消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

消費税の歴史(2001~2009年)

緊縮財政で政府の負債を増やした小泉内閣

 2001年4月、「私の改革に反対すれば、自民党をぶっ壊す」「民間にできることは民間に」というスローガンを掲げた小泉内閣が発足した。小泉首相構造改革郵政民営化など大胆な政策を打ち出す一方で、消費税増税については橋本内閣の失敗を鑑みて「在任中は引き上げない」と公約した。

 しかし、2001年から5年間続いた政権の中で当然、消費税増税は議論され、その代表的なものに「竹中・与謝野論争」が挙げられる。竹中・与謝野論争とは、2006年頃に竹中平蔵氏(総務大臣)と与謝野馨氏(内閣府特命担当大臣)が財政再建の方針を巡って対立した論争である。

 

 竹中氏は財政再建に関して、2011年度にプライマリーバランス基礎的財政収支)を達成すれば十分であり、大規模な増税はいらないと主張した。その裏付けとして、名目成長率は名目金利よりも高いとし、日本は過去ずっとそうだったと述べた。一方で、与謝野氏は世界的に名目成長率が名目金利を上回る保証はないとし、財政再建を達成するにはもっと厳しく増税を打ち出すべきだと主張した。

 「消費税引き上げより歳出削減を優先すべきだ」とする小泉首相中川秀直政調会長は竹中氏を支持し、「消費税引き上げなどの増税は避けられない」とする谷垣禎一財務大臣や日銀の福井俊彦総裁は与謝野氏を支持している。

 

 小泉内閣では、2002年1月から始まった景気拡張によって、雇用者の数が100万人以上増加したと言われる。しかし、実際には2001年から06年にかけて非正規社員数が318万人増加した一方で、正社員数は225万人も減少してしまった(図24を参照)。

 また、2004年からは製造業にも派遣社員の採用が認められ、派遣労働者は2001年度の175万人から06年度の321万人へと5年間で146万人も増加した。この間、国税庁が発表している民間従業員の平均年収は、2001年の454万円から06年の435万円へと19万円も減少しており、雇用者の数が増加しても景気回復を実感できる人はほとんど存在しなかったと言えるだろう。

 一人当たりの名目GDPの国際ランキングも、2001年の5位から06年の18位まで順位を落としている。

 

 2006年7月には、OECDが日本経済の現状を分析した「対日経済審査報告書」の中で、日本の相対的貧困率OECD諸国で最も高い部類に属することを指摘し、同年7月23日にはNHKスペシャルで、働く貧困層の実態を取り上げた『ワーキングプア 働いても働いても豊かになれない』が放送され、大きな反響を呼んだ。

 翌2007年には定住する住居がなく、寝泊まりする場としてインターネットカフェを利用する「ネットカフェ難民」が社会問題にもなった。

 

 小さな政府で財政再建を目指す小泉内閣は、1998年度にピークの14.9兆円だった公共事業費を2001年度の11.4兆円から06年度の7.8兆円まで削減し、それに伴って政府の公共投資(公的固定資本形成)も5年間で10兆円近く減少した。

 それにも関わらず、俗に「国の借金」と言われる国債や借入金、政府短期証券を合わせた政府の負債は2001年の582兆円から06年の832兆円へと250兆円も増加しており、小さな政府による財政再建は失敗に終わったと言えるだろう。

 小泉首相は「在任中に消費税を引き上げない」という公約を守ったが、政府の負債を大幅に増やしたことによって、その後の内閣に消費税増税を議論させる口実を与えてしまったのかもしれない。

 

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2011年の消費税増税を計画した麻生内閣

 第一次安倍内閣福田内閣を経て、消費税増税に向けた議論が本格化したのが麻生内閣の時である。麻生首相は2008年9月にリーマンショックが発生し、世界経済が100年に一度の大不況に見舞われたことを受けて、10月30日に記者会見を開いた。

 その記者会見の中で、「経済状況が好転した後に、財政規律や安心な社会保障のため、消費税を含む税制抜本改革を速やかに開始します。そして、2010年代半ばまでに段階的に実行させていただきます。(中略)簡単に申し上げさせていただけるのなら、大胆な行政改革を行った後、経済状況を見た上で、3年後(2011年)に消費税の引き上げをお願いしたいと考えております」と発言した。

 2009年1月23日に国会で提出された「平成21年度税制改正法」の附則でも、2011年度から消費税増税を行う方針が明記された。

 

 しかし、リーマンショックの影響は非常に深刻で、2008年の実質GDPは1999年以来のマイナス成長となり、2006~07年に一倍を超えていた有効求人倍率も08年には0.88倍に低下した。自民党増税反対派議員の一人は「わずか3年で経済状況がそんなに好転するわけがない。3年後は間違いなく麻生政権じゃないしね」と本音をもらしたという。

 また、麻生首相自民党幹事長時代の2008年8月に、国・地方を合わせた財政赤字に関して「800兆円の借金があって大変だという話が出回っているが、あれは総負債だ。総負債と、(資産を含めた)純負債を取り違えるかのごとき話は、不必要に世の中の不安をあおっている」と述べ、財政再建より景気対策を優先させるべきだと主張しており、首相になってから財政規律を理由に消費税を引き上げる方針に転換したのは矛盾していたのである。

 

 2009年に入ってから不況は一段と厳しくなり、定額給付金エコカー減税、休日高速道路料金の大幅引き下げなど、矢継ぎ早な景気対策を行っても内閣支持率は回復しなかった。自民党内からは「支持率低迷の麻生首相で総選挙は戦えない」という声が噴出し、「麻生降ろし」が表面化した。

 7月21日の衆議院解散で始まった総選挙では、自民党が「社会保障の強化のため、景気回復後に消費税を引き上げたい」と訴え、民主党が「政権を取っても、4年間は消費税を引き上げない」と訴えた。8月30日の投開票の結果、自民党議席を181名減らした一方で、民主党議席を193名増やし、1993年の衆院選以来、16年ぶりの政権交代が起こった。

 

 麻生首相は総選挙を終えた夜、「自民党に対する積年の不満を払拭できなかった。その責任を負う宿命にあった」と反省の言葉を述べている。大平内閣から竹下内閣、橋本内閣と消費税に関わった政権の多くが選挙で負けているが、民主党に政権を与えた麻生内閣もその例外ではなかったと言えるだろう。

 

 

<参考資料> 

厳しい時代に「生き残る」には 第51回 竹中氏辞職の真相

http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/o/51/index1.html

派遣労働者数の推移

http://www.ritsumei.ac.jp/~satokei/sociallaw/tempworkers.html

日本の1人当たりのGDPが世界19位に低下

http://lingvistika.blog.jp/archives/1016821134.html

ワーキングプア ~働いても働いても豊かになれない~

http://cgi2.nhk.or.jp/archives/tv60bin/detail/index.cgi?das_id=D0009010526_00000

公共事業費を削減したのは前民主党政権ではない

http://blogos.com/article/148391/

麻生内閣総理大臣記者会見 平成20年10月30日

http://www.kantei.go.jp/jp/asospeech/2008/10/30kaiken.html

<麻生自民幹事長>財政再建優先論に反論…大阪での講演

http://megalodon.jp/2008-0813-0626-45/headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080807-00000092-mai-pol