消費税増税に反対するブログ

消費税の財源の8割以上が法人税減税に消えている!消費税10%への引き上げを中止しよう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

安倍首相は左翼グローバリストである

愛国者を装って安倍首相を徹底的に甘やかす自称保守派

 6月10日、米山前知事の辞職に伴い実施された新潟県知事選で自民・公明両党が支援した花角英世氏が当選した。これにより、森友・加計問題の影響で内閣支持率が下げ止まっていた安倍政権がまた調子に乗るのは間違いないだろう。

 

 私が最も許せないのは、雑誌『正論』『WiLL』『Hanada』『ジャパニズム』のような愛国者を装って安倍首相を徹底的に甘やかす自称保守派の存在である。

 例えば、2018年6月号の『正論』を読んでいても日本会議会長の田久保忠衛氏が外交問題に目を逸らして「こんなことで憲法改正を潰してはならない」と無条件に安倍政権を持てはやし、自民党議員の山田賢司氏が野党に対して「安倍政権さえ倒すことができればいいの一点張りだ」とレッテルを貼っている。

 彼らは国有財産売り払いの決裁文書改ざんという前代未聞の事件を放置してでも、未だに「安倍さんが日本を取り戻してくれる」「安倍さんなら何をやっても構わない」という幻想を捨てないようだ。自称保守派は日本の国益を守りたいのではなく、ただ安倍晋三を守りたいだけなのだろうか?

 

 また、インターネット上に幅広く存在する安倍信者の被害妄想も酷い。

 連中はよく「朝日新聞などのメディアが偏向報道をして、安倍さんを首相から引きずり降ろそうとしている」と言うが、実際のところマスコミの問題に詳しくない自分でも2017年の衆院選で野党が消費税増税の凍結を掲げていたのに対し、「財政再建はどうするんだ?」と脅して自民党への支持を煽る報道が多かったように感じる。

 マスコミが野党を潰しにかかった背景はもともと消費税増税の反対意見を意図的に黙殺していることに加え、前回(2014年)の衆院選自民党萩生田光一氏が在京テレビ各社に「公平中立な報道姿勢にご留意いただきたくお願い申し上げます」と釘を刺していたことが大きいだろう。

 

 仮に自称保守派や安倍信者が政権を擁護するなら「森友・加計問題で国民に謝罪し、消費税を5%に戻すことで責任を取れ」と言うべきだ。しかし、残念ながら自民党を支持する経済学者の多くが安倍政権になってから増税容認に変節してしまったように思う。その代表的存在とも言えるのが2018年4月から岡山理科大学加計学園)の客員教授に就任した上念司氏である。

 彼は民主党政権の時代まで「次に消費税を上げれば、1997年以降に襲った不況より三段階も四段階も上のすごい不況が襲いかかってくるかもしれない」(『復興増税亡国論』 P.160)と増税を厳しく批判していたが、2015年2月の『ジャパニズム23』に寄稿した論文では、消費税引き上げによって景気が悪化している現実を無視して「アベノミクスの恩恵にあずかれないと文句を言っている人は『賃金が上がっていない』と主張して、単に迎合するだけで何の理論的裏付けもない評論家のカモになるのが運命」とこき下ろし、2013~14年に円安倒産が増加したことについては「アベノミクスに対する本気度を疑っていたから倒産しただけの話」と企業側に責任を押し付け、最後には「景気回復は我々の目前に迫っている!」と期待を煽っていた。

 

 だが、実際に名目GDP成長率(平成23年基準)は安倍政権前半の2012年10-12月期~2015年4-6月期では年率平均2.92%にのぼっていたのに対し、安倍政権後半の2015年7-9月期~2018年1-3月期では年率平均1.13%まで下落してしまった。

 民間最終消費支出もリーマンショックから安倍政権初期にかけての4年半(2009年1-3月期~2013年7-9月期)では23.6兆円増加していた一方で、その後の4年半(2013年7-9月期~2018年1-3月期)では逆に0.9兆円も減少している(図63を参照)。

 安倍政権の中で本当に景気が回復していたのは最初の1年だけであって、消費税増税の影響が表れ始める政権後半にはどんどん名目GDP成長率と個人消費が落ち込んで尻すぼみになっているのが現実だろう。

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安倍首相の熱烈な支持者こそ「反日左翼」を名乗るべき

 安倍政権になってから在留外国人と外国人労働者の数が急増している。在留外国人は麻生政権から民主党政権にかけての2008~12年に221.7万人から203.4万人まで18.3万人減少していたのに対し、最新の2017年末のデータでは256.2万人と安倍政権の5年間だけで52.8万人も増加していることがわかるだろう(図64を参照)。

 また、外国人労働者民主党政権時代の2009~12年では56.3万人から68.2万人まで年平均3.97万人程度の増加に留まっていたのに対し、安倍政権では2017年の127.9万人へと年平均11.94万人も増えており、明らかに増加のペースが速くなっているのだ。

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 在留外国人と外国人労働者がここまで増えたのは当然政府が受け入れを推進しているからで、安倍政権は介護など技能実習制度の適用範囲拡大や国家戦略特区における外国人家事支援人材の解禁など様々な形の移民政策を進めている。

 今年5月30日には政府が5年間を上限に日本国内で就労できる新たな在留資格を設ける方針を決め、2019年春の導入に向けて今秋の臨時国会にも入管難民法改正案を提出する予定だという。

 それに対し、野党では特に日本共産党が「外国人技能実習制度」や「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案」に強く反対している。今の日本の政治では、保守とリベラルの立場が逆転しているようだ。

 

 更に、訪日外国人も近年急増していて、特に2012~17年で中国人観光客が593.1万人、韓国人観光客が509.7万人も増えている(図65を参照)。外国人観光客の増加は一見良いことのように感じるが、1997~2017年の20年間で訪日外国人は421.8万人から2869.1万人まで6.80倍も増えた一方で、出国日本人は1680.3万人から1788.9万人まで1.06倍とほぼ横ばいになっている。

 つまり、長引くデフレ不況による日本人の旅行離れを尻目に、政府は外国人観光客を呼び込んで日本国内の消費を回復させようと必死になっているのだ。

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 その上、安倍首相は海外のスピーチで「もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」「国を開くことが私の中に流れる一貫した哲学でした」「一定の条件を満たせば、世界最速級のスピードで永住権を獲得することができる国になる」と保守とは思えない地球市民的な発言を繰り返している。

 自民党議員の赤池誠章氏は「友達に国境はない!」という子供向けアニメのキャッチフレーズに対して、「国家意識なき教育行政を執行させられたら、日本という国家はなくなってしまう」「私なら『国境があっても、友達でいよう』と名付けたいところ」と揚げ足を取っているが、そんなに国家を重視するなら前述の安倍首相の発言を批判しろよと言いたくなるのは私だけだろうか?

 高須クリニック院長の高須克弥氏も、「マスコミが安倍首相に批判的な報道をするときは最初に反日を宣言しろ」などと意味不明な発言をしているが、高須氏のような安倍政権の熱狂的な支持者こそ「反日左翼」を名乗って国境や国籍を否定する安倍を崇めるべきだろう。

 

 

<参考資料>

菅野完 「バカとの戦い」 『月刊日本』(ケイアンドケイプレス、2018年5月号)

望月衣塑子 「メディアは権力に屈するな」(同上)

田久保忠衛 「こんなことで憲法改正を潰してはならない」 『正論』(日本工業新聞社、2018年6月号)

義家弘介山田賢司 「中国人の『愛国無罪』を笑えない 『反アベ無罪』の日本人たち」(同上)

上念司 「『アベノミクスによる景気回復』の実情」 『ジャパニズム23』(青林堂、2015年2月)

適菜収 『安倍でもわかる保守思想入門』(ベストセラーズ、2017年)

 

自民党、在京キー局に「圧力文書」――アベノミクス酷評に激怒?

http://www.alterna.co.jp/14103

国民経済計算 2018年1-3月期 2次速報値

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2018/qe181_2/gdemenuja.html

図録▽外国人数の推移(国籍別)

http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1180.html

図録▽外国人労働者数の推移

http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/3820.html

三橋貴明】移民受入政策の本命がやって来る

https://38news.jp/economy/11756

新たな在留資格 技能実習後、5年就労可 政府、来春創設へ 労働力確保狙う

https://mainichi.jp/articles/20180530/ddm/002/010/112000c

移民に反対したのは「共産党だけ」という惨状

http://pagent.seesaa.net/article/402126207.html

統計データ(訪日外国人・出国日本人)

https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/visitor_trends/

「友達に国境はな~い」を批判した赤池誠章

http://datsuaikokukarutonosusume.blog.jp/archives/1070566453.html

高須院長がマスコミに注文「先に反日ですと宣言して」

https://www.news-postseven.com/archives/20180324_661859.html?PAGE=2

経済成長が人々の心を豊かにしている

名目GDPが増加して殺人件数が減った戦後日本

 昔から言われている通説に、「物質的な豊かさを追求すると人々の心が貧しくなる」というものがある。

 例えば、安倍首相は著書『美しい国へ』(文藝春秋、2006年)の中で、「戦後の日本は経済を優先させることで、物質的に大きなものを得たが精神的には失ったものも大きかったのではないか」「自主憲法を制定しなかったことで損得が価値判断の重要な基準となり、家族の絆や生まれ育った地域への愛着、国に対する想いが軽視されるようになってしまった」と述べている。

 

 しかし、実際のところ『消費税増税が少子高齢化を加速させる』でも指摘したように、日本人の国民性調査で「一番大切なものは家族」と答えた人の割合は1958年の12%から2013年の44%まで増加していて、家族の絆はむしろ深まっているのだ。

 また、社会意識に関する世論調査で「国を愛する気持ちの程度が他の人と比べて強い」と回答した割合は1977~2018年にかけて、ずっと40~50%台を維持していて現代の日本人が愛国心を軽視しているとは言い難い状況である。最近でも、人気フォークデュオ・ゆずの新曲『ガイコクジンノトモダチ』の歌詞内容が「愛国的」だとネット右翼から高い評価を受けたばかりだ。

 

 更に、戦後の殺人件数の推移を見ても1955年の2119人をピークに2015年の314人まで減少している。この間、名目GDP総額は1955年の8.3兆円(平成2年基準)から2015年の499.3兆円(平成17年基準)へと50倍以上も増加しており、経済成長は人々の心を豊かにしているというのが現実なのだ(図60を参照)。ちなみに、1998年以降に限れば名目GDP成長率が低迷したにも関わらず、奇跡的に殺人件数が減り続けている時代とも言える。

 最近では、「家族間殺人が増加している」という報道をよく目にするが、増えているのはあくまでも殺人事件全体に占める割合であって、未遂を含めた家族間殺人の件数は2008年の558件から2016年の440件まで減少しているのである。

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児童虐待増加の背景にある子育て世代の貧困化

 安倍首相と同様に憲法改正について極論を述べているのが日本会議と関わりが深い政治評論家の細川珠生氏だ。彼女は2016年3月にBLOGOSの記事で、90年代以降の児童虐待の増加について「憲法の行き過ぎた個人主義にその原因の一端がある」と現行憲法のせいにしているのである。

 しかし、児童虐待は戦前の大正時代や昭和初期から既に社会問題となっており、旧児童虐待防止法(1933年)が制定される3年前の1930年には内務省社会局が全国の被虐待児童について調査した結果を公表している。

 

 この調査によれば、昭和恐慌真っ只中の1929年に虐待を受けた児童(検挙された保護責任者の取り調べから判明した人数)は124人(14歳未満が74人、14~19歳が50人)で、曲馬や軽業など危険な諸芸に従事させられていた児童は392人(同170人、222人)、身体の障害などを見せ物にされていた児童は9人(同5人、4人)、芸者や酌婦など「特殊な業務」に従事させられていた児童は6607人(14歳未満のみ)、丁稚奉公など「報酬による養児」とされていた児童は5543人(14歳未満のみ)にものぼっている。

 戦後の日本をどうしても否定したい自称保守派は「今の児童虐待と内容が違う」「貧困社会の中でやむを得ない現象だった」などと言うだろうが、『経済を優先させることで精神的に失ったものも大きかった』という勘違いで、14歳未満の子供が働きに出ないといけないような貧しい時代の日本に戻したいのだろうか?

 

 また、厚労省が発表している「児童虐待相談対応件数の推移」を見ると、1992年度の1372件から2016年度の12万2578件まで増加しているが、この間、年収200万円以下で働く女性の数も550.8万人から833.9万人へと24年間で283.1万人増えている(図61を参照)。

 更に、男性の側も1997~2016年の19年間で子育て世代に当たる30代後半の平均年収が77.4万円、40代前半の平均年収が81.8万円減少しており、バブル崩壊後に女性の貧困が広がって夫が妻子を養える経済状況ではなくなったことが児童虐待増加の背景ではないだろうか。

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主要先進国で日本だけ賃金が上昇していない

 日本のデフレ不況が始まった元年と言われる1997年、中京大学名誉教授の水谷研治氏は同年12月号の文藝春秋で「日本の経済水準は異常に高い。財政赤字を削減するために消費税を20%まで増税して、国民一人ひとりが国の将来のために犠牲になる覚悟を持たなければならない」と緊縮財政を推進する記事を出した。

 実際に、当時の橋本政権は「財政赤字GDP比を毎年3%未満にする」「1998年度の公共投資について、1997年度当初予算における公共投資関係費の93%を上回らないようにする」という内容を盛り込んだ財政構造改革法を同年11月に成立させている。だがその後、日本経済は一体どうなっただろうか?

 

 図62を見ればわかる通りこの20年間、主要先進国の中で日本だけ労働者の賃金が上昇していない。カナダが1.32倍、イギリスが1.31倍、アメリカが1.28倍、フランスが1.24倍、ドイツが1.16倍も増加しているのに対し、日本は0.99倍とほぼ横ばいだ。

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 日本と他の先進国でこれだけ差がついたのは、やはり90年代後半以降の緊縮財政が原因ではないだろうか。欧米諸国ではこの20年間だけでも政府の公共投資を増やし続けた一方で、日本は公共事業削減の影響もあって0.47倍へと半減している(写真を参照)。

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 特に賃金の伸びが良いカナダでは1996~2010年に公共投資が3.27倍も増加したのに加え、付加価値税を2006~08年に7%から5%へと引き下げた。実際に、財政出動と消費税「減税」で国民所得が向上している国は存在するのだ。

 それに対し、日本では安倍政権が公共投資(公的固定資本形成、平成23年基準)を2013年10-12月期の27.1兆円から2017年10-12月期の26.2兆円まで削減し、森友・加計問題やデフレ逆戻りの影響で内閣支持率が30%を切っているにも関わらず、自民党内から「消費税10%への増税を中止しろ」という声すら上がってこない異常事態である。

 90年代のバブル崩壊以降に日本から失われたのは、家族の絆でも国に対する想いでもなく「経済成長が人々の心を豊かにする」という哲学ではないだろうか。

 

 

<参考資料>

大倉幸宏『「昔はよかった」と言うけれど 戦前のマナー・モラルから考える』(新評論、2013年)

水谷研治『大不況を覚悟せよ』(文芸春秋、1997年12月号)

 

社会意識に関する世論調査(平成30年2月調査)

https://survey.gov-online.go.jp/h29/h29-shakai/2-1.html

図録 他殺による死亡者数の推移

http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2776.html

家族間殺人は上昇しているのか

http://blog.livedoor.jp/kudan9/archives/42617386.html

憲法に「家族条項」の創設を 最大の問題は、日本人の思考だ

http://blogos.com/article/166557/

平成28年児童相談所での児童虐待相談対応件数<速報値>

http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000174478.pdf

日本を亡ぼした「財政構造改革法」

https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12297956794.html

Earnings and wages Average wages OECD Data

https://data.oecd.org/earnwage/average-wages.htm

公共投資水準の国際比較

https://www.sato-nobuaki.jp/report/2017/20170529-002.pdf

北海道と沖縄の消費税を0%に減税すべき

消費税は地方ほど滞納の割合が多い

 安倍政権が進める経済政策の一つに地方創生がある。地方創生とは、東京一極集中を是正して地方の人口減少に歯止めをかけ、日本全体の活力を上げることを目的にしている。

 2014年には、元岩手県知事の増田寛也氏が「何も対策を取らなければ、2040年までに全国896の自治体が消滅してしまう可能性がある」というレポートをまとめた『地方消滅―東京一極集中が招く人口急減』(中央公論新社)がベストセラーになった。

 その一方で、政府が進めている地方創生は必要なインフラ整備を放棄し、「各地方は自助努力せよ。成功しているところは地方交付税を厚くし、上手くいかないところは自己責任」と、各地方の競争を煽っているだけなのではないかという批判も存在する。

 

 しかし、国会でほとんど議論されないが私が注目しているのは、「地方ほど消費税を滞納する割合が高い」という問題だ。消費税は国税の中で最も滞納額が多く、2015年度には国税全体の新規発生滞納税額(6871億円)における64%が消費税の滞納額(4396億円)で占めている(図59を参照)。

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 また、各地域の国税局別に滞納額の割合(2015年度)を見ると、東京が2.06%なのに対し、金沢が2.67%、名古屋が2.92%、広島が3.05%、高松が3.43%、関東信越が3.92%、仙台が4.18%、熊本が4.40%、福岡が4.59%、沖縄が4.81%、札幌が4.84%と地方ほど割合が高くなることがわかるだろう(表10を参照)。

 消費税に滞納金が発生する理由については過去の記事で述べたため、詳しく知りたい方はご覧になっていただくとありがたいと思う。

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地方から消費税増税反対の声を上げていくべき

 だが、地方から「消費税増税反対」の声を上げるのはなかなか難しい部分が多い。例えば、毎年3月13日には中小企業や個人事業主が加盟する民主商工会が全国各地で「重税反対全国統一行動」を開催し、私の住んでいる群馬でも高崎市前橋市で行われる。

 ちょうど今年の3月13日は仕事が休みだったので、私も地元の集会に参加したいと思ったのだが、家族から「会社に迷惑が掛かるから止めてくれ」と言われ、わざわざ新宿まで行って全国統一行動に参加した。家族がどうしても反対するのを見て、今の時代にも人口の少ない田舎には「村八分」の文化が根強く残っているのだなと痛感した。

 

 更に、問題なのは群馬県国会議員に中途半端な人物が多いことである。2014年の第二次安倍改造内閣で入閣した小渕優子氏は政治資金の不祥事以降、衆院選で当選しながらも「過去の人」になりつつあるし、参議院山本一太氏はブログで「安倍戦後最長政権の実現こそ日本の最大の国益」とまで述べている。

 山本氏は過去に「財政再建は消費税引き上げによる増収ではなく、経済成長による増収によって行うべき」と発言しているが、自分が総理大臣になって増税を中止しようとする気概すら持たずに、憲政史上初めて2段階も消費税を引き上げるかもしれない安倍首相を狂信的に支持する姿は情けなく思う。野党でも2017年の衆院選立憲民主党から堀越啓仁氏と長谷川嘉一氏が当選し、共に消費税増税を批判しているがまだ安倍政権を脅かす存在だとは言えない。

 

 よく「地方には仕事や魅力がないから人口流出が止まらない」と言われるが、消費税増税に反対する活動を行っている私にとって群馬県の最大の弱点は、現職の国会議員で有名な人物が少なく政治的なバリエーションが狭すぎる点だ。

 2016年のアメリカ大統領選でトランプ氏が当選したのは、伝統的に共和党を支持している宗教右派だけでなく、ラストベルトと呼ばれる脱工業化が進んだアメリカ北東部の労働者が自由貿易協定であるTPPへの参加に反発し、アメリカ産業の発展を掲げたトランプ氏を支持したからだと言われる。

 

 それに対し、日本では消費税増税自由貿易協定、公共事業の削減など地方に不利な政策を進めている自民党が皮肉にも「地方」によって支持されるという構図が長らく続いている。かつて1970年代に首相だった田中角栄氏は「日本全国に新幹線や高速道路を建設して、都市と農村、太平洋側と日本海側の格差をなくすこと」を宣言していたが、地方の人々が今でも当時の自民党と同じく公共事業によって地方の発展を支えてくれると思っているのなら、それは単なる幻想に過ぎないだろう。

 東京では、2017年の都議選の結果を見てもわかる通りそれほど自民党が強いというわけでもない。本来であれば、消費税を滞納する割合が多い一方で自民党が強い地方から増税反対の声を上げていくべきではないだろうか。

 

 

地方の消費税を0%にして経済効果を生み出そう

 前述の増田寛也氏の著書には、2040年に20~39歳の女性が50%以上減少する市区町村の地図が掲載されている(写真を参照)。この地図を見ると、特に北海道における若年女性の人口流出が深刻だ。地方から大都市圏への人口流出は、将来子どもを産む若年層という「人口再生産力」そのものを大幅に減少させ、地域の出生数に甚大な影響を与えているようである。

 ちなみに、沖縄で近年人口が増加しているのは中国人やベトナム人の出稼ぎの影響で、出生率の高さや国内からの移住者が主な理由ではない。

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 また、北海道と沖縄は東京などの都市部よりも経済的なハンデが大きいという問題がある。雇用者に占める非正規雇用の割合(2012年)は東京が32.7%なのに対し、北海道は40.2%、沖縄は43.0%だ。特に、沖縄の15~24歳の女性に限れば、非正規雇用の割合は73.4%と約四人のうち三人が正社員になれない現実がある。

 沖縄の子どもの貧困率が37.5%と全国で突出して高い数字なのも、こうした若年女性の不安定な雇用が背景として存在するのではないだろうか。

 

 更に、沖縄は全国の米軍専用基地のうち74%を負担してもらっているが、「沖縄の経済は米軍基地に依存している」というのも事実ではなく、県民総所得に占める基地関連収入の割合はアメリカ統治下だった1965年の30.4%から2014年の5.7%まで低下している。

 それでも、米軍基地建設に賛成している自称保守派やネット右翼は「県民総所得の5%を基地関連収入に依存しているじゃないか」と言うかもしれないが、ならば若年女性の人口流出が深刻な北海道と、米軍基地を負担してもらっている沖縄の消費税を0%にしたらどうだろうか。

 

 都道府県別に県外から宿泊目的で来た観光客の年間消費額(2013年)を見ると、北海道が2719.5億円、沖縄が3361.5億円と、東京の2717.8億円よりもやや多い。北海道と沖縄の消費税を0%にすれば、間違いなく観光客による経済効果を生み出して地元住民の所得も向上するだろう。安倍政権が本当に地方創生を進めたいのであれば、是非とも「地方の消費税0%」を検討してほしいと思う。

 

 

<参考資料> 

大久保潤、篠原章 『沖縄の不都合な真実』(新潮社、2015年)

安田浩一 『学校では教えてくれない差別と排除の話』(皓星社、2017年)

 

砂漠で金を稼げと言うのか?「地方を見捨てた」山本幸三地方創生大臣

http://www.mag2.com/p/money/274082/2

安倍戦後最長政権の実現こそ日本の最大の国益山本一太氏のブログ)

https://ameblo.jp/ichita-y/entry-12238164476.html

ラストベルト はやり言葉辞典

http://studyhacker.net/vocabulary/rust-belt

人口増加率全国トップの沖縄、その4割が外国人

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/185435

平成24年就業構造基本調査(8-1)

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200532&tstat=000001058052&cycle=0&tclass1=000001060135&tclass2=000001060136

「沖縄は基地で食っている」はデマ

https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/onaga-4?utm_term=.we6qZ175xL#.bgpQyz9Zeb

共通基準による観光入込客統計

http://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/irikomi.html

消費税増税は安倍首相が決めたことである

増税財務省民主党のせいにする自称保守派

 日本テレビが3月16~18日に行った世論調査によると、安倍政権の支持率は30.3%と第二次安倍内閣発足から5年あまりで最低となった。支持率急落の原因は学校法人「森友学園」の国有地売却に関する決裁文書改ざんを巡り、財務省近畿財務局の男性職員が自殺した問題が大きいだろう。

 しかし、この森友問題に関して自称保守派やネット右翼は相変わらず「朝日新聞偏向報道をしてるせいだ! 財務省が勝手に改ざんしたことだ! 安倍さんは悪くない!」などと責任転嫁している。

 

 ネット右翼から人気の高い自称保守派は森友学園だけでなく消費税増税の問題でも不自然に安倍政権を擁護していて、例えば経済評論家の上念司氏と歴史学者の倉山満氏は「消費税8%への引き上げを決めたのは第10代財務事務次官の木下康司氏であって、安倍首相は最後まで増税に反対していた」と述べている。しかし、これは非常に無理のある言い訳だ。

 安倍首相は2013年10月1日の記者会見で「社会保障を安定させ、厳しい財政を再建するために、財源の確保は待ったなしです。だからこそ昨年、消費税を引き上げる法律に私たち自由民主党公明党は賛成をいたしました」と発言している。つまり、安倍首相は野党の時代から消費税増税に賛成だったわけだ。

 

 もし、本当に増税反対の立場を明確にしていたのであれば、2013年10月以前に消費税引き上げの中止を発表するか、総理大臣を辞任すれば良かっただろう。その後、消費税10%への引き上げに関しては二度延期したものの、それもあと1年余りで意味がなくなってしまう。

 仮にこのまま安倍首相がズルズルと2019年10月まで総理を続け、増税を中止しなかったら憲政史上初めて消費税を2段階も引き上げる宰相となるだろう。

 

 また、経済素人でもわかる間違いで安倍政権を擁護しているのが嘉悦大学教授の高橋洋一氏だ。彼は「民主党政権が年間自殺者を安倍政権より3000人以上も増やした」と述べているが、実際のところ自殺者は民主党政権でも2009年の30707人から2012年の26433人まで減少している。

 一般的に自殺は女性より男性に多いと言われているが、過去30年間の男性の自殺死亡率と完全失業率の推移を見ると1998年に自殺率が悪化し、2010年から失業率の低下と共に自殺率が改善しているのがわかるだろう(図56を参照)。

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 本当に年間自殺者を増やしたのは消費税増税などの緊縮財政を断行した1996~98年の橋本政権で、第一次安倍政権だった2007年でも30827人と民主党政権より多かったのだ。安倍政権が経済政策によって自殺者を減らしたことを評価するなら、「民主党政権でも年間自殺者は減少していた」と言わなければならない。

 だが、高橋氏は既に自殺者数が減少していた野田政権に対しても「財務省の傀儡政権で、大増税内閣である」と厳しく批判した上、安倍政権になってからも「消費税増税は野田前総理が決めたこと。ただでさえ政権与党時代に経済を立て直せなかった民主党が、自ら行った増税決定のせいで進まない経済回復を批判するというのはブーメランになってしまう」と述べている。

 つまり、失業率の改善や有効求人倍率の上昇など「都合の良い部分」は安倍政権の功績で、増税による個人消費の落ち込みや名目GDP成長率の低迷など「都合の悪い部分」は民主党政権のせいにしたいようだ。

 

 こうした責任転嫁は自称保守派の間にも広く蔓延していて、3月19日の参議院予算委員会では自民党和田政宗議員が「太田理財局長は民主党政権時代の野田総理の秘書官を務めていた。増税派だからアベノミクスを潰すために、意図的に変な答弁をしているのではないか」と発言した。安倍首相自身が消費税8%への引き上げを決定した「増税派」であるにも関わらず、歪んだ被害妄想で安倍政権を擁護する姿には呆れてしまう。

 私がツイッターなどで「安倍首相は消費税増税を中止すべき」と批判すると必ずネット右翼から「増税民主党が決めたことだ。安倍さんとは関係ない」と言い訳する書き込みが返ってくる。彼らは「安倍政権なら消費税が10%になっても20%になっても構わない」というのが本音なのだろう。

 特に、2ちゃんねるニコニコ動画で安倍首相を熱烈に支持する自民党ネットサポーターズクラブに関しては、カルト宗教や北朝鮮の国民が金正恩を崇める感覚に近く正直気持ち悪さすら感じてしまう。

 

 

安倍首相は消費税を5%に戻して責任を取れ

 ちなみに、日銀の黒田総裁や上念氏、高橋氏などのリフレ派(緩慢なインフレを継続させることで、経済の安定成長を図ることができると主張する経済学者)は金融緩和さえ行えば、消費税増税の影響を相殺してデフレから脱却できるとお考えのようだが、『完全失業率と大卒就職率が改善した理由』でも指摘したように2017年には消費者物価指数の中で最も重要なコアコアCPI(食料〔酒類を除く〕及びエネルギーを除く総合)の数値が4年ぶりに前年比マイナスとなっている。

 アベノミクスを持てはやす経済学者は、消費税増税から数年が経ってデフレ不況に逆戻りしている事実についてどう言い訳するだろうか?まさか、「日経平均株価や有効求人倍率が上昇してるからデフレを脱却した」なんてトンチンカンな発言をしないことを願いたいが・・・。

 

 その上、物価が下落してデフレになると給料も減少するが、厚労省が発表した今年1月の実質賃金指数(速報値)を見ると「きまって支給する給与」が前年同月比マイナス1.4%と大幅な落ち込みになった。リフレ派は実質賃金の下落について「物価が上昇している影響」と反論しているが、これも嘘で最近ではコアコアCPIが2015年11月から下落しているのに加え、きまって支給する給与も2016年10月以降に下がっていることがわかる(図57を参照)。

 そもそも、消費者物価指数と実質賃金指数は90年代後半から共に下落しており、2000年を100とすると2017年はコアコアCPIが「95.6」(増税後の一時的な物価上昇を含める)、きまって支給する給与が「91.3」まで下がっている。この十数年間は物価が下落して実質賃金も減少する時代だったわけだ。

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 更に、経済ブロガーの山本博一氏は「実質賃金の低下により雇用者が増える」と述べているが、実際には1996~2016年の20年間で現金給与総額が13.7%も減少した一方で、年収200万円以下で働く貧困層は327.7万人も増加し、非正規雇用の割合も21.5%から37.5%まで上昇した(図58を参照)。

 山本氏は「人手不足が進むと企業は非正規雇用者の給料を引き上げて雇用を確保するようになる」とも言うが、2015年から人手不足な介護と医療の分野で介護報酬と診療報酬の削減が断行されている。就業者数が増加しても実質賃金が下落すれば、ワークシェアリングが進み非正規雇用の割合も高まってしまうのが現実のようだ。

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 高橋洋一氏は内閣支持率が急落しているのを受けて早速、『安倍首相退陣なら日本経済は悪化する…石破or岸田政権発足→景気悪化の悲観シナリオ』という記事を出した。安倍政権で既にデフレ不況に逆戻りしていることが明らかなのに、政策が大して変わらない石破氏をポスト安倍だと思っている時点で低レベルな擁護の仕方である。何故、森友問題に関して「国民に謝罪し、消費税を5%に戻すことで責任を取れ」と言わないのだろうか?

 今から首相になれるかどうかわからないが、私は消費税増税やTPPなど新自由主義的な政策に反対している自由党小沢一郎代表のほうがまだ次期総理に相応しいのではないかと思っている。少なくとも、「安倍さんならデフレ不況のままでも構わない」「安倍さんなら消費税10%になっても構わない」と思っている自称保守派やネット右翼を絶対に許してはならない。

 

 

<参考資料>

倉山満 『増税と政局・暗闘50年史』(イースト・プレス、2014年)

高橋洋一 『数字・データ・統計的に正しい日本の針路』(講談社、2016年)

     『これが世界と日本経済の真実だ』(悟空出版、2016年)

 

内閣支持率30.3%第二次安倍政権で最低

https://news.goo.ne.jp/article/ntv_news24/politics/www.news24.jp-articles-2018-03-18-04388319-html.html

平成25年10月1日 安倍内閣総理大臣記者会見

https://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/1001kaiken.html

自民・和田正宗議員「財務省増税派だから安倍政権を貶めるために変な答弁してるのでは?」と陰謀論増税は安倍政権の既定路線でした

http://buzzap.jp/news/20180319-wada-conspiracy-theory/

「実質賃金低下」の正体――“反アベノミクス”に反論

https://nikkan-spa.jp/861466

完全失業率と大卒就職率が改善した理由

完全失業率が改善したのは総人口が減少したから

 内閣府が2月14日に発表した2017年10-12月期のGDP速報値は、インフレの影響を除いた実質の年率換算で0.5%のプラス成長だったが、インフレを含めた名目では年率0.1%のマイナス成長となった。

 しかし、消費税増税の悪影響を認めたくないマスコミは相変わらず、「バブル期から約28年ぶりに8四半期連続のプラス成長」「雇用環境が改善して、着実に経済成長が進んだ」と景気回復を強調している。実質GDPで見れば、それこそ安倍政権の成長率(2013年1-3月期~2017年10-12月期の年率平均1.42%)より民主党政権の成長率(2009年10-12月期~2012年1-3月期の年率平均1.70%)のほうが高かったのが現実なのだ。

 

 金融緩和も財政出動も行わなかった民主党政権の成長率が高い理由は、間違いなく消費税がまだ5%で安倍政権より個人消費の伸びが良かったことが影響しているだろう。

 国民経済計算の民間最終消費支出を見ると、リーマンショックから安倍政権初期までの4年半(2008年10-12月期~2013年4-6月期)では約20.9兆円も増加していたのに対し、その後の4年半(2013年4-6月期~2017年10-12月期)では消費税増税の影響があって約1.0兆円程度の増加に留まっている(図52を参照)。

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 また、安倍首相は国会答弁などで口を開けば、「アベノミクスが成果を上げて、名目GDPが過去最高になった」と自画自賛するが、『消費税増税が少子高齢化を加速させる』でも指摘した通り、その成長率も安倍政権の前半(2013年1-3月期~2015年4-6月期)では年率平均3.15%にのぼっていたのに対し、安倍政権の後半(2015年7-9月期~2017年10-12月期)では年率平均1.25%まで下落してしまった。

 2017年には、消費者物価指数の中で最も重要なコアコアCPI(食料〔酒類を除く〕及びエネルギーを除く総合)の数値が前年比マイナス0.1%となっており、個人消費の著しい落ち込みによるデフレ不況への逆戻りは明らかだろう。

 

 更に、アベノミクスを評価する経済学者は「有効求人倍率が回復し、就業者数が増加している」と持てはやすが、就業者数が増えても1人当たりの実労働時間は2006年の月150.9時間から2016年の月143.7時間まで減少しており、延べ総労働時間はリーマンショック以前の水準に回復していない(図53を参照)。

 年収100万円以下で働く貧困層も2016年には421.9万人と80年代以降で最多を更新し、アベノミクスで雇用が改善したように見えるのはワークシェアリングが進んだ結果なのだ。

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 その上、完全失業率の低下についても景気回復より2010年以降の人口減少による影響が大きいだろう。図54を見ると失業率は2008年10月の3.8%から2009年7月の5.5%までは悪化していたものの、それ以降は人口減少と並行して緩やかに改善しているのがわかる。

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 「人口が減少して失業率も改善する」という現象はドイツやロシアでも発生していて、難民を受け入れる前のドイツでは2005~2011年に人口が8134万人から8028万人へと約106万人減っていたが、失業率は11.0%から5.9%まで低下した。ロシアでも1998~2017年に人口が1億4739万人から1億4338万人へと約401万人減ったが、失業率は13.3%から5.5%まで低下している。

 リーマンショック翌年である2009年の実質GDP成長率はドイツがマイナス5.6%、ロシアがマイナス7.8%と、金融危機の当事国だったアメリカのマイナス2.8%よりも悪化しており、決して好景気が失業率改善の主因ではないようだ。

 

 

大卒就職率の上昇は景気ではなく教育の成果

 ところで、2017年春に大学を卒業した学生の就職率は97.6%(昨年4月1日現在)となり、統計を取り始めた1997年卒から過去最高を更新した。大学就職率は2011年卒の91.0%から緩やかに回復を続けていて、2016年の参院選では公明党の山口代表が「アベノミクスが成果を上げて、大学生の就職率が過去最高になった」と宣伝材料にもしている。しかし、大学就職率の上昇は本当に景気回復が最大の理由なのだろうか?

 

 実際に、安倍政権の後半になって名目GDP成長率が落ち込んでいることに加え、休廃業・解散した企業の数は2000年の1万6110社から2017年の2万8142社まで増加している。この他にも、企業の経常利益は過去最高だが内部留保も400兆円を超えており、法人税や賃上げなどを通して企業が政府と従業員に利益を還元しているとは言い難い。

 また、毎年90%を超えている就職率にも「参考にする大学のサンプル数が限られている」「4月まで内定が取れず、翌年に持ち越した学生は就職希望者に含まれない」といったカラクリが存在し、必ずしも大学の就職状況を示した数字ではない。

 

 それでも、大卒就職率が上昇した理由について私は景気よりも教育の成果が大きいと思っている。例えば、図55では1968~2016年における未成年の検挙人員(少年人口比)と15~19歳の完全失業率の推移を示した。

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 このグラフを見ると60年代後半から80年代前半までは「若年失業率が低く、少年犯罪が多発していた時代」だったが、1987年以降は若年失業率と検挙人員が強い相関関係を表すようになり、特にバブル崩壊後の90年代後半から00年前半にかけては「若年失業率が大幅に悪化し、少年犯罪が微増した時代」と言える。

 90年代後半に未成年の検挙人員が微増したのは神戸連続児童殺傷事件(通称:酒鬼薔薇事件)の発生で、当時の警察庁が少年犯罪の取り締まりを強化した影響も大きいが、事件から5年後の2002年には若年失業率が12.8%と戦後最悪を記録しており、経済状況の悪化と少年犯罪の一時的な増加は無関係ではないだろう。

 本当に非難されるべきなのはまだ若年失業率が低く、一億総中流社会が根付いていたにも関わらず少年犯罪の多かった80年代以前である。当時は全国各地の中学や高校で校内暴力が大きな社会問題となり、1984年には臨時教育審議会が落ちこぼれを減らすために、授業時間を削減して全体のハードルを下げることを目的とした「ゆとり教育」を提唱している。

 

 それに対し、現代では「人口減少によって若年失業率が改善し、少年犯罪も減少する時代」に入りつつある。若者がどんどん優秀になっているのは少年犯罪の減少だけでなく、OECDが3年ごとに実施している生徒の学習到達度調査(PISA)の推移を見てもよくわかるだろう。

 PISAは、世界各国の15歳の子供(日本では高校1年生)を対象に「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」「読解力」の3科目を調査する形式を取っているが、その中でも「数学的リテラシー」の順位は2006年の10位から2015年の5位、「科学的リテラシー」の順位は2006年の6位から2015年の2位まで上昇した。

 

 これについて、マスコミでは「脱ゆとり教育の成果」だとする意見と、「総合的な学習の時間が功を奏した結果」だとする意見に分かれているが、どちらにしろ日本の子供たちの学力が回復していることは事実だろう。

 近年では将棋や卓球、フィギュアスケートなどで10~20代の選手が活躍し、バラエティでも様々な分野の天才キッズたちを特集する番組が増えている。こうした傾向は私が小中学生だった2000年代でもなかったように思う。

 

 嘉悦大学教授の高橋洋一氏は『安倍政権になってから就職率が高まり、今では就職に苦労していない。正直言って学生のレベルは同じであるが、政策によってこれほどの差があるとは驚きだ』と述べているが、変わったのは経済状況ではなく学生の側ではないだろうか。

 2007年の第一次安倍政権ではゆとり教育の見直しとして、小学校の総授業時数を278時間、中学校の総授業時数を105時間増加させることを決定し、2009年度から前倒しで実施された。

 

 80年代の中曽根改革から進められたゆとり教育によって学力格差が深刻化していた日本で、公教育の総授業時数を増やしたのは全体の学力の底上げに繋がった可能性が高く、現在の大学生は初期の脱ゆとり世代に含まれると言って良い。

 大卒の就職率が改善したことをどうしても安倍政権の功績にしたいのであれば、アベノミクスではなく第一次政権でゆとり教育を見直したことこそ評価されるべきだろう。

 

 

<参考資料>

池上彰池上彰の「日本の教育」がよくわかる本』(PHP研究所、2014年)

 

GDP実質年0.5%成長、消費・投資けん引 10~12月

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2687698014022018MM0000/

国民経済計算 2017年10-12月期 1次速報値

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2017/qe174/gdemenuja.html

なぜ給料は上がらない? 安倍政権が主張する「雇用改善」の嘘と本当

http://www.mag2.com/p/money/333216

ドイツの人口・就業者・失業率の推移

http://ecodb.net/country/DE/imf_persons.html

ロシアの人口・就業者・失業率の推移

http://ecodb.net/country/RU/imf_persons.html

2017年3月卒大学生の就職内定率、過去最高の97.6%に

https://news.mynavi.jp/article/20170519-a164/

2017年「休廃業・解散企業」動向調査

http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20180115_01.html

図録 学力の国際比較(OECDPISA調査)

http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/3940.html

若者の「自民党支持増」はなぜか。左派系メディアにかわって教えよう

http://blog.goo.ne.jp/kanayame_47/e/224976e8b4732ee9effd3ec98ef49173

ゆとり教育 - Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%84%B1%E3%82%86%E3%81%A8%E3%82%8A%E6%95%99%E8%82%B2

消費税増税が少子高齢化を加速させる

少子化が進んだのは経済成長率が落ちたから

 厚労省が発表した推計によれば、2017年の出生数は94万1000人で戦後最少を更新する見通しになっている。前年の2016年も出生数が100万人を下回って大きなニュースになったが、昨年はそれより3万6000人も減少していたとは非常に驚きだ。

 少子化の原因として、よく挙げられるのは「結婚しない若者が増えたからだ」「女性が社会進出したからだ」「豊かな社会になったからだ」というものである。しかし、これらの理由は本当に少子化の「真の原因」なのだろうか?

 

 例えば、国立社会保障・人口問題研究所が18~34歳の未婚者に行った調査で、「いずれ結婚するつもり」と回答した割合は男性が85.7%、女性が89.3%と高く、日本の若者の結婚願望が低いとは決して言えない状況である。

 また、自民党改憲案に『家族は、互いに助け合わなければならない』という条項を追加しようとしている理由について「昨今、家族の絆が薄くなってきている」と述べているが、日本人の国民性調査で「一番大切なものは家族」と答えた人の割合は1958年の12%から2013年の44%まで増加していて、家族の絆はむしろ深まっているのだ。

 

 更に、国税庁総務省のデータによれば民間企業に勤める女性の平均年収は男性の53.7%程度に過ぎず、15~24歳女性の非正規雇用率も1991年の20.3%から2016年の51.2%まで上昇し、年収100万円以下で働くワーキングプア層(2016年、約422万人)のうち78.4%が女性である。

 バブル期の1986年に男女雇用機会均等法が施行されて以降、女性の社会進出はほとんど進んでいないのが現実だろう。

 

 下記の図48は高度成長期から2016年までの名目GDP成長率と出生数の推移を示したもので、この図を見ると1970年代後半以降の成長率と出生数の低下には強い相関関係があることがわかる。つまり、日本で少子化が進んだのは「豊かな社会になったから」ではなく、「消費税増税など政府の緊縮財政で、経済成長率が落ちて国民が貧困化したから」と解釈することも可能なのだ。

 先進国の中で最も公的な教育予算が少なく、毎日消費される食料品にまで標準税率が適用される日本では20年以上続いたデフレ不況が少子化にも影響しているのではないだろうか。

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出生数の多い国は経済成長率も高い

 その上、消費税を導入した1989年からは少子化がより深刻になっていて、消費税3%だった1989~1996年は出生数の平均が年間121.5万人なのに対し、消費税5%だった1997~2013年の平均が年間111.3万人、消費税8%に引き上げられた2014~2017年の平均が年間98.2万人と、増税すればするほど出生数が減少していることがわかる。

 よく、増税賛成派は「少子高齢化社会保障費が足りなくなるから消費税を引き上げるべきだ」と言うが、消費税を10%以上に増税したら深刻なデフレ不況で若者が子どもを育てづらくなり、ますます少子化が加速するのではないだろうか。

 逆に、アフリカなどの発展途上国で子どもが多いのは、経済成長率が高く基本的にインフレだからとも言えるだろう。

 

 先進国でも少子化を克服したと言われるフランスは日本より経済成長率が高く、1990~2015年の名目GDP成長率は日本が年間平均0.74%なのに対して、フランスは年間平均3.08%にものぼっている。

 図49では、日本とフランスの名目GDP成長率と出生率の推移を示した。

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 フランスでは子どもが3歳になったときから義務教育が始まるなど、対GDPの公教育支出の割合(2010年)が5.9%と日本の3.8%より多く、政府の公共投資も1996~2012年にかけて日本が0.47倍へと縮小していったのに対し、フランスでは1.66倍へと拡大を続けている。

 フランスで出生率が高まったのは婚外子が多いからでも移民を受け入れたからでもなく、こうした手厚い福祉政策や公共事業で政府の投資を増やし続けているからのようだ。

 

 また、付加価値税を見ても標準税率は20%だが、食料品の軽減税率は5.5%と日本の8%より安く低所得世帯に優しいと言える。その一方で、若年失業率が非常に高いという問題こそあるものの、日本がフランスの子育て支援を参考にすべき部分は多いだろう。

 

 

デフレ不況で子どもの貧困率が悪化した

 2017年6月に公表された厚労省の「国民生活基礎調査」によれば、2015年の相対的貧困率は15.6%、子どもの貧困率は13.9%と前回の2012年よりやや改善した。

 「子どもの7人に1人が貧困」と聞いて実感がわかない人も多いと思うが、日本における子どもの貧困は主にひとり親家庭に多く、「大人が2人以上いる家庭」の貧困率は10.7%なのに対し、「大人が1人のみの家庭」の貧困率は50.8%である。また、都道府県別に見た子どもの貧困率は東京が10.3%なのに対し、大阪では21.8%、沖縄では37.5%と地域間格差が存在する。

 

 図50は、1985~2015年の子どもの貧困率と直近3年間の名目GDP成長率の平均を示したもので、この図を見ると1990年代以降の長引くデフレ不況と子どもの貧困率の悪化には強い関係が存在することが確認される。

 その一方で、子どもの貧困率が2012年の16.3%から2015年の13.9%まで改善したのは、主に世界経済の回復による名目GDP成長率の上昇が影響しているだろう。

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 また、男性の年齢別給与の推移を見ても、1997~2016年の19年間で子育て世代に当たる30代後半の年収は77.4万円、40代前半の年収は81.8万円も減ってしまった(図51を参照)。

 2012年に実施された「男女共同参画社会に関する世論調査」では、前年に東日本大震災が発生して家族の絆を再認識するムードが高まった影響で、『夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである』という考え方に賛成する割合が2009年の41.3%から51.6%まで増加したが、現代では高度成長期からバブル期にかけて終身雇用が当たり前だった時代と違って夫が妻や子どもを養えるだけの経済力を持っているとは限らないのである。

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子どもの貧困問題に冷淡な自民党議員

 ちなみに、安倍首相は2017年10月の衆院選で「アベノミクスによって雇用が改善し、相対的貧困率や子どもの貧困率が低下した」とアピールしていたが、残念ながら自民党は消費税増税で子育て世代の負担を増やしたり、低所得世帯の生活保護を削減したりと子どもの貧困問題について有効な対策を行っているとは言い難い。

 自民党の中でも右派議員として知られる山谷えり子氏は待機児童問題について「世の中に待機児童は居ない、居るのは待機親であり子どもは母親と一緒に居たい」と述べ、2017年の衆院選で当選した杉田水脈氏は沖縄の子どもの貧困率が高いことについて「子どもをほったらかしにしている母親が悪い」「できちゃった結婚が多いからだ」と暴言を吐いている。

 

 つまり、彼女たちにとって待機児童や子どもの貧困は母親の責任であって、政府が解決すべき問題ではないというのが本音らしい。「社会保障を全世代型に転換する」と宣言している政党の議員がこの程度の認識では、いつまで経っても子育て世代の社会保障が充実することはないだろう。

 

 更に、安倍政権下の実質GDP成長率の平均が民主党政権よりも低いことは既に指摘されているが、名目GDP成長率(2011年基準)も安倍政権前半の2012年10-12月期~2015年1-3月期では年率平均3.04%にのぼっていたのに対し、安倍政権後半の2015年4-6月期~2017年7-9月期では年率平均1.47%まで下落してしまった。

 子どもの貧困率は2015年に運良く改善したものの、現在では消費税増税から3年以上が経ちデフレ不況に逆戻りしているのは事実で、五輪特需が終了し消費税10%引き上げの影響が表れ始める2020年以降に再び子どもの貧困率が悪化してしまう可能性も否定できない。

 

 少子化や子どもの貧困を改善するためには、まず低所得世帯の生活保護就学援助制度を充実させ、公営子ども食堂を全国に普及させるのはもちろんのこと、消費税を3~5%に減税するか食料品を外食含め全て非課税にし、教育費支出や公共事業など政府の投資を増やす必要があるのではないだろうか。

 

 

<参考資料>

髙崎順子 『フランスはどう少子化を克服したか』(新潮社、2016年)

中澤渉 『なぜ日本の公教育費は少ないのか』(勁草書房、2014年)

日本財団子どもの貧困対策チーム 『徹底調査 子供の貧困が日本を滅ぼす』(文藝春秋、2016年)

杉田水脈我那覇真子「対談 沖縄の問題は日本の危機の縮図」 『ジャパニズム36』(青林堂、2017年4月)

 

17年の出生数2年連続100万人割れ 自然減40万人超え

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24959800S7A221C1000000/

第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)

http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou15/gaiyou15html/NFS15G_html02.html

一番大切なものは自分の命や健康から家族へ

http://www.garbagenews.net/archives/1659143.html

民間給与実態統計調査 長期時系列データ

https://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/jikeiretsu/01_02.htm

労働力調査 長期時系列データ

http://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.htm

OECD Data Nominal GDP forecast

https://data.oecd.org/gdp/nominal-gdp-forecast.htm

公共投資水準の国際比較

https://www.sato-nobuaki.jp/report/2017/20170529-002.pdf

平成28年 国民生活基礎調査

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/dl/03.pdf

「夫は外で働き、妻は家庭を守る」という意識の変化

http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2410.html

どこか焦点がずれている安倍政権の女性・少子化対策

https://yoshiko-sakurai.jp/2014/08/09/5470

2017年2月28日発売「消費税の歴史と問題点を読み解く」

消費税収の86%が法人税減税に消えている」など、2017年2月までの当ブログの記事をまとめ、大幅に加筆した新書が同年2月28日に発売されました。

興味を持っていただいた方は、書店やAmazon等で購入してもらえると有り難いです。

 

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目次

第1章 消費税の歴史(近代史から橋本内閣まで)

第2章 消費税の歴史(小泉内閣から安倍内閣まで)

第3章 増税グローバリズムのここがおかしい!

第4章 世界の消費税、軽減税率、所得税の負担率

第5章 消費税は社会保障に使われていない

 

内容紹介

 消費税は身近な税金である。しかし国税のなかで消費税は滞納金が多く、増税をしていくにつれて滞納額が増加するという問題点はあまり知られていない。また、消費税引き下げの議論はない一方で、法人税減税は行われている。

 本書では、消費税の導入から増税が繰り返される日本の歴史、欧米諸国との比較、消費税増税についての問題点を明らかにする。消費税に関して改めて整理し、増税後、国民の生活にどのように影響していくのか考察していく。

 

著者 大谷 英暉  ISBN 978-4-344-91106-2

新書186ページ 価格864円

 

 

消費税の歴史と問題点を読み解く

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