消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

安倍政権の消費税増税を容認する高橋洋一氏に対する批判

安倍政権を擁護するために意図的なデマを流す高橋氏

 前回前々回のブログでは消費税増税に賛成するリベラル派の井手英策氏を批判してきたが、逆に安倍政権下の増税を容認する右派の経済学者に高橋洋一氏がいる。彼は財務省出身として初めて国の資産と負債を表したバランスシートを作成した人物で、野田前政権に対しては「財務省の傀儡政権で、大増税内閣である」と厳しく批判していた。しかし、安倍政権になってからは大きく変節し、意図的なデマを流すようになったと思う。

 

 経済素人でもわかる高橋氏の代表的なデマは「民主党政権が年間自殺者を安倍政権より3000人以上も増やした」というものである。実際のところ自殺者は民主党政権でも2009年の30707人から2012年の26433人まで減少していて、第一次安倍政権だった2007年でも30827人と民主党政権よりも多かったのだ。一般的に自殺は女性より男性に多いと言われているが、過去30年間の男性の自殺死亡率と完全失業率の推移を見ると1998年に自殺率が悪化し、2010年から失業率の低下と共に自殺率が改善しているのがわかるだろう(図7を参照)。

 本当に自殺者を増やしたのは消費税5%増税などの緊縮財政を断行した1996~98年の橋本政権で、安倍政権が経済政策によって自殺者を減らしたことを評価するなら、「民主党政権でも年間自殺者は減少していた」と言わなければならない。

 

 だが、高橋氏は「消費税増税は野田前総理が決めたこと。ただでさえ政権与党時代に経済を立て直せなかった民主党が、自ら行った増税決定のせいで進まない経済回復を批判するというのはブーメランになってしまう」と述べていて、安倍政権で自殺者が減ったのは良くて、民主党政権で自殺者が減ったのは認めないというのが本音のようだ。ちなみに、最終的に消費税8%増税を決定したのは野田前首相ではなく2013年10月1日の安倍首相で、消費税10%増税を決定したのも2016年6月1日の安倍首相である。

f:id:anti-tax-increase:20200116062427p:plain

 

 また、高橋氏は安倍政権が強行した消費税10%への増税について「2019年4月30日に平成が終わると新時代の門出で消費増税になる公算が大きい」と述べていた。つまり、現在の彼は完全に消費税増税を容認してしまっているのだ。高橋氏は10%増税の対策について「食料品や新聞に限定されている軽減税率の対象を全ての品目に拡大すべき」と言っているが、増税から3ヵ月以上が経ってもそうした議論は一切行われていないどころか、IMFが「2030年までに消費税を15%に引き上げろ」と要求しても日本政府の関係者が誰一人として批判しない異常事態になっている。

 

 更に、彼は増税に向けた景気対策について「2019年度予算で積極財政策を取り、同時に一層の金融緩和を行うことによって景気をデフレ脱却どころか加熱気味にする必要がある」と述べていたが、安倍政権が公的固定資本形成(政府の公共投資)を増やしていたのは2012年10-12月期の24.1兆円から2013年10-12月期の27.1兆円までの最初の1年だけであって、その後は2019年7-9月期の26.9兆円と横ばいの状態が続いている。アベノミクス第二の矢である「機動的な財政出動」は全く放たれておらず、2025年のプライマリーバランス黒字化目標を破棄しない限り、積極財政を取ることは難しいのである。

 

 また、日銀が世の中に供給しているお金の量を表すマネタリーベースは2012年12月から2019年11月までに388.1兆円も増加したが、消費者物価指数の中で最も重要なコアコアCPI(食料〔酒類を除く〕及びエネルギーを除く総合)は2019年11月に前年比0.5%程度と、消費税増税の影響を含めても年率2%のインフレ目標には達していない(図8を参照)。安倍政権はデフレ脱却どころか景気後退局面で消費税10%への増税を強行してしまったのだ。

 金融緩和を行えば日本はデフレ脱却できると主張していた高橋氏は、自身の間違いについて謝罪すべきではないだろうか。

f:id:anti-tax-increase:20200116064859p:plain

 

 

減税研究会の講師に高橋氏を呼んだのは間違いだった

 更に、今年1月8日に発表された2019年11月の実質賃金は「現金給与総額」が前年比マイナス0.9%、「きまって支給する給与」が前年比マイナス0.5%だった。10月から始まった幼児教育無償化の影響で教育費の物価が下がり、消費税を8%に増税した2014年4月の「きまって支給する給与」が前年比マイナス4.1%には及ばなかったものの、これで消費税増税による実質賃金の低下が安倍政権で2回も繰り返されたことになる。図9では2011年11月から2019年11月までの「きまって支給する給与」の推移を示した。

f:id:anti-tax-increase:20200116065938p:plain

 

 しかし、実質賃金の低下について「就業者数が増えたことによる成果」だと言ってはばからないのが高橋洋一氏だ。彼は2019年1月に発覚した毎月勤労統計調査の不正問題でも「人手不足がさらに進み、経済成長が本格化するときに実質賃金が上昇するから問題ない」と的外れな言い訳に終始していた。

 だが、実際に「就業者数と実質賃金指数の推移」を見ると消費税が3%だった1990~96年は就業者数も実質賃金も上昇していたのに対し、5%に増税された1997年から共に下落が始まり、8%増税後の2014年以降は「就業者数が増加したにも関わらず実質賃金が減少する」という状況が発生している(図10を参照)。実質賃金が低下したのは消費税増税が原因であって、高橋氏のような「実質賃金の低下は問題ない」と擁護する経済評論家は全員、増税賛成派だと断定しても構わないだろう。

f:id:anti-tax-increase:20200116071349p:plain

 

 2019年11月28日、れいわ新選組山本太郎代表と野党統一会派に参加する馬淵澄夫議員が開催する「消費税減税研究会」の講師に高橋洋一氏が招かれた。これに対して、立憲民主党の石垣のり子議員が「レイシズムファシズムに加担するような人物を講師に呼ぶ研究会には参加できません」と厳しく批判したことが物議を醸している。

 石垣氏も「なぜ高橋洋一ファシズムなのか?」という説明が足りなかったが、残念ながら彼はそう批判されても仕方ない発言を繰り返しているのが現実だ。その代表的なのは2019年7月の京都アニメーション放火殺人事件について「韓国では全く報道されていない」とデマを流していたことである。

 

 実際にはKBSや朝鮮日報が事件を報道していたのはもちろんのこと、駐日韓国大使館・韓国文化院もツイッターで「京都アニメーションスタジオ防火事件(原文ママ)により、多くの人命被害が発生したことに対し、謹んでお見舞いの言葉を申し上げます」と哀悼の意を示しており、30人以上もの死者を出した事件で韓国批判に終始していた高橋氏は言論人として非常に恥ずかしいように思う。

 私は今まで何冊も高橋氏の著書を読んでいるが、第二次安倍政権が発足する2012年以前は財政破綻論を否定したり消費税増税を批判したりする主張が中心で、日韓問題についてはほとんど言及していなかった。彼が安倍政権になってから韓国批判を始めたのは、消費税増税による景気悪化から目を逸らす目的もあるのではないだろうか。

 

 また、前述の通り現在の高橋氏は消費税増税を容認していて、いくら専門性があるとは言っても消費税の廃止を目指す山本太郎氏の「減税研究会」には相応しくない人物だったと思う。

 立憲民主党は2019年10月25日に他党や他会派が主催する勉強会へ参加する際に党の許可を取ることを通達し、山本氏が立ち上げた「減税研究会」への参加を抑制したが、消費税増税を容認する高橋洋一氏を講師に呼んだことでますます野党議員が「減税研究会」に参加しづらくなってしまったのではないだろうか。私はれいわ新選組を支持しているが、今回に限って山本太郎氏の判断は間違っていたように感じる。

 財政破綻論を煽って消費税増税を推進する財務省も許せないが、それ以上に安倍政権の増税を容認する経済評論家も罪深いだろう。

 

 

<参考資料>

高橋洋一財務省が隠す650兆円の国民資産』(講談社、2011年)

     『数字・データ・統計的に正しい日本の針路』(講談社、2016年)

     『これが世界と日本経済の真実だ』(悟空出版、2016年)

     『米中貿易戦争で日本は果実を得る』(悟空出版、2018年)

     『この数字がわかるだけで日本の未来が読める』(KADOKAWA、2019年)

 

人口動態調査 e-Stat 政府統計の総合窓口

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450011&tstat=000001028897

労働力調査 長期時系列データ

https://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.html

日本の消費税、2030年までに15%に IMFが報告書

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52565870V21C19A1EA1000/

国民経済計算 2019年7-9月期 2次速報値

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2019/qe193_2/gdemenuja.html

マネタリーベース : 日本銀行 Bank of Japan

https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mb/index.htm/

消費者物価指数 時系列データ

https://www.stat.go.jp/data/cpi/historic.html

毎月勤労統計調査 令和元年11月分結果速報

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r01/0111p/0111p.html

実質賃金があぶりだす「アベノミクスの正しさ」

https://www.j-cast.com/2019/02/14350345.html?p=all

立民・石垣氏が山本太郎氏の減税研究会を欠席

https://www.sankei.com/politics/news/191128/plt1911280035-n1.html

高橋洋一京アニ放火事件を韓国ヘイトデマに利用した

http://datsuaikokukarutonosusume.blog.jp/archives/1075271035.html