消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

不登校、ひきこもりと発達障害の関係

今回の記事では消費税と異なる話題になってしまうことをお詫び申し上げます。

 

「子供が不登校になる原因の大半はいじめ」だという嘘

 2019年5月から不登校の小学生Youtuber「少年革命家ゆたぼん」が話題になっている。現在11歳の彼が不登校になったのは小学3年生の頃で、いじめよりも宿題を強制する学校に疑問を抱き、「周りの子がロボットに見えたこと」を理由に挙げている。これだけの情報だと彼が怠けているように見えるが、私も実は中学生のときに不登校だったので彼を批判できる立場にないと思っている。

 

 私は2004年に小学校を卒業するまで成績が良く、中学は英語教育に力を入れているキリスト教の私立に進学したが、その中学は非常に荒れた学校で教員の間でも「いじめはいじめられる奴が悪い」という意識が蔓延しており、いじめの相談をしても話を聞いてもらえず中学2年生の3学期から不登校になることを選んだ。

 しかし、私が不登校になったのはいじめを受けていただけでなく「成績不振で授業についていけなくなったこと」も原因である。特に、不登校になる直前は主要5教科全てのテストで赤点になってしまい追試を受けるために学校へ行っていたようなもので、宿題も夜一晩中起きてないと仕上がらない量を出されてとても授業にはついていけないと思ってしまった。

 

 また、不登校になった3つ目の理由は「インターネット依存症になったこと」である。中学2年生だった当時、ドラマ『電車男』の影響で2ちゃんねるを見始めたのだが、そこで自分の好きな歌手が酷い誹謗中傷を受けていてどうしても許せなかった。学校で授業を受けていても、ネット上での誹謗中傷が頭から離れなくて勉強に集中できる状況ではなかった。いじめ以外の理由で不登校になったという意味では私もゆたぼん君と同じなのかもしれない。

 中学を卒業した後は全日制と通信制の高校に4年間通って、いじめや不登校の問題を研究するために心理学科の大学に進学し、21歳だった2012年からは経済にも関心を持って消費税増税を批判するようになった。

 

 私が許せないのは不登校でYoutuberをしているゆたぼん君ではなく、彼を誹謗中傷している大人たちのほうである。例えば、『炎上商法で1億円稼いだ男の成功法則』(宝島社、2019年)の著書があるプロレスラーでYoutuberのシバター氏はゆたぼん君について「勉強やいじめなど理不尽なことを耐えるのが学校というもの」とこき下ろしている。しかし、不登校が学校の理不尽なことから逃げているように見えるのは、シバター氏が学生時代に挫折した経験がないからだろう。

 他には元不登校を名乗ってゆたぼん君を批判しているYoutuberもいるが、はっきり言って「俺の不登校は正しいが、あいつの不登校は間違ってる」と言い訳しているようにしか感じなかった。ゆたぼん君が不登校になった理由はいじめではないと言うが、いい大人が11歳の子を総じてバッシングする姿は完全な「いじめ」に他ならないのではないだろうか。

 

 2018年に実施された文科省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によれば、中学生が不登校になった理由について「いじめ」と「いじめを除く友人関係をめぐる問題」が合わせて28.8%程度で、「家庭生活に起因」は30.9%、「学業不振」は24.0%といじめ以外の理由も多くなっている(表3を参照)。

 更に、小学生が不登校になった理由は「いじめ」と「いじめを除く友人関係をめぐる問題」が合わせて22.5%程度で、「家庭生活に起因」は55.5%、「学業不振」は15.2%と中学生よりも家庭生活に起因する不登校の割合が多い。

 私は中学生の頃だけでなく小学2年生のときもいじめられていたのだが、当時は算数が得意で成績が良く、家庭環境も良好で「学校に行きたくない」と思ったことはほとんどなかった。不登校になる原因はいじめだけではないことは自身の経験からもよくわかる。

f:id:anti-tax-increase:20200310132151p:plain

 

 しかし、不登校を経験したことがない世間一般の人々は不登校になる原因の大半はいじめだと勘違いしていないだろうか。実際に、私も親戚の方に中学生の頃に不登校だったことを話したら即座に「いじめられていたの?」と聞かれて回答に詰まったことがある。ゆたぼん君が「宿題がやりたくなかったから不登校になった」という理由で批判されたのも、成績不振やネット依存が原因で不登校になったケースに対しては甘えだと自己責任で見捨てている部分があるからだろう。

 

 いじめの問題を研究している社会学者の内藤朝雄氏は「クスクス笑いやシカトに代表されるコミュニケーション型のいじめは、クラスのような学級制度がなくなることによってその多くは行う余地を失う」「学級制度自体は他の国も数多く存在するが、日本ほど一つの空間に同じ集団が朝から夕方まで押し込められる例は珍しい」と述べている。

 他にも不登校の子供たちを学校に復帰させる支援を行っている水野達朗氏は、「不登校の子供たちの多くは、親や教師に反抗的な態度を取っていても『本当は学校に行きたい』と思っている」「訪問カウンセリングを行うことによって不登校の子供たちを勇気づけ、親への家庭教育を支援して学校へは専門家の立場で情報共有を行うことによって不登校の解決に繋げていく必要がある」と述べている。

 ゆたぼん君を批判するYoutuberの動画を見ていても、彼らのように「どうしたらいじめや不登校を減らすことができるか」といった考察をする人は残念ながらほとんど存在しなかった。このことからYoutuberはいかに他人を誹謗中傷する炎上商法で再生回数を稼いでいる人が多いのかわかるのではないだろうか。Youtuberのほとんどはコミュニケーションが得意で、学生時代に深刻ないじめを受けた経験を持つ人が少ないのだろうなと思えてならない。

 

 

障害者の給与を一般労働者と同程度まで引き上げるべき

 また、私は2019年8月から県内の発達障害者支援センターに通うようになり、そこで受けたテストで「自閉症スペクトラムの傾向が強い」と診断された。自閉症スペクトラムとは、これまで「自閉性障害」「アスペルガー障害」「特定不能の広汎性発達障害」と呼ばれていたものが、2013年にDSM精神障害の診断と統計マニュアル)の第五版の診断基準変更によって統合された名称で、主に対人関係の障害やコミュニケーションの障害、パターン化した興味や活動といった3つの特徴を持つとされている。

 私が「自分は周囲の子と違う」と感じ始めたのは小学2年生のときにいじめっ子から「お前は特殊学級に行け」と馬鹿にされたことがきっかけだが、3年生のときの担任がとても良い先生で小学校を卒業するまでは自分が発達障害だと認識することはなかった。しかし、中学に入ってから再びいじめを受けて、そのことを心療内科の先生に相談すると「君はアスペルガー障害の可能性がある」と言われそこで初めて自分が周囲の子と違う理由を知ることができた。

 

 「自分は発達障害かもしれない」と思ったことは22歳でコンビニのアルバイトをしていたときもあった。2013年12月にお客さんから「急いでくれ」と言われて慌てて対応していたら「お前は態度が悪い。このコンビニの教育はどうなっているんだ?」とクレームを入れられてしまった。

 店長からは厳しく叱られずに「大丈夫だから」と励まされたのだが、お客さんからコンビニの教育を疑われたのはそれだけ自分の接客が下手だったということだろう。今でも当時のことを思い出すと非常に怖くなる。コンビニのアルバイトは大学の授業が忙しくなったということもあり翌月の2014年1月に辞めて、それから接客の仕事を全く行っていないのは言うまでもない。

 

 しかし、この10~20年で発達障害の研究が進められてきた一方で、企業が新卒採用で学生のコミュニケーション能力を異常なまでに求め、発達障害の傾向を持つ人を徹底的に排除しようとしている。経団連の『新卒採用に関するアンケート調査』によれば、採用選考時に「コミュニケーション能力を重視する」と答えた企業の割合は2001年の50.3%から2019年の82.4%まで増加した。

 企業がコミュニケーション能力に偏重した採用活動を行っているのは、2000年代以降にインターネットの普及で誰でも簡単に不祥事の告発が可能になり、企業がかつてないほど組織のコンプライアンスを重視するようになったからである。また、長引くデフレ不況の影響で日本企業全体が余裕を失い、コミュニケーションが苦手で発達障害の傾向を持つ学生をふるい落としている部分もあるだろう。

 

 労働力調査を見ても、2001~2019年にかけて女性の就業者数は363万人増加したのに対し、男性の就業者数は逆に50万人も減少している。図24では2001年を100とする男性就業者と女性就業者の増加率を示した。自閉症スペクトラムは圧倒的に男性のほうが多い一方で、女性の平均年収は男性の約半分程度である。つまり、今の企業はコミュニケーション能力が高く低賃金で働いてくれる人を求めているとも言えるかもしれない。

f:id:anti-tax-increase:20200310143930p:plain

 

 日本社会が過剰にコミュニケーション能力を求めるようになると、発達障害の傾向を持つ人が就労できずにニートやひきこもりへと追い込まれることにもなりかねない。私が発達障害者支援センターに通っていて「自閉症スペクトラムの傾向が強い」と診断されたのは納得したのだが、障害者枠で就労することを強く勧められたのは違和感を覚えた。一度、障害者枠で働く道を選ぶと高度な国家資格を持っていない限り、どんなに経験を積んでも賃金が時給1000円を超えることがないのを知っていたからである。

 

 2018年5月のデータでは常用労働者の「きまって支給する給与」が26.3万円なのに対し、身体障害者が21.5万円(常用労働者の81.7%)、知的障害者が11.7万円(44.5%)、精神障害者が12.5万円(47.5%)、発達障害者が12.7万円(48.3%)程度である。更に、福祉作業所に在籍する障害者は2016年の調査で98.1%が年収200万円未満のワーキングプアになっていて、生涯未婚率(50歳までに一度も結婚したことがない人の割合)は男性で96.0%、女性で95.4%にものぼっている。

 知的障害者精神障害者の給与が低いのは高度かつ付加価値の大きい仕事をこなすことが難しいからだと言われているが、こうした障害者に対する給与差別こそが発達障害の傾向を持つ人を就労から遠ざけてはいないだろうか。

 

 また、高度経済成長期の1955年であれば個人経営の事業を営んでいる自営業主は1028万人と全体の25%を占めていたが、2019年になると自営業主は531万人と全体の8%程度まで減少してしまっている。発達障害の傾向を持つ人は企業のような集団生活を強いる職場が苦手なので、自営業主の衰退はますます発達障害者の就労機会を奪っているということでもある。高度経済成長期の時代と比べて自営業主の割合が大幅に減少しているのは長年、政府が個人事業主への所得補償を怠ってきたからだろう。

 自民党片山さつき議員は著書『正直者にやる気をなくさせる!?福祉依存のインモラル』(オークラ出版、2012年)の中で「自由と権利ばかり主張する日本国憲法のせいで、ニートとひきこもりが急増した」と述べているが、これはコミュニケーションが苦手で働けない人を自己責任で見捨てる暴論ではないだろうか。発達障害者をニートやひきこもりに追い込まないためには、政府が率先して障害者枠の給与を一般労働者と同程度まで引き上げるしかないと思っている。

 

 

<参考資料>

内藤朝雄 『“いじめ学”の時代』(柏書房、2007年)

水野達朗 『無理して学校へ行かなくていい、は本当か』(PHP研究所、2015年)

池上正樹 『大人のひきこもり 本当は「外に出る理由」を探している人たち』(講談社、2014年)

齊藤祐作 『発達障害者の才能をつぶすな!』(幻冬舎、2016年)

 

YouTuber目指す大半の子が知らない厳しい現実

https://toyokeizai.net/articles/-/281468

2つの統計から見る不登校の現状ときっかけ・原因【2019年8月更新】

https://www.tsuushinsei-navi.com/futoukou/toukei.php

2018年度 新卒採用に関するアンケート調査結果

https://www.keidanren.or.jp/policy/2018/110.pdf

労働力調査 長期時系列データ

https://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.html

毎月勤労統計調査 平成30年5月分結果確報

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/30/3005r/3005r.html

平成30年度障害者雇用実態調査の結果を公表します

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05390.html