消費税は公平な税金ではない
一般的に、消費税は景気に左右せず、子供からお年寄りまでお金を使う人全員が負担する公平な間接税だと説明される。
しかし、それは裏を返せば、所得や売上に関係なく、お金を持っている人も持っていない人も、消費に対して同じ額の税金を支払わなければならないのであろう。同じ額の税金を支払うとなると当然、低所得者や赤字企業の負担のほうがより重くなって、「逆進性」の問題が発生する。
その証拠に、消費税は国税の中で最も滞納額が大きく、法人税、所得税、相続税などの滞納税額中、常に第1位となっている。2014年度、新たに発生した消費税の滞納税額は3294億円で、これは国税全体の滞納額(5914億円)における55.7%を占めている(表1を参照)。
消費税は、法人税や所得税と違って、事業者が赤字でも納税しなければならず、滞納税額が減らないのはそれだけ消費税を払えない赤字企業が多いからだろう。
消費税収の8割以上が法人税減税に消えている
また、日本では消費税が導入された当時から、法人税減税が急速に行われてきた。法人税の基本税率は1984~86年度の43.3%から2015年度の23.9%に引き下げられ、国税と地方税を合わせた法人実効税率も、84~86年度の52.92%から2016年度の29.97%まで引き下げられている。
1989~2015年度まで日本人が払った消費税は計304.8兆円なのに対し、法人税は国と地方合わせて、税収が29.8兆円であった1989年度と比較すると計262.2兆円も減収しており、これは消費税収の86%が法人税減税の穴埋めに消えた計算になる(図3を参照)。
安倍首相は、第一次内閣(2006~07年)の時から法人税減税に意欲的で、経団連が2007年1月に発表した『希望の国、日本 ビジョン2007』でも、「法人税の実効税率を30%程度の水準に」と主張されていた。
消費税8%への引き上げを決定する前にも、2013年9月10日の閣議で、法人税減税に慎重な立場を示していた麻生副総理に対して、「5兆円の経済対策の他に、アベノミクスが掲げる成長戦略を実現させるべく、法人税引き下げなど一貫した対策が重要だ」と述べ、麻生副総理が、法人税減税を推進する安倍首相と甘利明大臣に譲歩したやり取りが交わされている。
私が「消費税増税」と「法人税減税」の関係について知ったのは、『世界超恐慌の正体』(晋遊舎、2012年)などの著書を出版している安部芳裕さんの講演会を聞いてからだ。
マスコミの多くは、「国の借金を返すために増税しなければならない!」「社会保障を充実させるために増税しなければならない!」と煽っているので、消費税の問題に関心を持って増税に反対している経済学者の本を読んだり、個人で講演活動を行っている方の話を聞いたりしない限り、消費税の財源のほとんどが法人税減税の穴埋めに消えている事実について、知る機会が少ないのはおかしいだろう。
<参考資料>
湖東京至 「消費税の何が問題なのか」 『世界』(岩波書店編、2014年2月号)
野口悠紀雄 『資本開国論 新たなグローバル化時代の経済戦略』(ダイヤモンド社、2007年)
NHKスペシャル 『ドキュメント消費増税 安倍政権2か月の攻防』(2013年10月5日放送)
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/082.htm
ーー追記ーー
4月14日21時26分、熊本県で最大震度7の大きな地震が発生しました。亡くなられた方のお悔やみを申し上げます。