消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

亀井静香氏は消費税廃止を掲げて国政に復帰すべきだ

2001年、亀井氏が総理大臣に就任すべきだった

 私は基本的に山本太郎氏を応援しているが、ベテラン政治家の中で支持しているのが運輸大臣建設大臣国民新党代表などを歴任した亀井静香氏である。亀井氏は2017年に衆議院議員を引退してしまったが、現在でも保守の立場から消費税増税やTPPなどの新自由主義政策を批判していて、分厚い中間層を築き上げてきた古き良き時代の自民党を象徴する人物だと言えるだろう。

 

 亀井氏が最も総理大臣になれる可能性があったのは、森首相の辞任を受けて実施された2001年4月24日の自民党総裁選だろう。この総裁選では麻生太郎橋本龍太郎亀井静香小泉純一郎の4人が立候補し、当初は首相在任中に消費税を増税して景気を悪化させたことを謝罪した橋本氏が優勢だったが、最終的に小泉氏が当選した理由については森永卓郎著の『なぜ日本だけが成長できないのか』(角川新書、2018年)に詳しく書かれている。

 

 森永氏は2001年当時、テレビ朝日の報道番組「ニュースステーション」のコメンテーターを務めていて、総裁選の直前には同番組で候補者を一堂に集めて生放送の政策討論をしてもらうという企画を立てた。しかし、番組では亀井氏がこともあろうにニュースステーションの司会をしていた久米宏氏に対する批判から始めてしまい、それが小泉を除く3候補の間ではとても受けた。彼らはテレビ朝日のスタンスがいかに間違っていて、自民党が正しい政策を採っているかということで盛り上がってしまったのだ。その一方で、小泉氏は番組の最後に「こんなくだらない内輪もめばかりしているから、自民党はダメなんだ。自民党をぶっ壊す。構造改革だ!」と叫んだ。

 それから泡沫候補と呼ばれていた小泉氏の人気はうなぎのぼりとなり、総裁選でも地方票141票のうち123票を獲得する圧倒的な勝利を手にしている。内閣支持率も森政権の末期だった2001年4月の7%から小泉政権が始まった同年5月の81%まで大幅に上昇した。

 

 だが、小泉首相のスローガンだった「痛みを伴う改革」とは、結局のところ低所得者に痛みを強いるだけで終わったと言えるだろう。正規雇用数は2001年の3640万人から2006年の3415万人まで225万人も減少したのに対し、非正規雇用数は2001年の1360万人から2006年の1678万人まで318万人も増加してしまった。

 民間企業の平均年収も2001年の454万円から2006年の435万円まで19万円減少したのに対し、年収200万円以下で働くワーキングプア層は2001年の862万人から2006年の1023万人まで161万人も増加している。図33では1984年から2018年にかけての正規雇用数とワーキングプア層の推移を示した。

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 小さな政府で財政再建を目指す小泉政権は、1998年度にピークの14.9兆円だった公共事業関係費を2001年度の11.4兆円から2006年度の7.8兆円まで削減した。それにも関わらず、俗に「国の借金」と言われる国債や借入金、政府短期証券を合わせた政府の負債は2001年の582.5兆円から2006年の832.3兆円へと約250兆円も増加し、名目GDPは2001年の523.0兆円から2006年の526.9兆円まで約4兆円しか増加しなかったため、「政府の負債残高対GDP比率」が大幅に増加して小さな政府による財政再建は失敗に終わったと言えるだろう。

 

 更に、2005年の衆院選では亀井氏など郵政民営化に反対する議員を「抵抗勢力」と呼び、自民党から排除したことも問題になった。亀井氏は同選挙で刺客として送り込まれた堀江貴文氏について「彼は優秀な青年なんだろうが、今の時代の風潮に染まり楽して儲けようとした典型だ。まさに現代社会が産んだ申し子と言えるね」と述べている。堀江氏は後に「ベーシックインカムを導入する代わりに消費税を20%まで引き上げろ」と発言し、貧困問題について自己責任論を強要する発言を繰り返していることから、亀井氏が自身の実力と経験を生かして堀江氏を落選させたことは大きかったのではないだろうか。

 もし、2001年の総裁選で小泉氏の代わりに積極財政を推進する亀井氏が総理大臣になっていたら、名目GDPや民間企業の平均年収が増加して日本経済はもっとマシな状況だったのではないかと思ってしまう。

 

 

自然と共存しながら公共事業を進めていく亀井氏

 また、私が亀井氏を支持する理由として保守の立場から原発に反対していることも大きい。亀井氏は著書『晋三よ! 国滅ぼしたもうことなかれ』(メディア・パル、2014年)の中で「脱原発は子供だってわかる理屈」として『原発はひとたび事故を起こすと、人の手ではどうしようもないことは福島の事故で実証済みだ。東日本大震災から3年半以上が過ぎたが、福島第一原発放射性物質を出し続け、海や山、川、大地を汚染している。半減期が何十年という放射性物質がまき散らされ、ただちに健康への被害がなくても癌や白血病などを将来的に発病させる危険性は高い』と述べている。

 この本から更に6年が経過して、東日本大震災福島第一原発事故が発生してから今年で9年となったが、震災の記憶が風化して国政選挙では原発の是非について全く議論されなくなってしまった。今年は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、3月11日に予定していた政府主催の追悼式も中止されている。

 

 だが、震災から9年が経っても福島第一原発事故は決して収束などしておらず、原発の下請け労働者は現在でも被曝しながら大変危険な作業に従事している。2019年4月には、東京電力外国人労働者廃炉作業の続く福島第一原発の現場に受け入れる方針を明らかにしたことが問題にもなった。

 厚労省は日本語が不慣れな外国人労働者放射性物質の残る現場で働くことは労災事故につながりかねないとして受け入れ方針の見直しを促したが、そもそも原発の作業員に外国人がいることは今に始まった問題ではなく、1977年にも敦賀原発で約60名の黒人労働者が働かされていたことが国会でも追及されている。昔から原発外国人労働者が切っても切れない関係なのは、日本人だったら被曝の基準値を大幅に超える違法労働として問題になってしまうからだろう。

 

 更に、経産省は「経済のために原発の再稼働が必要だ」と言っているが、東日本大震災が発生した2011年にはアメリカでも景気が回復していたのに対し、日本では福島第一原発事故の影響で再びマイナス成長に戻っていて、原発は事故を起こせば日本経済にも大きな悪影響を与えてしまうのである。特に、県民経済計算を見ると2011年度の名目GDP成長率(平成17年基準)は岩手県がプラス1.7%、宮城県がマイナス2.7%なのに対し、福島県はマイナス9.9%と被災地の中でも落ち込みが大きいことがわかる(図34を参照)。

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 しかし、政府は福島第一原発事故の被災者に対して十分な補償を行ったと言えるだろうか?例えば、2017年3月には避難指示が出ていない区域から避難した「自主避難者」への住宅の無償提供が打ち切られている。自主避難者と聞くと、「自分で勝手に逃げただけでしょ」と思われるかもしれないが、実際には子供の被曝を心配して福島から避難した親御さんも多いのである。安倍政権は「社会保障を全世代型に変える」と言うなら、まずは原発事故避難者への支援をもっと充実させて、二度と悲惨な事故を起こさないよう日本全国の原発廃炉にしていくべきだろう。

 

 だが、震災後に脱原発を掲げた小泉純一郎氏をはじめとして、「原発に反対している者は公共事業にも反対している」とイメージを持っている人も多いのではないだろうか。逆に、国土強靭化を推進する経済評論家の三橋貴明氏や藤井聡氏などは原発賛成派でもある。

 しかしその点、亀井氏は『スーパーゼネコンを通すような大物の公共事業ではなく、小さなものでいいから地方の小さな建設会社が受注できるようなものに対して金を出せばいい』と述べ、電線の地中化や公園の緑地化などを推進しているのだ。自然と共存しながら公共事業を進めていく亀井氏は、首相在任中に緊縮財政を推進した小泉氏とは一線を画していると言えるだろう。

 

 

「日本のマハティール」となって消費税を廃止すべき

 だが、そんな亀井氏の中でもいくつか疑問に思う主張が存在する。例えば、『月刊日本2020年4月号』の中で新型コロナウイルスについて「安倍首相は全国の小中学校と高校、特別支援学校に臨時休校を要請したが、あの程度ではどうしようもない。学校を休校にするというなら、大学も休校にすればいい。場合によっては地下鉄だって止めればいい。そうすれば人の動きは一気になくなるよ。新幹線も止めればいい。『そんなことをすると生活が不便になる』と言う人がいるけども、昔の日本人は新幹線も飛行機もなく生活していたんだ。人類を滅ぼしかねないウイルスが襲ってきているときに、悠長なことは言っていられないんですよ」と発言した。

 

 しかし、私が心配しているのは過剰な自粛によって経済的に困窮する人が増加して、コロナウイルスが収束した後に日本経済が大きく衰退してしまう可能性である。確かに戦後復興期の日本は新幹線がなくても成り立っていたのかもしれないが、その一方で少年犯罪が非常に多くて未成年の殺人件数は2016年が54人(少年人口比10万人当たり0.47人)なのに対し、1951年は448人(少年人口比10万人当たり2.55人)にのぼっている。

 図35では1936年から2016年にかけての「1人当たりの実質GDP(米国ドル)と10万人当たりの未成年の殺人犯検挙人数」の推移を示したが、これを見ると1970年代以降に実質GDPが増加して治安も大幅に改善されていったことがわかる。コロナウイルスの感染拡大を防止するのと引き換えに、日本を後進国に戻すようなことがあってはならないのだ。高度経済成長期を過ごしてきた元警察官僚の亀井氏もその点については熟知しているだろう。

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 また、亀井氏は前述の『晋三よ! 国滅ぼしたもうことなかれ』の中で、20~30代の若い人たち無党派層が増えていることについて「小泉改革で日本をむちゃくちゃにしたことも無駄ではなかったと言えるな」と述べているが、2017年の衆院選では若年層ほど自民党に投票した割合が高いという調査もある。

 外国人労働者の受け入れを拡大する入管法改正についても、共同通信が2018年11月に行った調査によれば賛成の割合は60代以上が37.9%程度だったのに対し、40~50代は54.9%、30代以下は66.3%と若年層ほど高く、「左傾化した若者」が移民受け入れを推進する安倍政権を支持しているのが現実なのだ。保守もリベラルも新自由主義に反対する者は、「日本が不況から抜け出せないのは改革が足りないからだ」と勘違いした人がまだまだ多い状況をもっと憂慮すべきではないだろうか。

 

 最近では山本太郎氏だけでなく、自民党内でも安藤裕氏など消費税廃止を掲げる議員が増えてきた。だが、山本氏の政治経験はまだ6年(2013~2019年)、安藤氏の政治経験はまだ7年半(2012年~)なので総理大臣になるには早いという意見もあるだろう。そこで私は政治経験が38年(1979~2017年)の亀井氏を総理大臣にして、山本氏や安藤氏を厚労相財務相として入閣させることを提案したい。

 亀井氏は衆議院議員を引退してしまって年齢的に厳しいかもしれないが、2018年にはマレーシアで92歳のマハティール氏が消費税廃止を掲げて再び首相に就任した。日本でも82歳の森喜朗氏が東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の会長を務めており、日本維新の会片山虎之助氏は84歳で参議院議員を続けている。83歳の亀井氏も国会議員に復帰して消費税廃止に尽力することはまだ可能だろう。亀井氏は新自由主義に反対する保守の政治家として「日本のマハティール」になってほしいと思っている。

 

 

<参考資料>

堀江邦夫 『原発ジプシー 増補改訂版 ―被曝下請け労働者の記録』(現代書館、2011年)

雨宮処凛 『一億総貧困時代』(集英社インターナショナル、2017年)

亀井静香安倍総理、日本を死滅させるつもりか」 『月刊日本』(ケイアンドケイプレス、2020年4月号)

 

労働力調査 長期時系列データ

https://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.html

民間給与実態統計調査

https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/jikeiretsu/01_02.htm

公共事業関係費(政府全体)の推移

https://www.mlit.go.jp/page/content/001324440.pdf

過去の国債及び借入金並びに政府保証債務現在高

https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9850043/www.mof.go.jp/jgbs/reference/gbb/data.htm

国民経済計算 2019年10-12月期2次速報値

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2019/qe194_2/gdemenuja.html

3・11追悼式 政府中止 被災3県でも中止・縮小相次ぐ

https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/202003/CK2020030702000157.html

福島原発の特定技能外国人就労「極めて慎重な検討」要請

https://www.asahi.com/articles/ASM5P6F9HM5PULFA020.html

県民経済計算(平成13年度~平成26年度)

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kenmin/files/contents/main_h26.html

令和元年版 犯罪白書

http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/66/nfm/mokuji.html

少年犯罪データベース 少年による殺人統計

http://kangaeru.s59.xrea.com/G-Satujin.htm

人口推計の結果の概要

https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2.html

Maddison Project Database 2018

https://www.rug.nl/ggdc/historicaldevelopment/maddison/releases/maddison-project-database-2018