れいわ新選組以外の野党も「消費税廃止」を掲げよう
安倍首相は参院選公示を翌日に控えた7月3日の党首討論会で、「自民党で改憲議席を3分の2取ると言ったことは今まで一度もない。与野党で3分の2の合意を得られる努力を重ねていきたい」と発言し、日本維新の会や国民民主党の名を挙げながら憲法改正の国会発議を目指す考えを強調した。
2020年の新憲法制定に意欲を見せる安倍首相がこのタイミングで維新と国民民主に呼びかけたのは消費税10%増税を控えた悪条件の中、7月21日に実施された参院選で与党をはじめとする改憲勢力が国会発議に必要な3分の2を確保することが難しいと見越していたからに他ならない。
だが、国民民主党の玉木代表は8月20日に立憲民主党の枝野代表と衆参両院で統一会派を結成することを合意し、最近では山本太郎氏の人気に目をつけてれいわ新選組との合流説も浮上しているという。玉木代表は経済評論家の三橋貴明氏との対談の中で、小泉政権以降の自民党が進めてきた構造改革を批判し、「食料の安全保障を憲法に明記すべき」と発言していて安倍政権が目指す新自由主義的な改憲とは方向性が違うというのが本音だろう。
もし、国民民主党や立憲民主党がれいわ新選組と合流したいのであれば、「将来的な消費税の廃止」を掲げることを最低条件とすべきである。
その一方で、日本維新の会は次の衆院選までに与党入りする可能性が高いのではないかと見ている。維新はもともと政治の既得権益を打破する目的として設立され、2012年の衆院選では消費税増税や原発再稼働に反対していたが、2015年5月に大阪都構想の住民投票が否決されると急速に自民党にすり寄るようになったと感じる。
維新の松井代表は自民党について「既得権益を守る側」としているが、安倍政権は大きな政府によって中間層の所得を分厚くした1970~80年代の「古き良き自民党」を捨て、TPPや法人税減税、農協改革、高度プロフェッショナル制度の導入など日本維新の会が推進してきた「岩盤規制の解体」を次々に実現している。政策面では既に維新も安倍政権の一部となりつつあるのだ。
また、今年の参院選で維新は3議席増やしたものの、持ち前の「身を切る改革」というスローガンが説得力を失っているように感じる。
その理由はれいわ新選組の山本太郎氏が「身を切る改革」と称して特定枠を使い、自身よりALS患者の舩後靖彦氏と重度障害者の木村英子氏の当選を優先させたことが大きいだろう。松井代表は舩後氏と木村氏が議員活動で利用する介護支援について「原資は税金。国会議員だけ特別扱いするのか」と批判していたが、先に「身を切る改革」を使われてしまったことに対する危機感の表れでもあるのではないだろうか。
維新が自民党に媚びずに大阪以外でも支持を拡大させるためには、従来の「身を切る改革」という主張を控えて山本太郎氏と同様に消費税廃止を掲げるしかないと思っている。
参院選から1ヵ月半が過ぎてやっとれいわ新選組がマスコミに取り上げられるようになったが、その一方でツイッターなどでは安倍信者(自民党ネットサポーターズクラブ)による「山本太郎バッシング」も多く見かけるようになってきた。
安倍信者が山本太郎氏を叩く際に決まって2008年の『たかじんのそこまで言って委員会』で「竹島は韓国にあげたら良い」と発言したことを取り上げるが、実際には韓国の実力行使に対して何も行動を起こさない日本政府にハッパをかけようという趣旨だったのに、番組でカットされて竹島の不法占拠を容認するかのような発言に編集されたという話である。
それに、山本氏の他にも堀江貴文氏が「尖閣諸島を中国にあげちゃえば」と発言し、みのもんた氏も「ロシアは北方領土を買ったらどうか」と発言しているが、安倍信者がこれについて批判した書き込みをほとんど見たことがないように思う。山本氏の竹島発言だけ叩くのは、安倍政権の代わりになる勢力の台頭が嫌だからというのが本音なのだろう。
また、安倍信者は山本太郎氏が中核派や逮捕歴のある活動家から支援されていることを批判するが、山本氏が直接的に中核派と関わっているわけではなく勝手に応援されたというだけの話だろう。
例えば、安倍首相は2006年に統一教会の関連団体「天宙平和連合」に祝電を送り、国際勝共連合が発行している雑誌『世界思想』の2013年3月号と9月号では「強靭な国・日本」「救国ロードマップ」というタイトルで表紙を飾っているが、山本氏が中核派から支援されていることが問題なら総理大臣を約7年もやっているような人物が、霊感商法や合同結婚式で散々日本人を騙してきた犯罪組織の統一教会から支援されていることも十分問題にならないだろうか。
しかし、この点をツイッターで安倍信者に指摘すると、必ず反論しないで逃げるかブロックされてしまう。どうも山本太郎氏を叩いている人にとって、安倍首相と統一教会の関係について批判されると都合が悪いようだ。
更に、れいわ新選組が消費税廃止を掲げて、ALS患者や重度障害者の方を当選させたことにどのような関係があるのかと疑問に思っている人も多いかもしれない。だが、障害者の平均月収は一般の方よりも低く、2018年5月のデータでは常用労働者の「きまって支給する給与」が26.3万円なのに対し、身体障害者が21.5万円(常用労働者の81.7%)、知的障害者が11.7万円(44.5%)、精神障害者が12.5万円(47.5%)、発達障害者が12.7万円(48.3%)程度である。知的障害者や精神障害者の給与が低いのは、高度かつ付加価値の大きい仕事をこなすことが難しいからだと言われている。
消費税は所得に関係なく、消費に対して同じ額の税金を支払わなければならないため、障害者の方々により負担が重いのだ。舩後靖彦議員と木村英子議員には、是非ともこの点について国会で追及してほしいと思う。
れいわ新選組は政府の移民受け入れ政策をもっと批判すべき
また、れいわ新選組は政府の移民受け入れ政策についてもっと批判すべきである。在留外国人数は民主党政権だった2009~12年に218.6万人から203.4万人まで15.2万人減少していたのに対して、最新の2018年末のデータでは273.1万人と安倍政権の6年間で69.7万人も増加していることがわかるだろう(図84を参照)。
外国人労働者数も民主党政権時代の2009~12年では56.3万人から68.2万人まで年平均3.97万人程度の増加に留まっていたのに対し、安倍政権では2018年の146.0万人へと年平均12.97万人も増えており、明らかに増加のペースが速くなっているのだ。その影響もあって、既に日本は「世界第4位の移民大国」と呼ばれるまでに変貌しつつある。
今年4月からは外国人が原発作業員などの単純労働を目的に入国することが可能になり、日本の大学を卒業した留学生の就職条件も緩和された。このままのペースで増加が続けば、2028年には在留外国人が380万人、外国人労働者が270万人にも達してしまうだろう。
しかし、この急速な日本の移民国家化を保守もリベラルもほとんど批判していないように思う。私が安倍信者に自民党の移民受け入れ政策についてどう思っているのか聞くと「外国人労働者が増えると日本の国益を損なうというロジックがわからない」「外国人労働者を批判する奴は大した努力もせずに、無能の自分を責めることもなく全てを政治の責任にしている愚か者」などと言い訳をしてくる。
つまり、彼らの本質は移民受け入れを容認する左翼で、「低賃金を我慢できない日本人が悪い」という自己責任論を国民に強要したいようである。
更に、共同通信が2018年11月に行った調査によれば、外国人労働者の受け入れを拡大する入管法改正について賛成する割合が60代以上は37.9%程度だったのに対し、40~50代は54.9%、30代以下は66.3%と若年層ほど高いことが明らかになっている。若者は保守化どころかむしろ移民受け入れに賛成し、「左傾化」しているのが現実なのだ。28歳の私としてはこの状況を憂慮すべき事態だと思う。
今年の参院選で全体の投票率が48.80%と有権者の半分以上が選挙に行かなかったのも、「消費税を10%に増税して生活が苦しくなっても自分には関係ない」「外国人労働者を受け入れて日本人の雇用が奪われても自分には関係ない」という政治に無関心な国民意識の表れではないだろうか。
この状況を変えるためには、山本太郎氏が演説の中で日本人の給与を上げたくない経団連が安い労働力としての移民を大量に呼び込もうとしている実態を暴いて、外国人労働者の受け入れに疑問を感じている保守層にも積極的にアピールしていく必要があると思っている。れいわ新選組は大きな政府によって中間層の所得を分厚くした1970~80年代の自民党のような「保守左派」の政党を目指すべきである。
<参考資料>
氷川清太郎 「自民・公明+維新+国民民主 悲願の憲法改正にくすぶる"大連立"」 『財界』(財界研究所、2019年8月6日)
齊藤祐作 『発達障害者の才能をつぶすな!』(幻冬舎、2016年)
出井康博 『移民クライシス 偽装留学生、奴隷労働の最前線』(KADOKAWA、2019年)
上毛新聞 『外国人就労の拡大賛成51%』(2018年11月5日)
立憲と国民が統一会派「ゆるいグループ」で勢力拡大
https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/201908200001066.html
国民民主党とれいわ新選組に合流説 玉木雄一郎氏、小沢一郎氏、山本太郎氏が会談か
https://news.nifty.com/article/domestic/government/12151-378730/
https://www.youtube.com/watch?v=PcUrphzuXuw
れいわ2議員の公費負担 介護支援「拡大」の議論活発化
https://www.sankei.com/life/news/190803/lif1908030021-n1.html
https://news.livedoor.com/article/detail/6377900/
毎月勤労統計調査 平成30年5月分結果確報
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/30/3005r/3005r.html
平成30年度障害者雇用実態調査の結果を公表します
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05390.html
図録▽外国人数の推移(国籍別)
https://honkawa2.sakura.ne.jp/1180.html
図録▽外国人労働者数の推移
https://honkawa2.sakura.ne.jp/3820.html
https://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/20190722-OYT1T50220/