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日野智貴氏や適菜収氏など安倍政権を批判する真の保守派を応援しよう

※この記事は2020年6月2日に更新されました。

 

「左翼の安倍政権」を批判する尊皇愛国の若き保守派

 最近、一つのブログの記事が非常に気になっている。それは日野智貴さんという方が書いた「日本の“左傾化”を象徴する『ネトウヨ』という現実」の記事である。

 

 まずブログの先頭には、私も以前参加していた「右から考える脱原発デモ」の写真が掲載されている。著者は「見るからに参加者の人数が少ない」と言っているが私もその通りだと思う。実際のところ、保守もリベラルも関係なく東日本大震災から9年が経って脱原発デモはすっかり退潮してしまったように思う。

 ブログの著者は2006年当時、小学3年生で第一次安倍政権を支持していたという。幼い頃から「尊皇愛国」の家庭で育った著者にとって、「憲法改正賛成」は「困っている人を助ける」「地球環境のことを考える」といったことと同じくらい自明の善であった。2000年に小学3年生だった私は小渕元首相の訃報を覚えているくらいでまだ政治的な知識は全くなかったので、子供の頃から憲法改正に高い関心を持っていた著者は素直に凄いと思う。

 しかし、著者が疑問に思ったのは憲法改正国民投票法において、「この法律の制定から3年間、憲法改正の発議はしない」という凍結期間なるものが定められたことだったという。自民党が有利な時期にわざわざ凍結期間を設けたのは野党への妥協だと著者は言う。

 

 それから3年が経って、小学6年生だった著者はすっかり「大日本帝国憲法」の復原・改正論者になっていたが、それほど民主党政権への拒否感はなくむしろ環境問題などの政策では積極的に民主党へ期待していたという。それどころか、鳩山政権が社民党福島瑞穂党首を事実上、内閣から追放したときは快挙とすら思ったそうだ。

 だが、鳩山首相がちょうど10年前の2010年6月2日に辞任を発表して菅政権が発足され、西松建設事件の国策捜査尖閣諸島の漁船衝突事件、更には東日本大震災福島第一原発事故が発生すると状況が変わってくる。著者は鳩山首相の辞任を菅直人副総理(当時)による政治的なクーデターだったと説明する。しかし、菅政権を「史上最悪の政権」だと思っていた著者に希望を与えてくれたのがネット上での「菅政権反対」の大合唱だったという。

 2010~2011年に19歳だった私も、当時はネットで政治の情報を調べるのが本当に楽しかった。チャンネル桜など民主党政権を批判する人々は南京大虐殺従軍慰安婦といった歴史改ざんについても批判しており、その影響で私自身も軽くネトウヨになっていたように思う。だが、民主党政権は自身の内閣を自画自賛するネット工作を全く行わなかったので、その点ではまだ安倍政権よりマシだったとも言えるだろう。

 

 民主党政権では消費税がまだ5%だったことで東日本大震災以降に個人消費が急速に回復していたが、安倍政権では消費税率を2段階も引き上げた影響で民主党政権よりも経済成長率の落ち込みが著しい。

 インフレを除いた実質GDP成長率は民主党政権(2009年10-12月期~2012年10-12月期)の時代に年率平均1.69%だったのに対し、安倍政権(2013年1-3月期~2020年1-3月期)では年率平均0.78%へと半分程度に下落している(図45を参照)。更に8月に発表される2020年4-6月期の実質GDP成長率は、新型コロナウイルスの影響で年率マイナス25%近くに落ち込む可能性が高いだろう。

 ネトウヨはよく「悪夢の民主党政権」と言うが、安倍政権より経済成長率の高い政権を悪夢呼ばわりするのは皮肉な話だ。それともネトウヨは経済成長して分厚い中間層を生み出してきた戦後の日本が嫌いだから、より国民を貧困化させる政権にシンパシーを感じるのだろうか。

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 また、著者は菅政権の新自由主義政策を批判しつつも「感情的に反原発を言っている大衆とは違い、冷静に原発に賛成している俺かっこいい」という論調のネトウヨにも疑問を感じていた。それはまるで「革命運動している俺かっこいい」というかつての学生運動家と同じメンタリティーに見えたという。

 第二次安倍政権が発足した頃、「日本の右傾化」を騒ぐ人々が続出したが、当時中学3年生だった著者はもはや自民党には期待していなかった。安倍政権では子宮頸がんワクチンの定期接種化など左翼政策も推進されたと著者は言う。そもそも、米国において右派とは「プロライフ」(生命尊重、堕胎反対)の立場で、左派とは「プロチョイス」(生命軽視、堕胎容認)の立場である。

 だから、ネトウヨが本当に反左翼であるならば子宮頸がんワクチンの接種に反対するはずだが、安倍政権を熱烈に支持する自称保守派には上念司氏など子宮頸がんワクチンを推奨する人物が少なくない。

 

 幼い頃から尊皇愛国の家庭に育った著者が「左翼の安倍政権」を批判しているのは、ネットの情報を鵜呑みにして保守になった気分でいる連中とは大きく異なるからなのかもしれない。だが、著者が「日本が左傾化したと思う理由」は私と少し違うようだ。著者は「右翼や保守の思想を一切持っていないただの中二病的な、一世代前だと新左翼になっていたようなネトウヨがなんとなく右だと思われるくらい、世間の『左右の基準軸』が大きく“左”に寄っていたのだ」と述べている。

 それに対し、私は「国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」と地球市民的な発言を繰り返す安倍首相のやることに何でも賛成するネトウヨそのものが左翼勢力だと思っており、彼らのようなコアな支持層が政権を徹底的に甘やかすことによって消費税増税や移民受け入れなど国民を貧困化させる愚策が次々と実行される原因にもなっていると考えている。とはいえ、日野さんは私より年下にも関わらずよく勉強されていて、今後の活躍に期待したい保守派の方である。

 

 

適菜収氏の著書から「日本の左傾化」を読み解く

 2018年5月、私はある人物の本に衝撃を受けた。それは適菜収氏の『安倍政権とは何だったのか』『安倍でもわかる保守思想入門』(共にベストセラーズ、2017年)という2冊である。著者は保守思想を研究している哲学者で、安倍首相について「保守の対極に位置する人物であり、大衆社会の腐敗の成れの果てに出現した左翼グローバリストにすぎない」と厳しく批判している。

 

 まず、適菜氏の主張で衝撃的だったのは「立憲主義は保守の本質」と言っていることである。安倍首相は立憲主義について、「憲法が権力を縛るためのものだったのは王権の時代で、今我々が改正しようとしている憲法は私たちの理想や国のありかた、未来について語るものにしていきたい」と述べているが、適菜氏は「保守とは権力に対して警戒を怠らない態度のことで、憲法は今も昔も権力を縛るためのものである」と反論している。

 また、安倍信者がよく言う「野党は対案を示せ」というフレーズに対しても、評論家の福田恆存氏の言葉を引用してこう批判する。保守主義とはイデオロギーを警戒する姿勢のことで、安易な解決策に飛びつかず矛盾を矛盾のまま抱え込む。保守の基盤は歴史や現実であり、そこから生まれる常識であると。家に火がついていたら水をかけたり、非常識な人がいたら「非常識だ」と注意したりするようにバカが総理大臣をやっていたら「辞めろ」と言うのが保守なのだそうだ。

 

 更に適菜氏は改憲派だが、「憲法は国の根幹であり、チンパンジーに触らせたら危険である。安倍が改憲するくらいなら、未来永劫今のままの憲法でいい」とも言い、安倍政権を熱烈に支持している自称保守派に対しても「とにかく憲法を変えればうまくいくというのは単なるオプティミズムであり、憲法を変えたら戦争になるという左翼と同類の花畑」と述べている。

 個人的には、「憲法を変えれば何でも良い」と思っている代表格が昨年亡くなった中曽根元首相だったように思う。中曽根氏は1998~2000年に公共事業費を過去最高に増やして一時的に景気を回復させた小渕元首相に対して「真空総理」と皮肉な表現をしたが、2014年以降に消費税率を2段階も引き上げて景気を悪化させた安倍首相に対しては全く批判していない。

 中曽根氏が安倍首相に対して何も言わなかったのは年齢的な問題もあるだろうが、小渕元首相が憲法改正よりも経済再生に取り組んでいたのに対し、安倍首相は経済のことよりも憲法改正を優先しているからではないだろうか。

 

 その上、適菜氏が危惧しているのが「日本の左傾化」である。「今の日本では保守を名乗る人物が特定のイデオロギーに基づき、朝から晩まで抜本的改革を唱えて伝統の破壊に勤しんでいる。日本共産党ですら革命を言わなくなったのに、安倍政権は口を開けば『人づくり革命』だの『生産性革命』だの言っている。『人づくり革命』という発想にジャン=ジャック・ルソーの狂気を想起できなくなっているとしたら、今の社会は病んでいるとしか言いようがない。日本の左傾化の徴候です」と。

 今の日本は右傾化どころか「左傾化」しているという考えに私も全く同感だ。例えば、外国人労働者は2012年の68.2万人から2019年の165.9万人まで安倍政権の7年間で90万人以上も増加したにも関わらず、日本では移民受け入れに反対する声がほとんど噴出していない。移民国家のアメリカでは「メキシコとの国境に壁を作る」と発言した人物が大統領になり、多文化共生を目指してきたフランスやスウェーデンでも移民受け入れに反対する右派政党が台頭しているというのに、日本ほど移民問題に無関心な先進国は珍しいのではないだろうか。

 

 特に私が信じられないのは若年層ほど移民受け入れを容認しているという現実である。外国人労働者の受け入れを拡大する入管法改正についても、共同通信が2018年11月に行った調査によれば賛成の割合は60代以上が37.9%程度だったのに対し、40~50代は54.9%、30代以下は66.3%にものぼっている(図46を参照)。

 移民を受け入れたら日本人の賃金も引き下げられるという事実を無視して、「人口減少が問題になっている日本では外国人労働者が必要」「日本が不況から抜け出せないのは改革が足りないからだ」と勘違いした国民はまだまだ多いのだ。

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 また、安倍首相は皇室に対して、一貫して不敬な態度を取り続けてきたのも驚きだった。適菜氏は安倍首相が官邸の総理執務室で亀井静香元議員と生前退位の話をしていたら、カーペットに膝をつきながら『こんな格好までしてね』と天皇陛下が被災者の方々に寄り添うお姿を茶化していたことを紹介し、「もし安倍が皇室を潰しにかかったら、日本人が取るべき行動は一つしかないということをきちんと確認しておくべきでしょう」と痛烈に批判している。

 適菜氏は最新刊『国賊論』(ベストセラーズ、2020年)の中でも「保守やナショナリストを自称する者がナショナリズムを解体するグローバリストの安倍を礼賛する一方で、頭の悪い一部の左翼は戦後レジームを確定させた安倍を『戦前回帰の復古主義者』と誤認する。自分の世界観に合わせて、都合良く現実を解釈するわけだ」と述べている。

 日本人の多くが安倍政権を「保守」や「右翼」だと勘違いする中で、安倍首相を「左翼グローバリスト」と表現する適菜氏の批判は画期的である。保守もリベラルも関係なく、少しでも安倍政権に疑問を感じる人は是非とも適菜収氏の本を読んでほしいと思う。

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