消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

日本政府はドイツと同様に消費税引き下げを決断すべきである

消費税を減税するドイツと緊縮財政を続ける日本政府

 ドイツのメルケル政権は6月3日に、付加価値税の税率を2020年7~12月の期間限定で現在の19%から16%に引き下げ、食料品などに適用される軽減税率も7%から5%に下げることを発表した。新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ消費や投資の回復を後押しする狙いで、ドイツ政府は追加の国債発行などで必要な資金を調達する見通しである。

 しかし、日本では麻生財務大臣が消費税について「引き下げることは考えていない」と述べ、西村経済再生担当大臣も「消費税は全世代型の社会保障制度に向けた重要な財源として、昨年10月の引き上げは正しい判断だった」という認識を示している。

 

 それどころか、今回の新型コロナウイルスに乗じて更なる消費税増税や歳出削減を推進しているのが東京財団政策研究所の小林慶一郎氏だ。小林氏は「財政が悪化を続けていることが消費者や企業の将来不安を高め、その結果、経済活動が萎縮して経済成長率が低下している可能性がある。財政悪化が経済成長率の低下の原因なら、先に高い経済成長を実現して後で財政再建をするという戦略は成り立たない」と述べている。

 しかし、日本で初めて財政再建を唱えたのは1978年の大平政権であって、1982年9月にも大蔵省が赤字国債を10年で償還する原則をくつがえしたところ、朝日新聞などの大手紙が一斉に「政府財政、サラ金地獄へ」という見出しで財政破綻を煽り始めた。つまり、国民の将来不安が高まったのは高度経済成長期が終焉した70年代後半からだとも言えるだろう。

 だが、個人消費を表した民間最終消費支出(実質値)は1977~1997年の20年間で1.86倍も増加していて、消費税が3%だった90年代半ばまで個人消費は急速に伸びていたのだ。それに対し、1997~2017年の20年間で民間最終消費支出は1.16倍しか増加しておらず、消費税増税こそが経済活動を萎縮させている原因ではないだろうか(図47を参照)。

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 総務省の家計調査を見ても、実質消費指数(2人以上の世帯)は消費税が5%だった最後の月である2014年3月の116.2から最新のデータである2020年4月の86.9まで約6年間で29.3%も下落している(図48を参照)。

 民間最終消費支出も2014年1~3月期の306.2兆円から2020年1~3月期の291.7兆円まで落ち込んでいて、消費税を5%から10%まで増税したことで実質GDPを14.5兆円も押し下げてしまったのだ。これで「消費税引き下げ」を提言できないような政治家や経済学者は、逆に国民を貧困化させたいのではないかと思ってしまう。

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 また、今年度の第2次補正予算案について、野党側はあらかじめ使い道を決めていない予備費が歳出全体の3分の1近くを占めるのは容認できないとして、組み換え動機の提出も視野に予備費の減額を求めていくことになったが、立憲民主党の安住国対委員長は「国民からお預かりをし、将来の子供たちから借りる国債で作るお金を無駄な公共事業など政府が何でも使っても良いという白紙委任は議会としてできない」と事実誤認の発言をしたことが批判されている。

 まず国債発行は単なる政府の貨幣発行で国民が預けているわけではなく、将来世代が国債を返済するということもない。公共事業に関しても政府が行う社会資本整備などの投資の額を表した公的固定資本形成は1996年の46.7兆円から2018年の26.0兆円まで削減され、一人当たりの名目GDPランキングは1996年の3位から2018年の26位へと下落している(図49を参照)。

 

 公共事業は無駄などころか、日本は90年代後半以降に公共事業を削減して貧困化してしまったのだ。最新の2020年1~3月期のデータでも公的固定資本形成は年率マイナス2.2%の落ち込みで、政府は消費税を増税して歳出削減を進めているのが現実のようだ。ドイツをはじめとして先進国の多くが新型コロナウイルス対策として積極財政に転換しているというのに、日本では与党も野党も緊縮財政しか言わないのが非常に残念である。

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デフレ脱却すればプライマリーバランスは改善される

 消費税が増税される理由は、建前では社会保障を充実させるためになっているが、本音ではプライマリーバランス基礎的財政収支、以下PB)を黒字化させるためだろう。PBとは「国の税収」など借金(国債)以外のきちんとした収入から、借金の返済費用(国債費)を除いた政策上必要な支出を除いたもので、これが赤字だと負債はどんどん増えていき、黒字だと税収を少しずつ借金の返済に充てていくことができる。

 1980年代以降のPBの推移を見ていくと、黒字化していたのはバブル期の1985~92年で1993年以降はずっと赤字の状態が続いている。

 

 日本で初めてPB黒字化目標を掲げたのは1997年の橋本政権で、同年11月には「財政赤字の対GDPを毎年3%未満する」「1998年度の公共投資について、1997年度当初予算における公共投資関係費の93%を上回らないようにする」という内容を盛り込んだ財政構造改革法を成立させている。それから数年経った小泉政権でも2006年に「2011年までにPBを黒字化させる」と宣言していたが、2008年にリーマンショックが発生して景気が悪化したことで民主党の鳩山政権はPB黒字化目標の見直しを行った。

 だが、2010年の菅政権は新たに「2020年までにPBを黒字化させる目標」を掲げ、2012年には消費税を増税して社会保障を削減するという「社会保障と税の一体改革」が進められた。外交官の佐藤優氏は片山杜秀氏との対談で、「菅政権は東日本大震災の対応ばかり語られるが、消費税10%への引き上げに言及したりTPPの協議開始を表明したりと、実は極めて重要な決定をいくつもしている。安倍政権のアジェンダは菅政権で作られた」と述べているが、全くその通りだと思う。

 

 現在の安倍政権も「2025年までにPBを黒字化させる」と明言しており、新型コロナウイルスが収束した後に再び消費税を増税する話が出てくるかもしれない。安倍首相は2017年3月の予算委員会で「来年の予算を半額にしてPBを改善すれば、日本経済は死んだような状況になる」と言っていて、PB黒字化目標の弊害を理解しながら進めるのは「日本経済を殺します」と宣言したようなものだろう。安倍首相は今よりはるかに殺人事件が多発していて学生運動エスカレートしていた昭和30年代を「今の時代に忘れられがちな家族の情愛が存在した」と懐古しているため、貧しい時代の日本を取り戻す目的で消費税10%増税やPB黒字化目標などの緊縮財政を推進している部分もあるのかもしれない。

 日本政府が本当にPBを改善させたいのであれば、「2025年までに黒字化させる」といった期限を定めるのではなく、消費税引き下げと財政出動によって名目GDP成長率を高める政策を打ち出すべきだろう。実際に、1980年代以降の名目GDP成長率とPBには相関関係があることが確認され、消費税を引き下げてもデフレを解消すれば税収が増加して自然にPBは改善していくのだ(図50を参照)。

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 逆にPB黒字化目標を設定して失敗したのが2010年代に世界を騒がせたギリシャである。下記の図51にはギリシャの実質GDPとPBの推移を示した。この図を見ると実質GDPとPBが逆の相関になっていることがわかる。

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 ギリシャは2008年までは経済が順調に拡大していたが、リーマンショックで状況が一変して2009年にはGDPが大きく下落した。そしてPBは一気に悪化し、GDPの1割程度の赤字となってしまった。ギリシャ政府はこの問題を乗り切るためにIMF等に融資を依頼したが、それと引き替えに増税と歳出カットによる緊縮財政を展開することを約束させられてしまう。

 その結果、ギリシャは2013年にめでたくPB黒字化目標を達成するが、徹底的な緊縮財政のあおりを受けてGDPは4分の1も減少してしまった。完全失業率は平均で26%以上、若年層に至っては60%以上となり、2015年には返済期限が来たことで実質的に破綻してしまうことになったのである。

 つまり、経済危機に陥った国に対して無理やりPB黒字化目標を押し付けてしまえば、危機が悪化して景気は低迷、実質的な経済破綻状態となってしまうのが現実だろう。日本も直ちに「PBを2025年までに黒字化させる」という目標を破棄して、消費税を5%に戻すことを決断すべきである。

 

 

<参考資料>

三橋貴明 『世界でいちばん!日本経済の実力』(海竜社、2011年)

森信茂樹 『消費税、常識のウソ』(朝日新聞出版、2012年)

小泉俊明民主党大崩壊 国民を欺き続けた1000日』(双葉社、2012年)

藤井聡 『プライマリー・バランス亡国論』(扶桑社、2017年)

適菜収 『もう、きみには頼まない』(ベストセラーズ、2018年)

 

ドイツ、コロナ対策で消費減税 景気対策16兆円規模

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59955790U0A600C2MM0000/

消費税率を引き下げることは考えていない=麻生財務相

https://news.livedoor.com/article/detail/18383115/

経済再生相「去年の消費税率引き上げ 正しい判断だった」

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200608/k10012462331000.html

日本政府の莫大な借金こそ「失われた30年」の真犯人だ

https://news.yahoo.co.jp/articles/00230ae6e57d0968beb9eeffcaae4230b85c7104

国民経済計算 昭和30年1-3月期~平成13年1-3月期

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2001/qe011/gdemenuja.html

国民経済計算 2020年1-3月期 2次速報値

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2020/qe201_2/gdemenuja.html

家計調査(家計収支編) 時系列データ

https://www.stat.go.jp/data/kakei/longtime/index.html

古臭い、現在の日本に不要な政治家

https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12601712484.html

一人当たりの名目GDP(USドル)ランキング

https://ecodb.net/ranking/imf_ngdpdpc.html

日本の基礎的財政収支の推移

https://ecodb.net/country/JP/imf_ggxcnl.html

ギリシャの実質GDP(自国通貨)の推移

https://ecodb.net/country/GR/imf_gdp.html

ギリシャ基礎的財政収支の推移

https://ecodb.net/country/GR/imf_ggxcnl.html