消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

社会保障の充実を阻む「自己責任論」

国際調査が明らかにした日本の自己責任論

 日本は貧困問題に対して最も「自己責任論」が強い国として知られている。

 アメリカのピュー研究所が2007年、47カ国を対象に行った調査によれば、日本は『国や政府が自力で生活できない人を助けてあげるべきか?』の質問で、「全くそう思う」と回答した人はたったの15%しかいなかったのに対し、「あまりそう思わない」「全くそう思わない」と回答した人は合わせて38%にものぼっている(表3を参照)。

 

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 ここで注目すべきなのは「全くそう思う」の回答者が47カ国中、最下位だった一方で、自由と自己責任の原則を共有するアメリカより10%も「あまりそう思わない」と「全くそう思わない」の回答者が多かったことである。アメリカ社会が自己責任を共有するのは非を認めない国民性だからであって、自分が悪くなくても頭を下げる日本人に対して自己責任が求められるのは酷と言えるだろう。

 先進国の中で自殺率が高いのも、こうした自己責任論と無関係ではないはずだ。

 

 日本で「自己責任論」が高まっているのは、バブル崩壊以降、弱肉強食のアメリカ型資本主義が入り込んできたことや、山一證券北海道拓殖銀行などの破綻によって「潰れる会社は潰れるべし」という不良債権処理が本格的に始まったことも背景には存在するだろう。

 しかし、それでもアメリカより「政府が困っている人を助けてあげる必要はない」と回答した人の割合が多いのは、日本人の潜在意識に自己責任論が存在したということになるが、その一方で日本人は空気を読む国民性でもあるため、日常会話の場面で大っぴらに「貧困は甘えだ」などと悪口を言うことも少なかった。

 

 だが、2000年代に入ってインターネットの電子掲示板やブログが普及すると、状況がだいぶ変わってくる。ネットでは炎上マーケティングに代表されるように、過激な書き込みが却って注目されるということも多い。政治的な話題だと「戦争反対、憲法を守ろう」という理想論より「人権を無視し、憲法を破棄し、戦争できる国を作る」という力強い言葉のほうが注目を集めやすく、それが自己責任論にも発展したのだろう。

 

 例えば、2004年に発生した「イラク日本人人質事件」では、被害者に対してネット上で自己責任論を振りかざす誹謗中傷が溢れた。「プロ2ちゃんねらー」を自称する中宮崇氏は「人質三人とその家族はもともと反自衛隊思想の持ち主であり、共産党プロ市民(やらせ団体)とのつながりが深い」とレッテルを貼っている。

 また、記憶に新しい2015年の「ISIL(過激派組織イスラム国)による日本人拘束事件」でも、読売新聞の調査で犠牲者二人に対して「最終的な責任は本人にある」と答えた人が83%にのぼり、そのうち90%が拘束事件を巡る日本政府の対応を「適切だ」と回答している。つまり、世論の半数以上は「人質の犠牲は自己責任であり、政府はやるだけのことをやった」と考えていることになるだろう。

 

 更に、日本の自己責任論は人質事件だけでなく、格差社会や貧困問題でも持ち出されている。リーマンショックが発生した2008年秋に派遣労働者を中心とした解雇が相次ぎ、東京都千代田区日比谷公園に「年越し派遣村」が誕生したが、これに対してインターネット上では「携帯を持つ金があるなら、食費にまわせよ。贅沢なんだよ。」「食べるものにも事欠いているはずなのに、どうしてタバコが吸えるのか?」などと誹謗中傷の書き込みに溢れた。

 少し考えれば、新しい職場と連絡を取るのに携帯が必要だったり、失業者の中にタバコ依存症の人がいたりと理由が想像できると思うのだが、そうした客観的な意見はほとんどなかったように思う。

 

 

生活保護バッシングに変わったお笑い芸人の騒動

 2012年には、お笑い芸人のA氏の母親が生活保護を受け取っていた問題で、生活保護そのものをバッシングする動きも見られた。1950年に制定された現行の生活保護法では、親族による扶養は絶対要件とされておらず、A氏のケースでも経済的に余裕ができてからは福祉事務所との協議のうえ、母親への仕送りを行っていたという。そのため、厳密に言えば生活保護上の「不正受給」には当てはまらないのである。

 しかし、2012年3月に発足した自民党の「生活保護プロジェクトチーム」では、この問題に便乗して生活保護の給付水準を1割カットし、親族の扶養義務を強化する改正案を与党に戻った2013年1月に閣議決定している。

 A氏を擁護するタレントに対し、ツイッター生活保護を打ち切られて餓死した男性の遺体写真を送り付け「命奪われた人もおんねん。こういう人見てもそういうこと言えるんか。」と非難する人も存在したが、自民党は芸能人だけでなく病気で働けない人まで見捨てる社会保障の削減に踏み切ったと言って良いだろう。

 

 そもそも、芸能人は売れない下積み時代に苦労した人が多く、貧困家庭の出身であることをネタにしたバラエティ番組も存在するくらいである。貧困の世代間連鎖が固定化されつつある現代の日本社会では、学歴関係なしに貧困から抜け出す方法が限られており、その数少ない道の一つが芸能人になって売れるという選択肢ではないだろうか。

 政治家の中にも、舛添元都知事三原じゅん子参議院議員は、身内に生活保護受給者がいたことが発覚しているため、自民党もA氏を批判できる立場にないはずだ。

 

 また、生活保護バッシングを主導していたのが「保守派」や「愛国者」と呼ばれる部類の人々だったのも特筆すべき事項だ。

 A氏の問題を追及していた片山さつき議員は、2012年7月1日に行われた自身の応援デモで「働かない人ではなく、働けない人を守りたい」「正直者が報われる社会にしなければならない」と発言したが、その一方で城繁幸氏や赤木智弘氏との対談で「かつての日本にはあった『生活保護を受けるなんて、となり近所に恥ずかしい』といった価値観が徐々に失われつつある」とも語っており、真面目に働きたい生活保護受給者に対しても偏見を抱いているのが本音だろう。

 

 片山議員の他にも、今の保守政治家や言論人には貧困問題を根性論で語り、社会保障の削減を推進する人物が少なくない。

 安倍首相と親交の深い評論家の金美齢氏は、片山議員への批判に対して「単なる妬みに過ぎない」と言い張り、年間自殺者が2~3万人近くいることも「社会の在り方の問題ではなく、日本人は人間として衰弱しているのではないか」と発言している。

 

 金氏と同様に、安倍首相と親しい作家の百田尚樹氏は「現代の日本は、歴史上最も格差の少ない社会」だと発言し、「格差を問題にする評論家の多くは格差社会の勝ち組」とも語っている。

 しかし、安倍首相が消費税増税の延期を決定する際に、スティグリッツ教授やクルーグマン教授の意見を参考にしたことからも分かるように、ある程度有名な人物が格差社会を批判しないと説得力がないだろう。

 

 この他にも、元都知事石原慎太郎氏は作家の雨宮処凛さんとの対談で、2007年に問題となったネットカフェ難民について、アフリカの難民を引き合いに出し「もっと苦しい人たちがいるんだから黙ってろ」と切り捨てた。その後、「ネットカフェは1500円だが山谷に行けば200円、300円で泊まれる宿がいっぱいある」と発言し、問題になっている。

 石原の友人である元航空幕僚長田母神俊雄氏も、2010年の講演会で「最低賃金法があると経営者の自由裁量が奪われ、これでは国際競争に勝てるわけがない」と発言し、デフレ下に安い賃金で多くの人材を雇うワークシェアリングを推進している。愛国心が大好きなはずの田母神氏が何故、国際競争力に拘るのか不思議なのだが。

 

 保守系政治団体維新政党・新風も「福祉を重視する人々は決まって憲法25条を持ち出すが、生活保護受給者は勤労の義務(憲法27条)と納税の義務憲法30条)を果たしていない」「『国に頼らず、他人に迷惑をかけずに生きていこう』という誇りを持った国民こそが国を支える」と述べている。

 しかし、ここには「生活保護を受給しながら働いている人」や「消費税などの税金を滞納して生活保護を受けざるを得なくなった人」も存在するという事実が置き去りになっていないだろうか。また、普段は国家の枠組みを大切にしている保守の人々が何故、社会保障の問題になると「国に頼るな!」といった根性論や自己責任論をむき出しにするのか疑問に思ってしまう。

 財務省が言う「消費税を上げなければ日本が破綻する」という主張と、保守派が言う「生活保護受給者が増加すれば日本が破綻する」という主張に同じような胡散臭さを感じるのは私だけだろうか。

 

 

ネット右翼の醜い生活保護バッシング

 更に、インターネット上では生活保護を「ナマポ(生保の音読み)」と呼び、「日本にいる在日韓国人の多くが生活保護を受給している」というデマが蔓延した。2014年の衆院選では、これを鵜呑みにした次世代の党(現・日本のこころを大切にする党)が「外国人の生活保護受給者は日本の約8倍」という強引な動画を作成して大幅に議席を減らしている。しかし、実際に生活保護受給者の97%は日本人であって、ネット上の受けを狙った次世代の党こそ間違いなのだ。

 そもそも、こうしたインターネット上で過激な書き込みを行う「ネット右翼」と呼ばれる人々は、一昔前まで「底辺の若者が右傾化した結果」と言われていたが、若手保守論客の古谷経衡氏の調査によれば、ネット右翼の平均年齢は38.15歳(2013年当時)と中年層が多く、平均年収も451万円でミドルクラスが中心だと分析している。

 

 保守や右派層に、生活に困っている人が少ないのは私が参加している消費税増税反対デモで、ネット右翼的な人を見かけないことからも実感できる。インターネットで自己責任論が増幅しやすいのも、ネット上で政治的な議論を行っているのが生活に余裕のある層だからではないだろうか。

 ネット右翼が全体の3%に過ぎない外国人の生活保護を非難する理由には間違いなく、「生活保護受給者はどうせ在日がほとんどだろう」という思い込みが存在するからだと言える。実際に、お笑い芸人の生活保護騒動でもA氏が韓国語の本を出版している程度の理由で「日本人ではない」などの誹謗中傷が見られた。私も生活保護の受給資格は日本国籍を有する者に限定すべきだと考えているが、ネット右翼の事実に基づかない批判を許すことはできないだろう。

 

 また、週刊誌やニュース番組などでは、生活保護について「不正受給」ばかりがクローズアップされ、真面目に生活している受給者が圧倒的だという事実を報道した番組はほとんど存在しないように思う。

 例えば、2011年1月21日のテレビ朝日の番組で、生活保護を受給しながらカラオケに行って遊んでいる30代無職男性の様子が放送された。私は当時、この番組を見て「働く意欲のないニート生活保護を受給できるなんて許せない」と思ったものだが、それから数年経って実際に生活保護の受給者数名に話を聞いたところ「仕事を見つけて、収入が得られるまで遊ぶのも我慢している」という方がほとんどで、私自身も生活保護に偏見を抱いていたということを実感した。

 

 インターネット上で生活保護をバッシングしている人々も、実際に受給者に会って話を聞いているわけではなく、前述の番組のような「生活保護を受給して遊んでいる一部の人」を見て、受給者全員を「国家に庇護された怠け者」扱いしているのだろう。ネット右翼は、よく「マスコミの偏向報道を許さない」などと言うが、生活保護に関してはお笑い芸人の騒動に便乗してマスコミと同様にバッシングを行っていたのは皮肉な話である。

 実際に生活保護を受けている女性は、「ネット上の批判の中には『生活保護受給者はカップラーメンを食べるのも贅沢である。なぜ節約を考えるなら、何食も入っている安い袋麺にしないのか』というのもあります。心が痛みました。ネットの書き込みに恐怖して、病気が悪化してしまうこともある。生活保護を受けたくて受けているわけではなく、早く自立したいと思っているので、なおさら焦ってしまう」と述べている。

 カップラーメンは決して贅沢品ではなく、コンビニでも安く買える品物だ。バッシングしている側は自分が恵まれた暮らしをしているくせに、生活保護受給者に対してカップラーメンすら食べてはいけない生活を強要するのは無責任ではないだろうか。生活保護プロジェクトチーム座長の世耕弘成議員は「生活保護受給者の人権は制約されてもやむを得ない」と発言して問題になったが、ネット上で同様の書き込みが多く見られることから、生活保護に対する差別的意識は自民党だけの問題ではないだろう。

 

 日本で社会保障が充実しないのは消費税が安いからではなく、自己責任論が蔓延しているからなのである。

 

 

<参考資料>

雨宮処凛 『命が踏みにじられる国で、声を上げ続けるということ』(創出版、2014年)

伊藤周平 『消費税が社会保障を破壊する』(角川書店、2016年)

稲葉剛 『生活保護から考える』(岩波書店、2013年)

金美齢曽野綾子 『この世の偽善 人生の基本を忘れた日本人』(PHP研究所、2013年)

国民行動京都委員会 『日本の決断 これが日本を滅亡から救う道だ』(洛風書房、2013年)

津田大介香山リカ安田浩一 他 『安倍政権のネット戦略』(創出版、2013年)

中宮崇 「独善と偽善で世論をミスリードするTV報道の害毒」 『正論』(産経新聞社編、2004年6月号)

百田尚樹 『大放言』(新潮社、2015年)

藤田孝典 『貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち』(講談社、2016年)

古谷経衡 『若者は本当に右傾化しているのか』(アスペクト、2014年)

和田秀樹 『この国の冷たさの正体』(朝日新聞出版、2016年)

 

Pew Global Attitudes Report October 4, 2007(18、95ページ)

http://www.pewresearch.org/wp-content/uploads/sites/2/2007/10/Pew-Global-Attitudes-Report-October-4-2007-REVISED-UPDATED-5-27-14.pdf

自己責任論の本家は安倍首相だった!? 人質事件被害者に救出費用を請求する発言も

http://lite-ra.com/2015/02/post-853.html

本当に生活保護を受けるべきは誰か 『Voice』 2012年8月号

http://ironna.jp/article/507

総選挙「唯一の敗者」とは?「次世代の党」壊滅の意味とその分析

http://bylines.news.yahoo.co.jp/furuyatsunehira/20141215-00041509/

法人税減税は本当に必要なのか?

法人税を減税しても国民が損するだけ

 安倍政権は消費税10%への引き上げを2017年4月から2019年10月に延期することを決定したが、今年度の法人税減税(基本税率23.9%→23.4%、実効税率32.11%→29.97%)に加え、2018年度から更に法人税を引き下げようとしているため、将来的な消費税増税の下準備が始まっていると言えるだろう。

 

 消費税増税の代わりに、法人税を引き下げて企業に余力が生まれたとしても、増税で消費が停滞するため、企業の利益は需要不足の日本ではなく海外へ投資される可能性が高い。

 

 例えば、日本の建設企業が海外の工場へ投資すれば、配当金として収益が日本に戻ってくるが、そのほとんどは株主に還元されたり、内部留保に蓄積されたりして、企業で働いている従業員の報酬や国内建設には向かわない。

 その結果、国民の雇用は増加せず所得格差が拡大し、資金の海外流出によって経済効果はむしろマイナスに転じるのである。

 

 実際に、日本は国内への設備投資を表す「公的固定資本形成」が1996年の42.0兆円から2015年の21.5兆円に減少する一方で、海外への投資を表す「対外直接投資」は2.9兆円から15.8兆円にまで増加した(図4を参照)。

 

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 安倍政権は「法人税減税で浮いたお金を内部留保ではなく、設備投資に回すよう企業に呼びかける」と言っているが、それなら内部留保に課税して政府の公共投資を増やしたほうが法人税を減税するより効果的ではないだろうか。

 

 

企業の海外進出と法人税の高さは無関係

 また、「法人税が高いと企業が海外に逃げ出す」というのも嘘で、日本は1987年から法人実効税率を引き下げているが、企業の海外進出はむしろ増加していて、現地法人企業数は1995年度の10416社から、2014年度の24011社にのぼっている(図5を参照)。つまり、法人税の高い時代のほうが、企業が国内で仕事をしていたのだ。

 

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 企業の海外進出がこれだけ増加しているのは、アジア諸国の人件費が安いからで、日本と数倍以上の賃金格差が存在する場合、人件費の安い地域に生産拠点を移すのは自然なことだろう。

 

 更に、国際競争力についても、スイスに拠点を置く国際経営開発研究所(IMD)の調査によれば、日本は1992年の1位から2015年の27位まで順位を落としていて、法人税の高い時代のほうが、国際競争力を発揮していたと言うことができる。ちなみに、同調査では法人税の世界一高いアメリカが、国際競争力でも1位を維持し続けている。

 

 

日本の法人税は高くない

 従来、「日本の法人税はアメリカの次に高い」「税率をヨーロッパ並みに引き下げるべき」と言われていたが、2016年現在の「世界の法人実効税率ランキング」では6位まで順位を下げていて、日本の法人実効税率は既にベルギーやフランスより安いのだ。また、法人税率を国際比較するなら事業主の社会保険料も比べなければならないが、日本の「社会保険料の事業主負担」は5.1%(2010年)でこちらもフランスやスウェーデンより安くなっている(表2と図6を参照)。

 

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 日本の法人税は、著名な企業に対して税負担を傾斜的に軽減する「租税特別措置法」や、試験研究を行った法人が税額の優遇を受ける「研究開発減税」など多数の抜け穴が存在し、これらの措置を受けた企業の実質的な負担額はそれほど高くない。

 

 それでも、経団連などが法人税減税を求める理由として「海外では法人税の引き下げ競争が行われている」という主張がある。確かに、ヨーロッパでは1980年代以降、法人税を引き下げる国が多く、シンガポールやUAE(アラブ首長国連邦)などは、外資系企業を誘致するために法人税を非常に安くしている。だが、先進国としての歴史が長く、GDPが世界第3位の日本がタックスヘイブン租税回避地)になって外資を誘致する必要がどこにあるのだろうか?

 

 また、政府は法人税減税に加えて、外形標準課税の拡大を推進している。外形標準課税とは、2003年の税制改正により導入された法人事業税を中小企業にも課税する制度だが、当初は納税者の反発も強かったため、期末資本金が1億円を超える株式会社などに限定していた。

 しかし、近年の急速な法人税減税によって代わりの財源確保が必要となったので、消費税増税の他に外形標準課税を拡大し、赤字企業の負担を増やそうとしているのだろう。

 

 ちなみに、法人税減税や内部留保を批判すると、「大企業を悪者扱いして、そこからお金を奪い取りたいだけなのでは?」と揚げ足を取ってくる者がいるが、私はあくまでも消費税増税法人税減税が同時に行われている事実を批判しているのであって、反企業や反富裕層の立場から「法人税を上げろ」と言いたいわけではないことを述べておく。

 

 

<参考資料>

菊池英博 『消費税は0%にできる 負担を減らして社会保障を充実させる経済学』(ダイヤモンド社、2009年)

多田雄司 『外形標準課税の申告実務ガイド』(税務研究会出版局、2004年)

 

対外・対内直接投資の推移(財務省

http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/balance_of_payments/bpfdi.htm

公的固定資本形成 統計表一覧(内閣府

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2016/qe161_2/gdemenuja.html

海外事業活動基本調査(経産省

http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kaigaizi/result-1.html

法人実効税率の国際比較(財務省

http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/084.htm

世界の法定実効税率ランキング(世界経済のネタ帳)

http://ecodb.net/ranking/corporation_tax.html

社会保険料事業主負担の国際比較(8ページ)

http://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/discussion3/2013/__icsFiles/afieldfile/2014/03/31/25dis32kai5.pdf

かつては1位だった世界競争力ランキング、2015年日本は27位

https://thepage.jp/detail/20150603-00000003-wordleaf

消費税収の86%が法人税減税に消えている

消費税は公平な税金ではない

 一般的に、消費税は景気に左右せず、子供からお年寄りまでお金を使う人全員が負担する公平な間接税だと説明される。

 

 しかし、それは裏を返せば、所得や売上に関係なく、お金を持っている人も持っていない人も、消費に対して同じ額の税金を支払わなければならないのであろう。同じ額の税金を支払うとなると当然、低所得者や赤字企業の負担のほうがより重くなって、「逆進性」の問題が発生する。

 

 その証拠に、消費税は国税の中で最も滞納額が大きく、法人税所得税相続税などの滞納税額中、常に第1位となっている。2014年度、新たに発生した消費税の滞納税額は3294億円で、これは国税全体の滞納額(5914億円)における55.7%を占めている(表1を参照)。

 

 消費税は、法人税所得税と違って、事業者が赤字でも納税しなければならず、滞納税額が減らないのはそれだけ消費税を払えない赤字企業が多いからだろう。

 

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消費税収の8割以上が法人税減税に消えている

 また、日本では消費税が導入された当時から、法人税減税が急速に行われてきた。法人税の基本税率は1984~86年度の43.3%から2015年度の23.9%に引き下げられ、国税地方税を合わせた法人実効税率も、84~86年度の52.92%から2016年度の29.97%まで引き下げられている。

 

 1989~2015年度まで日本人が払った消費税は計304.8兆円なのに対し、法人税は国と地方合わせて、税収が29.8兆円であった1989年度と比較すると計262.2兆円も減収しており、これは消費税収の86%が法人税減税の穴埋めに消えた計算になる(図3を参照)。

 

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 安倍首相は、第一次内閣(2006~07年)の時から法人税減税に意欲的で、経団連が2007年1月に発表した『希望の国、日本 ビジョン2007』でも、「法人税の実効税率を30%程度の水準に」と主張されていた。

 

 消費税8%への引き上げを決定する前にも、2013年9月10日の閣議で、法人税減税に慎重な立場を示していた麻生副総理に対して、「5兆円の経済対策の他に、アベノミクスが掲げる成長戦略を実現させるべく、法人税引き下げなど一貫した対策が重要だ」と述べ、麻生副総理が、法人税減税を推進する安倍首相と甘利明大臣に譲歩したやり取りが交わされている。

 

 私が「消費税増税」と「法人税減税」の関係について知ったのは、『世界超恐慌の正体』(晋遊舎、2012年)などの著書を出版している安部芳裕さんの講演会を聞いてからだ。

 

 マスコミの多くは、「国の借金を返すために増税しなければならない!」「社会保障を充実させるために増税しなければならない!」と煽っているので、消費税の問題に関心を持って増税に反対している経済学者の本を読んだり、個人で講演活動を行っている方の話を聞いたりしない限り、消費税の財源のほとんどが法人税減税の穴埋めに消えている事実について、知る機会が少ないのはおかしいだろう。

 

 

<参考資料>

湖東京至 「消費税の何が問題なのか」 『世界』(岩波書店編、2014年2月号)

野口悠紀雄 『資本開国論 新たなグローバル化時代の経済戦略』(ダイヤモンド社、2007年)

NHKスペシャル 『ドキュメント消費増税 安倍政権2か月の攻防』(2013年10月5日放送)

 

法人税率の推移(財務省

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/082.htm

地方法人課税の改革、外形標準課税総務省

http://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/discussion3/2014/__icsFiles/afieldfile/2014/04/24/26dis34kai4.pdf

 

 

ーー追記ーー

4月14日21時26分、熊本県で最大震度7の大きな地震が発生しました。亡くなられた方のお悔やみを申し上げます。

安倍首相は「リーマンショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り、増税を確実に実施する」と言ってましたよね。

今回、東日本大震災以来の大地震が起こったのだから、消費税10%を中止するのが道理でしょう。

日本は本当に借金大国なのか?

国の借金とは、「政府の負債」である

 テレビや新聞などの大手メディアが消費税増税を煽る際に、必ずと言っていいほど取り上げるのがこの「国の借金問題」である。財務省は、2015年6月末の時点で、国債や借入金、政府短期証券を合わせた「国の借金」の残高が、1057兆2235億円(国民1人当たり約833万円)になったと発表した。

 

 「日本は借金大国だから財政再建のために、消費税を引き上げなければならない」という認識は残念ながら国民に広く蔓延していて、例えば私が大学に通っていた頃、ゼミの先生と消費税について議論をしたときも、私が増税に反対する意見を述べると、その先生から「でも、日本は国の借金が多いからねぇ…」とすぐ反論された。

 

 しかし、この「国の借金」という言葉、よくよく考えてみると「誰が誰に借りたお金」なのかが全く分からない。その上、大手メディアが「借金を返すために消費税を上げるべき」と煽る一方で、1989年に消費税が施行され、1997年に3%から5%、2014年に5%から8%へ増税しても、「消費税を上げたおかげで借金が減りました」という報道は一度も聞いたことがない。

 

 正確に言えば「国の借金」とは、「政府が国民から借りたお金(負債)」であって、私たち国民が背負っている借金ではないのだ。 

 そのため、国の借金は「国民一人当たり約833万円」ではなく、1057兆2235億円を国会議員717名(2016年3月現在)で割った「議員1人当たり約1兆4745億円」と説明したほうが正しいのではないだろうか。

 

 また、日本は借金が多いどころか、政府が大量にお金を持っている。例えば、海外に持つ資産から負債を引いた「対外純資産」の残高は、2014年末の時点で366兆8560億円(前年比12.6%増加)にのぼり、1991年から24年連続で世界最大の債権国となった(図1を参照)。

 

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 更に、企業の内部留保も年々増加を続けていて、財務省が発表した2015年7~9月期の法人企業統計によれば、資本金10億円以上の大企業では301.6兆円も内部留保を溜め込んでいる。

 内部留保がここまで増加した原因は、主に設備投資の減少、人件費の削減、法人税の減税であり、「法人税を引き下げれば設備投資が増える」という考え方が間違っていることがわかるだろう。その上、民間企業の平均給与は1997年の467万円から50万円近くも下落しているのである(図2を参照)。

 

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大平内閣から続く「財政危機論」

 そもそも、この「国の借金問題」は、大平内閣が財政再建のために一般消費税を導入しようとした時代から言われていた。

 

 1979年8月22日の自民党研修会講演では、大平首相が「国債費を支払うために、さらに国債を増発するというようなことになりますと、財政インフレは必至です。今日、われわれの生活は、われわれの子孫に負担を残しながら生活しているようなものであります」と述べている。

 

 また、1982年9月1日に大蔵省が国の借金である国債の償還(返済)に関する政策の転換を決定したところ、当時の朝日新聞が「政府財政、サラ金地獄へ」などの見出しで財政危機を煽った。

 当時の鈴木首相も後に「国、地方を問わず、自治体の財政が破綻するのではないかとの不安が広がっている。このままでは私たちの孫子の世代に天文学的な負債、借金を背負わせることになる。未来に責任を持つ意味でこの問題を放置してはならない」と述べている。

 

 このような「日本財政破綻論」はその後も続き、例えば吉田和男 著『平成不況10年史』(PHP研究所、1998年)の中では、「このまま、財政赤字を増やし続ければ、2015年頃には日本経済は破綻に向かうことになる」と言われていたくらいである。

 

 しかし、2015年を過ぎても日本は財政破綻していない。

 

 

財政破綻したギリシャと日本の違い

 「日本は国の借金が増えても何故、財政破綻しないのか?」については、2010年5月に破綻したギリシャと比較しながら考えてみよう。ギリシャと日本の根本的な違いは、「発行する国債を自国民が引き受けているか、外国人が引き受けているか」にある。

 

 ギリシャの場合、国債の75%を外国人が買っているが、日本の場合は95%を国民が買っている。つまり、国債の多くを外国人が保有しているギリシャは「将来の世代に負担をつけ回している」と言えるが、国債のほとんどを自国で処理している日本は、将来の世代が借金を負担する必要はない。

 

 ただし、本当の問題はギリシャが外国からお金を借りていたことではなく、自国の公務員給与や年金の支払いに充ててしまったことだ。これには、公務員の割合が労働人口の25%を占めていて、政権交代の度に政治家が公務員を支持してきたという背景があるらしい。

 

 外国からお金を借りたとしても、それを公共投資や社会基盤の整備に使えば、現在の国民はもちろん、将来の国民にとっても有益であるが、公務員や年金生活者が外国からの借金を受け取っただけでは、将来的な供給能力の拡大には全く役立たない。 

 実際に、日本は戦後の復興期に世界銀行から借りたお金で新幹線や高速道路を建設し、金利、元本共に一度も支払い延滞を起こさず、1990年に借金を完済している。

 

 また、ギリシャ付加価値税は23%と日本より高く、2006年の18%から5%も増税しているのだ。

 しかし、マスコミの多くは「日本をギリシャのようにしてはならない! だから消費税を上げろ!」と報道するばかりで、ギリシャ付加価値税を引き上げて破綻した事実については触れようとしない。「日本は財政危機で破綻する」という言説は、消費税を上げたい人々の口実に過ぎないと思っておいたほうが良いだろう。

 

 

<参考資料>

江田憲司財務省のマインドコントロール』(幻冬舎、2012年)

鈴木善幸・東根千万億 『等しからざるを憂える。 元首相鈴木善幸回顧録』(岩手日報社、2004年)

全労連・労働総研編 『2016年国民春闘白書・データブック』(学習の友社、2015年)

三橋貴明 『世界でいちばん!日本経済の実力』(海竜社、2011年)

 

「国の借金」6月末は1057兆円で過去最高 国民1人当たり833万円

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL10HQ8_Q5A810C1000000/

対外純資産366兆円、3年連続で最高 14年末

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO87132860S5A520C1MM0000/

内部留保 300兆円突破 財務省統計 安倍政権で38兆円増

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-12-03/2015120301_02_1.html

日本の大企業は、この10年で100兆円ため込んでいる

http://wpb.shueisha.co.jp/2013/10/08/22375/

一九八〇年代の新しい選択(大平内閣総理大臣の講演)

http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/exdpm/19790822.S1J.html

バブル崩壊後の政府の負債と家計の資産 後編(1/3)

http://klug-fx.jp/mitsuhashi/2011/03/01/012074.php

消費税の歴史(中曽根~竹下内閣)

中曽根内閣の「嘘つき売上税」

 大平の次に、消費税を導入しようとしたのは中曽根内閣である。中曽根は1986年7月の衆参同日選挙で、「国民や自民党員が反対する大型間接税はやらない。この顔が嘘をつく顔に見えますか?」と強気な発言をしていた。

 

 ところが、同年12月に政府税制調査会自民党税制調査会は、新たな大型間接税である「売上税」を提案し、これを受けて中曽根内閣は1987年2月に「売上税法案」を国会に提出した。

 当然、嘘をついたことによる国民の反発は強く、同年2~3月にかけて都内各地で「売上税反対集会」が開催され、1987年の統一地方選挙では自民党が敗北した。

 

 その後、中曽根内閣は4月23日に原健三郎議長の調停案を受けて、売上税の通過を断念したが、この調停案には「税制改革問題は、今後の高齢化社会に対応する等、将来の我が国の財政需要を展望するとき、現在における最重要課題の一つであることはいうまでもない」と再び大型間接税導入の火種になる文章が残されていた。

 

 そして、1987年11月に発足した竹下内閣は、税制の抜本改革を掲げ、1940年から続いた物品税を廃止すると共に、消費税の導入法案を1988年7月の臨時国会で提出した。大平の「一般消費税」と中曽根の「売上税」が税率5%だったのに対し、竹下の「消費税」は税率3%で提案された。

 

 竹下は消費税導入と同時に、法人税所得税相続税など総額2兆円を上回る程度の減税を実施する考えを示した。こうした消費税を上げる代わりに、大企業や富裕層向けの減税を進め、国民の不満を解消するやり方は現在の安倍内閣まで続くことになる。

 

 しかし、1988年当時、政界では「リクルート事件」が大きな問題となっていた。これは、1985年から86年にかけて、人材情報サービス企業「リクルート」の江副浩正会長が竹下首相、中曽根元首相、宮沢喜一蔵相、安倍晋太郎幹事長、渡辺美智雄政調会長など、自民党の有力候補らに関連会社の未公開株を譲渡させたことが発覚した事件である。

 

 

消費税導入から2ヵ月で辞任した竹下内閣

 消費税法案は、1988年12月24日に参院本会議で社会・共産両党欠席のまま、自民の賛成多数で成立した。

 だが、「売上税」の時と同様に国民の反発が強く、都内では消費税導入反対を訴えるダンプカーが走り、地方の商店街でも「弱い者いじめの竹下消費税断固反対!」という看板が掲げられた。89年3月には、生活用品や保存食品などの買い溜めが起こり、バブル絶頂期であっても景気に関係なく「駆け込み消費」が発生することがうかがえる。

 

 また、労働組合の反対だけでなく、保守的な政治学者として有名な小室直樹氏も『消費税の呪い』(光文社、1989年)の中で、「絶好調宣言を何回出しても足りないほどの日本経済は、奈落の底に転落するだろう」と痛烈に批判している。

 実際に小室氏の予想通り、日本経済はその後バブルが崩壊し、長期停滞の時代に入るのだが、当時は誰もそんなこと思っていなかっただろう。

 

 竹下は、消費税がスタートする前日の89年3月31日に「やがて、消費税を導入して良かったと感じていただける日が来ることを信じております」と談話を発表し、翌4月1日には日本橋三越百貨店で、ネクタイ(1万5000円)と塩鮭2パック(計2000円)を購入し、それぞれ450円と60円の消費税を支払うパフォーマンスを披露した。

 

 しかし、税率3%の消費税が施行された後も、新税に対する不信感は薄まらず、導入から2ヵ月ほどして行われた毎日新聞世論調査では、約9割の国民が「消費税に不満がある」と回答している。

 

 この影響で竹下内閣は支持率が急落し、89年6月には消費税導入とリクルート事件の責任を取って辞任した。続く宇野内閣も女性スキャンダルが発覚し、同年の参院選自民党が大幅に議席を失ったため、わずか69日の短命政権に終わった。

 

 

<参考資料>

 北野弘久・湖東京至 『消費税革命 ゼロパーセントへの提言』(こうち書房、1994年)

 斎藤貴男 『ちゃんとわかる消費税』(河出書房新社、2014年)

 平野貞夫 『消費税国会の攻防 一九八七―八八 平野貞夫 衆議院事務局日記』(千倉書房、2012年)

 

 特集:消費税の歴史 - 時事通信フォト

 https://www.jijiphoto.jp/ext/news/sp/010/

消費税の歴史(~1970年代まで)

消費税の世界史

 消費税引き上げを批判する前に、日本で消費税が導入されるまでの経緯について詳しく述べたい。消費税は、もともと「大型間接税」や「付加価値税」と言われ、歴史を遡ると約2000年前のローマ帝国で、初代皇帝のアウグストゥスが全ての商人に対し、売上の1%の税金を課す「一〇〇分の一税」を導入したのが始まりだとされている。

 

 ローマ帝国の崩壊と共に、長らく大型間接税は姿を消していたが、20世紀に入りドイツ帝国が1916年に戦費調達を図って、税率0.1%の「売上税」を導入した。第一次世界大戦に敗れた後は、賠償金の支払いに充てるとして、1924年には2.5%へと大幅に引き上げられた。

 

 その後、ドイツ経済の安定化により、1926年にはいったん0.75%に引き下げられたが、ナチスが政権を取り、第二次世界大戦が始まると再び2.75%まで引き上げられ、敗戦後の西ドイツでは1946年に3.75%、51年には4%になった。税率は高くなくても、複利計算で累増していくため、実際の税負担率は2桁を超え、場合によっては20%になることもあった。

 

 また、フランスでも第二次世界大戦の復興に莫大な予算が必要となったため、1948年に売上税を導入し、1954年にはフランス財務省官僚のモーリス・ローレが、物品及びサービスの消費に対して課税し、各段階で生じる付加価値を課税標準として国庫に納付する「付加価値税」を考案した。これが日本でいう「消費税」に当たる。

 

 フランスでは、消費税が「基幹税(中核的な税)」に位置付けられているが、歴史的に見れば、消費税と戦費調達は密接な関係にあると言えるだろう。

 

明治から終戦までの税制

 近代以降の日本の税金を振り返ってみると、明治時代には「営業税」が創設されている。営業税は、江戸時代の「運上(うんじょう)」「冥加(みょうが)」など商工業者に課税されていた諸雑税が、地租改正の過程で大幅に整理され、1878年地方税として始まった。

 その後、1896年に日清戦争後の財政需要を賄うため、営業税は地方税から国税に格上げされる。

 

 この点では、日本もドイツやフランスと同様に税金が戦費調達の目的になっていたと言えるだろう。しかし、納税義務を課された事業者の抵抗が強く、大正末期の1926年に営業税は廃止され、新たに営業純益課税標準とする営業収益税へ変わった。

 

 昭和に入ると、地方財政の困窮や都市・農村間における税の不均衡が問題となり、1940年には法人税所得税から独立すると共に、所得税の分類が整理されるなど国税地方税を通した税制改革が行われ、営業収益税は廃止された。その際、国税地方税を統合した新たな営業税が創設され、地方の独立財源を確保する「地方分与税」の還付金になった。

 

 そして、戦後の1947年に営業税は再び国税から地方税へ移り、1948年には地方税法が全面改正され、営業税は「事業税」となるのである。

 

シャウプ勧告から「一般消費税」構想まで

 1949年、アメリカの経済学者であるカール・シャウプ氏が税制使節団長として来日した。シャウプ氏は、GHQを通して「負担の公平」を目指し、所得税中心の租税体系を主張した「シャウプ勧告」をまとめている。

 

 GHQは、戦前の日本で歪んだ軍国主義が台頭したのは、格差社会の不満を軍部が吸収していたからと考えたため、貧富の差の解消に努めたとされている。戦後の税制はこの「シャウプ勧告」の影響が大きいが、その後日本は「欧米に追いつけ、追い越せ」の精神で、東洋の奇跡と呼ばれるほど急速な経済成長を遂げた。

 この時期は、池田内閣の「所得倍増計画」(1960年)など、成長を優先させる経済政策が多かったのも特徴である。

 

 しかし、1970年代に入って高度成長が落ち着くと、今度は時の首相が財政再建を唱えるようになる。

 『日本列島改造論』(日刊工業新聞社、1972年)を発表した田中内閣は当初、日本全国に新幹線や高速道路を建設して、都市と農村、表日本と裏日本の格差をなくすことを宣言していたが、1973年に狂乱物価やオイルショックが発生すると、列島改造の拡大路線から総需要抑制の緊縮路線へと変更を余儀なくされる。

 1974年は戦後初めてとなるマイナス成長を経験し、1975年には10年ぶりの財政特例法案で2兆2900億円の赤字国債が発行された。

 

 その一方で、1977年5月に行われたロンドン・サミットでは、世界経済がオイルショックの不況から回復するために、成長余力のある日本と西ドイツが景気のけん引役とされ、再び国債増発による公共事業の拡大を図った。

 これに合わせて、政府の税制調査会は同年10月の答申で「広く一般的に、消費支出に負担を求める新税の導入」を促し、1978年の答申でも「一般消費税」を提案した。

 

 そして、日本で初めて「一般消費税」の導入を公約に掲げたのが、1978年12月に発足した大平内閣である。大平は自身がクリスチャンだったこともあり、「十字架を背負って、財政再建に取り組む」と決意した。

 ところが、「一般消費税」構想は与党内からも反対論が噴出し、1979年10月の解散総選挙自民党議席を減らす。また、衆院選の直前には、日本鉄道建設公団のカラ出張問題など政府機関の大規模な不正が明らかになり、大平内閣は「一般消費税」の導入を断念せざるを得なくなった。

 

 こうして選挙で挫折するなか、大平は「昭和59年(1984年)度に赤字国債から脱却する」と目標を掲げ、財政再建増税に頼らず行政改革で行うべきだとする「財政再建に関する決議」を1979年末の国会で採択した。

 1980年5月には、社会党提出の内閣不信任案が与党内の反主流派によって可決され、わずか8ヵ月で再び衆議院を解散したが、選挙期間中に心筋梗塞で入院していた大平が急死するという不測の事態が起こった。

 キリスト教徒だった大平は「一般消費税で倒れた十字架首相」と呼ばれている。

 

 

<参考資料>

 小此木潔 『消費税をどうするか 再分配と負担の視点から』(岩波書店、2009年)

 熊谷亮丸 『消費税が日本を救う』(日本経済新聞出版社、2012年)

 国税庁税務大学校税務情報センター租税史料室 『営業税関係史料集』(税務大学校税務情報センター租税史料室、2013年)

 斎藤貴男 『消費税のカラクリ』(講談社、2010年)

 塩田潮 『内閣総理大臣の日本経済』(日本経済新聞出版社、2015年)

 森永卓郎大貧民 2015年日本経済大破局』(アーク出版、2012年)

 

 1.運上・冥加の時代|平成17年度特別展示|税務大学校|国税庁

 4.営業税、地方財源となる|租税史料特別展示|税務大学校|国税庁

 

はじめに

 消費税は、私たちが生活している中で最も身近な税金だ。しかし、消費税はあまりにも身近すぎて、どのような税金なのか却って分かりにくくなっている部分もある。

 

 私は1991年生まれで、消費税の存在しなかった時代を知らず、物心つく前(1997年)には既に消費税が5%になっていた。そのため、消費税が再び引き上げられるという話を聞いた時は、驚きの気持ちでいっぱいだった。

 

 最初は正直、「一度くらい消費税を上げても良いではないか」と思っていたのだが、前回、消費税を増税した1997年には、山一證券が経営破綻するなど歴史的恐慌が起こったことを知り、やはり増税するのは良くないのではないかと思うようになった。

 

 実際に、堺屋太一 著『「平成三十年」への警告』(朝日新聞社、2002年)の中で、『日本経済は、95~96年と好調だった。阪神淡路大震災の復興需要に加え、携帯電話やプリクラなどの新商品が登場したため、経済成長率は高まり、株価も日経平均が2万3000円台を回復するまでになった。(中略)ところが、「改革の火の玉になる」と自称した橋本総理は方向を誤った。財務官僚の主導によって「財政再建」という緊縮引き締め財政に走り、消費税の引き上げや医療費の増徴を行った。これでは金融という心臓に重病を持ち、体内に過剰設備の腫瘍を抱えたまま、マラソン特訓をやるようなものだ。案の定、消費税の引き上げが行われた97年4月から日本経済は急激に下降をはじめた。』と書かれていて、私の「増税したら景気が悪くなる」という思いは確信へと変わった(ちなみに、現在の堺屋氏は、消費税増税に反対していないようである)。

 

 安倍政権は、2014年4月から消費税を8%に増税し、同年11月18日には、2017年4月から消費税を10%へ引き上げることを決定した。また、OECD経済協力開発機構)は日本に対して、消費税を20%まで引き上げることを要求していて、増税は10%で終わりじゃないことが明らかだ。更に、日本は諸外国と違い、今まで一度も「消費税引き下げ」の議論が起こったことがない。

 

 私は消費税増税に反対の立場だが、その一方で「何故、増税はダメなのか」という理由をまとめたことがない。今回、本ブログを始めるに当たって、改めて消費税増税に反対する理由を考えることが必要だと感じた。

 

 来年の2016年までに消費税についての著書を出版したいと思っていて、その際は本ブログの内容の一部を著書に記載する予定である。