消費税増税に反対するブログ

れいわ新選組のボランティアとして消費税の問題点などを発信するブログです。たまに発達障害についても書きます。(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

30代が東京都知事選挙で石丸伸二氏に投票した背景と「教育・文化の失われた世代」について(後編)

※この記事は2024年7月29日に更新されました。

30代が東京都知事選挙で石丸伸二氏に投票した背景と「教育・文化の失われた世代」について(前編)』の続編です。

 

増税とコロナの影響を最も受けて政治意識が二極化している世代

 この他にも、私は今の30代男性における「政治意識の二極化」が非常に気になっている。例えば、自民党の熱烈な支持者が安倍政権を崇めるときによく言うのは「若者は自民党を支持している」という主張である。だが、マーケティング・アナリストの三浦展氏による調査ではこれにはカラクリがあることが明らかになっている。

 三浦氏が2021年に光文社から出版した『大下流国家 「オワコン日本」の現在地』の136~137ページには、男女・年齢・年収別に見た安倍政権の評価(2020年11月時点)について詳しく書かれており、全体では「評価する」が9.6%、「まあ評価する」が30.6%、「どちらでもない」が28.0%、「あまり評価しない」が15.7%、「評価しない」が16.1%だった。

 

 年齢別に見ると25~34歳男性は年収が上がるほど安倍政権の評価が高まる傾向が強く、年収200万円未満は「評価する合計」が31%程度なのに対し、年収600万円以上は60%にものぼっている(図21を参照)。これは45~54歳男性の年収600万円以上が49%、25~34歳女性の年収600万円以上が43%だったのと比較しても突出して高いことがわかるだろう。

 

 25~34歳男性の年収600万円以上が安倍政権を評価していたことについて、三浦氏は若くて年収の高い男性ほど社会全体の論調を内面化して実力主義新自由主義的な価値観を身につけている可能性があるからだと考察している。その一方で、私は25~34歳男性が高所得者ほど安倍政権を評価して低所得者ほど評価しなかった理由は、1990年代以降の自民党低所得の男性は結婚したくてもできない現実から目を背けてきたことも原因の一つだと思っている。2020年当時の25~34歳は2024年現在では29~38歳になっている。

 

 しかし、この世代は仮に高所得で結婚できたとしても決して安泰ではないようだ。例えば、総務省の家計調査から2018~2023年の1か月あたりの世代別消費支出額(二人以上の世帯)を調べると20代以下が3万2829円、40代が3535円、50代が5268円、60代が1万5457円、70代以上が1万2143円増加しているのに対し、30代だけは3373円減少している。消費税10%増税新型コロナウイルスの感染拡大によって、最も消費を減らしたのは30代ということになるだろう。

 今の30代は教育では学力格差が顕著に表れ、音楽ではカリスマ的人気を誇る歌手を見たことがなく、経済では増税とコロナの影響を最も受けて、男性に関しては政治意識が二極化しているという「教育・文化の失われた世代」だと言えるのではないだろうか。

 

 

30代で蓮舫氏に投票した割合が少ないのは野田元首相に原因がある

 更に、2024年の東京都知事選挙で残念だったのは蓮舫氏が128万3262票しか獲得できず3位になってしまったことだ。フジテレビの出口調査によれば今回の都知事選における蓮舫氏の年代別投票率は10~20代が15%、30代が12%、40代が16%、50代が19%、60代が24%、70代以上が29%で、これを前述の2020年の都知事選における年代別投票率を掛けると18歳が9.1%、19歳が7.2%、20代が6.3%、30代が6.0%、40代が9.0%、50代が11.5%、60代が15.3%、70代以上が17.0%だった(図22を参照)。

 一口に「蓮舫氏は若者に支持されなかった」と言っても18歳で蓮舫氏に投票した人はそれなりに多く、むしろ問題なのは30代で蓮舫氏に投票した割合が全世代の中で最も少なかったことでないだろうか。1991年生まれの33歳で蓮舫氏に投票した私は同世代の中で少数派に分類されるようだ。

 

 蓮舫氏が石丸伸二氏に勝てなかった理由について、よく「演説回数の少なさ」を挙げる人がいる。しかし、これには「演説回数は多ければ多いほど良い」という根性論が基になっているように感じられる。特に、今回の都知事選は猛暑の7月に実施されており、1日中演説を繰り返して熱中症で倒れてしまっても問題だろう。

 私は蓮舫氏の敗因について、野田佳彦元首相が応援演説に来てしまったこともあるように感じられる。私は期日前投票蓮舫氏に投票した後、2024年7月6日に自由が丘駅新宿駅で行われた街宣を見に行ったが、前座で野田氏が10分くらい演説していて「早く蓮舫さんに喋らせてあげて」と思ってしまった。私が消費税増税の反対デモに参加するようになったのは、2012年の野田政権下で自民党公明党民主党の3党が進めた「社会保障と税の一体改革」がきっかけだったからである。今の30代はちょうど野田政権だった2011~2012年当時に大学で就職活動をしていた人も多い世代ではないだろうか。

 

 その上、野田氏は2009年の衆院選で「消費税5%分の皆さんの税金に、天下り法人がぶら下がっている。シロアリがたかっているんです。シロアリを退治して、天下り法人をなくして、天下りをなくす。そこから始めなければ、消費税を引き上げる話はおかしいんです」と演説しており、首相になってから消費税増税に賛成したのは公約違反だったのである。

 仮に野田氏が応援演説に来るなら、橋本龍太郎元首相のように増税に賛成したことを謝罪すべきだと思うのだが、そういう発言は見受けられなかった。こう書くと「今回の都知事選では消費税増税の問題は争点になっていない」と反論してくる人もいるかもしれないが、蓮舫氏も演説で「子育て世代の社会保障を充実させるために行政改革を行うべき」とトレードオフの発言しており、残念ながら緊縮財政のイメージは払拭できなかったようだ。このことから、少なくとも30代で蓮舫氏に投票した割合が低いのは野田氏に原因があるように感じられる。

 

 

日本共産党は綱領を改正して政党名を「保守党」に変えるべき

 その一方で、日本労働組合総連合会の芳野友子会長は2024年7月11日、蓮舫氏の敗因について「日本共産党が前面に出過ぎて票が逃げたのではないか」と発言した。しかし、4月28日に実施された衆議院東京15区(江東区)の補選では蓮舫氏と同様に共産党から支援を受けた立憲民主党の酒井菜摘氏が4万9476票を得て当選しており、立憲の候補者が負けたときだけ共産党のせいにするのは矛盾していると言えるだろう。

 そもそも、蓮舫氏と日本共産党の関係を批判しているのは小池百合子氏や石丸伸二氏に投票した50代以上の世代でないだろうか。この世代はソ連アメリカに敗北した冷戦時代(1947~1991年)に青春を過ごしているので、一部に共産党アレルギーを持っている人が存在するのも事実だろう。

 

 それに対し、「2024年の東京都知事選挙に立候補した石丸伸二氏の『シン・日本列島改造論』の問題点を解説する」の記事でも書いた通り、読売新聞社早稲田大学現代政治経済研究所が2017年に行った世論調査によれば70代以上は自民党が最も保守的で、日本維新の会公明党民進党が中道、共産党がリベラルだと認識しているのに対して、18~29歳は公明党共産党民進党を保守、自民党を中道、維新をリベラルな政党だと認識しているという(画像を参照)。作家の橘玲氏は若者と高齢者の政治観が異なることについて「私たちは右と左が逆になった不思議の国のアリスのような世界に迷い込んでしまった」と述べている。

 特に、今の日本共産党社会主義共産主義の要素は全く存在せず、富裕層増税社会保障支出によって分厚い中間層を生み出してきた一億総中流社会の復活を目指しているように感じられる。そのため、共産党が若年層の支持を取り込みたければ、綱領を改正して政党名を「保守党」に変えるべきではないだろうか。

 

 また、今回の都知事選では都債の発行を掲げる候補者がほとんどいなかったのが残念だったように思う。都債とは東京都が法律に基づいて公共施設の整備などに必要となる資金を調達するために発行する債券のことを言い、2024年度の都債発行額(当初予算)は3127億円になっている。東京都は都債について「将来世代への負担も考慮しながら計画的に活用する」と言っているが、都債は家計の借金とは違ってインフレ率が低い場合は発行しても財政破綻しないのだ。

 消費者物価指数の中で最も重要な東京都区部のコアコアCPI(食料とエネルギーを除く総合物価指数)は、2024年7月に対前年比プラス1.1%と日銀が定めている年率2%のインフレ目標には達成しておらず都債の発行はまだまだ可能である。海外のコアコアCPI(2024年6月)を調べても、アメリカが対前年比プラス3.3%、イギリスが対前年比プラス3.5%、ドイツが対前年比プラス2.9%、フランスが対前年比プラス1.8%と日本より高い国が多くなっている。

 特に、1970年代生まれから1990年代生まれまでの「広義のロストジェネレーション」を救済するためにも、都債を発行して社会保障や家賃補助の財源を捻出する必要があるだろう。

 

 

<参考資料>

安部芳裕 『世界超恐慌の正体』(晋遊舎、2012年)

橘玲 『朝日ぎらい よりよい世界のためのリベラル進化論』(朝日新聞出版、2018年)

 

家計調査 家計収支編

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00200561&tstat=000000330001&tclass1=000000330001

2024年東京都知事選挙Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/2024%E5%B9%B4%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%83%BD%E7%9F%A5%E4%BA%8B%E9%81%B8%E6%8C%99

芳野友子(Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%B3%E9%87%8E%E5%8F%8B%E5%AD%90

東京都第15区(Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%83%BD%E7%AC%AC15%E5%8C%BA

自民党こそリベラルで革新的」 20代の「保守・リベラル」観はこんなに変わってきている

https://www.businessinsider.jp/post-106486

都債とは 債券用語集 iFinance

https://www.ifinance.ne.jp/glossary/bond/bon232.html#gsc.tab=0

TOKYO予算見える化ボード

https://www.zaimu.metro.tokyo.lg.jp/zaisei/zaisei/dashboard/redirect01r6

消費者物価指数(CPI) 時系列データ

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00200573&tstat=000001150147