消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

消費税増税の背景には戦後の経済成長を否定する思想がある

岸田政権は衆院選の後に消費税を15~20%まで引き上げることを想定している

 2023年10月3日、自民党世耕弘成参議院幹事長は政府がまとめる新たな経済対策について法人税所得税の減税も検討の対象になり得るという考えを示した。また、同年10月23日には岸田首相が所信表明演説で「国民への還元」として、急激な物価高に賃上げが追いつかない現状を踏まえ、負担を緩和するための一時的な措置として、所得税の減税を念頭に「近く政府与党政策懇談会を開催し、与党の税制調査会での早急な検討を指示する」と述べた。

 

 今の時期に法人税所得税の減税が議論されるのはいくつかの理由があるのだが、まず一つ目に経団連が「俺たちの税金を安くしてくれ」と政府に求めているからだと言って良いだろう。そして二つ目に早ければ2023年12月の解散総選挙を狙った経済政策を打ち出しているのではないかと思っている。

 実際に第二次安倍政権以降に行われた衆院選は2012年、2014年、2017年、2021年といずれも10~12月に実施され、全体の選挙投票率も60%未満と有権者の約半分が棄権している実態がある。年末の慌ただしい時期に国政選挙が行われると国民の多くが無関心になりやすく、特に北海道や東北の地域では雪の影響で投票に行きづらくなるのだろう。

 更に、1980年代以降は法人税所得税を減税するための財源として消費税増税が進められてきた。岸田政権としては次の衆院選の後に、所得税減税や防衛増税を口実に消費税を15~20%まで引き上げることを想定しているのかもしれない。

 

 増税賛成派が言う消費税引き上げのメリットの一つとして、「法人税収や所得税収は景気に左右されやすいが、消費税収は経済状況に関係なく安定した財源」というものがある。確かに、財務省の一般会計税収の推移を見ると、法人税収は1989年度の19.0兆円、所得税収は1991年度の26.7兆円とバブル期にピークを迎えてその後は減少し、2022年度の法人税収が13.8兆円、所得税収が22.0兆円になっている。

 だが、法人企業統計と民間給与実態統計調査によれば、企業の経常利益は1989年度の38.9兆円から2022年度の95.3兆円まで約2.4倍も増加し、年収2000万円以上の富裕層は1991年の13.8万人から2022年の30.0万人まで約2.2倍も増加している。つまり、法人税収や所得税収が減少する一方で、企業収益や富裕層人口はバブル崩壊後も増え続け過去最高を更新しているのだ。

 

 1989年当時、法人税の基本税率は40%だったが2018年には23.2%まで引き下げられ、所得税も1991年当時は課税所得が2000万円を超えれば50%の最高税率が適用されたが、2015年以降は課税所得が4000万円以上でやっと45%の最高税率が適用されるまでに変化してきた。

 仮に、税率を当時の状態に戻せば2022年度の法人税収は最大で46.5兆円、所得税収は最大で58.0兆円にのぼっていたことが予想され、消費税を廃止しても社会保障費を捻出するのが可能になるだろう(図74~75を参照)。

 

 

 経団連などは「法人税増税すると日本から企業が逃げ出す」と言うが、海外に進出する企業の多くは安価な労働力の確保を求めているのが実情で、経産省の海外事業活動基本調査(2017年度)でも、海外進出を決定した際のポイントについて企業に3つまでの複数回答で聞いたところ、法人税が安いなどの「税制、融資等の優遇措置がある」を選択した企業は8.0%と一割にも満たなかった。

 

 その一方で、企業が海外進出を決定した理由としてトップに挙げたのは「現地の製品需要が旺盛または今後の需要が見込まれる」の68.6%だった。つまり、法人税を減税するよりも消費税を廃止して個人消費による需要を創出すれば、企業が国内に留まってくれる可能性が高いということだろう。

 ちなみに、海外事業活動基本調査では2018年以降に企業が海外進出を決定した際のポイントについて公表しておらず、企業が海外に進出するのは法人税の高さが原因ではないことを知られると困るから2018年以降に調査項目を変えたのではないかと疑ってしまう。

 

 もし、企業の国外流出を防ぎたいのであれば、法人税減税よりも海外に進出する企業に対して課税を行うべきである。前述の海外事業活動基本調査によれば、海外に拠点を置いて活動する企業の数を表した現地法人企業数は1989年度の6362社から2021年度の2万5325社まで約4.0倍も増加していて、法人税の高い時代のほうが企業は国内で仕事をしていたのだ。

 

 所得税については2015年に最高税率が40%から45%に引き上げられたが、これについても経団連は「富裕層の海外流出を招いて日本経済の活力が失われる」と批判している。しかし、ワールド・ウェルス・レポートによれば日本で100万ドル(約1億4000万円)以上の投資可能な資産を保有する人は2014年の245.2万人から2021年の365.2万人まで約120万人も増加しており、所得税増税しても富裕層が海外に逃げるという事態は発生していないのだ。

 むしろ、所得税最高税率を引き上げると企業経営者たちの中には「どうせ税金で取られるなら自分が高額の報酬を受けるより、社員に還元したほうがマシだ」と考え、従業員の給料も上昇しやすくなって経済的なメリットが大きいのである。岸田政権は富裕層にしか恩恵がない所得税減税よりも、国民全員に恩恵がある消費税廃止を実施すべきだろう。

 

 

「責任ある積極財政を推進する議員連盟」は岸田降ろしの一環にしか見えない

 消費税という税金はなぜ増税が繰り返されるのか?一般的な理由は直間比率の是正だったり、財政再建だったり、社会保障のためだったりと時代によって変わるのだが、これらは全て後付けされた理由に過ぎず、消費税は戦後日本の弱体化を狙った税金だという事実には多くの人が気付いていないだろう。

 例えば、大平正芳政権(1978~1980年)の「一般消費税構想」に寄与した保守派知識人の集まりであるグループ一九八四年は著書「日本の自殺」の中で『戦後日本の繁栄は、他方で人々の欲求不満とストレスを増大させ、日本人の精神状態を非常に不安定で無気力、無感動、無責任なものに変質させてしまった』と発言し、2014年に消費税を8%、2019年に10%に増税した安倍晋三元首相は著書「美しい国へ」の中で『戦後の日本は経済を優先させることで、物質的に大きなものを得たが精神的には失ったものも大きかったのではないか』と発言している。つまり、消費税増税の背景には戦後の経済成長を否定する思想があるのだ(画像を参照)。

 

 2023年10月4日、自民党の若手議員らによる「責任ある積極財政を推進する議員連盟」は新たな経済対策を巡って、岸田政権に対し10%の消費税率を時限的に5%に引き下げる検討を行うよう求めることを柱とする提言を決定した。同団体に所属する中村裕之氏は「本当に今、物価高に苦しんでいる生活者の皆さんに減税の実感が伝わるような形を取っていただきたい」と発言している。しかし、積極財政を推進しながら期間限定の消費税5%減税に留まっているのは、消費税廃止を掲げたら安藤裕氏のように次の衆院選で公認を取り消される恐れがあるからだろう。

 また、同団体に所属する議員の主張を調べてみると多くが安倍政権の時代まで消費税増税に賛成していたことがわかる。中村裕之氏、石川昭政氏、黄川田仁志氏、青山周平氏、城内実氏は2014年と2017年の衆院選で「消費税を10%に引き上げることに賛成」と回答し、中西哲氏は2015年にブログで「日経平均株価が2万円を超えているから消費税を増税しても景気は悪化していない」と書いている。日経平均株価とは東京証券取引所第一部に上場する約1700社のうち、日本経済新聞社が選定した225銘柄を対象に算出される株価のことで日本経済全体を表す指標ではないのだ。

 

 当時の安倍政権は「若者の雇用環境を大幅に改善させた」と自画自賛していたが、2012~2020年の就業者数を性別で見ると女性が310万人増加したのに対し、男性は87万人程度(女性の28.1%)の増加に留まっていて女性ほど雇用改善の恩恵を受けていないのだ。その上、男性の中でも2012~2020年にかけて65歳以上の就業者数は173万人増加しているのに対し、現役世代に当たる25~44歳の就業者数は合計で215万人も減少してしまった(図76を参照)。現役世代の男性の雇用が悪化しているのに、日経平均株価の上昇を理由に好景気を演出するのは消費税増税に賛成していると言われても仕方がないだろう。

 

 しかし、こうした「隠れ増税派」を露骨に擁護しているのが経済評論家の三橋貴明氏である。彼は「責任ある積極財政を推進する議員連盟」が新たな経済対策を発表した翌日の2023年10月5日のブログで『何度も書いていますが、わたくしは日本の緊縮財政転換のために全ての可能性にベットしているのです』と述べている。

 だが、三橋氏は消費税廃止を掲げるれいわ新選組に関して2021年10月に「原発に反対しているから支持できない」とはっきり批判している。彼が『全ての可能性にベットしている』という表現を使うのは自民党の安倍派議員に対してだけのようだ。

 

 また、三橋氏は同団体が「本当に提言を実行したいと思うなら、やる気のない岸田自民党から分かれて新党を立ち上げてやってみろ」と批判を浴びたことに関しても『本気で提言を実行したいならば、与党である自民党の多数派を取らなければならないんだよ。新党を立ち上げたところで、国会における少数派になれば何もできない』と言い訳している。

 仮に自民党増税反対派が一斉に離党したら岸田政権にとっても相当なプレッシャーになると思うのだが、三橋氏が積極財政を推進しながら安倍政権の時代まで増税を容認していた政治家を支持するのは、プライマリーバランス黒字化目標さえ破棄できれば消費税が15~20%になっても構わないというのが本音だからではないだろうか。

 

 正直に言って、今のままでは「責任ある積極財政を推進する議員連盟」の提言は岸田降ろしの一環にしか見えず、自民党の中で安倍元首相に近い人物が首相になれば彼らはまた増税賛成に戻ってしまうのではないかと思っている。自民党の積極財政派や三橋貴明氏が今やるべきなのは、消費税が戦後日本の弱体化を狙って増税された税金なのだということを認め、安倍元首相や麻生太郎氏もそれに加担してきた事実を批判することだろう。

 

 

<参考資料>

自民 世耕氏 新たな経済対策“法人・所得税減税も検討対象”

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231003/k10014214231000.html

岸田首相が所信表明演説 所得税減税を念頭に具体策検討の意向

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231023/k10014234331000.html

一般会計税収の推移

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/010.pdf

法人企業統計 令和4年度年次別調査

https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/results/r4.pdf

民間給与実態統計調査結果

https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/jikeiretsu/01_02.htm

法人税率の推移

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/082.pdf

所得税の税率構造

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/income/b02_1.pdf

海外事業活動基本調査

https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kaigaizi/index.html

World Wealth Report 2022

https://prod.ucwe.capgemini.com/wp-content/uploads/2023/08/WWR-2022.pdf

令和五年十月四日 責任ある積極財政を推進する議員連盟

http://mtdata.jp/20231005.pdf

景気回復(中西哲氏のブログ)

https://nakanishi-satoshi.hatenablog.com/entry/2015/06/26/210903

労働力調査 長期時系列データ

https://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.html

自民党「積極財政議連」が「消費税減税」を提言した

https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12823246651.html

れいわ新選組の経済政策とエネルギー政策

https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12704780364.html

民主制のルール

https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12823376331.html