消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

「法人税と所得税は景気に左右されやすい」という嘘

企業収益や富裕層人口はバブル崩壊後も増加している

 2019年10月1日に消費税が10%へと引き上げられるまで残り1年を切ってしまった。安倍首相は10月15日の臨時閣議で、来年の消費税増税に備えて景気の落ち込みを防ぐ経済対策の策定や軽減税率の準備を進めるよう指示している。

 増税賛成派が言う消費税引き上げのメリットの一つとして、「法人税収や所得税収は景気に左右されやすいが、消費税収は経済状況に関係なく安定した財源」というものがある。確かに、財務省の一般会計税収の推移を見ると、法人税収は1989年度の19.0兆円、所得税収は1991年度の26.7兆円とバブル期にピークを迎えてその後は減少し、2017年度の法人税収が11.7兆円、所得税収が18.6兆円になっている。

 

 だが、法人企業統計と民間給与実態統計調査によれば、企業の経常利益は1989年度の38.9兆円から2017年度の83.6兆円まで約2.1倍も増加し、年収2000万円以上の富裕層は1991年の13.8万人から2017年の25.5万人まで約1.8倍も増加している。つまり、法人税収や所得税収が減少する一方で、企業収益や富裕層人口はバブル崩壊後も増え続け過去最高を更新しているのだ(図67~68を参照)。

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 1989年当時、法人税の基本税率は40%だったが2018年には23.2%まで引き下げられ、所得税も1991年当時は課税所得が2000万円を超えれば50%の最高税率が適用されたが、2015年以降は課税所得が4000万円以上でやっと45%の最高税率が適用されるまでに変化してきた。

 仮に、税率を当時の状態に戻せば2017年度の法人税収は最大で40.8兆円、所得税収は最大で49.3兆円にのぼっていたことが予想され、消費税を引き下げても社会保障費を捻出するのが可能になるだろう。

 

 経団連などは「法人税増税すると日本から企業が逃げ出す」と言うが、海外に進出する企業の多くは安価な労働力の確保を求めているのが実情で、経産省の海外事業活動基本調査(2016年度)でも、海外進出を決定した際のポイントについて企業に3つまでの複数回答で聞いたところ、法人税が安いなどの「税制、融資等の優遇措置がある」を選択した企業は7.5%と一割にも満たなかった。

 

 もし、企業の国外流出を防ぎたいのであれば、法人税減税よりも海外に進出する企業に対して課税を行うべきである。経産省の調査では、海外に拠点を置いて活動する企業の数を表した現地法人企業数が1989年度の6362社から2016年度の24959社まで約3.9倍も増加していて、法人税の高い時代のほうが企業は国内で仕事をしていたのだ。

 海外では米国のトランプ政権が連邦法人税率を35%から21%に引き下げる一方で、日本や中国など海外からの輸入品の関税を引き上げて税収を増やそうとしている。トランプ氏は政治家として問題の多い人物だが貿易の保護主義を推進し、法人税減税の財源を消費税の導入に頼らなかったことは高く評価すべきだろう。

 

 所得税については2015年に最高税率が40%から45%に引き上げられたが、これについても経団連は「富裕層の海外流出を招いて日本経済の活力が失われる」と批判している。しかし、ワールド・ウェルス・レポートによれば日本で100万ドル(約1億1000万円)以上の投資可能な資産を保有する人は2014年の245.2万人から2017年の316.2万人まで約71万人も増加しており、所得税増税しても富裕層が海外に逃げるという事態は発生していないのだ。

 むしろ、所得税最高税率を引き上げると企業経営者たちの中には「どうせ税金で取られるなら自分が高額の報酬を受けるより、社員に還元したほうがマシだ」と考え、従業員の給料も上昇しやすくなって経済的なメリットが大きいのである。

 

 

日本が経済成長しないのは緊縮財政を続けているから

 また、法人税所得税が景気に左右されやすいなら、単純に財政出動などの景気対策で経済成長を促せば良いだろうが、こう主張すると必ず「日本は総人口が減少しているからもう経済成長できない」と反論してくる者がいる。

 例えば、元財務大臣藤井裕久氏は月刊日本2018年8月号の中で「アベノミクスの理論はいろいろな点で間違っていると思いますが、最大の間違いは高成長主義です。基本的に人口が減少する日本で経済成長することはありません」と述べ、京都大学名誉教授の橘木俊詔氏も『貧困大国ニッポンの課題』という著書の中で「少子化が進んで労働力が減少する日本では、かつてのような高度成長の再来を望むことは不可能だろう」と述べている。

 こうした「経済成長否定論」は消費税を10%に増税した後に景気が悪化することで、ますます説得力を増してしまうかもしれない。

 

 だが、国の総人口が減っているのは日本だけでなく、ロシアでも1994~2018年の間に445万人減少し、東欧のジョージア(旧グルジア)でも1994~2018年の間に122万人減少している。この間、日本では131万人増加と人口が横ばいになっており、ロシアとジョージアの人口減少のほうが深刻だということがわかる。

 しかし、名目GDPの推移を見るとロシアが24年間で149.9倍、ジョージアが24年間で45.7倍も伸びていて、日本の1.1倍と比較しても圧倒的に経済成長しているのだ(図69を参照)。

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 特に、ロシアはソ連が崩壊した90年代以降ずっとインフレが続いていて、リーマンショック翌年の2009年には名目GDP成長率がマイナス6.0%とアメリカのマイナス2.0%より悪化していたものの、2010年には19.3%、2011年には20.9%と高い状態に回復している。アメリカやカナダでも1994~2018年の間に名目GDPが2.8倍も増加しており、「先進国や人口が減少している国では経済成長できない」という藤井氏や橘木氏の主張がいかに間違っているのかがわかるだろう。

 

 バブル崩壊以降の日本が経済成長していないのは、消費税を増税して政府の公共投資を削減するという緊縮財政が続けられているからである。

 国民経済計算によれば、個人消費の額を表した民間最終消費支出(名目値)は物品税や消費税3%だった1977~1997年の20年間では約2.86倍(平成2年基準)も増加したのに対し、消費税を5%や8%に増税した1997~2017年の20年間では約1.06倍(平成23年基準)しか増加していない。更に、政府が行う社会資本整備などの投資の額を表した公的固定資本形成(平成23年基準、名目値)も阪神・淡路大震災による復興需要が高まった1995年の45.8兆円から2017年の27.7兆円まで約6割程度に削減されている。

 

 中京大学名誉教授の水谷研治氏は1997年12月号の文藝春秋で「財政赤字を削減するために国民一人ひとりが国の将来のために犠牲になる覚悟を持たなければならない」と発言していたが、実際に経済成長を否定して財政再建に邁進し、国民を貧困化させてきたのがこの20年間の日本政府だったと言えるだろう。

 安倍首相は「2019年10月から消費税を10%に引き上げる代わりに幼児教育の無償化も進める」と言っているが、『オウム真理教よりも統一教会のほうが悪質な宗教である』でも指摘した通り消費税導入後のデフレ不況こそが少子高齢化の原因であって、今やるべき政策は「経済成長が人々の心を豊かにする」という90年代以降の日本から失われた哲学を取り戻し、消費税引き下げと財政出動によって子育て世代(20~40代)の所得を高めることではないだろうか。

 

 

<参考資料>

消費税率、来年10月に10% 首相「経済対策に全力」

https://www.asahi.com/articles/ASLBH5X33LBHUTFK010.html

なぜ所得税法人税ではなく、消費税の引上げを行うのでしょうか?

https://www.mof.go.jp/faq/seimu/04.htm

一般会計税収の推移

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/010.pdf

年次別法人企業統計調査 -平成29年度-

https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/results/h29.pdf

平成29年分 民間給与実態統計調査

https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2017/pdf/001.pdf

第47回海外事業活動基本調査結果

http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kaigaizi/result/h28data.html

米減税法案が議会通過 法人税21%、下院も再可決

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24894440R21C17A2000000/

World Wealth Report  Compare the data on a global scale

https://www.worldwealthreport.com/hnwi-market-expands

ロシアのGDPの推移

http://ecodb.net/country/RU/imf_gdp.html

ジョージアGDPの推移

http://ecodb.net/country/GE/imf_gdp.html