消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

消費税増税後の景気悪化から逃げ続ける安倍政権

就業者数ではなく消費税増税の影響で下落する実質賃金

 賃金や労働時間を調べる厚労省の「毎月勤労統計調査」で、統計法に反する不適切な調査が長年行われていたことが今年1月に発覚した。2018年1月に調査対象となる企業群のサンプルを半数近く入れ替え、同年6月には名目賃金の伸び率が前年同月比で3.3%増加と1997年1月以来の高い水準にのぼっていたことが報道された。

 しかし、名目賃金から物価の変動を除いた実質賃金は2014年に消費税増税の影響で「現金給与総額」が前年比マイナス2.8%、「きまって支給する給与」が前年比マイナス3.2%となっており、その後も低迷した状態が続いている。

 

 経済学者のミルトン・フリードマンは消費と所得の関係について、「消費者の消費は恒常的だと考える所得に比例する」と主張している。例えば、農家に代表される「所得が不安定な人々」は預金や保険を増やさざるを得ない。つまり、所得から消費に回す割合を減らすため消費性向が下がる。

 逆に、公務員に代表されるように安定的な所得を「恒常的」に得られることが確定しているならば消費性向は上昇する。恒常的な所得を拡大することこそが、国内における「消費」という需要を最大化する道なのだ。毎月勤労統計調査では「現金給与総額」と「きまって支給する給与」をそれぞれ公表しているが、実質賃金の「きまって支給する給与」がフリードマンの言う「恒常的な所得」に最も近いだろう。

 

 2011年2月から2019年2月までの「きまって支給する給与」の推移を見ると、消費税を8%に増税した2014年4月から大幅に下落したことがわかる(図72を参照)。

 実質賃金は「生産の量」に大きく左右され、例えば販売数が1年で10個から9個へと減った場合に実質賃金は前年比10%落ち込んでしまう。消費税増税で家計消費が減少したことが実質賃金下落の原因なのである。

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 それでも、高橋洋一氏など安倍政権下の消費税増税を容認する経済学者は実質賃金の下落について「就業者数が増えたことによる成果」だと強弁し、政治ブログなどを見ていても「給料の安い労働者を解雇してデフレにすれば実質賃金は上がる」などとデタラメなことを書いている人が多い。

 だが、図73の「就業者数と実質賃金指数の推移」を見ると消費税が3%だった1990~96年は就業者数も実質賃金も上昇していたのに対し、5%に増税された1997年から共に下落が始まり、8%増税後の2014年以降は「就業者数が増加したにも関わらず実質賃金が減少する」という状況が発生している。

 消費税を3~5%に減税すれば就業者数が増加しても実質賃金は上昇するし、逆に消費税を10%に増税すれば更に実質賃金が下落して国民が貧困化してしまうだろう。

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緊縮財政を隠すためにかさ上げされた名目GDP

 安倍政権は「毎月勤労統計調査」の改ざんだけでなく、国民経済計算の名目GDPも大幅にかさ上げしている。内閣府は2016年12月にGDPの算出方法を変更し、研究開発費などを加えて1994年以降のGDPを旧基準の「平成17年基準」から新基準の「平成23年基準」に改定して公表した。

 しかし、実際の名目GDPを見てみると1994年は平成17年基準が495.7兆円、平成23年基準が501.5兆円とたったの5.8兆円しか増加していないのに対して、2015年は平成17年基準が499.3兆円、平成23年基準が531.3兆円と実に32.0兆円もかさ上げされているのだ。1994年と2015年でこれだけ差があるのは算出方法を変更した際に、研究開発費とは関係ない「その他」の部分を大幅に加算したからだと言われている。1994年なら「その他」の部分はマイナス7.8兆円だったのに対し、2015年は逆にプラス7.5兆円も増えてしまった。

 

 平成23年基準の名目GDPは2018年で548.9兆円と、1997年の534.1兆円を超えていて過去最高を更新しているが、平成17年基準では最後に公表された2015年の名目GDPが499.3兆円だったので、これに平成23年基準の名目GDP成長率(2016年の0.9%、2017年の1.7%、2018年の0.7%)を掛けると2018年の名目GDPは515.9兆円程度にしかならず、まだ1997年の523.2兆円を超えていない(図74を参照)。

 「アベノミクスが成果を上げて、名目GDPが過去最高になった」と自画自賛する安倍首相の発言は全くの嘘なのである。

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 更に、かさ上げされた平成23年基準でも安倍政権が始まった2013年1-3月期から2018年10-12月期までの年率換算の名目GDP成長率を見ると、安倍政権前期に当たる2013~14年の成長率は年率平均2.44%、安倍政権中期に当たる2015~16年の成長率は年率平均1.94%、安倍政権後期に当たる2017~18年の成長率は年率平均1.21%と、政権後半になるほど成長率が下落してデフレ不況に逆戻りしていることがわかる(図75を参照)。

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 名目GDP成長率が下落したのは消費税増税による景気悪化に加え、政府の公共投資(公的固定資本形成)を削減したことも原因だと思われる。安倍政権は当初「機動的な財政政策」として公共事業の大盤振る舞いを宣言していたが、実際に公的固定資本形成(実質値)が増加していたのは2012年10-12月期の24.1兆円から2013年10-12月期の27.1兆円までの最初の1年だけであって、その後は2018年10-12月期の24.5兆円へと減少している。

 安倍首相がアベノミクス自画自賛すればするほど増税後の景気対策は遅れ、財政も緊縮的になってきているのが現実のようだ。「日銀が金融緩和だけしていればデフレを脱却できる」という勘違いはやめて、消費税引き下げと財政出動に踏み切るべきではないだろうか。

 

 

本当に「悪夢のような時代」なのは2014年4月以降

 また、安倍首相は2月10日の自民党大会で、2007年の参院選での敗北に触れる中で「悪夢のような民主党政権が誕生した。あの時代に戻すわけにはいかない」と演説した。

 ツイッターなどを見ていると民主党政権の時代を不当に貶めるのが自民党ネットサポーターズクラブ(J-NSC)の常套手段なので安倍首相は熱狂的な支持者に向けたリップサービスとして上記の発言をしたのだろうが、民主党政権の時代は消費税がまだ5%で今より家計消費の伸びが良かったから中小企業の景況感も回復していたのが現実なのだ。

 

 実際に、2011年3月の東日本大震災から数ヵ月経った仙台ではブランド品のルイ・ヴィトンや高級車のメルセデス・ベンツが急に売れ始めたことが報告されている。あれだけ大規模な災害が起こると生命保険会社や損害保険会社は世間からの批判を恐れて、本来なら地震保険に加入していなければ免責される事案でも申請を受け付け、その審査が下りて多額の保険金が支払われたタイミングで高級品が売れたのだという。

 民主党政権の時代も決して好景気だったとは言えないが、消費税が今より安かったことでリーマンショック東日本大震災からの回復が早かった側面も存在するのではないだろうか。

 

 家計最終消費支出を見ても2008年10-12月期の272.7兆円から2013年10-12月期の292.7兆円まで5年間で20.0兆円も増加していたのに対して、2018年10-12月期には292.8兆円へと5年間でたったの0.1兆円しか増えていない。中小企業の景況感を表す「中小企業DI」も2008年10-12月期のマイナス42.0から2013年10-12月期のマイナス13.8まで回復していたが、その後は横ばいに推移していて2018年10-12月期もマイナス13.8と変わらない(図76を参照)。消費税増税から5年が経っても未だに2014年1-3月期のマイナス11.1を上回った時期がないのだ。

 総務省が公表している家計消費水準の実質的な向上分を示す「消費水準指数」も東日本大震災後の2011年4月から2014年3月まで回復していたが、2014年4月以降は消費税増税の影響で大幅に下落してしまった(図77を参照)。

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 この間、日本の総人口が減少して介護の人手不足が深刻化したことにより、完全失業率が2011年4月の4.7%から2018年12月の2.4%まで改善するという好条件にも関わらず、増税後に消費がこれだけ落ち込んでしまったのだ。

 安倍政権が統計データを改ざんしたり、旧民主党へのネガティブキャンペーンを煽ったりするのも結局のところ「消費税増税による景気悪化」から目を逸らすためである。本当に「悪夢のような時代」なのは民主党政権ではなく2014年4月以降で、消費税増税がいかに日本経済を苦しめているのかわかるだろう。

 

 

<参考資料>

吉田啓志「発覚した厚労省『毎月勤労統計』の『偽装』は『政権への忖度』の声も 『アベノミクスは失敗』の評価恐れるか」 『週刊金曜日』(金曜日、2019年1月25日)

三橋貴明 『日本「新」社会主義宣言 「構造改革」をやめれば再び高度経済成長がもたらされる』(徳間書店、2016年)

明石順平 『アベノミクスによろしく』(集英社インターナショナル、2017年)

和田秀樹 『経営者の大罪 なぜ日本経済が活性化しないのか』(祥伝社、2012年)

 

厚労省、統計発表見直しへ 賃金上昇率過大「補整はせず」

https://www.nishinippon.co.jp/nnp/politics/article/453411/

6月の名目賃金確報値3.3%増、速報値から縮小 毎月勤労統計

https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL22H74_S8A820C1000000/

毎月勤労統計調査(全国調査・地方調査):結果の概要

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/30-1a.html

増税サポーター 安倍晋三

https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12442619730.html

労働力調査 長期時系列データ

https://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.html

国民経済計算 2016年7-9月期 1次速報値(平成17年基準)

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2016/qe163/gdemenuja.html

国民経済計算 2018年10-12月期 2次速報値(平成23年基準)

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2018/qe184_2/gdemenuja.html

『悪夢のような民主党政権』発言からにじみ出た『バラ色の自民党』意識

https://bunshun.jp/articles/-/10861

中小企業景況調査報告書 結果の概要

https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/keikyo/index.htm

家計調査(家計収支編) 過去に作成していた結果表

https://www.stat.go.jp/data/kakei/longtime/index2.html#level