消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

デフレ不況が20年以上続く日本で消費税は不向きな税制

積極財政を装って緊縮財政を進める安倍政権

 安倍政権が発足してから7年半が経って、結局のところアベノミクスって何だったのだろうかと思う。アベノミクスはもともと、「大胆な金融緩和」「機動的な財政政策」「民間企業を呼び起こす成長戦略」という3本の矢で構成されていた。一つ目の金融緩和は日銀が世の中に供給するお金の量を表したマネタリーベースを見ると、2012年12月から2020年5月までに396.3兆円も増加しているので徹底的に進められたと言うことはできるかもしれない。

 しかし、消費者物価指数の中で最も重要なコアコアCPI(食料〔酒類を除く〕及びエネルギーを除く総合)は2020年5月に対前年比0.1%と消費税増税の影響を含めても年率2%のインフレ目標には達しておらず、金融緩和がデフレ脱却に全く寄与していないのが明らかである(図52を参照)。

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 2つ目の財政政策については当初、国土強靭化として公共事業の大盤振る舞いを宣言していたが、実際に安倍政権が財政出動を行っていたのは最初の1年だけであって、公的固定資本形成は2013年10~12月期の27.1兆円から2020年1~3月期の27.0兆円へとほとんど横ばいの状態が続いている(図53を参照)。2013年10月1日に消費税8%への増税を決めてから政府の公共投資を全く増やしていないのが現実なのだ。

 それどころか、安倍政権は2025年のプライマリーバランス黒字化目標のために憲政史上初めて消費税率を2段階も引き上げた戦後最悪の緊縮財政内閣だと言うこともできるだろう。

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 また、安倍政権が本当に2012年当時から積極財政だったのかというのも疑問に思う。安倍首相は2012年6月のメールマガジンで「名目成長率が3%、実質成長率が2%を目指すというデフレ脱却の条件が満たされなければ消費税増税を行わないことが重要」と発言していたが、これは非常にハードルの低い目標である。そもそも消費税とは完全雇用のもとで国民の消費を減らし、消費財を生産していた人手を浮かせてインフレを抑制することが目的の税金であって、年間の名目GDP成長率が10%を超えるような激しいインフレが発生しない限り増税してはいけないからだ。

 つまり、安倍政権は消費税増税を実現させるために、一時的に財政出動を行って少し景気を上向かせておこうと考えていただけではないだろうか。日本が本当にデフレ脱却するためには、消費税の廃止こそが必要だという考えには至らなかったようである。

 

 

法人税を減税しても国内への設備投資は増えない

 3つ目の成長戦略は具体的に言えば法人税減税などの規制緩和だが、消費税増税の代わりに法人税を引き下げて企業に余力が生まれたとしても、利益は需要不足の日本ではなく海外に投資される可能性が高い。

 1996~2019年の23年間で民間企業の設備投資は1.25倍しか増加しなかったのに対し、海外への投資の額を表した対外直接投資は9.50倍も増加している(図54を参照)。海外に拠点を置いて活動する企業の数を表した現地法人企業数も1996年の12657社から2018年の26233社まで増加していて、法人税の高い時代のほうが企業は国内で仕事をしていたのだ。

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 更に、法人税を減税すると企業の経常利益が増加しても法人税収がほとんど増えないという問題も発生する。法人税の基本税率は消費税が導入された1989年度の40.0%から2018年度の23.2%まで減税し、法人税収も1989年度の19.0兆円から2018年度の12.3兆円まで減収しているのだ。それに対し、企業の経常利益は1989年度の38.9兆円から2018年度の83.9兆円まで約2.2倍も増加し、法人税収が減少する一方で経常利益はバブル崩壊後も増え続け過去最高を更新している。

 もし、2018年度の経常利益に1989年当時の税率(40%)が適用された場合、単純比較で法人税収は41.0兆円にものぼっていたことが予想され、これは実際の法人税収より28.7兆円も多かったことになる(図55を参照)。2018年度の消費税収は17.7兆円程度であるため、法人税率を一昔前の水準に戻せば消費税を廃止しても社会保障費を捻出することは可能なのだ。

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 経団連は「法人税増税すると日本から企業が逃げ出す」と言うが、経産省の海外事業活動基本調査(2017年度)では海外に進出する企業に対して移転を決定した際のポイントについて3つまでの複数回答で聞いたところ、法人税が安いなどの「税制、融資等の優遇措置がある」を選択した企業は8.0%と一割にも満たなかった。

 その一方で、企業が海外進出を決定した理由としてトップに挙げたのは「現地の製品需要が旺盛または今後の需要が見込まれる」の68.6%で、法人税を減税するよりも消費税を廃止して個人消費による需要を創出すれば、企業が国内に留まってくれる可能性が高いということだろう。

 また、今後は新型コロナウイルスの影響で景気が悪化して法人税収が減少するのではないかという懸念もあるが、そのときは日銀が目標に定めている年率2%のインフレ目標に達するまで国債を発行して財源を捻出すれば良い。国債を躊躇なく発行すれば、それによって歳出が短期的に増加することがあったとしても財政出動による経済効果で成長率が上がり、自然増収が毎年どんどん増えていくのである。

 

 

消費税廃止を掲げる人物を総理大臣にしよう

 私は消費税についてデフレ不況が20年以上続く日本では不向きな税制なのではないかと考えている。財務省は毎年度の政府予算で歳出が税収を上回って不足額が広がっていく現象を「ワニの口」と呼んでいるのに対して、京都大学教授の藤井聡氏は1997年以降に名目GDPの日米格差が大幅に開いてしまったことを「新ワニの口」と表現している。

 図56では主要先進国の名目GDPの推移を示したが、これを見ると1997~2019年の22年間でカナダが2.53倍、アメリカが2.50倍、イギリスが2.30倍、フランスが1.86倍、ドイツが1.75倍も経済成長したのに対し、日本は22年間でたったの1.04倍しか名目GDPが増加していない。日本の2019年の名目GDPは553.7兆円だが、もし1997年以降の日本がアメリカ並みに経済成長したら名目GDPは今頃1300兆円を超えていたことが予想される(図57を参照)。

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 しかし、国会議員の方々は日本が「衰退途上国」に転落してしまったことについて全く危機感を持っていないのではないかと思えてならない。例えば、自民党石原伸晃元幹事長は6月11日に「消費税ゼロなんてことを言ったらどこかの政党と一緒だ。保守政党は消費税ゼロを言っちゃダメ」などと発言をしている。だが、消費税増税に反対する産経新聞特別記者の田村秀男氏は2018年11月にトランプ大統領の腹心、ミック・マルバニー補佐官代行と対談した際に、彼は保守主義の政策について「税金を使わずに経済を成長させ、人々の生活を楽にすること」と主張したという。

 2019年9月にもアメリカの保守派から「日本では保守を名乗る政治家がなぜ、経済成長を損なう増税を選挙公約にするのか」と聞かれた際に、田村氏は「日本の政治家は伝統を重視すれば保守だと自認するが、経済成長には無関心で社会保障費を補うために増税やむなしという立場になっている」と答えたら、「それは我々の言う保守主義とは関係ないね」と驚かれたらしい。つまり、保守政党だからといって緊縮財政を推進する理由にはならないということだろう。

 

 今年に入ってからは新型コロナウイルスの影響で、ドイツが付加価値税を7~12月の期間限定で現在の19%から16%に引き下げ、食料品などに適用される軽減税率も7%から5%に下げることを決定した。1997~2019年の22年間で1.75倍も経済成長したドイツが付加価値税を減税したのだから、たったの1.04倍しか名目GDPが増えていない日本も景気対策としてそれを見倣って良いのではないだろうか。

 とはいえ、安倍首相や石原元幹事長などの緊縮派では消費税の引き下げは不可能なので、自民党内であれば安藤裕議員のような消費税廃止を掲げている人物を総理大臣にするしかないと思っている。

 

 

<参考資料>

若田部昌澄 『ネオアベノミクスの論点』(PHP研究所、2015年)

松尾匡 『この経済政策が民主主義を救う』(大月書店、2016年)

菊池英博 『消費税は0%にできる 負担を減らして社会保障を充実させる経済学』(ダイヤモンド社、2009年)

藤井聡 『「10%消費税」が日本経済を破壊する』(晶文社、2018年)

伊藤裕香子 『消費税日記 ~検証 増税786日の攻防~』(プレジデント社、2013年)

田村秀男 「経済成長を無視する空っぽの保守主義」 『表現者クライテリオン』(啓文社書房、2019年11月号)