消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

北欧の高負担社会に憧れている橘木俊詔氏と永江一石氏に反論する

消費税が高い国々は「脱成長」とは無縁の高度経済成長社会

 消費税増税に反対していると、必ず「北欧では消費税が高くても社会保障が充実していて上手くやっているのではないか」という反論が返ってくる。その代表的な評論家だと言えるのが京都大学名誉教授の橘木俊詔氏である。

 彼は著書『貧困大国ニッポンの課題』の中で、「デンマーク社会保障財源のほとんどを消費税でまかなっており、他の国々のように社会保険料を納めることのできない低所得者を福祉の世界から排除しない仕組みになっている。中長期的な国家戦略として、デンマーク型の社会保障制度を段階的に目指していくことは企業と家族が個人を支えられなくなった現在の日本にとって非常に大きな意義があると考える」と述べている。

 

 しかし、消費税が高い国々は日本よりはるかに経済成長していて1997~2022年の25年間で名目GDPの伸び率はハンガリーが7.12倍、アイスランドが6.87倍、ノルウェーが4.24倍、クロアチアが3.36倍、スウェーデンが2.92倍、フィンランドが2.40倍、デンマークが2.38倍、ギリシャが1.85倍なのに対し、日本は1.02倍程度である(図69を参照)。過去の日本に例えれば1970~1995年の25年間で名目GDPが6.59倍も増加しているので、ハンガリーアイスランドでは日本の高度経済成長期からバブル崩壊に匹敵する経済成長が続いていると言っていいだろう。消費税が高い国々は橘木俊詔氏が提唱している「脱成長」とは無縁の高度経済成長社会なのだ。

 

 また、消費税が高い国々の特徴は公務員数が非常に多いことが挙げられる。総雇用者数に占める公務員数の割合(2017年)はノルウェーが30.8%、スウェーデンが28.9%、デンマークが28.0%、フィンランドが24.2%、アイスランドが23.8%、ハンガリーが20.5%、ギリシャが16.6%なのに対し、日本は5.9%OECD加盟国の中で最低である(表8を参照)。日本では90年代以降に消費税増税が進められた一方で、地方公共団体の総職員数は1994年の328.2万人から2022年の280.4万人まで削減されているのだ。

 

 

消費税を増税しても幸福度ランキングの上位にはなれない

 また、橘木俊詔氏の他にも北欧型の高負担社会を夢見ている人物にコンサルタントの永江一石氏がいる。彼はブログで「世界で一番幸福度が高い国ベストスリーの消費税率はフィンランドが24%、デンマークが25%、ノルウェーが25%。だから日本の幸福度を上げるためにはもっと消費税を増税しろ」などと言っている。

 確かに2022年の幸福度ランキングを調べてみると上記の国に加えて、3位のアイスランド、5位のオランダ、7位のスウェーデン、11位のオーストリア、13位のアイルランド、といずれも消費税率が並び、日本は54位である。しかし、ランキング上位には消費税が7.7%のスイスが4位、消費税が5%のカナダが15位と高負担ではない国も含まれている。逆に、消費税が20%を超えている国でもクロアチアが47位、ポーランドが48位、ポルトガルが56位、ギリシャが58位と日本と同水準の順位である。このことから、消費税を増税しても必ずしも幸福度ランキングの上位になれるわけではないのがわかる(表9を参照)。

 

 更に、永江氏は同ブログの中で「消費税以外の事を一切加味せずに『消費税だけのせいで景気が悪化』と唱えるのおかしくないですか? わたしはそれより人口が激減していて消費総量が減ってる方がよほど景気に影響してると思いますよ」とも述べているが、これも全くの嘘である。

 日本の総人口が減少したのは主に東日本大震災以降で、消費税5%の時期は2011年3月の1億2795万人から2014年3月の1億2727万人まで減っていたのに対し、実質消費指数は2011年3月の107.0から2014年3月の122.8まで15.8%も増加していた(図70を参照)。個人消費の低迷は人口減少ではなく消費税増税のせいであり、今でも消費税が5%のままだったらコロナ不況からの回復はもっと早かったのではないだろうか。

 

 

法人税の引き上げによって利益を人件費に回す必要がある

 その他にも、永江氏は「自分が大企業に入れなかったといって、大企業にもっと課税しろ、俺たちよりたくさん給料もらってる大企業の労働者はけしからんって、言ってて情けなくないの?」と述べているが、今は大企業であっても法人税減税で浮いたお金を十分な賃上げに回しているとは言い難いだろう。

 例えば、「法人税減税を従業員の給与に回す」と公言していた代表的な企業に株式会社ワークマンがある。ワークマンは群馬県伊勢崎市に本社を置く主に現場作業や工場作業向けの作業服・関連商品の専門店で、2016年2月には法人税減税で企業収益を押し上げて、賃上げや設備投資の拡大につなげるという安倍政権(当時)の「経済の好循環」の呼びかけに賛同し、多めの賃上げを実行して内部留保を積み増さない方針を発表した。

 

 しかし、それから7年が経って法人税減税が本当に賃上げにつながったかどうかについては検証が必要だろう。ワークマンの平均年収は2013年の597万円から2022年の732万円まで9年間で1.23倍増加していて、これだけ見ると法人税減税が賃上げにつながったように感じるかもしれない。だが、ワークマンの決算情報を確認すると経常利益は2013年度の95.0億円から2022年度の246.6億円まで9年間で2.60倍も増加している(図71を参照)。

 もし、経常利益の増加ぶんを全て給与に回していた場合、ワークマンの2022年の平均年収は1549万円にのぼっていたことになる。ワークマンが本当に「法人税減税を賃上げにつなげる」と言うのであれば、安くても平均年収を1000~1200万円まで引き上げるべきではないだろうか。そのためには法人税の引き上げによって、企業が税引き前利益を抑えて従業員の人件費に回す必要があるのだ。

 

 

<参考資料>

国民経済計算 昭和30年1-3月期~平成13年1-3月期

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2001/qe011/gdemenuja.html

Government at a Glance - 2021 edition : Public employment

https://stats.oecd.org/

地方公共団体の総職員数の推移

https://www.soumu.go.jp/main_content/000608426.pdf

「消費税下げろ」と「法人税上げろ」と叫ぶワカッテナイ感

https://www.landerblue.co.jp/46200/

【2022年】最新世界幸福度ランキング 世界の順位一覧と日本の状況

https://eleminist.com/article/2052

【世界151ヶ国】消費税(付加価値税)の税率の高い国ランキング一覧

https://yattoke.com/2019/01/15/consumption-tax-rank/

人口推計 統計局ホームページ

https://www.stat.go.jp/data/jinsui/

家計調査(家計収支編) 時系列データ(二人以上の世帯)

https://www.stat.go.jp/data/kakei/longtime/index.html

ワークマンは法人税減税を社員に還元し5.3%の賃上げを決定

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000013308.html

ワークマンの平均年収

https://nenshu-master.com/companies/workman/