消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

日本で外国人労働者が173万人も増加したのは坂東忠信氏、中西輝政氏、藤原正彦氏のような自称保守派の責任である

 

ゆとり教育どころか日本の学校や職場は「事実上の兵役制度」になっている

 2022年7月8日の11時31分頃、奈良県参院選のための街頭演説をしていた安倍元首相が容疑者自作の銃で背後から2発撃たれ、そのうち1発が命中して心肺停止状態になる事件が発生した。安倍は病院に搬送されて蘇生措置を受けたが、17時3分に銃撃による失血のため死亡が確認された。日本の首相経験者が殺害されたのは戦後では初の事例で、戦前も含めると7人目になる。

 事件の2日後である7月10日に実施された参院選自民党が選挙前の55議席から8人増加して63議席となり勝利した。過去には選挙期間中に大平首相が急死した1980年の衆参同日選挙でも自民党が勝利したため、弔い選挙として自民党に同情票が集まったのだろう。

 今回の選挙では私が支持しているれいわ新選組は3議席を獲得して山本太郎代表も東京選挙区で当選したが、この結果によって岸田政権の新自由主義的な政策が変化することはないと思われる。

 

 最近、私が気になっているのは第二次安倍政権以降の日本で外国人労働者数が大幅に増加していることだ。厚労省は毎年1月末に「外国人雇用状況の届出状況について」を発表しているが、それによれば外国人労働者数は2012年の68万2450人から2021年の172万7221人まで9年間で104.5万人も増加している(図32を参照)。

 

 私はこの2~3年で、三橋貴明氏の『移民亡国論』(徳間書店、2014年)、安田浩一氏の『学校では教えてくれない差別と排除の話』(皓星社、2017年)、出井康博氏の『移民クライシス』(KADOKAWA、2019年)、鳥井一平氏の『国家と移民』(集英社、2020年)など外国人労働者の問題について取り扱った本を数多く読んでいた。

 しかし、その中で最も内容に疑問を感じたのは坂東忠信氏の『亡国の移民政策 外国人労働者受入れ拡大で日本が消える』(啓文社書房、2018年)という一冊である。坂東氏は元警視庁通訳捜査官で外国人犯罪対策講師というご立派な経歴を持っているようだが、著書を読んだ感想は非常に文章を書くのが下手で、55歳のわりには精神年齢の幼い人だなと思ってしまったのが正直なところである。

 更に、笑えるのは「私は18歳で警察に入り50歳を超えても反日勢力を敵に回して粋がっている」などと幼稚なヒロイズムに浸っていることだ。

 

 坂東氏は本書の21ページで、企業が外国人労働者を受け入れざるを得なくなった理由について、「叱らない教育やゆとり教育が実社会との開きを大きくしたことから、成人して実社会で働くようになった若者は心が折れやすく、その一部はニート若年無業者)となっています」と述べている。坂東氏は元刑事ということもあり、どうやら警察学校のようなブラック企業の研修に耐えられない人が悪いと言いたいようだ。

 だが、2012年12月には大阪府の桜宮高校でバスケ部の生徒が顧問から過酷な体罰を受け自殺した事件が発生したり、2022年4月には熊本県秀岳館高校でサッカー部のコーチが生徒に暴力をふるう動画がSNSで拡散されて問題になったりと、体育会系の部活動では今でも根強くスパルタ教育が残っているのが現実だろう。

 

 また、教育評論家の荻上チキ氏と内田良氏は2018年2月に15歳から50代までの男女1000人に中学生時代の校則体験を調査したところ、「体育や部活時に水を飲んではいけない」といった根性論に基づく校則は若い世代になるほど経験率が下がっている一方で、「スカートの長さ指定」「下着の色指定」「眉手入れ禁止」「整髪料禁止」など服装に関する校則は若い世代ほど増加する傾向にあることがわかった(表3を参照)。

 

 中学校の校則が厳しくなった背景には、学校の慣性バイアス(前例を踏襲する傾向)による継続、新たな統率ニーズの増大、少子化学校選択制の中での「地域へのアピール」の拡大、ゼロトレランス教育(厳しく指導・罰則を行う対応)などによる不寛容化、あるいは教員の多忙化による一括管理など様々な説が考えられる。

 坂東氏は「叱らない教育やゆとり教育が実社会との開きを大きくした」と述べているが、実際には「令和の管理教育」と表現できるような新たなブラック校則が問題になっていると言えるのではないだろうか。

 

 その上、法務省が発表している2021年版の「犯罪白書」によれば、未成年の検挙人数は1981年の25万2808人から2020年の2万2552人(少年人口比では10万人当たり1432.2人から201.9人)まで7分の1以下に減少している(図33を参照)。1967年生まれの坂東氏は1981年当時に14歳であって、彼の若い頃のほうがよっぽど心が折れやすい若者が多かったのだ。

 

 それに対し、厚労省が発表している2021年版の「自殺対策白書」によれば、日本の15歳から39歳までの死因の第一位は自殺となっている。こうした状況は国際的に見ても深刻であり、10~20代で死因の第一位が自殺なのは日本と韓国のみである。韓国で若者の自殺が多いのは明らかに兵役制度や受験戦争が原因だが、日本で若者の自殺が多いのは学校や職場が「事実上の兵役制度」になっているからだろう。

 ちなみに、私は2022年1月5日に坂東氏のツイッターで「貴方はゆとり教育で心が折れやすい若者が増えたと言いますが、1981年以降に未成年の検挙人数が減少している事実をどう思いますか?」と質問したら数日後にブロックされてしまった(冒頭の画像を参照)。結局のところ、坂東氏は自分と異なる意見が全く受け入れられず、彼自身が最も心が折れやすい人物だと言えるのかもしれない。

 

 

日本で少子化が進んだのはデフレ不況で子育て世代の収入が減少したから

 更に、坂東氏は本書の38~39ページで、少子化問題について「バブル期を前後に、家族を作ることより独身のまま自由に生きることをかっこいいとする風潮の中で生まれ育った中年世代が社会の現役中核クラスになる今、このままで少子化を解決できると思うほうがおかしいのです」と述べている。

 

 しかし、出生数の推移を見るとバブル絶頂期だった1990年は122万1585人と2021年の81万1604人より約40万人も多く、バブル期はまだ今ほど少子化が深刻でなかったことがわかる。生涯未婚率も2020年は男性が25.70%、女性が16.40%なのに対し、1990年は男性が5.57%、女性が4.33%程度である。特に、男性の年収別生涯未婚率(2017年)は1500万円以上だと5%なのに対して、100万円未満だと47%にのぼっている(図34を参照)。

 独身のまま自由に生きることをかっこいいとする風潮どころか、低所得の男性は結婚したくてもできないのが現実なのだ。

 

 実は、坂東氏のような「現代の日本人は甘やかされている」という思い上がった態度で、少子化問題について国民に責任を押し付けてくるのは自民党を熱烈に支持する自称保守派の共通した思想なのである。

 例えば、第一次安倍政権のブレーンでもあった政治学者の中西輝政氏はWiLLの2006年4月号で、「1970年代のイギリスを見ればわかる通り、ぎりぎりまで来てコンドームが買えない貧困層が増えれば自然に少子化は回復に転ずる」と述べている。だが、この発言には1970年代のイギリスは名目GDP成長率が平均プラス16.1%とインフレ不況が問題になっていたのに対し、2000年代の日本は名目GDP成長率が平均マイナス0.6%とデフレ不況が問題になっていたという経済的な背景の違いが全く考慮されていない。

 

 図35は1956~2021年の「名目GDP成長率と出生数の推移」を示したものだが、この2つの相関係数を確認すると85.1%と高い数値が表れている。つまり、日本で少子化が進んだのは1990年代のバブル崩壊後にデフレ不況が深刻化する中で消費税増税や歳出削減などを行って子育て世代の収入が減少したからではないだろうか。

 それにも関わらず、「家族を構成しにくいのは日本人が豊かさと便利さを求め過ぎたからだ」と政府の責任を放棄する坂東氏の発言は大いに問題があるだろう。

 

 そもそも、坂東氏はなぜ移民受け入れを批判する本の中で、「ゆとり教育で心が折れやすい若者が増えた」「独身のまま自由に生きることをかっこいいとする風潮が少子化の原因だ」と現代の日本人を貶めるような主張をするのだろうか。それは、本を売るために政府の責任から目を逸らして若者をバッシングする内容にしたほうが良いという判断があったからだと思えてならない。

 作家の橘玲氏は近年のベストセラーは70~80代を対象にしたものがほとんどで、新聞にしても出版にしても活字メディアにとって団塊世代を批判することが最大のタブーになっていると指摘している。

 

 現代の日本人を貶める内容の本が大ヒットした先駆けは2006年に250万部以上売れた藤原正彦氏の『国家の品格』(新潮社、2005年)という一冊だろう。

 藤原氏は本書の中で、「戦後の日本は一貫して高い経済成長を遂げてきました。そして我々の暮らしは非常に豊かになった。しかし、繁栄の代償に失ったものはあまりにも大きかった。国家の品格が格段に失墜したからです」「日本人のDNAに染みついているかの如き道徳心が戦後少しずつ傷つけられ、最近では市場経済によりはびこった金銭至上主義に徹底的に痛めつけられています」と述べている。

 

 だが、未成年の殺人件数は1961年の448人から2018年の37人(少年人口比10万人当たり2.19人から0.33人)まで6分の1以下に減少している(図36を参照)。藤原氏は1943年生まれなので1961年当時は18歳であり、今の若者よりも藤原氏の世代のほうがはるかに少年犯罪は多かったのだ。高度経済成長期から現代にかけて少年犯罪が減少したのは、明らかに戦後の経済成長によって国民の暮らしが豊かになったからだろう。

 

 また、『岸田政権は消費税廃止と一律の現金給付で「令和の所得倍増」を達成すべき』の記事でも指摘した通り、国税庁のデータでは戦後最も給与が高かった1997年当時の50~54歳男性(1942~1947年生まれ)の平均年収は736.6万円と、2020年現在(1965~1970年生まれ)の656.3万円より約80万円も多い。藤原氏のような戦後の経済成長を享受してきた世代が「繁栄の代償に失ったものはあまりにも大きかった」と言っても全く説得力を感じないのである。

 

 とはいえ、『国家の品格』ではグローバリズムに対しても厳しく批判しているが、本書が大ヒットすることによって小泉政権以降に進められてきた新自由主義的な政策が見直されるきっかけになればまだ良かったのかもしれない。しかし、実際に2006~2021年の15年間で外国人労働者数は130万人以上も増加しており、日本の移民国家化は坂東忠信氏、中西輝政氏、藤原正彦氏のような戦後の経済成長を否定して若者をバッシングする自称保守派の責任でもあるのだ。

 そんなに「戦後の日本はダメで戦前の日本が素晴らしかった」と考えているのであれば、是非ともタイムマシンを作って1945年以前の時代に戻ればいいだろう。

 

 

<参考資料>

荻上チキ、内田良 編著「ブラック校則 理不尽な苦しみの現実」(東洋館出版社、2018年)

橘玲 「上級国民/下級国民」(小学館、2019年)

中西輝政悪平等こそ日本を滅ぼす」 『WiLL』(ワック、2006年4月号)

 

安倍晋三 - Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%89%E5%80%8D%E6%99%8B%E4%B8%89

「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和3年10月末現在)

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_23495.html

令和3年版犯罪白書 少年による刑法犯

https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/68/nfm/n68_2_3_1_1_1.html

令和3年版自殺対策白書 年齢階級別の自殺者数の推移

https://www.mhlw.go.jp/content/r3h-1-1-03.pdf

2021年の出生数、過去最少81万人 想定より6年早く少子化進む

https://www.asahi.com/articles/ASQ632HBDQ62UTFL00N.html

2020年生涯未婚率は男25.7%、女16.4%。

https://comemo.nikkei.com/n/n557204635c6a

Nominal GDP forecast

https://data.oecd.org/gdp/nominal-gdp-forecast.htm

国民経済計算 2022年4-6月期2次速報値

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2022/qe222_2/gdemenuja.html

Maddison Project Database 2020

https://www.rug.nl/ggdc/historicaldevelopment/maddison/releases/maddison-project-database-2020

民間給与実態統計調査結果

https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/jikeiretsu/01_02.htm