日本国民を貧困化させる安倍政権を批判すべき
アメリカ商務省は4月29日、2020年1~3月期の実質GDP成長率が年率マイナス4.8%に落ち込んだと発表した。アメリカでは新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるためにロックダウン(都市封鎖)を実施しており、経済活動が制限されたことが響いた結果となっている。
しかし、それ以上に深刻なのが日本経済であり、消費税10%増税の影響を受けた2019年10~12月期の実質GDP成長率は年率マイナス7.1%の落ち込みである。アメリカの2020年1~3月期と比較すると、コロナウイルスよりも消費税増税の影響のほうがより深刻だということがわかる。
OECDの調査でもアメリカの2020年1~3月期の実質GDP成長率がマイナス1.22%程度なのに対し、日本の2019年10~12月期の実質GDP成長率はマイナス1.81%となっている(図36を参照)。更に、今年7月からは消費者に最大5%が還元される補助金事業のキャッシュレス還元が終了して「再増税」となり、コンビニやAmazonなどの売上が減少して個人消費が落ち込みコロナウイルスからの復興も遅れる可能性が高いだろう。
そこで重要になってくるのが消費税の廃止や引き下げを求める自民党議員の存在である。3月30日、安藤裕議員が代表を務める「日本の未来を考える勉強会」と青山繁晴議員が代表を務める「日本の尊厳と国益を護る会」が共同で記者会見を行った。安藤氏は「これまで消費税を5%に減税すべきだと主張してきたが、新型コロナウイルスによる事態を受け、今年6月から一気に0%にして徹底的に国民の生活を支えるという強いメッセージを出すべきだ」と述べており、消費税廃止の他にも休業補償や粗利補償を提言している。粗利補償とは、売上から商品などの仕入原価を差し引いた残りの利益を補償する景気対策である。
安藤氏が本当に消費税廃止や粗利補償を実現したいと思うのであれば、是非とも2021年の自民党総裁選に出馬すべきだろう。
その一方で、青山氏は「税率を5%に戻すべきだが、消費税そのものの存在意義は否定しない」と述べ、「安倍首相も将来的な消費減税を全部否定されているとは思わない」「私たちは抵抗勢力ではなく、消費税について柔軟な考えを持っている安倍首相の背中を押すという減税勢力」と中途半端な発言に終始していて、つまり「消費税増税には反対だが、安倍首相の支持はやめない」という立場なのだろう。
しかし、安倍首相は2012年6月のメールマガジンで「名目成長率が3%、実質成長率が2%を目指すというデフレ脱却の条件が満たされなければ消費税増税を行わないことが重要」と発言していたにも関わらず、2019年の名目GDP成長率が1.2%、実質GDP成長率が0.7%とデフレ脱却の目標に届かないまま消費税10%増税を行ってしまった。青山氏が本当に消費税引き下げを提言するのであれば、公約に違反して増税を強行した安倍首相の辞任を求めて安藤氏を総理大臣にするくらいの覚悟を持つべきではないだろうか。
消費税増税に反対する人なら一度は「何故、安倍首相は景気を悪化させる増税を二回も行ったのか?」と疑問に思ったことがあるだろう。だが、私はむしろ経済成長を否定して貧しい時代の日本を取り戻すためにこそ安倍首相は消費税増税を強行したのではないかと思えてならない。
安倍首相の著書『美しい国へ』(文藝春秋、2006年)を読むと、昭和30年代を舞台にした映画「ALWAYS 三丁目の夕日」について「今の時代に忘れられがちな家族の情愛が世代を超えて見るものに訴えかけてきた」と高く評価している箇所に気付かれるだろう。しかし、昭和30年代は決して映画のように華やかではなく今よりはるかに殺人事件が多発していて学生運動もエスカレートしていた時代である。
青山氏をはじめとする安倍政権の支持者はよく「安倍さんは本当は消費税増税に反対している」「財務省の圧力によって増税反対が言い出せないだけなんだ」と言い訳するが、実際には昭和30年代のような日本中がまだ貧しかった時代を懐古しているからこそ、消費税増税や移民受け入れなど日本国民を貧困化させる愚策を次々と実行するのだろう。
また、安倍政権を熱烈に支持する「保守ブログ」や「愛国ブログ」を見ると、必ずと言っていいほど『昔の日本人は誇り高かったが、今の日本人は情けない民族になってしまった』などと現代の日本を誹謗中傷する書き込みに溢れている。
以前、私がツイッターで安倍政権の支持者に「消費税増税で景気を悪化させた安倍首相が辞任しないと日本経済が崩壊する」と言ったら、その人は「あなたと違って私は皇室の男系継承と国防に重きを置いている」と反論してきた。国防を重視する人が韓国の慰安婦に対して10億円も拠出して、北方領土までロシアに売り渡そうとする安倍政権を支持しているのは笑ってしまうが、どうも戦後日本が嫌いな勢力にとって「もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」などと地球市民的な発言を繰り返し、消費税増税で国民を貧困化させる安倍首相が救世主に見えるのだろうなと思う。
自民党内から消費税に批判的な意見が出てくるのは良い傾向だが、消費税を廃止するためには自民党ネットサポーターズクラブ(J-NSC)のような「安倍首相のやることに何でも賛成している人々」に対しても積極的に批判していく必要があるだろう。
だが、消費税廃止を求める機運が高まっている一方で、最近では著名人から「コロナ増税」の布石を作ろうとする発言が相次いでいる。元国会議員でタレントの杉村太蔵氏は4月26日のサンデージャポンで「欧州は手厚い補償があるといった報道が見られますけど、例えばドイツなんか消費税19%ですね。イギリスも20%が消費税なんです。日頃、国民が負担しているんですね」と税率の違いを指摘し、まるで「手厚い補償を行うために日本の消費税をもっと引き上げろ」と言いたいようである。
しかし、ドイツの軽減税率は7%と日本の8%よりも安く、今年7月からは臨時休業で大きな損害を被っている飲食業界に対して1年間、消費税を19%から7%に引き下げることを決定した。イギリスでも食料品が非課税で、「国税収入に占める消費税収の割合」は26.2%と日本の29.2%よりも安くなっている(表4を参照)。日本の消費税は国際的に見るとむしろ高いほうなのである。
また、「消費税を35%まで引き上げないと社会保障費を賄えない」と発言する池上彰氏は今回のコロナウイルスでも「現金の一律給付で増えるだろう国の借金を増税によって返さなければならない」と言っている。政治経済に関心が高くない人は池上氏の番組を通して、財務省のプロパガンダを信じ込んでしまうのではないだろうか。
だが、一般的に財務省が言う国の借金とは「政府の負債」のことで、国民が政府にお金を貸している立場なのである。その上、2013年以降は日銀が金融緩和を行って民間銀行の国債を買い取り、国民に返す必要のある負債は急速に減少しつつある。2019年12月現在、すでに日本国債の46.8%は政府の子会社である日銀が所有していて、このぶんは政府が返済や利払いを行う必要はないのだ。財務省は消費税を増税させる口実を作るために、「国の借金を増税して返さなければならない」という嘘を煽っているに過ぎないのである。
更に、普段政治的なことを言わなくても、今回のコロナウイルスで休業補償や景気対策を求める声を暗に封じ込めるかのような発言をする著名人も存在する。
シンガーソングライターの山下達郎氏は4月12日、パーソナリティを務めるラジオ番組でコロナウイルスについて「今、政治的対立を一時休戦して、いかにこのウイルスと戦うかを世界中のみんなで助け合って考えなければならないときです。何でも反対、何でも批判の政治的プロパガンダはお休みにしませんか?責任追及や糾弾はこのウイルスが収束してからいくらでもすればいいと思います」と発言したことが話題になった。しかし、ハーバード大学の研究チームはコロナウイルスを収束させるためには外出自粛などの措置を2022年まで継続する必要があると発表しており、それまで感染拡大が続いて消費税廃止などの景気対策を実施しなかったら日本は後進国に逆戻りすることが確実となるだろう。
また、日本でこれだけ感染者が増加したのは安倍政権が国賓で来日する予定だった習近平に配慮して、3月5日まで中国人の入国禁止を決断できなかったからである。実際に日本よりも中国との距離が近い台湾では1月22日に武漢との団体旅行の往来を止め、2月6日には中国全土からの入国を禁止して感染者数は5月5日の時点で438人に留まっている。だが、大御所ミュージシャンの山下達郎氏がインバウンドに依存した日本政府の対応が遅れてコロナウイルスの感染者が増加した事実を知らないわけがないだろう。
私は山下氏が「今は政府を批判するな」と発言した背景には、自民党内で消費税廃止を求める声が高まっていることも無関係ではないと思っている。消費税を廃止するとなるとその代わりの財源として「法人税増税」は経団連が反対するので、財務省は所得税の最高税率引き上げを求めてくる可能性が高い。そうなると山下氏のような著名人が猛反発してくることが予想される。
特に山下氏は所得税の累進性が今よりはるかに高かった時代から活躍していて、1980年に「RIDE ON TIME」をヒットさせたときの最高税率は所得税と住民税を合わせて93%にものぼっている。これだけ最高税率が高いと流行の移り変わりが激しいミュージシャンにとっては痛手だろう。
しかし、今年1~3月期と4~6月期のGDPはマイナス成長になることが確実なので、しばらくの間は法人税や所得税の最高税率を引き上げなくても国債を発行して財源を捻出すれば良いのである。消費者物価指数の中で最も重要なコアコアCPI(食料〔酒類を除く〕及びエネルギーを除く総合)は2020年3月に前年比0.3%程度と、消費税増税の影響を含めても年率2%のインフレ目標には達しておらず、コロナウイルスの景気対策として国債を発行することはまだまだ可能だろう。国債を躊躇なく発行すれば、それによって歳出が短期的に増加することがあったとしても財政出動による経済効果で成長率が上がり、自然増収が毎年どんどん増えていくのである。
安倍政権は自民党の安藤裕議員やれいわ新選組の山本太郎代表が提言している消費税廃止と真水100兆円の景気対策を実行すれば、日本経済は7~9月期からプラス成長して急速に回復していくだろう。
<参考資料>
アメリカ経済、第1四半期は4.8%縮小 2008年以来の落ち込み
https://www.bbc.com/japanese/52481978
国民経済計算 2019年10-12月期2次速報値
https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2019/qe194_2/gdemenuja.html
https://data.oecd.org/gdp/quarterly-gdp.htm
【緊急】今こそ消費税大幅減税を!「減税勢力」総結集!
https://www.youtube.com/watch?v=pAOEZ-ntv9M
「6月に消費税0%」で令和の恐慌を防ぐ
https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20200401/pol/00m/010/002000c
【緊急事態企画★クラブ編vol.2】#粗利補償
https://www.youtube.com/watch?v=_juDEcAsvMk
杉村太蔵、欧州並みの補償を求める声を一蹴
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200426-00010012-encount-ent
ドイツ、1兆円超のコロナ追加対策を発表
https://www.afpbb.com/articles/-/3280017
財政金融統計月報第806号(2019年6月号)
https://www.mof.go.jp/pri/publication/zaikin_geppo/hyou/g806/806.html
https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/appendix/breakdown.pdf
山下達郎、コロナめぐる言説に「冷静さと寛容さ」訴え
https://www.agara.co.jp/article/56527
新型コロナウイルス流行収束へ外出自粛 2022年まで継続必要
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200416-04160001-sph-soci
今さら!水際、中国全土を対象 習近平国賓来日延期と抱き合わせ
https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20200306-00166399/
中国と密接な台湾は、なぜ感染者が50人規模にとどまっているのか?
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/062200025/031200012/
消費者物価指数 時系列データ