消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

【緊急拡散】消費税収の72.1%が法人税減税の穴埋めに消えている

消費税収のうち約10%しか社会保障の充実に使われていない

 2022年7月10日に実施される予定の参院選に向けて、NHKの「日曜討論」で各党の政策責任者による討論会が6月19日に行われ、自民党高市早苗政調会長がれいわ新選組の主張に反論した。参院選の争点で、消費税廃止を訴えたれいわの大石晃子政審会長は「岸田政権は1%たりとも減税しない、とドヤ顔で言い放った。おかしい。法人税は減税。お金持ちはさんざん優遇してきた。自公政権は鬼であり、資本家の犬と言わざるを得ない」と強調した。

 実際に、消費税収のほとんどは法人税減税に消えていて、1989~2020年度まで日本人が払った消費税は計447.5兆円なのに対し、法人税は国と地方合わせて税収が29.8兆円であった1989年度と比較すると計322.7兆円も減収しており、これは消費税収の72.1%が法人税減税の穴埋めに消えた計算になる(図29を参照)。

 

 それに対し、高市氏は「れいわ新選組の方から、消費税が法人税の引き下げに流用されているかのような発言がこの間から何度かあったが、全くの事実無根でございます。消費税の使途は社会保障に限定されている。地方分も社会保障にしか使えない。でたらめを公共の電波で言うのはやめていただきたい」と発言した。すぐさま大石氏は挙手し、反論しようとしたが、直後の発言機会は与えられなかった。

 しかし、消費税はもともと「直接税(法人税所得税)の割合が高すぎる。直接税を下げて間接税を増やすべきだ」という直間比率を是正する目的で導入されており、「消費税は法人税減税の穴埋めのために増税されてきた」という大石氏の主張は当初の目的からしても正しいのである。また、内閣府の「社会保障と税の一体改革における財源使途の状況」によれば、消費税8%増税の初年度2014年度の増収分は4.95兆円だったが、このうち社会保障の充実に使われたのは0.5兆円と全体の約10%に過ぎない。「消費税収が社会保障の充実に使われていない」というのは他ならぬ内閣府自身が認めているのだ(画像を参照)。

 

 更に、2012~2020年の安倍政権は2013年以降の約6年で診療報酬や介護報酬、生活保護などの社会保障費を少なくとも3兆8850億円も削減したことが明らかになっている。自民党は2012年にお笑い芸人の母親が生活保護を利用していた問題に便乗して生活保護そのものに対するバッシングを煽っており、同年4月27日に発表された日本国憲法改正草案の24条にも『家族は、互いに助け合わなければならない』という条項が新設されている。

 これを削除しない限りどれだけ自民党が「消費税を社会保障に使う」と言っても『家族の問題は家族だけで解決してね』と自己責任論で見捨てる改憲案と矛盾することになるだろう。

 

 

1989年当時の税率なら国の法人税収は30.7兆円にものぼっていた

 高市氏と大石氏のやり取りをめぐって、関東学院大学経済学部教授の島澤諭氏は「法人税が減った原因は、国内企業の活力と国際競争力を維持する観点から『課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる』という方針の下で法人税改革が進められたことと、国内景気低迷の結果と言えます」と述べている。だが、企業の経常利益はバブル崩壊後も拡大しており、1989年度の38.9兆円から2020年度の62.9兆円まで増加している。経常利益が増えて法人税収が減っているのは明らかに法人税減税が原因なのだ。

 もし、2020年度の経常利益に1989年当時の税率が適用された場合、単純比較で法人税収は国税だけで30.7兆円にものぼっていたと予想され、これは2020年度の法人税収である11.2兆円より19.5兆円も多かったことになる(図30を参照)。

 

 また、島澤氏は「国際競争力を維持する観点から法人税改革が進められてきた」と言うが、スイスに拠点を置く国際経営開発研究所(IMD)の調査では、日本の国際競争力ランキングは1992年の1位から2022年の34位まで下落している。法人税の基本税率は2022年が23.2%なのに対し、1992年が37.5%にものぼっていることから法人税の高い時代のほうが国際競争力を発揮していたと言うことができる。ちなみに、世界一法人税が高いと言われていたアメリカの国際競争力は長年上位を維持していたが、トランプ政権が法人税減税を行ってから2018年の1位から2022年の10位に低迷している。

 更に、個人向け・法人向けに金融系のウェブサービスを提供している株式会社マネーフォワードは法人税減税のメリットについて「日本の産業、特に製造業を国内回帰させ、企業の空洞化を食い止めることが期待されています」と述べている。だが、経産省の海外事業活動基本調査によれば、海外に拠点を置いて活動する企業の数を表した現地法人企業数は1985年度の5343社から2020年度の25703社まで約4.8倍も増加していて、法人税の高い時代のほうが企業は国内で仕事をしていたのだ(図31を参照)。

 

 前述の海外事業活動基本調査(2017年度)では、海外に進出する企業に対して移転を決定した際のポイントについて3つまでの複数回答で聞いているが、その中で法人税が安いなどの「税制、融資等の優遇措置がある」を選択した企業は8.0%と一割にも満たなかった。それに対し、企業が海外進出を決定した理由としてトップに挙げたのは「現地の製品需要が旺盛または今後の需要が見込まれる」の68.6%で、法人税を減税するよりも消費税を廃止して個人消費による需要を創出すれば、企業が国内に留まってくれる可能性が高いということだろう。

 

 

<参考資料>

全労連、労働総研編 『2022年国民春闘白書・データブック』(学習の友社、2021年)

梓澤和幸、澤藤統一郎、岩上安身 『前夜 日本国憲法自民党改憲案を読み解く』(現代書館、2013年)

 

自民党高市早苗政調会長がれいわに猛撃「でたらめを公共の電波で言うのは止めて」

https://www.tokyo-sports.co.jp/social/4265357/

「消費税減税」こそが自民党のアキレス腱

https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12750629133.html

新勢力の結集めざし熱こもる山本太郎の演説

https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/11671

社会保障費3.9兆円削減 安倍政権の6年間

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-10-26/2018102601_01_1.html

「消費税は法人税減税の穴埋めに使われている」は誤解

https://news.yahoo.co.jp/byline/shimasawamanabu/20220629-00303186

法人企業統計 令和2年度年次別調査

https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/results/r2.pdf

税収に関する資料 一般会計税収の推移

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/010.pdf

アントレプレナーシップとは?新ビジネス創造に欠かせない必要スキル

https://www.persol-group.co.jp/service/business/article/331/

法人課税に関する基本的な資料 法人税率の推移

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/082.pdf

World Competitiveness Rankings

https://www.imd.org/centers/world-competitiveness-center/rankings/world-competitiveness/

法人税減税による4つのメリットまとめ

https://biz.moneyforward.com/accounting/basic/14110/

海外事業活動基本調査

https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kaigaizi/index.html