消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

安倍首相が消費税増税を延期しなかった理由

リーマンショックよりも大きかった消費税増税による景気悪化

 7月21日に実施された参院選自民党公明党の与党が77議席から71議席に減らした一方で、野党の立憲民主党が9議席から17議席に増やし、私が支持していたれいわ新選組はALS患者の舩後靖彦氏と重度障がい者の木村英子氏が特定枠を使って当選することができた。しかし、肝心の山本太郎氏が落選したことで次の衆院選まで国会で消費税廃止の議論が行われず、今年10月1日からの消費税10%への増税はほぼ確定してしまったと言えるだろう。

 

 安倍政権や財務省は消費税引き上げを既定路線にしているが、そもそも増税は安倍政権の公約違反だったことをどれだけの人が知っているだろうか?

 安倍首相は2012年6月のメールマガジンで、当時の野田政権が「社会保障・税一体改革関連法案」を衆議院で可決させたことを批判し、「名目成長率が3%、実質成長率が2%を目指すというデフレ脱却の条件が満たされなければ消費税増税を行わないことが重要」と述べていたのだ。

 

 だが、2018年の名目GDP成長率は0.7%、実質GDP成長率は0.8%とデフレ脱却の目標には届いておらず、2014年4月の消費税増税から5年が経ってむしろ経済成長率が落ち込んでいるのが現実なのだ。本来なら安倍首相は「デフレ逆戻り」を理由に、消費税増税の中止を決断すべきだっただろう。そもそも消費税とは完全雇用のもとで国民の消費を減らし、消費財を生産していた人手を浮かせてインフレを抑制することが目的の税金であって、年間の名目GDP成長率が10%を超えるような激しいインフレが発生しない限り増税してはいけないのだ。

 

 デフレ脱却を掲げる安倍政権がデフレを更に加速させてしまう消費税増税を強行する理由は「デフレは貨幣現象」という誤解があるように思う。「デフレは貨幣現象」とは、デフレの原因はマネタリーベース(世の中に供給しているお金の量)の不足なので、日銀が金融緩和を続けていれば消費税増税してもデフレ脱却できるという考え方である。

 だが、マネタリーベースの推移を見ると2012年12月の130.5兆円から2019年6月の510.1兆円まで安倍政権で3.9倍も増加したが、消費者物価指数の中で最も重要なコアコアCPI(食料〔酒類を除く〕及びエネルギーを除く総合)は2019年6月に前年比0.3%程度と年率2%のインフレ目標には達していない(図82を参照)。

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 日銀が異次元の金融緩和を行ってもデフレを脱却できないのは、デフレの原因がマネタリーベースではなく「総需要の不足」だからであって、2014年以降に消費税増税公共投資の削減など緊縮財政が実行されている以上、デフレ不況が継続するのは当然のことだろう。

 しかし、この事実を安倍首相の熱狂的な支持者である経済評論家の上念司氏に指摘したら「2009~12年にマイナスだった物価がプラス転換しているから問題ない」と言い訳してきた。つまり、上念氏にとっての「デフレ脱却」とはコアコアCPIが前年比プラスになる程度のものらしい。この定義ならリーマンショック直前の2008年6~10月もインフレだったことになる。どうやら彼は「日銀がマネタリーベースさえ増やしてくれれば、年率2%の物価上昇率を達成しなくても構わない」とデフレを容認しているのが本音なのだろう。

 

 更に、安倍首相は馬鹿の一つ覚えのように「リーマンショック級の経済危機が発生しない限り消費税を10%に引き上げる」と繰り返している。しかし、国民経済計算の家計最終消費支出はリーマンショックが発生した2008年度には5.7兆円程度の落ち込みだったが、消費税を8%に増税した2014年度は7.3兆円の落ち込みにものぼっている。つまり、「リーマンショック級の経済危機」はすでに消費税増税によって発生していたのだ(図83を参照)。

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 2018年度の実質GDP総額は535.5兆円だが、もし安倍政権が消費税増税を中止して税率が5%のままだったらとっくに家計最終消費支出が300兆円を超えて実質GDPは550兆円以上にも達していただろう。その上、安倍首相にとって「リーマンショック級の経済危機」とは、アメリカで金融危機が発生して日経平均株価が暴落する状況なのかもしれないが、そうなってから消費税増税を中止するのでは手遅れだと言わざるを得ない。

 2008~13年度は消費税がまだ5%だったことで家計消費が回復していたが、8%に増税した2014年4月以降は著しく家計消費が落ち込んでおり、この状況で金融危機が発生したらリーマンショックよりも深刻なデフレ不況になるのは言うまでもないだろう。

 

 

増税を中止するためには経団連の言いなりにならない政権が必要

 また、私がツイッターなどで「安倍首相は消費税増税を中止すべき」と批判すると、必ずと言っていいほど自民党ネットサポーターズクラブ(J-NSC)の関係者と思われるユーザーから「増税民主党政権が決めたことだ。安倍さんとは関係ない」という反論が返ってくる。

 自民党ネットサポーターズクラブとは、2010年に発足した安倍首相の熱狂的な支持者が集まる組織で、2017年時点の会員数は約1万9000人にものぼっている。しかし、消費税が10%に増税されるまでの経緯を振り返るとこれは非常に無理のある言い訳だ。

 

 まず、最初に消費税増税を言い出したのは2008年10月の麻生政権で、初めて「10%案」を出したのも2010年6月の谷垣総裁だった。野田政権の「社会保障と税の一体改革」についても自民党公明党が合意している。

 安倍首相は2012年のメールマガジンで「デフレ脱却するまで増税は行わない」と発言していたが、その公約を反故にして消費税8%増税を決定した2013年10月1日の記者会見で『社会保障を安定させ、厳しい財政を再建するために、財源の確保は待ったなしです。だからこそ昨年、消費税を引き上げる法律に私たち自由民主党公明党は賛成をいたしました』と発言したのである。

 

 更に、自民党の熱狂的な支持者は「野田政権が消費税増税国際公約にしたから、安倍首相はそれに従って増税を進めただけ」と言っているがこれも全くの嘘だろう。国際公約は2011年11月にG20サミットで野田首相が「日本は2010年代半ばまでに消費税を10%に増税する方針を決めた」と発言したことを根拠にしているが、当時の世界主要国はユーロ危機の対応に追われていて日本の増税などどうでもいい話である。

 そもそも消費税を引き上げるかどうかは他国が干渉できない国内の問題であって、G20サミットに関係なく安倍首相は6年半の政権の中でいくらでも増税を中止するチャンスがあっただろう。自民党信者は「安倍政権の消費税引き上げならOK」というのが本音だからこそ、増税民主党政権のせいにするのである。

 

 また、「安倍首相は憲法改正を何としてでも実現させるために選挙直前になって消費税増税の延期を発表する可能性が高い」という言説を聞いたことがある方も多いだろう。これは自民党信者だけでなく、リベラル派と言われている森永卓郎氏や荻原博子氏も同様の主張をしていた。

 しかし、自民党改憲案の内容を見ると「憲法改正のための増税延期」は全くのデマであることがわかる。自民党改憲案83条には「財政の健全性は、法律の定めるところにより確保されなければならない」という財政規律条項が新設されており、これが成立すれば消費税増税に反対して社会保障の充実を求めることも憲法違反になってしまうからである。

 憲法改正に批判的な森永氏や荻原氏が自民党改憲案の財政規律条項を指摘せずに「憲法改正のための増税延期」を煽っていたのは、彼らが本音として消費税増税を容認しているからではないだろうか。

 

 その上、今の安倍首相は憲法改正よりも経団連の言うことを聞いて、どれだけ政権を長く続けられるかのほうが重要だと考えているように感じられる。実際に、2014年の衆院選と2016年の参院選で消費税引き上げを延期したのも、経団連榊原定征前会長がそれほど増税に積極的でなかったのも理由の一つとして挙げられるだろう。

 榊原氏は安倍首相が増税延期を発表した2016年6月1日に「日本経済を再びデフレに戻さない、経済再生を最優先するという安倍総理の揺るぎのない強い決意を示されたものと理解する」と発言していた。つまり、榊原氏が増税延期を許したからこそ、安倍政権は選挙対策として消費税10%引き上げの時期を変更したのである。

 

 だが、現在の経団連会長である中西宏明氏は榊原前会長より増税に積極的なように感じられる。安倍首相が2018年10月15日の臨時閣議で消費税を10%に増税する方針を表明したことを受けて、中西氏は「今回の安倍総理の引き上げ表明を歓迎する」「前年の衆議院選挙の結果により、国民の信任はすでに得ていると理解している」とのコメントを発表している。

 経団連会長は「財界総理」とも呼ばれているように1980年代以降、政府の経済政策に大きな影響を与えてきた存在である。例えば、TPPに関しては2010年に経団連会長が御手洗冨士夫氏から米倉弘昌氏に変わって急に「参加すべき」という話が浮上し始めた。米倉氏は「日本はTPPに参加しないと世界の孤児になる」と発言するほど強力なTPP推進派だった。この10年間は安倍政権も民主党政権も自ら経団連の奴隷になるような政治を続けてきたのである。

 

 2018年にスイスが付加価値税を引き下げ、マレーシアが消費税を廃止して物品税に近い「売上・サービス税」に戻したことは『「平成おじさん」の功罪とれいわ新選組への期待』の記事でも述べたが、今年4月には中国でも増値税率(消費税)を製造業などの業種で16%から13%に、交通運輸業や建築業などの業種で10%から9%に引き下げている。

 それに比べて在任中に消費税を2段階も引き上げ、税率を倍にする安倍首相はやっていることが中国共産党以下ではないだろうか。戦後最悪の緊縮財政を強行する安倍政権を止めるためには、財政再建より経済成長を重視して将来的な消費税の廃止を目指し、財務省経団連の言いなりにならない政権を確立する必要があると考えている。

 

 

<参考資料>

三橋貴明 『2014年 世界連鎖破綻と日本経済に迫る危機』(徳間書店、2013年)

     『メディアの大罪』(PHP研究所、2012年)

清水真人 『消費税 政と官との「十年戦争」』(新潮社、2013年)

片岡剛士 『日本経済はなぜ浮上しないのか』(幻冬舎、2014年)

荻原博子 『安倍政権は消費税を上げられない』(ベストセラーズ、2018年)

 

参院選当選者確定…与党、改選議席から6減らす

https://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/20190722-OYT1T50215/

マネタリーベース : 日本銀行 Bank of Japan

https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mb/index.htm/

消費者物価指数 時系列データ

https://www.stat.go.jp/data/cpi/historic.html

消費増税、首相「リーマン級なければ方針変わりない」

https://www.sankei.com/politics/news/190509/plt1905090016-n1.html

自民公認サポーター組織 会員数1万9000人で「宣伝戦」

https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171018/k00/00m/010/172000c

平成25年10月1日 安倍内閣総理大臣記者会見

https://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/1001kaiken.html

憲法改正草案 第83条(財政の基本原則)

http://tcoj.blog.fc2.com/blog-entry-83.html

消費増税再延期に関する榊原会長コメント

https://www.keidanren.or.jp/speech/comment/2016/0601.html

2019年10月に消費税10%、経団連会長「安倍総理の引き上げ表明を歓迎」

https://news.mynavi.jp/article/20181016-707774/

全人代で2019年も増値税率引き下げの方針を発表

https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/03/a4d31dcc440fb3bf.html