消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

今の自民党が昭和の自民党の政策を否定するインボイス制度

インボイス制度の内容が理解できないために具体的な対策が取れない

 2023年10月1日からとうとう消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入されてしまった。その一方で、同年9月29日にはインボイス制度の中止・延期を求める団体「インボイス制度を考えるフリーランスの会」が衆議院会館を訪れ、54万筆を超えるオンライン署名を岸田首相の秘書官に手渡すなど反対運動も非常に盛り上がっている。

 一般社団法人労災センター共済会が9月28日に公表した「一人親方インボイス制度に関する実態調査」によると、免税事業者である一人親方の約半数が「インボイス制度への対応準備ができていない」と回答した。10月1日からのインボイス制度開始に向けて、対応の準備ができているかについて、21.8%が「できている」、15.8%が「ややできている」と回答した一方で、22.8%が「あまりできていない」、23.8%が「全くできていない」と答えている。準備ができていない理由(複数回答)については、「十分に理解していないため、具体的な対応策を練ることができないから」(38.3%)が最も多く、次いで「まだ今後の体制を決められていないから」(31.9%)、「自身に合っている選択が分からないから」(29.8%)となっている(図72を参照)。

 

 インボイス制度に対して危機感があるかどうかの問いでは、33.7%が「非常に感じる」、35.6%が「やや感じる」と回答。具体的には、「免税事業者のままだと仕事が減る可能性がある」が51.4%で最多となった。インボイスが発行できないと、取引先がその消費税分を代わりに負担することになるため、それを理由に取引停止になることを懸念している。他に「手続きなどの事務作業が増える」(41.4%)、「インボイス制度についてよく理解できていない」(34.3%)が上位となった。

 10月1日以降に課税事業者になるかどうかについては、34.7%が「課税事業者になる」が、30.7%が「免税事業者のままでいる」と回答した。課税事業者になる理由については、82.9%が「既存の取引先に継続してもらいたいから」と答えている。一方、免税事業者のままでいる理由については、「納税額を増やしたくないから」(48.4%)、「個人取引が多いから」(48.4%)、「納税のための事務作業が増えるのを防ぎたいから」(22.6%)、「発行する請求書が複雑になるのを防ぎたいから」(16.1%)の順に多かった。

 これらの結果について労災センター共済会は、「インボイス制度が開始される中、インボイス制度についてよくわからないという声が多く聞かれる。具体的な対策を進めるためにも、一人親方の活動をサポートする機関に相談するなど、早急な対応が必要だ」と述べている。特に、政治経済に無関心な人にとっては未だにインボイス制度について詳しく説明できないというのが本音だろう。

 

 

今の自民党は昭和の自民党と違って中小企業の味方になってくれない

 インボイス制度をわかりやすく説明すると、例えば貴方が文化祭の出店でお菓子を売っている高校生だとする。その文化祭に仕事の関係で高校の見学に来た会社員の人がいた。その人にお菓子を売る場合、高校生がインボイスに登録していないのに対して会社員がインボイスに登録していたら、買ったお菓子は経費で落とすことができず自腹で払わないといけなくなる。つまり、インボイス制度が導入された2023年10月1日以降、会社員でもインボイスを出せるか出せないかでサービスや商品を選ぶことになるだろう。

 その一方で、ツイッターまとめサイトではインボイス制度について「今まで納めずに益税として貰っていた消費税をちゃんと払いましょうねというだけなんですよ」と説明されている。しかし、消費税に免税制度を導入したのは他ならぬ自民党の竹下政権なのだ。もともと、消費税は1970~80年代にかけて大平政権や中曽根政権が導入しようとしたときに中小企業の根強い反対があったため、1989年の竹下政権は年間売上高3000万円以下の事業者は消費税を納めなくてもいいという特例措置を設けた。当時の自民党はまだ中小企業に対する配慮がある政党だったのだ。

 

 だが、それから15年が経って2004年に小泉政権は免税業者の年間売上を3000万円から1000万円以下に縮小している。小泉政権は「在任中に消費税を引き上げない」という公約を掲げていたが、実際には免税業者を縮小することで年間売上1000~3000万円の事業者に対して増税を行ったと言えるだろう。そして、3000万円から1000万円以下に縮小された免税業者をほとんど廃止しようとしているのが今回のインボイス制度である。つまり、インボイス制度の導入は今の自民党が昭和の自民党の政策を否定していることになる(表10を参照)。

 

 自民党の中でも積極財政的な経済政策提言を取りまとめていた元衆議院議員の安藤裕氏が、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化していた2020年4月に粗利補償をしないと中小企業が潰れると訴えたところ、自民党幹部から「これで持たない会社は潰すから」と言われたことを打ち明けた。また、同年5月3日には元自民党国会対策委員長逢沢一郎氏が「ゾンビ企業は市場から退場です。新時代創造だね」と発言している。少なくとも、今の自民党は昭和の自民党と違って中小・零細企業の所得を引き上げてくれる政党ではないことを頭に入れておいたほうが良いだろう。

 インボイス制度中止の運動を更に盛り上げるためには、無党派層だけでなく自民党支持者の方々にもインボイス反対の署名にご協力していただく必要があると思っている。

 

 

<参考資料>

小此木潔 『消費税をどうするか 再分配と負担の視点から』(岩波書店、2009年)

松尾匡 『左翼の逆襲 社会破壊に屈しないための経済学』(講談社、2020年)

 

インボイス制度反対の署名54万筆、政府へ手渡し実現

https://www.oricon.co.jp/news/2296704/full/

一人親方インボイス対応 進まない理由は説明不足か?

https://www.s-housing.jp/archives/326681