消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

女性の貧困問題と男性の性欲問題から日本のジェンダーについて考える

※この記事は2022年1月24日に更新されました。

 

夫婦別姓ではなく政府の緊縮財政によって家族は崩壊する

 2021年は大物政治家や著名人の失言が相次いだ年だった。その代表的な例は2月3日に森喜朗元首相が日本オリンピック委員会の臨時評議委員で、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」「女性を必ずしも増やしていく場合は、発言の時間をある程度規制しておかないとなかなか終わらない」と発言したことが問題になった。

 森氏は2003年6月にも「子供を一人もつくらない女性が、自由を謳歌して、楽しんで年を取って税金で面倒みなさいというのはおかしい」と発言したことが問題になっており、もともと女性蔑視の思想を持っていたことが改めて明らかになったと言えるだろう。

 

 だが、私がそれ以上に問題だと思っているのは、経済同友会櫻田謙悟代表幹事が2021年2月16日に企業で女性の役員登用が進んでいない理由を「女性側にも原因がないことはない」とし、「チャンスを積極的に取りにいこうとする女性がまだそれほど多くないのではないか」と発言したことだ。

 経済同友会をはじめとする財界は1990年代に『新時代の「日本的経営」―挑戦すべき方向とその具体策』として従業員を「長期蓄積能力活用型」「高度専門能力活用型」「雇用柔軟型」の3つのタイプにわけた。そのうち最後のタイプに当たる「雇用柔軟型」として非正規雇用派遣労働者を大幅に増やす提言していたのだが、労働力調査を見ると非正規雇用の割合(2020年)は男性が22.2%なのに対し、女性は54.4%にものぼっている。経済同友会の提言は結局のところ、女性の非正規雇用を大幅に増加させる原因になったのである。

 

 また、時系列のデータでは15~24歳女性の非正規雇用率が1992年の20.4%から2020年の51.5%へと上昇し、年収200万円以下で働くワーキングプアの女性も1992年の550.8万人から2020年の837.9万人まで増加してしまった(図23を参照)。

 意外かと思われるかもしれないが、日本で最も女性の社会進出が進んでいたのは1990年代前半のバブル期であって、それ以降は逆に貧困化して女性の社会進出が後退する時代に入りつつあるのだ。労働規制の緩和によって経済同友会が率先して女性が社会進出するチャンスを奪ってきたというのに、役員登用が進まない理由を女性のせいにするのは無責任極まりないだろう。

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 その他にも、森喜朗氏のような大物政治家の失言が生まれる背景には日本は海外と比べて女性の国会議員比率が著しく低いという問題も存在するのではないだろうか。各国の国会下院(日本は衆院)または一院制の国で女性議員の割合を見ると、日本は9.9%と世界191ヵ国の中で165位(2020年1月現在)に留まっている。私が日本で女性の国会議員が増えない理由は、自民党の女性政治家にも原因があるのではないかと思っている。

 例えば、消費税増税の問題でも自民党の男性政治家なら支持できるかどうかは別として安藤裕氏や西田昌司氏など消費税廃止を掲げる人物が存在していたのに、女性でそうした人はほとんどいないように感じる。日本では、男性政治家よりも女性政治家のほうが緊縮財政を推進する財務省に媚びないと出世できない現実があるのかもしれない。

 それどころか、2010年代には自民党の女性政治家から社会保障の削減を正当化する発言が相次いだことは注目すべきだろう。

 

 『Voice』の2012年8月号ではお笑い芸人の母親が生活保護を利用していた問題で片山さつき氏が「かつての日本にはあった『生活保護を受けるなんて、となり近所に恥ずかしい』といった価値観が徐々に失われつつある」と発言したことが問題になり、『新潮45』の2018年8月号では杉田水脈氏が「LGBTカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がないのです」と発言したことが問題になった。

 実際には政府が貧困層LGBTを支援して社会保障を充実させれば、名目GDPの「政府最終消費支出」が増加して国の経済成長にもつながるのだが、日本人の多くは「政府が支出を増やしたら子孫に借金を残す」「国民が使ったお金はそのまま消える」と勘違いしているため、片山氏や杉田氏のような生活保護利用者とLGBT当事者への差別を煽る政治家が当選する状況を生んでいるのだろう。

 

 更に、2021年2月18日には放送されたNHKのドキュメンタリー番組「夫婦別姓 結婚できないふたりの取材日記」で、選択的夫婦別姓の実現を願う夫妻のインタビューに応じた亀井静香氏の発言が物議を醸していた。番組は法律婚を選ばず夫婦別姓での事実婚を選んだ映像制作に携わる男性と妻が自分たちの2年半にわたる取材や葛藤の記録をまとめたドキュメンタリーで、選択的夫婦別姓制度に賛同する与野党の国会議員とのやり取りや、自民党本部で開かれた勉強会に2人が当事者として招かれた様子も収録されている。

 

 夫妻は取材を続ける中で、国会議員時代から夫婦別姓に反対してきた亀井氏のもとを訪れた。妻が「そもそもなぜ日本では夫婦同姓でないと結婚が認められないのか」と質問すると、亀井氏は「勝手なことをやっている人に国家が全部合わせてたらどうするんだよ。国家から恩恵を受けたいと思うのであれば、国家のルールに対してある程度妥協しないと生きていけないだろ」と開き直った。これはまるで他人に価値観を押し付ける全体主義者の発想である。

 亀井氏は新自由主義に批判的で消費税増税原発再稼働に反対するなど評価できる点も多いが、この発言だけで今までの功績が全て台無しになってしまうような気がした。

 

 岸信介の時代から自民党と親密な関係を続けている統一教会政治団体である国際勝共連合夫婦別姓に反対する理由について、「明治以来の日本の夫婦同氏制度は、家族としての一体感を強め子供を第一に考える家族愛の在り方である」と説明している。

 しかし、厚労省総務省のデータによれば過去50年間(1969~2019年)における離婚率と男性の完全失業率は強い相関関係を示しており、夫婦同姓であっても政府の緊縮財政によって労働環境が悪化すれば家族は簡単に崩壊してしまうのだ(図24を参照)。

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 亀井静香氏にしても国際勝共連合にしても夫婦別姓反対派に共通するのは、「現代の日本人は甘やかされている」「日本で少子化が進んだのは女性や若者が結婚しなくなったから」という思い上がった態度ではないだろうか。

 私は夫婦別姓であっても同姓であっても、消費税を廃止して個人消費による需要を創出し、子育て世代の所得を増やして1970~80年代のような年間の名目GDP成長率が5%を超える経済状況を続けていけば確実に少子化は改善されることを強調しておきたい。

 

 

男子に対する性教育が政治家のセクハラ発言を根絶させる

 その一方で、野党でも立憲民主党本多平直氏が2021年5月10日に実施された性犯罪刑法改正に関するワーキングチームにおいて、「例えば50歳近くの自分が14歳の子と性交したら同意があっても捕まることになる。それはおかしい」「12歳と20歳代でも真剣な恋愛がある」「日本の性交同意年齢は他国と比べて低くない」とロリコンを思わせる発言をしたことが物議を醸していた。

 本多氏については発言の責任を取って議員辞職したが、中学生の頃から性の問題と向き合ってきた自分からすればこうした失言が生まれる背景についてもっと目を向ける必要があるように思う。

 

 例えば、私は2ちゃんねるツイッターなどで政治以外のテーマについても閲覧しているが、ロリコンで悩んでいる男性は非常に多いというのが正直な感想である。実際にインターネットの調査サイト「しらべぇ」が2018年12月に全国20~60代の男女計1664人を対象に「成人した後、小学生以下の児童に性的興奮を覚えたことがあるか?」という質問を行ったところ、「ある」と回答した割合は女性で5.1%なのに対し、男性では11.3%にのぼっている。

 男性の1割以上が「小学生以下の児童に性的興奮を覚えたことがある」と回答していることからロリコンの趣味を持っている人は一定の割合で存在するのが現実なのだ。

 

 また、非正規雇用の割合に男女格差が存在することは前述した通りだが、男性の間でも45~54歳の非正規雇用率(2020年)が8.2%程度なのに対し、15~24歳の非正規雇用率は47.1%にものぼっている。時系列のデータでは15~24歳男性の非正規雇用率が1991年の21.4%から2020年の47.1%へと上昇し、年収200万円以下で働くワーキングプアの男性も1991年の157.2万人から2020年の326.6万人まで増加してしまった(図25を参照)。

 その影響で50歳までに一度も結婚したことのない人の割合を示す生涯未婚率(男性)は1990年の5.57%から2020年の25.70%まで上昇している。今の日本では低収入でモテない男性がアイドルや二次元に依存せざるを得なくなっているのだ。

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 フリーランスライターの香月真理子氏は2007年に女児を性的に描写したロリコン漫画で生計を立てている30代の男性に児童ポルノ禁止法についてどう思っているか取材したところ、「小児性愛者が十分に満足できる代替手段を与えずに、一ヵ所を締め付けても別の場所で性欲が噴き出すだけ。児童ポルノを無思慮に規制したら今度は現実の女児に向かいかねません」と答えたという。

 ロリコンを減らすためには表現規制よりも積極財政で20~40代男性の所得を増やして、恋人ができる状況にまで持っていく必要があるだろう。

 

 だが、日本の国政選挙ではジェンダー平等の問題が争点になっても男性の貧困問題についてはほとんど争点になっていないように感じる。例えば、2021年10月31日に実施された衆院選では消費税廃止を掲げるれいわ新選組山本太郎氏、大石晃子氏、多ケ谷亮氏の3人が当選した一方で、日本共産党は選挙前の12議席から2人減らして10議席となってしまった。

 しかし、私がそれ以上に疑問を感じたのは共産党志位和夫委員長が11月1日の記者会見で発言した内容だった。志位氏は衆院選共産党議席と得票数を減らしたことに対する引責辞任の可能性について「責任はないと考える」と否定し、その理由として「我が党は政治責任を取らなければならないのは間違った政治方針を取った場合だ。今度の選挙では、党の対応でも野党共闘でも方針そのものは正確だったと確信を持っている」と言い訳に終始した。

 もし、志位氏が「今回の選挙で日本共産党はれいわ新選組に票を奪われました。だから我が党は2022年の参院選に向けて消費税廃止を掲げます」と発言したら私は高く評価していただろう。残念ながら今の共産党は「自民党が長年進めてきた新自由主義政策から転換するために議席を増やしたい」と本気で思っていないようである。

 

 私は衆院選の前日だった2021年10月30日に新宿駅で行われた街頭演説でれいわ新選組日本共産党のパンフレットをもらってきた(写真を参照)。その中身を見るとまずれいわ新選組は消費税廃止が真っ先に書かれており、次に安定雇用の実現や公共事業の復活など積極財政の政策が並んでいる。

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 それに対し、日本共産党のパンフレットには「政権交代をはじめよう」「ジェンダー平等の実現」という抽象的なスローガンが強調されており、持ち前の政策だった消費税廃止については全く書かれていないのだ。共産党が消費税廃止を引っ込めてしまったのは、立憲民主党と共闘する際に消費税増税に賛成する連合(日本労働組合総連合会)に譲歩したからだろう。

 1989年に竹下政権が消費税を導入した当時、日本共産党だけでなく社会党公明党も消費税に反対していたが、彼らはその後自民党に譲歩して増税賛成になってしまった。共産党立憲民主党と共闘することによって、社会党公明党と同じ道をたどってしまわないか心配である。

 

 日本共産党ジェンダー平等の政策について「痴漢ゼロ・セクハラ禁止」「デジタル性暴力をなくす」「同性婚・選択的夫婦別姓を実現」などを挙げているが、性の問題で悩んでいるのは女性やLGBTだけでなく男性も同じである。

 実際に、龍谷大学教授の猪瀬優理氏が2005年に行った調査によれば、「月経は汚らわしいもの」と答えた女子高生は4.7%程度だったのに対し、「射精は汚らわしいもの」と答えた男子高生は14.3%にものぼっている。女子よりも男子のほうが自分の性を否定的に捉える傾向が強いのは、保健体育の授業で男子学生に対する性教育がほとんど行われていないからではないだろうか。

 

 更に、児童ポルノ規制の問題について研究するジャーナリストの渡辺真由子氏が2018年に東京都内の大学生を対象に行ったアンケート調査によれば、性交のために最も参考にする情報源として男子の6割がアダルト動画などの性的メディアを挙げている。それに対し、参考にする情報源として「家庭や学校の性教育」を挙げた者はゼロだった。性教育が10代での性交渉を抑制する立場から行われてきたためか、実用的だとは評価されていないようである。

 日本共産党が本当に性暴力や政治家のセクハラ発言を根絶したいのであれば「男子学生に対する性教育を充実させる」と公約にはっきりと明記すべきだろう。

 

 

<参考資料>

飯島裕子 『ルポ 貧困女子』(岩波書店、2016年)

香月真理子 『欲望のゆくえ 子どもを性の対象とする人たち』(朝日新聞出版、2009年)

村瀬幸浩 『男子の性教育 柔らかな関係づくりのために』(大修館書店、2014年)

渡辺真由子 『「創作子どもポルノ」と子どもの人権』(勁草書房、2018年)

片山さつき城繁幸赤木智弘 「本当に生活保護を受けるべきは誰か」 『Voice』(PHP研究所、2012年8月号)

 

「女性がたくさん入っている会議は時間かかる」森喜朗

https://www.asahi.com/articles/ASP235VY8P23UTQP011.html

積極的な女性「まだ多くない」経済同友会桜田代表幹事

https://news.yahoo.co.jp/articles/7b65856d988a9a754103c373cbd3feaf4f33db3c

労働力調査 長期時系列データ

https://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.html

民間給与実態統計調査結果

https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/jikeiretsu/01_02.htm

女性議員比率は世界165位、日本は変われるか

https://www.asahi.com/sdgs/article/10795041

LGBT“生産性”発言で大炎上 自民党杉田水脈の“脈々”と続く問題発言まとめ

http://bunshun.jp/articles/-/8326

別姓願う夫婦に「付き合ってられない」亀井静香

https://www.asahi.com/articles/ASP2L67GTP2LUTIL02J.html

選択的夫婦別姓亀井静香氏が暴言を連発

https://wezz-y.com/archives/87285

再燃する「選択的夫婦別姓論議

https://www.ifvoc.org/shiso-np20-0315/

令和2年(2020)人口動態統計(確定数)の概況

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei20/index.html

「14歳と同意性交、捕まるのはおかしい」立憲議員発言

https://www.asahi.com/articles/ASP676TZPP67UTFK010.html

小学生以下の児童で性的に興奮する人の割合は…

https://www.excite.co.jp/news/article/Sirabee_20161935524/

性別,50歳時の未婚割合,有配偶割合,死別割合および離別割合

https://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/P_Detail2021.asp?fname=T06-23.htm

2020年生涯未婚率は男25.7%、女16.4%。

https://comemo.nikkei.com/n/n557204635c6a

共産・志位委員長、議席減「責任はない」

https://mainichi.jp/articles/20211101/k00/00m/010/350000c