消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

『Hanada 2020年3月号』でれいわ新選組の消費税廃止を批判した高橋洋一氏と坂井広志氏に反論する

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自民党を擁護するために主張をコロコロと変える高橋洋一

 2021年10月31日に実施される予定の衆院選で、私にとって最大の争点は消費税廃止を掲げるれいわ新選組山本太郎代表が国会に戻れるかどうかである。今回の衆院選で山本氏は小選挙区からではなく比例東京ブロックから出馬すると発表した。

 れいわ新選組の経済政策は非常に画期的だが、それと同時に数多くの批判を浴びてきたことも事実だろう。その中で最も疑問に感じたのは、自民党の熱烈な支持者が愛読する月刊誌「Hanada」の2020年3月号に掲載された高橋洋一氏(元内閣官房参与)の記事である。

 

 高橋氏はれいわ新選組を批判する記事の中で「山本氏は『行列ができるラーメン屋ですら消費税が払えない。これが今の日本の実態です』と言っているが、これは完全なミスリードである。消費税が払えないということは本来あり得ない。消費者からもらった消費税額から仕入れで払った分を差し引き、そのまま納付すればいいだけの話。どんぶり勘定だから消費税が払えないという事態になるのだ」と自己責任論を述べている。

 だが、国税庁によれば2020年度に発生した消費税の滞納税額は3456億円と、国税全体の滞納額(5916億円)における58.4%を占めている(図16を参照)。全国商工新聞が2018年8~9月に行った調査によれば、建設業(建設設計を含む)で「消費税を価格に転嫁できない」と答えた企業は消費税が8%だった当時の38.3%から、10%に増税された場合の54.8%まで大幅に増加している。消費税は法人税所得税と違って年間売上高が1000万円以上の場合、事業者が赤字でも納税しなければならず、滞納税額が減らないのは決して自己責任ではなくそれだけ消費税を価格に転嫁できない企業が多いからだろう。

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 また、高橋氏はマレーシアが2018年に消費税を廃止したことについて「世界の潮流は個別物品税ではなく一般消費税だ。マレーシアはいま想像を超える税収減に苦しんでいる」などと言っている。しかし、過去20年間の政府歳入の推移を見るとマレーシアは2001年の916.3億リンギットから2021年の3038.6億リンギットまで約3.32倍も増加しているのに対し、日本は2001年の154.1兆円から2021年の191.2兆円まで約1.24倍の増加に留まっている(図17を参照)。

 マレーシアが税収不足に苦しんでいるというのは全くの嘘であり、高橋氏はマレーシアの経済を批判する前に「日本がなぜ消費税を5%から10%に増税しても政府歳入がほとんど増加しないのか」についてもっと考察すべきではないだろうか。日本の歳入が増えないのは2001~2021年の20年間で名目GDPが全く増加していないからである。

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 更に、高橋氏は政府が補償して最低賃金を1500円に引き上げるれいわ新選組の政策について「最低賃金を上げ過ぎれば誰も雇用しなくなる」「急に引き上げると韓国経済の二の舞になる」と述べている。しかし、高橋氏が本当に最低賃金を引き上げることに反対なのであれば、菅義偉元首相やデービッド・アトキンソン氏の最低賃金引き上げ政策も批判しなければ筋が通らないだろう。

 高橋氏がれいわ新選組を批判して菅政権を全く批判しないのは、れいわ新選組最低賃金引き上げが国民の所得を底上げする政策なのに対して、菅政権の最低賃金引き上げは中小企業を淘汰することが目的になっていたからである。企業支援をほとんど行わずに最低賃金だけ引き上げる点においては、れいわ新選組より菅政権のほうがよっぽど韓国のやり方に近いだろう。

 

 また、高橋氏は「山本の主張する『消費税廃止の財源27兆円はこうすれば生み出せる』の試算をしたのが民商民主商工会)と深い関わりのある税理士だった。民商のホームページでは『小企業・家族経営の営業と暮らしを支え合う中小業者の団体』と説明しているが、この団体は実は日本共産党系の組織である」とも述べている。

 だが、私が毎年3月13日に民商が全国各地で開催している「重税反対全国統一行動」に参加したところ、当日は公共事業を推進する労働組合の方も来ていたのだ。日本共産党は学校や公営住宅などの老朽化対策は必要としつつもダムや高速道路などの大型公共事業には反対している。このことから民商の関係者全員が共産党の支持者というのは全くのデタラメだろう。

 

 高橋氏は文藝春秋の2020年2月号に山本太郎氏の論文「『消費税ゼロ』で日本は甦る」が掲載されたことについて「文藝春秋はいつから共産党の機関紙になったのか」と批判したが、文藝春秋は2021年9月号の中で自称保守派から高い評価を受けていた高市早苗氏が自民党総裁選に出馬する記事を掲載しており、山本氏の論文だけで共産党の機関紙扱いするのは無理があるだろう。仮に文藝春秋共産党の機関紙であるなら、自民党を熱烈に支持する論客が毎月金太郎飴のように登場し、貧困問題に対して自己責任論ばかり強要する「WiLL」や「Hanada」などの雑誌こそ経団連の機関紙と言えるのではないだろうか。

 

 2012~2018年に内閣官房参与を務めていた藤井聡氏は安倍政権に対して何度も消費税増税の中止を提言しており、結果として10%増税の時期が2015年10月から2019年10月まで4年間延期された。それに対し、2020~2021年に内閣官房参与を務めた高橋洋一氏は菅政権に対して一度も「消費税引き下げ」を提言しておらず、2021年5月には新型コロナウイルスの新規感染者を国際比較したグラフを用いて「日本はこの程度のさざ波。これで五輪中止とかいうと」「日本の緊急事態宣言といっても、欧米から見れば戒厳令でもなく屁みたいなものでないかな」と失言し、結果的に菅政権の足を引っ張っただけであった。

 

 高橋氏はHanadaの2020年3月号ではれいわ新選組の消費税廃止を批判したが、逆に2020年10月に物議を醸した日本学術会議の任命拒否問題では「思い出すのは東日本大震災後、民主党政権に採用された復興税。不況時の増税など古今東西、聞いたことがありません。当時、誰がこんなバカなことを言っているのかと思ったら日本学術会議だった」と述べている。つまり、高橋氏は「消費税増税に賛成していても反対していても自民党を批判する勢力は一切許さない」というのが本音ではないだろうか。

 山本太郎氏はこうした自民党を擁護するために主張をコロコロと変える自称経済学者に振り回されることなく、堂々と消費税廃止を掲げてほしいと思っている。

 

 

消費税廃止を否定するために人口減少衰退論を持ち出す坂井広志氏

 Hanadaの2020年3月号では高橋洋一氏だけでなく産経新聞政治部の坂井広志氏がれいわ新選組の政策を批判した記事も気になった。

 2012年に騒動となったお笑い芸人の母親が生活保護を利用していた問題で山本太郎氏が「家族だから面倒見なければならない?夫婦だから何とかしなければならない?同じ地域だからどうにかしなければならない?共助とか自助とか、そういうものに頼り切るような政治にどうして税金を取られなければならないんだ」と発言したのに対し、坂井氏は「もちろん親の面倒を見る余裕がない人はこの世の中に多数います。しかし、子供が親の面倒を見なくて何が家族でしょうか。社会を構成する基本的単位である家族の否定に直結しかねないこの考え方は、無秩序の社会を生み出しかねない点で危険としか言いようがありません」と述べている。

 

 だが、お笑い芸人の騒動についてフランス人記者のレジス・アルノー氏は「フランスの基準からすれば彼は当然のことをした。母親は失業して国に助けを求めた。息子は一生懸命働いて高い所得税を払っているのだから、政府の歳入の足しにさえなっている。息子がいくら成功していても母親はできる限り政府の寛大さに甘えるべきだ」と擁護した。

 日本社会ではどうも親と子の人格が一体として捉えられており、例えば芸能人の子供が覚せい剤や強姦などの犯罪を起こすと、必ずと言っていいほど社会的にも法的にも別人格の親が不祥事の責任を取って謹慎をするという慣例がある。実際に、お笑い芸人の謝罪も法的責任を認めたのではなく、テレビの醸成した世論の雰囲気に押された「道徳的責任」の圧力に抗しきれなくなっただけに過ぎない。

 

 また、坂井氏は「生活保護は最後の最後に頼るべきものです。生活保護を決めるための調査は厳格化しなければ国の財政は破綻しかねません」と言っているが、国債のうち日銀が保有する割合が2010年の8.0%から2021年の48.2%まで増加している状況でどうしたら日本が財政破綻するのだろうか。日銀が保有する国債について政府は返済や利払いを行う必要はないのだ。

 政府がもし生活保護の利用者数を減らしたい場合は、雇用の受け皿として公務員数を増やしたり、年金や失業保険など他の社会保障制度を充実させていったりするしかないだろう。図18では1985~2018年の「1世帯当たりの平均所得金額と生活保護利用者数の推移」を示したが、これを見ると平均所得金額は1995年の659.6万円から2018年の552.3万円まで23年間で100万円以上も減少した一方で、生活保護利用者数は1995年の88.2万人から2018年の209.7万人まで23年間で120万人以上も増加している。これだけ平均所得金額と生活保護利用者数が逆の相関を見せているのは、生活保護制度が事実上の「最初で最後のセーフティネットになっているからではないだろうか。

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 坂井氏はれいわ新選組が消費税廃止の代わりに「法人税累進課税化」を掲げていることに対して、「先進国の間で法人税の引き下げ競争が激しさを増しているのは言うまでもありません」とも述べているが、2021年10月にはOECD経済協力開発機構)が多国籍企業による租税逃れを防ぐ国際課税の新ルールについて、世界共通の法人税の最低税率を15%とすることを136ヵ国が最終合意したと発表している。

 1990年代から2000年代にかけて先進国の間で繰り返されてきた法人税の引き下げ競争が既に終焉を迎えていることを知らずに、坂井氏がれいわ新選組の政策を批判しているなら政治記者としてあまりにも勉強不足だろう。

 

 更に、坂井氏はマレーシアが消費税を廃止した後に個人消費が回復したことについて、「マレーシアのケースが日本にそのまま当てはまるかどうかは慎重に吟味する必要があります。高齢化大国・日本の平均年齢はおよそ47歳です。これに対し、マレーシアは28歳です。購買力に差が出てくるのは当然です」と典型的な人口減少衰退論を述べている。

 しかし、世界では日本より人口が減少している国はいくらでも存在し、2001~2021年の人口増加率はリトアニアがマイナス19.3%、ラトビアがマイナス19.1%、ウクライナがマイナス14.4%、ルーマニアがマイナス13.7%、ブルガリアがマイナス12.8%、ジョージアがマイナス8.2%、クロアチアがマイナス7.0%、アルバニアがマイナス6.2%、エストニアがマイナス4.3%なのに対し、日本はマイナス1.4%程度である。

 

 その一方で、2001~2021年の名目GDPの伸び率はウクライナが2450%、ルーマニアが1008%、ジョージアが839%、エストニアが432%、ラトビアが418%、ブルガリアが412%と人口が増加しているマレーシアの393%よりも経済成長しているのだ。諸外国と比べて日本だけ名目GDPが増えないのは人口が減少しているからではなく、政府の総支出を削減してきたのが原因だということは図19を見れば明らかだろう。

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 経済評論家の三橋貴明氏はこうした人口減少衰退論が国民に幅広く根付いてしまっていることについて、「太平洋戦争敗北後にGHQが主導した自虐史観を植え付けられた世代を中心に『日本のような国は衰退したほうがいい』という価値観が蔓延しているためではないのか。その種の価値観を持つ国民にとって『日本は人口減少によるデフレで衰退する』と想像をめぐらせることが気持ちいいのではないかと推測する」と述べている。

 「日本のような国は衰退したほうがいい」という価値観は、まさに高橋洋一氏と坂井広志氏のような消費税増税や移民大量受け入れなどの愚策を繰り返し、新自由主義政策で日本経済を弱体化させてきた安倍政権を熱烈に支持する自称保守派にこそ蔓延しているのではないだろうか。

 

 消費税廃止を掲げる山本太郎氏を国会に戻すことは、分厚い中間層を生み出してきた戦後の一億総中流社会を取り戻すためにどうしても必要なのだ。10月31日の衆院選は是非とも小選挙区では自民・公明・維新以外の候補者に投票し、比例代表ではれいわ新選組に投票してほしいと思っている。

 

 

<参考資料>

高橋洋一 「『消費税ゼロ』論文 『文藝春秋』二月号、メッタ斬り 山本太郎の正体」 『Hanada』(飛鳥新社、2020年3月号)

坂井広志 「山本太郎ファクトチェック」(同上)

竹中平蔵高橋洋一 「大震災後に『復興税』を説いたバカ」 『WiLL』(ワック、2020年12月号)

レジス・アルノー 「フランスではあり得ない生活保護バッシング」 『ニューズウィーク日本版』(CCCメディアハウス、2012年7月18日号)

古谷経衡 『女政治家の通信簿』(小学館、2018年)

三橋貴明 『日本「新」社会主義宣言』(徳間書店、2016年)

 

令和2年度租税滞納状況について

https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0021007-113.pdf

消費税10%で廃業を検討2桁も

https://zenshoren.or.jp/shoukai/chousa/181112-05/181112.html

マレーシアの歳入・歳出の推移

https://ecodb.net/country/MY/imf_ggrx.html

日本の歳入・歳出の推移

https://ecodb.net/country/JP/imf_ggrx.html

国民のための公共事業政策

https://www.jcp.or.jp/web_policy/2019/06/2019-bunya34.html

国債等の保有者別内訳(令和3年6月末)

https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/appendix/breakdown.pdf

法人税OECD各国が最低税率15%で最終合意

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20211009-OYT1T50187/