消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

インボイス制度の影響を受けるのは個人事業主だけではない

還付金で消費税の納税を免れている輸出大企業

 2023年10月1日から導入されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)で、これまで免税だった年間売上1000万円以下の事業者も消費税を納めるべきかどうか議論の対象になっている。しかし、本当の意味で消費税の納税を免れているのは「輸出還付金」の制度を活用している大企業だという事実を知っている人はそれほど多くないだろう。

 

 「輸出還付金」とは企業の売り上げのうち、海外への輸出では消費税を取れないので、そのぶんの仕入れ原価に掛かる消費税を国から還付してもらえる仕組みのことを言う。国が支払った輸出還付金は大企業が下請け企業に支払い、下請け企業は消費税として国に納める流れになっているため、本来は誰も得したり損したりするわけではない。だが、問題は大企業と中小企業の間に圧倒的な力関係が存在することである。大企業はコストカットという形で、下請け企業に消費税分の負担を実質的に押し付けているケースが非常に多く、負担を他に押し付けられない中小企業は、自腹を切って税金を納めるしかない。

 輸出還付金の額は消費税が上がれば上がるほど増加し、静岡大学元教授の湖東京至氏の推算によれば、日本を代表する製造業10社の還付金額の合計は、消費税が8%だった2018年の1兆632億円から10%に増税された2020年の1兆2442億円へと、2年間で1.17倍も増えている(画像を参照)。仮に、消費税が15%に引き上げられたらこの10社だけでも還付金の額は1兆7000~8000億円に達するかもしれない。こうした背景を見ると、輸出還付金の実態は中小企業から大企業への所得移転であり、消費税増税は大企業と中小企業の力関係を強め、経済格差をますます広げてしまうのではないだろうか。

 

 その一方で、消費税増税の賛成派は「輸出還付金の制度は消費税を導入しているどこの国でも存在する」と強弁している。実際に、輸出還付金は初めて付加価値税(消費税)を導入したフランスで輸出企業のルノー補助金を支給するために編み出された経緯があるからだ。しかし、本当の問題は消費税増税によって一部の人々が得をするという事実である。輸出企業は円高か円安かで会社の業績が左右されやすく、巨額の消費税還付がどれだけおいしいかは言うまでもない。

 経団連の歴代会長はほとんど全員が消費税増税法人税減税に賛成しているが、彼らはトヨタやキャノン、住友化学東レ日立製作所など有名企業のトップを務めてきた方々だ。財界の幹部が輸出還付金の額を増やすために、政府に消費税増税を求めている国が一体、日本以外のどこにあるというのだろうか。

 

 

インボイス制度の導入によって電気代が上昇する

 また、消費税のインボイス制度が2023年10月1日から始まったのに伴い、毎月の電気代が値上がりすることも知らない人は多いだろう。インボイス制度によって新たに発生する電力会社の負担分を電気代に上乗せして補うため、結果的に消費者にしわ寄せがいくことになる。新たな負担は、一般家庭の太陽光パネルなどで発電された電気を買い取る「固定価格買い取り制度」(FIT)によって生じる。

 これまでは納税額を少なくする消費税の「仕入れ税額控除」という仕組みにより、電気を発電事業者から買い取るときに支払う消費税と、消費者に電気を売るときに受け取る消費税は相殺されているとみなし、電力会社は納税する必要がなかった。しかし、インボイス制度開始後は相殺するにはインボイスが必要になる。発電事業者である一般家庭などの多くは免税事業者に当たるため、電力会社はインボイスを受け取れない。経産省の試算によると、各電力会社が仕入れ税額控除できないことで消費税の負担が年間58億円も発生するという。

 

 消費者物価指数によれば、電気料金は消費税が8%だった最後の月である2019年9月から2023年1月までに28.3%も上昇していた。その後は同年2月から政府の電気料金の負担軽減策が始まり、8月までに33.1%安くなって2019年9月と比較してもマイナス4.8%となっている。だが、2023年10月から電気料金の負担軽減策が1kWhあたり7円から3.5円まで半額に引き下げられてしまい、インボイス制度の導入と負担軽減策の緩和によって再び電気料金が上昇することが懸念される(図73を参照)。

 

 しかし、ツイッターなどで自民党支持者の書き込みを見ていても「電気料金が高いのは原発を再稼働していないからだ」と言いながらインボイス制度で電気代が上がることには反対していないようだ。特に、元財務官僚の高橋洋一氏は「インボイス制度に反対しているのは共産党の関係者だけ」などと言っている。だが、インボイス制度に反対しているのは日本共産党だけでなく、安倍政権を支持していた経済評論家の三橋貴明氏や藤井聡氏もいるのだ。

 高橋氏は文藝春秋の2020年2月号にれいわ新選組代表の山本太郎氏の論文「『消費税ゼロ』で日本は甦る」が掲載されたことについても、「文藝春秋はいつから共産党の機関紙になったのか」と根拠のない発言をしている。彼はどうやら自分と上司の竹中平蔵以外の人間が全員、日本共産党の関係者に見えるようだ。インボイス制度に中止させるためには、高橋氏のような自称保守派のプロパガンダに騙されないことも重要になってくるだろう。

 

 

<参考資料>

安部芳裕 『世界超恐慌の正体』(晋遊舎、2012年)

森永卓郎大貧民 2015年日本経済大破局』(アーク出版、2012年)

 

輸出大企業に消費税1.2兆円超還付 税率10%で1810億円増大

https://www.zenshoren.or.jp/2021/11/01/post-12885

三橋貴明】消費税の輸出還付金の真相

https://38news.jp/economy/24005

電気代がインボイス制度導入で10月に値上がり

https://www.tokyo-np.co.jp/article/270876

消費者物価指数(CPI) 時系列データ

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00200573&tstat=000001150147

2023年10月、電気料金の政府補助額が半額に。影響まとめ

https://blog.eco-megane.jp/2023%e5%b9%b410%e6%9c%88%e9%9b%bb%e6%b0%97%e6%96%99%e9%87%91%e5%bd%b1%e9%9f%bf%e3%81%be%e3%81%a8%e3%82%81/