えば、GDPの構成要素の一つである「政府最終消費支出」が増加して国の経済成長にも繋がる。政府最終消費支出とは、医療費・介護費の政府負担分や公務員給与の支払いなどを表した額である。国民経済計算を見ると、名目GDPに占める政府最終消費支出の割合はリーマンショック東日本大震災が発生した2008~2011年の時期に増えていて、デフレ不況のときは公務員人件費が景気の下支えをしているのだ(図42を参照)。

 公務員・公的部門職員の人件費(2014年)は高負担・高福祉のデンマークで16.6%、フィンランドで14.2%、小さな政府を志向するアメリカで9.9%、イギリスで9.4%なのに対し、日本は6.0%とOECD加盟国の中でも最低である。特に今後は新型コロナウイルスの影響で大量の失業者が生まれると予想され、日本が景気対策として公務員人件費を増やす余地はまだまだあるだろう。

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コロナ増税という緊縮の流れを作ってはいけない

 元大阪府知事橋下徹氏は4月21日に自身のツイッターで、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた政府の10万円一律給付について「給料がびた一文減らない国会議員、地方議員、公務員は受け取り禁止となぜルール化しないのか」と訴え、その上で「それでも受け取ったら詐欺にあたる、懲戒処分になると宣言すればいいだけなのに」と政府の方針に疑問を呈した。これに呼応するかのように、菅官房長官は自身が給付金を受け取るかどうかを問われた際に「常識的には申請をしないと思う」と述べている。しかし、菅氏が給付金を受け取られないと、そのぶん財政支出や消費が減って国民の所得も増えなくなる。国民が所得減少に苦しんでいる以上、申請しない、あるいは預金するという選択肢は政治家の場合、あり得ないのではないだろうか。

 また、広島県の湯崎知事は休業した事業者に支給する支援金の財源に、国から県の職員に給付される10万円の活用を検討していることを明らかにしたが、これは明確な私有財産権の侵害だろう。地方公務員は総職員数が2005年の304.2万人から2016年の273.7万人まで11年間で30.5万人減少したのに対し、臨時・非常勤の職員数は2005年の45.6万人から2016年の64.3万人まで11年間で18.7万人も増加している(図43を参照)。広島県知事はこうした不安定な働き方を強いられている非正規公務員の給付金までも奪おうとするのだろうか。地方交付税の総額は2000年の21.4兆円から2019年の16.2兆円まで減少していて、休業補償を行うなら職員の給付金を活用するのではなく政府に地方交付税の増額を求めるべきだろう(図44を参照)。

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 更に、地方自治体が「身を切る改革」というスローガンのもとで公務員の給与を削減すると、他の自治体にも同調圧力が及んで最終的に「コロナ増税」という緊縮の流れが出来上がってしまうかもしれない。実際に、2011年の東日本大震災のときも復興財源を捻出するために2012~13年度に手当を含めた公務員給与が平均7.8%削減され、「社会保障と税の一体改革」として消費税増税法人税減税が同時に実施されたのである。

 前述の橋下徹氏は報道番組などで「国が財政破綻する覚悟で休業補償を行うべき」と事実に基づかない発言を繰り返していることから、新型コロナウイルスが収束した後に消費税増税や公務員給与の削減を煽ってくることは確実だろう。だが、すでに日本国債の46.8%は政府の子会社である日銀が所有していて、このぶんは政府が返済や利払いを行う必要はなく2010年代以降に日本の財政は急速に健全化しているのだ。政府が新型コロナウイルス対策として休業補償を行ったとしても、後で増税や歳出削減などを通して返済する必要は全くないのである。

 むしろ、日本が本当にデフレを脱却するためには消費税引き下げと公務員人件費の拡大を同時に実施すべきだろう。

 

 

<参考資料>

明石順平 『アベノミクスによろしく』(集英社インターナショナル、2017年)

藤井聡MMTによる令和「新」経済論 現代貨幣理論の真実』(晶文社、2019年)

三橋貴明 『世界でいちばん!日本経済の実力』(海竜社、2011年)

全労連・労働総研編 『2019年国民春闘白書・データブック』(学習の友社、2018年)

 

国民経済計算 2020年1-3月期1次速報値

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2020/qe201/gdemenuja.html

アベノミクス「新3本の矢」を読み解く

https://www.nikkei.com/article/DGXZZO92034300U5A920C1000000/

徐々に経済再開も、20年度マイナス7%成長

https://www.jcer.or.jp/economic-forecast/20200518-2.html

公務員の給与が高い。解説と改革案。

https://www.youtube.com/watch?v=wrSOyOUx1ig

平成30年度 公務員給与の実態調査

https://www.jinji.go.jp/hakusho/h30/1-3-03-1-3.html

国家公務員のボーナスを知る(2018年)

https://kyuuryou.com/w37-2018.html

2年間で9兆円増えた内部留保 法人企業統計より

https://blog.goo.ne.jp/saitamajitiken/e/8000dbb09afad1d324ccc60eb999fc00

大企業現金・預金66.6兆円 バブル期超え過去最高

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik19/2019-09-25/2019092501_02_1.html

橋下徹氏の10万円給付「公務員は受け取り禁止」提案

https://www.excite.co.jp/news/article/Real_Live_200019157/

ピンハネ税により、現金給付は実は9万円

https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12591463740.html

地方公共団体の総職員数の推移

https://www.soumu.go.jp/main_content/000608426.pdf

地方公務員の臨時・非常勤職員調査結果

https://www.soumu.go.jp/main_content/000476494.pdf

地方交付税等総額(当初)の推移

https://www.soumu.go.jp/main_content/000671432.pdf

橋下徹氏の財政破綻発言!】国民の命or財政破綻

https://www.youtube.com/watch?v=MxfvjV-JNhw

国債等の保有者別内訳(令和元年12月末速報)

https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/appendix/breakdown.pdf