消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

消費税廃止を実現させるためには、安倍派の議員を首相にしてはいけない

警戒すべきなのは岸田首相が辞任した後の新政権

 2023年12月8日に発表された同年7~9月期のGDP成長率は物価の変動を除いた実質が年率マイナス2.9%、物価の変動を含めた名目が年率プラスマイナス0%だった。今回のGDP統計で気になったのは、個人消費を表す家計最終消費支出(帰属家賃を除く)が名目は年率プラス2.1%だったのに対し、実質は年率マイナス0.7%に落ち込んでしまったことだ。実質消費がマイナス成長だったのにも関わらず名目消費がプラスに転じたのは、総合の消費者物価指数が2023年7~9月の平均で対前年比3.2%、食料の物価が2023年7~9月の平均で対前年比8.8%まで上昇している影響が大きいだろう。

 インフレーションには大きくわけて2種類があり、1つ目は現在起こっている原材料費の急激な上昇により引き起こされるコストプッシュインフレ。2つ目は高度経済成長期やバブル期に起こった景気の拡大に伴って消費の伸びが生産に追いつかなくなるために生じるデマンドプルインフレ。コストプッシュインフレは給与が下がるデフレーションと同様に国民を貧困化させるものである。

 

 日本生協連の「節約と値上げ」の意識についてのアンケート調査(2023年5月)によれば、値上がりの影響について「とても感じる」「やや感じる」と回答した人の合計が95.1%になり、全世代で値上げによる家計の負担を実感している結果となった。節約を「強く意識している」「ある程度意識している」と回答した割合は全体で93.3%だった。特に20代で「ある程度意識している」と回答した人が2022年11月の54.8%から2023年5月の69.2%まで増加している(図77を参照)。

 家庭での節約は「ふだんの食事(食料品・菓子・飲料・テイクアウト)」と回答した人が60.9%にものぼっていて、「外食」の49.5%よりも多かった。

 

 その影響もあってJNNの2023年11月4~5日の世論調査で、デフレに後戻りしないための一時的措置として何が一番良いか聞いたところ、「現金給付」が9%、「所得税や住民税の減税」が10%、「社会保険料の引き下げ」が15%、「給与所得控除などの拡大」が18%なのに対し、「消費税の減税」が41%と他の項目と比べても圧倒的に多かった。また、時事通信の同年11月10~13日の世論調査で消費税引き下げの賛否を尋ねたところ、「賛成」が57.7%、「反対」が22.3%であり、自民党支持者の間でも「賛成」が48.2%にのぼった。

 それにも関わらず、2023年10月からインボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入されたことに加え、将来的に消費税を15~20%まで引き上げようとする姿勢を崩さないことから岸田首相に対して「増税メガネ」という不名誉なあだ名がつけられている。しかし、私が警戒しているのは岸田首相が辞任した後の新政権である。首相が変わって内閣支持率が跳ね上がれば消費税増税の話も前に進みやすくなるからだ。

 

 

消費税増税に反対して政治活動が封じ込められた

 このブログで何度か紹介している三浦展氏の『大下流国家 「オワコン日本」の現在地』について、読んでいて新しい発見をしたので指摘しておきたい。本書の170ページには、内閣府の社会意識に関する世論調査で、「国や社会のことにもっと目を向けるべきだ」(社会志向)という意見と、「個人生活の充実をもっと充実すべきだ」(個人志向)という意見のどちらに近いか聞いた質問の推移が書かれている。

 時系列で見ると1985~2009年までは概ね「社会志向」が増える傾向にあったが、東日本大震災が発生した2011年以降は「社会志向」が減って「個人志向」が増えている。また、調査方法はやや異なるが、コロナ前の2020年1月調査では社会志向が44.8%、個人志向が41.1%とほぼ同率になっていたのに対し、コロナ後の2021年12月調査では社会志向が58.1%、個人志向が40.3%、2022年12月調査では社会志向が58.4%、個人志向が39.9%と近年は「社会志向」が増える傾向が復活してきた(図78を参照)。

 

 三浦氏は2011年の東日本大震災以降、マスメディアなどで「つながり」「絆」という言葉が流行してそれらをテーマにした番組が多く作られたが、逆に視聴者のほうはメディアがあまりにつながりを強調するのでそれらに飽きてしまったのかもしれない。あるいは下流化した生活の中で社会や他人のことなど構っていられない、自分のことだけで精一杯だという人が増えたのかもしれないと指摘している。

 私は東日本大震災以降に「社会志向」が減少した理由について、2010年代の日本が全体主義化していたことも無関係ではないと思っている。私は2005~2009年にかけて2ちゃんねるYahoo!知恵袋を見ていたのだが、当時の自民党政権を擁護する書き込みはほとんどなく自分もよく政府批判をしていた。震災以降の2011年でも大学の英語の授業で民主党の野田政権を批判するスピーチを行っていた。

 

 しかし、2013年になって就職対策講座の自己PRで「都内で定期的に行われている消費税増税の反対デモに参加している」と書いたら『就職に関わる書類でデモの参加を書くことは適切ではない』との添削が返ってきたことがあった。私はそれが納得いかなくて大学の教授に話すと、「心理学の学生が政治に関心を持つ必要はない」「君の身に危険が及ぶからやめなさい」と言われてしまった。

 だが、今振り返ると就職対策講座の担当者や大学の教授は私が政治活動をしていることではなくて消費税増税に反対していることが気に入らなかったのだろうと思うのが正直なところである。実際に、2013年8月に経済財政諮問会議で行われた『消費税率8%への引き上げに関する集中点検会合』で、当時28歳の古市憲寿氏が「海外からアベノミクスとセットで増税が認識されている」と消費税増税に賛成する発言をしている。古市氏は東京大学大学院の上野千鶴子ゼミでピースボートの研究をしており、自民党とは全く無関係な人物である。このことから、私が逆に就職対策講座の自己PRで「北欧型の高負担社会に憧れている」「消費税を20~30%まで増税すべきだと考えている」と書いたら企業から「是非ともウチに来てください」と言われただろう。

 

 

新聞社が消費税増税の景気悪化から目を逸らした

 大学の就職対策講座だけでなく、SNS上でもYahoo!知恵袋で2012年6月に「私は消費税増税反対デモに参加すべきでしょうか」と質問した際に『デモに参加して消費税に反対する方々はかなり先の見える方々だと思います』などと非常に肯定的な回答が並んでいた。当時は野田政権が自民党公明党と共に「消費税増税法案」を可決しようとしていた時期である。

 しかし、それから2年が経って第二次安倍政権になってからの2014年6月に特定秘密保護法について「消費税増税反対デモや原発反対デモに参加するだけでスパイやテロリスト扱いされませんか?」と質問した際に『そういったデモの多くは左翼の暴力集団が主導しているからデモに参加しておいて、監視対象になるのは嫌だというのはムシが良すぎる』との開き直りにも似た回答が存在した。

 

 今まで私が参加してきた消費税増税反対デモや原発反対デモは全て安全に実施されてきたものだが、民主党政権下(2009~2012年)で行われたデモが良くて安倍政権下(2013~2020年)で行われたデモがダメだというなら民主党政権の時代のほうがよっぽど民主主義が機能していたと言わざるを得ないのではないだろうか。実際に当時は消費税や原発だけでなく、自民党支持者の間でも尖閣諸島中国漁船衝突事件(2010年)やフジテレビの韓流ブーム(2011年)に対して抗議デモが繰り広げられていたのである。

 更に、自民党が消費税増税を推進している姿勢は昔から変わらないのだが、現在の岸田首相が「増税メガネ」と批判されているのも、近年になって社会志向の意見が増加してきたことと無関係ではないだろう。

 

 また、国民経済計算によれば、増税による物価上昇の影響を除いた実質家計最終消費支出(帰属家賃を除く)は消費税を5%に増税した1997年度はマイナス1.6%だったのに対し、消費税を8%に増税した2014年度はマイナス3.1%だった(図79を参照)。つまり、橋本政権(1996~98年)の増税よりも安倍政権の増税のほうが消費の落ち込みが深刻だったのだ。その上、2014年度はリーマンショック新型コロナウイルスのような経済危機は発生していない。

 

 しかし、橋本政権は増税翌年の1998年に辞任したのに対し、安倍政権は増税してから6年後の2020年まで内閣を続けていた。この違いは安倍政権下で1997年の山一證券北海道拓殖銀行のような金融機関の大規模倒産が起こらなかったことも大きいが、私は新聞社が消費税増税による景気悪化の問題から目を逸らすように誘導していたことも原因の一つとして挙げられると思う。

 例えば、自民党の支持者が愛読している産経新聞は2014年4月1日の朝刊から慰安婦問題をテーマにした「歴史戦」というシリーズ記事を開始している。歴史戦とはわかりやすく言えば、中国や韓国による歴史問題に関連した日本政府への批判を「不当な攻撃」だと捉え、日本人は黙ってそれを受け入れるのではなく、中国や韓国を相手に「歴史を武器にした戦いを受けて立つべきだ」という考え方である。だが、産経新聞は特別記者の田村秀男氏が2014年2月に『消費増税の黒いシナリオ』という増税を批判する内容の本を出版しており同年4月から景気が悪化することはわかっていたのだ。産経新聞が消費税8%になった当日から歴史戦なるシリーズを始めたのは偶然ではなく、消費税15~20%への増税が議論されるときも産経新聞は新たな「歴史戦」を煽ってくるだろう。

 

 2023年12月に入ってから自民党最大派閥の「清和政策研究会」(安倍派)が政治資金パーティー収入の一部を裏金化していたとみられる問題で岸田政権が追及を受けている。しかし、それ以上に問題なのは安倍政権下で熱狂的な支持者が政治とは無関係の国民までSNS上で監視し、消費税増税など自民党の政策に反対していたとしても安倍政権に対する批判が封じ込められていた事実ではないだろうか。消費税廃止を実現させるためには、岸田政権が辞任した後に安倍派の議員を首相にしてはいけないと思っている。

 

 

<参考資料>

山崎雅弘 『歴史戦と思想戦 歴史問題の読み解き方』(集英社、2019年)

 

国民経済計算 2023年7-9月期2次速報値

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2023/qe233_2/gdemenuja.html

消費者物価指数(CPI) 時系列データ

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00200573&tstat=000001150147

「節約と値上げ」の意識についてのアンケート調査

https://jccu.coop/info/newsrelease/2023/20230727_02.html

【速報】望ましい経済対策は「消費税の減税」41% JNN世論調査

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/818859?display=1

消費減税「賛成」6割 「反対」は2割―時事世論調査

https://www.jiji.com/jc/article?k=2023111600808&g=pol

社会意識に関する世論調査(令和4年12月調査)

https://survey.gov-online.go.jp/r04/r04-shakai/

安倍派3人に5千万円超~4千万円超 最大規模の裏金か パー券収入

https://www.asahi.com/articles/ASRD96533RD9UTIL010.html