消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

生活保護よりもカジノ解禁こそ見直すべき

 生活保護バッシングの一つに「パチンコをやっている人が生活保護を受給するのは許せない」というのがある。実際に、大分県別府市の福祉事務所は2015年10月、パチンコ店と市営競輪場で姿を見かけた生活保護受給者25人に対し、遊技場に出入りしないよう指導した。

 そのうち9人は、過去にも指導して「遊技場に立ち入りません」という誓約書を出させていたことから1~2ヵ月間、生活扶助と住宅扶助を減額する不利益処分を行った。

 

 確かに、生活保護費をパチンコや競輪につぎ込むのは良くないだろう。しかし、それは生活保護受給者だけではなく、依存症を誘発するギャンブルそのものに問題がないだろうか。

 厚労省は2014年、ギャンブルしたい気持ちを抑えられない「ギャンブル依存症」の疑いがある人は、成人男性が438万人(人口比8.7%)、女性が98万人(1.8%)で合計536万人(4.8%)いると推計した。海外の同様の調査でギャンブル依存症の割合は、アメリカが1.58%(2002年)、香港が1.8%(2001年)、韓国が0.8%(2006年)なので、日本は際立って高いことが分かる。

 2016年夏には、スマートフォン向けアプリの「ポケモンGO」が流行し、警視庁は7~8月だけでも「ポケモンGO」をやりながら深夜を徘徊していた未成年を東京都内で553人も補導したという。夜遅くに出回るほどゲームに熱中するのは間違いなく「依存症」である。このような事例から依存症はギャンブルだけでなく、私たちの身近にある問題なのだ。

 

 だが、日本ではギャンブル依存症に対しても「その人の意志が弱い」という自己責任論で片付けていないだろうか。生活保護を引き下げようとする議論が起こっても、パチンコを規制しようとする議論が起こらないのはその証左である。

 パチンコホールの全国組織「全日本遊技事業協同組合連合会」の依存症研究会が2004年頃、パチンコの事業者に「過度にのめり込む客に対する対策を業界が積極的に取り組むべきだと思うか」と質問を行ったところ、56%が「思わない」と回答し、そのうち72%が「本人の問題であるから」と答えている。

 つまり、依存症を生み出しているパチンコ業界も過度にのめり込む客に対して、何も対策を講じていないということだろう。

 

 また、政府はパチンコ依存症を放置した上、カジノまで解禁しようとしている。石原慎太郎氏はパチンコ反対派として知られ、東日本大震災による電力不足でも「パチンコと自動販売機で合計1000万キロワット近い電力が使われている」と批判したが、その一方で都知事に就任した1999年当時には「お台場カジノ構想」を発表している。

 東京都のカジノ解禁は国会での法改正が難しく実現には至らなかったが、2013年9月に「2020年東京オリンピック」の開催が決定したことで、再びカジノ解禁に向けた動きが活発化し始めた。現在の小池都知事もカジノを含む複合型観光施設(統合型リゾート)の誘致に前向きな姿勢を見せている。しかし、パチンコ依存症すら解決できない日本が、わざわざ東京五輪のためにカジノを解禁する必要は本当にあるのだろうか。

 

 カジノ推進派の中には、石原慎太郎氏だけでなく元大阪府知事橋下徹氏がいる。橋下氏は2010年5月の大阪エンターテイメント都市構想推進検討会で「金がないと言えば、国はすぐ増税と言う。増税をやるならカジノだと思う。カジノをつくって、そのお金を福祉などにまわせばいい」と発言した一方で、生活保護に関しては2013年に行われた自民党の基準引き下げを高く評価し、「ルールが非常に甘いと思う。真面目に働いている人の勤労意欲をなくす」と厳しく非難した。

 しかし、カジノを解禁すれば間違いなくギャンブル依存症の人が増え、財産を失って生活保護の受給者も増加するという悪循環に陥ることは容易に想像できる。カジノを推進し、生活保護を非難するということは、ギャンブル依存症もその人の自己責任だと考えているのだろう。

 

 もし、ギャンブル依存症が自己責任ではなく「カジノで得られた税収を依存症対策に充てる」と考えているのなら、最初から依存症を防ぐためにカジノ解禁を止めれば良いのではないか。カジノは経済効果を生むだけでなく、勝負に負けた人が犯罪を起こすなどして治安を悪化させるリスクが高いのである。

 自民党はカジノを含む統合型リゾート施設の解禁を見直し、全国のパチンコの店舗数を減らすように規制した上で、生活保護の支給額を2013年1月以前の水準に戻すべきだろう。

 

 

<参考資料>

鳥畑与一 『カジノ幻想』(ベストセラーズ、2015年)

若宮健 『パチンコに日本人は20年で540兆円使った』(幻冬舎、2012年)

 

貧困と生活保護(28) 生活保護とパチンコをどう考えるか

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20160407-OYTET50024/

<依存症>多い日本 ギャンブル536万人 厚労省研究班

http://archive.fo/8kwRW

ポケモンGO】深夜徘徊続出で少年補導553人 警視庁

http://www.sankei.com/affairs/news/160830/afr1608300024-n1.html

小池都知事、カジノ含む施設「あってもいい」 民放、NHKで相次いで発言

http://www.j-cast.com/2016/08/09274906.html

大阪府 第1回大阪エンターテイメント都市構想推進検討会

http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/10583/00000000/gijiroku.pdf