消費税増税に反対するブログ

消費税の財源の8割以上が法人税減税に消えている!消費税10%への引き上げを中止しよう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

消費税増税後の景気悪化から逃げ続ける安倍政権

就業者数ではなく消費税増税の影響で下落する実質賃金

 賃金や労働時間を調べる厚労省の「毎月勤労統計調査」で、統計法に反する不適切な調査が長年行われていたことが今年1月に発覚した。2018年1月に調査対象となる企業群のサンプルを半数近く入れ替え、同年6月には名目賃金の伸び率が前年同月比で3.3%増加と1997年1月以来の高い水準にのぼっていたことが報道された。

 しかし、名目賃金から物価の変動を除いた実質賃金は2014年に消費税増税の影響で「現金給与総額」が前年比マイナス2.8%、「きまって支給する給与」が前年比マイナス3.2%となっており、その後も低迷した状態が続いている。

 

 経済学者のミルトン・フリードマンは消費と所得の関係について、「消費者の消費は恒常的だと考える所得に比例する」と主張している。例えば、農家に代表される「所得が不安定な人々」は預金や保険を増やさざるを得ない。つまり、所得から消費に回す割合を減らすため消費性向が下がる。

 逆に、公務員に代表されるように安定的な所得を「恒常的」に得られることが確定しているならば消費性向は上昇する。恒常的な所得を拡大することこそが、国内における「消費」という需要を最大化する道なのだ。毎月勤労統計調査では「現金給与総額」と「きまって支給する給与」をそれぞれ公表しているが、実質賃金の「きまって支給する給与」がフリードマンの言う「恒常的な所得」に最も近いだろう。

 

 2011年2月から2018年2月までの「きまって支給する給与」の推移を見ると、消費税を8%に増税した2014年4月から大幅に下落したことがわかる(図72を参照)。

 実質賃金は「生産の量」に大きく左右され、例えば販売数が1年で10個から9個へと減った場合に実質賃金は前年比10%落ち込んでしまう。消費税増税で家計消費が減少したことが実質賃金下落の原因なのである。

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 それでも、高橋洋一氏など安倍政権下の消費税増税を容認する経済学者は実質賃金の下落について「就業者数が増えたことによる成果」だと強弁し、政治ブログなどを見ていても「給料の安い労働者を解雇してデフレにすれば実質賃金は上がる」などとデタラメなことを書いている人が多い。

 だが、図73の「就業者数と実質賃金指数の推移」を見ると消費税が3%だった1990~96年は就業者数も実質賃金も上昇していたのに対し、5%に増税された1997年から共に下落が始まり、8%増税後の2014年以降は「就業者数が増加したにも関わらず実質賃金が減少する」という状況が発生している。

 消費税を3~5%に減税すれば就業者数が増加しても実質賃金は上昇するし、逆に消費税を10%に増税すれば更に実質賃金が下落して国民が貧困化してしまうだろう。

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緊縮財政を隠すためにかさ上げされた名目GDP

 安倍政権は「毎月勤労統計調査」の改ざんだけでなく、国民経済計算の名目GDPも大幅にかさ上げしている。内閣府は2016年12月にGDPの算出方法を変更し、研究開発費などを加えて1994年以降のGDPを旧基準の「平成17年基準」から新基準の「平成23年基準」に改定して公表した。

 しかし、実際の名目GDPを見てみると1994年は平成17年基準が495.7兆円、平成23年基準が501.5兆円とたったの5.8兆円しか増加していないのに対して、2015年は平成17年基準が499.3兆円、平成23年基準が531.3兆円と実に32.0兆円もかさ上げされているのだ。1994年と2015年でこれだけ差があるのは算出方法を変更した際に、研究開発費とは関係ない「その他」の部分を大幅に加算したからだと言われている。1994年なら「その他」の部分はマイナス7.8兆円だったのに対し、2015年は逆にプラス7.5兆円も増えてしまった。

 

 平成23年基準の名目GDPは2018年で548.9兆円と、1997年の534.1兆円を超えていて過去最高を更新しているが、平成17年基準では最後に公表された2015年の名目GDPが499.3兆円だったので、これに平成23年基準の名目GDP成長率(2016年の0.9%、2017年の1.7%、2018年の0.7%)を掛けると2018年の名目GDPは515.9兆円程度にしかならず、まだ1997年の523.2兆円を超えていない(図74を参照)。

 「アベノミクスが成果を上げて、名目GDPが過去最高になった」と自画自賛する安倍首相の発言は全くの嘘なのである。

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 更に、かさ上げされた平成23年基準でも安倍政権が始まった2013年1-3月期から2018年10-12月期までの年率換算の名目GDP成長率を見ると、安倍政権前期に当たる2013~14年の成長率は年率平均2.44%、安倍政権中期に当たる2015~16年の成長率は年率平均1.94%、安倍政権後期に当たる2017~18年の成長率は1.21%と、政権後半になるほど成長率が下落してデフレ不況に逆戻りしていることがわかる(図75を参照)。

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 名目GDP成長率が下落したのは消費税増税による景気悪化に加え、政府の公共投資(公的固定資本形成)を削減したことも原因だと思われる。安倍政権は当初「機動的な財政政策」として公共事業の大盤振る舞いを宣言していたが、実際に公的固定資本形成(実質値)が増加していたのは2012年10-12月期の24.1兆円から2013年10-12月期の27.1兆円までの最初の1年だけであって、その後は2018年10-12月期の24.5兆円へと減少している。

 安倍首相がアベノミクス自画自賛すればするほど増税後の景気対策は遅れ、財政も緊縮的になってきているのが現実のようだ。「日銀が金融緩和だけしていればデフレを脱却できる」という勘違いはやめて、消費税引き下げと財政出動に踏み切るべきではないだろうか。

 

 

本当に「悪夢のような時代」なのは2014年4月以降

 また、安倍首相は2月10日の自民党大会で、2007年の参院選での敗北に触れる中で「悪夢のような民主党政権が誕生した。あの時代に戻すわけにはいかない」と演説した。

 ツイッターなどを見ていると民主党政権の時代を不当に貶めるのが自民党ネットサポーターズクラブ(J-NSC)の常套手段なので安倍首相は熱狂的な支持者に向けたリップサービスとして上記の発言をしたのだろうが、実際に民主党政権の時代は消費税がまだ5%で今より家計消費の伸びが良かったから中小企業の景況感も回復していたのが現実なのだ。

 

 実際に、2011年3月の東日本大震災から数ヵ月経った仙台ではブランド品のルイ・ヴィトンや高級車のメルセデス・ベンツが急に売れ始めたことが報告されている。あれだけ大規模な災害が起こると生命保険会社や損害保険会社は世間からの批判を恐れて、本来なら地震保険に加入していなければ免責される事案でも申請を受け付け、その審査が下りて多額の保険金が支払われたタイミングで高級品が売れたのだという。

 民主党政権の時代も決して好景気だったとは言えないが、消費税が今より安かったことでリーマンショック東日本大震災からの回復が早かった側面も存在するのではないだろうか。

 

 家計最終消費支出を見ても2008年10-12月期の272.7兆円から2013年10-12月期の292.7兆円まで5年間で20.0兆円も増加していたのに対して、2018年10-12月期には292.8兆円へと5年間でたったの0.1兆円しか増えていない。中小企業の景況感を表す「中小企業DI」も2008年10-12月期のマイナス42.0から2013年10-12月期のマイナス13.8まで回復していたが、その後は横ばいに推移していて2018年10-12月期もマイナス13.8と変わらない(図76を参照)。

 総務省が公表している家計消費水準の実質的な向上分を示す「消費水準指数」も東日本大震災後の2011年4月から2014年3月まで回復していたが、2014年4月以降は消費税増税の影響で大幅に下落してしまった(図77を参照)。

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 この間、日本の総人口が減少して介護の人手不足が深刻化したことにより、完全失業率が2011年4月の4.7%から2018年12月の2.4%まで改善するという好条件にも関わらず、増税後に消費がこれだけ落ち込んでしまったのだ。

 安倍政権が統計データを改ざんしたり、旧民主党へのネガティブキャンペーンを煽ったりするのも結局のところ「消費税増税による景気悪化」から目を逸らすためである。本当に「悪夢のような時代」なのは民主党政権ではなく2014年4月以降で、消費税増税がいかに日本経済を苦しめているのかわかるだろう。

 

 

<参考資料>

吉田啓志「発覚した厚労省『毎月勤労統計』の『偽装』は『政権への忖度』の声も 『アベノミクスは失敗』の評価恐れるか」 『週刊金曜日』(金曜日、2019年1月25日)

三橋貴明 『日本「新」社会主義宣言 「構造改革」をやめれば再び高度経済成長がもたらされる』(徳間書店、2016年)

明石順平 『アベノミクスによろしく』(集英社インターナショナル、2017年)

和田秀樹 『経営者の大罪 なぜ日本経済が活性化しないのか』(祥伝社、2012年)

 

厚労省、統計発表見直しへ 賃金上昇率過大「補整はせず」

https://www.nishinippon.co.jp/nnp/politics/article/453411/

6月の名目賃金確報値3.3%増、速報値から縮小 毎月勤労統計

https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL22H74_S8A820C1000000/

毎月勤労統計調査(全国調査・地方調査):結果の概要

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/30-1a.html

増税サポーター 安倍晋三

https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12442619730.html

労働力調査 長期時系列データ

https://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.html

国民経済計算 2016年7-9月期 1次速報値(平成17年基準)

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2016/qe163/gdemenuja.html

国民経済計算 2018年10-12月期 2次速報値(平成23年基準)

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2018/qe184_2/gdemenuja.html

『悪夢のような民主党政権』発言からにじみ出た『バラ色の自民党』意識

https://bunshun.jp/articles/-/10861

中小企業景況調査報告書 結果の概要

https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/keikyo/index.htm

家計調査(家計収支編) 過去に作成していた結果表

https://www.stat.go.jp/data/kakei/longtime/index2.html#level

日本の自己責任論をどう向き合うべきか?

著名人と政府与党の支持者が拡散させる自己責任論

 ベネッセと朝日新聞が4~5年に一度実施している「学校教育に対する保護者の意識調査」によれば、豊かな家庭の子供ほどより良い教育を受けられる傾向があることについて、「当然だ」「やむを得ない」と回答した小中学生の保護者が2008年の43.9%から2018年の62.3%まで増加した(画像を参照)。

 『社会保障の充実を阻む「自己責任論」』でも述べた通り、日本はもともと先進国の中で最も貧困問題に対して自己責任論が強く、2007年に行われた国際調査でも「政府が自力で生活できない人を助けてあげるべきか?」の質問で、「全くそう思う」と回答した人はたったの15%と47カ国の中で最も少なかったが、その傾向がこの10年間だけでも更に強まっているようだ。

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 それを象徴するかのように、著名人が自己責任論を思わせるような発言を行った場合におけるインターネット上の反応もこの10年間で変化してきた。例えば2006~07年なら人材派遣会社ザ・アール奥谷禮子氏が過労死について「自己管理の問題。他人の責任にするのは問題」「労働組合が労働者を甘やかしている」と発言したことに対し、Yahoo!知恵袋では「ザ・アールの女社長って悪魔ですか?人類の敵ですか?」といった批判の書き込みも多く見られた。

 その一方で、2016年にはフリーアナウンサーの長谷川豊氏がブログで「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!」と暴言を吐いた際に、内容は賛否両論になったがコメント欄では「よくぞ言ってくれました」「透析患者は本当に自業自得です」と彼を擁護する書き込みが多かった。

 過労死を自己責任扱いした奥谷氏の発言も決して擁護できないが、「殺せ」などの言葉を使っている以上、長谷川氏の暴言のほうがもっと許しがたい内容なのは言うまでもない。それでも2006年の奥谷氏が批判され、2016年の長谷川氏に同情が集まった背景には近年の自己責任論の高まりが存在するのではないだろうか。

 

 また、2018年には長谷川氏に触発されたのか、ツイッターで落語家の桂春蝶氏が「世界中が憧れるこの日本で貧困問題などを宣う方々は余程強欲か、世の中にウケたいだけ。この国での貧困は絶対的に自分のせいなのだ」と言ったり、高須クリニック院長の高須克弥氏が「甘ったれるな若者!年寄りは君たちくらいの年齢のときはモーレツに働いたんだよ。働きながら君たちを育てたのだ」と言ったり、ZOZOの田端信太郎氏が「過労死には本人の責任もある。なぜならば物理的な拘束はなく、使用者側に殺意もないから。使用者の過失責任はあるかもしれないが、本人の責任もゼロではないというのが私の見解です」と言うなど、自己責任論や若者バッシングを思わせる著名人の発言が相次いだ。

 

 更に、『新・日本の階級社会』などの著書がある橋本健二氏が2016年に行った調査によれば、「貧困になったのは努力しなかったからだ」と「努力しさえすれば、誰でも豊かになることができる」という設問に「そう思う」と回答した人を支持政党別に見ると、民進党が20.5%、公明党が21.5%、共産党が15.2%、支持政党なしが20.3%なのに対し、自民党が34.1%と政権与党の支持者ほど自己責任論に肯定的な傾向が見られた(図70を参照)。

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 自民党も表向きでは「消費税を増税して社会保障を充実させる」と言っているが、残念ながら安倍政権の支持者が国内の経済格差や社会保障の問題に関心を持っている可能性は低いだろう。例えば、国税庁民間給与実態統計調査では2017年に年収100万円以下で働く男性貧困層の数が過去40年間で最多の94.9万人となっており、1984年の49.8万人から約1.9倍も増加しているが、この事実をアベノミクスの成果ばかり強調する安倍信者に指摘すると、必ず「給料が上がらないのは努力が足りないからだ」といった反論が返ってくる。

 彼らは小泉政権以降の自民党が公共事業の削減や労働規制の緩和を進めて子育て世代の男性を貧困化させてきた現実を認めたくないからこそ、経済格差を個人の問題にして自己責任論で片付けようとするのではないだろうか。

 

 その他にも、今年10月にシリアで拘束されていた安田純平氏が解放されたとき、安倍政権の熱烈な支持者たちがツイッターなどで自己責任論を振りかざして彼を誹謗中傷する書き込みで溢れた。

 安倍信者によるジャーナリストへの誹謗中傷は安田氏だけでなく、ISIL(過激派組織イスラム国)に殺害された後藤健二氏についても在日認定し、元航空幕僚長田母神俊雄氏は「イスラム国に拉致されている後藤さんとその母親の石堂順子さんは姓が違いますが、どうなっているのでしょうか。ネットでは在日の方で通名を使っているからだという情報が流れていますが、真偽のほどはわかりません。マスコミにも後藤健二さんの経歴などを調べてほしいと思います」と暴言を吐いていた。

 しかし、後藤氏は映像の中で日本のパスポートを提示していたため、田母神氏が安倍信者のデマを鵜呑みにしたに過ぎないのである。

 

 自己責任社会のイメージが強いアメリカでも2014年にジャーナリスト2人がISILに殺害されたが、率先してリスクを負って取材に赴いた記者を賞賛する声が数多く上がり、アジアプレス・インターナショナル大阪事務所代表の石丸次郎氏が調べた限りでは2人を貶めたり、迷惑だと批判したりする意見は皆無であったという。アメリカは1970年代のベトナム戦争でジャーナリストが撮影した写真によって反戦世論を高めた歴史があり、紛争地に行って命懸けで情報を手に入れようとする戦場ジャーナリズムに対する国民の理解が深いのだろう。

 その一方で、日本では田母神氏のように自らネット上のデマを拡散し、自己責任論を煽る著名人が少なくないのは残念な限りである。

 

 

自己責任論の蔓延を食い止めるには政治教育が必要

 国民の間で自己責任論が幅広く蔓延している以上、自民党が本当に日本の社会保障を全世代型に変えたいのであれば、消費税を増税する前に教育を通して国民の社会保障に対する知識を高めていく必要があるだろう。しかし、安倍政権は中学生や高校生に政治教育を行うことに対して否定的だ。

 2015年6月には山口県の県立高校で、安全保障関連法案についてクラスを8つのグループにわけてそれぞれの主張をまとめ、グループごとの主張に対して高校生が賛否を投じるという実践が行われたが、この授業の取材記事を読んだ自民党県議会議員が「政治的中立性が問われる現場にふさわしいものか疑問を感じる。県教委としてどういう認識なのか」と抗議し、教育長が「法案への賛否を問う形になり、配慮が不足していた。指導が不十分だった」と謝罪している。

 選挙権年齢が20歳から18歳に引き下げられた裏側で、地方議会が政治的中立性を理由に高校の授業で時事問題を扱うことを制止していたのだ。

 

 それに対し、国税庁が全国の中学生と高校生を対象に毎年実施している「税の作文」では、『ヨーロッパと比べて日本の消費税はまだまだ安い』『高齢化が深刻な日本では消費税を上げないと財政が破綻する』など、明らかに財務省増税推進論をコピーしたような内容の作文ばかりが入賞する。

 ヨーロッパの消費税が高く感じるのは標準税率を比較しているからであって、食料品に軽減税率が適用されていない日本は「国税収入に占める消費税収の割合」が27.9%と、イギリスの25.8%、イタリアの27.3%と比べても変わらないし、政府資産(2017年度、670.5兆円)が名目GDP(547.4兆円)を超えている日本が財政危機というのは全くの嘘で、国債も9割以上が国内で消化されているので日銀が民間銀行の国債を買い取れば財政再建は進むのである。

 

 更に税の作文を読んでいると、『消費税を通して私たちも納税している』という明らかに不適切な表現が散見されることを疑問に思う。私たちが買い物をするとき、レジでお金を支払っているため、消費税を納めているのは消費者だと勘違いしている方も多いだろうが、実際に消費税を納める義務があるのは事業者で、レジで払っているのは事業者が販売価格に上乗せ(転嫁)したぶんの消費税額である。

 しかし、販売価格に上乗せされた消費税を、モノを買うときに消費者が負担するのは事業者が値引きしていない場合で、中小・零細企業の中には少しでも商品を安く売るために、消費税を価格に転嫁できないこともあり、結果的に自腹を切って納税する例が少なくない。その影響もあって消費税は国税の中で最も滞納額が大きく、2017年度に発生した消費税の滞納税額は3633億円と、国税全体の滞納額(6155億円)における59.0%を占めている(図71を参照)。

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 消費税は法人税所得税と違って、年間売上高が1000万円以上の場合、事業者が赤字でも納税しなければならず、滞納税額が減らないのはそれだけ消費税を納められない企業が多いからだろう。『消費税を通して私たちも納税している』という誤解を持つことは、逆に言えば「消費税を納められない事業者は自己責任」と偏見を助長することにもつながりかねない。

 こうした消費税の問題点を無視して一方的に増税賛成派の主張を子供に押し付ける「税の作文」は、それこそ政治的中立性に反する偏向教育だと言えるし、2018年度の20万通を超える応募の中で消費税増税に反対する内容の作品を掲載しないのは不当な差別である。10~20代の自民党支持率が高いのも、国税庁が税の作文を通して消費税増税に賛成する若者を増やしていることと無関係ではないのかもしれない。

 

 高負担・高福祉の国として有名なスウェーデンでは、小学校の社会科の教科書で貧困や格差の問題に焦点が当てられており、収入が低くて生活が苦しい家庭には生活保護が支払われることまで詳しく説明されている。その他にもデンマークでは、小学校から模擬選挙によって政治の理解を深め、近所に建設される道路に関して賛成か反対か議論する授業も行われるという。

 その影響もあって国政選挙の投票率スウェーデンが87.18%(2018年)、デンマークが85.80%(2015年)と日本の53.68%(2017年)よりもはるかに高いのである。スウェーデンデンマークが高福祉で成り立っているのは付加価値税が高いだけでなく、国民が常に政治や社会保障の問題に関心を向けていることも理由の一つとして挙げられるだろう。

 アメリカでも、4年に一回の大統領選の度に将来有権者となる子供や若者を対象にした「Mock election」「Kids Vote」と呼ばれる模擬選挙が行われ、民主主義が成熟した先進国では当たり前に政治教育が行われているのだ。

 

 そもそも政治教育の中立性を気にしている人々は、2018年度から教科化が始まった道徳教育に関しても「偏向」する可能性があると思わないのだろうか?例を挙げるとしたら、2000年代に話題となった「もったいない運動」だろう。

 もったいない運動は、2004年にノーベル平和賞を受賞したケニア環境保護活動家であるワンガリ・マータイ氏が日本語の「もったいない」という言葉を知って感銘を受けるエピソードから始まっているが、日本国民全員がもったいない精神を持って個人消費を減らしたらGDPの「民間最終消費支出」も減少して日本経済が疲弊してしまうことになる。

 また、2006年には滋賀県知事の嘉田由紀子氏がもったいない運動を用いて財政健全化を口実に東海道新幹線の新駅建設やダム建設の中止を進めたが、これもGDPの「公的固定資本形成」を減らして地方経済の衰退に拍車をかける結果となってしまう。道徳教育のメッセージが間違って子供たちに伝わらないようにするためにも、やはり政治教育と道徳教育は並行して実施する必要があるだろう。

 

 

<参考資料>

菊池英博 『そして、日本の富は略奪される』(ダイヤモンド社、2014年)

危険地報道を考えるジャーナリストの会・編 『ジャーナリストはなぜ「戦場」へ行くのか』(集英社、2015年)

林大介 『「18歳選挙権」で社会はどう変わるか』(集英社、2016年)

鈴木賢志 訳著 『スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む』(新評論、2016年)

ケンジ・ステファン・スズキ 『消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし』(角川SSコミュニケーションズ、2010年)

 

学校教育に対する保護者の意識調査

https://berd.benesse.jp/up_images/research/Hogosya_2018_web_all.pdf

平成30年度「税に関する高校生の作文」

https://www.nta.go.jp/taxes/kids/sakubun/koko/h30/index.htm

財政金融統計月報第793号

https://www.mof.go.jp/pri/publication/zaikin_geppo/hyou/g793/793.htm

平成29年度「国の財務書類」等を作成しました

https://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2017/20190129houdouhappyou.html

平成29年度 国税徴収、国税滞納

https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/chousyu2017/pdf/17-18_tainokanpu.pdf

2018年スウェーデン総選挙の結果は?

https://tatsumarutimes.com/archives/21651

デンマークの選挙での投票率について

https://www.sra-dk.com/voter-turnout-rate/

もったいない – Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%82%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%81%84%E3%81%AA%E3%81%84

 

「法人税と所得税は景気に左右されやすい」という嘘

企業収益や富裕層人口はバブル崩壊後も増加している

 2019年10月1日に消費税が10%へと引き上げられるまで残り1年を切ってしまった。安倍首相は10月15日の臨時閣議で、来年の消費税増税に備えて景気の落ち込みを防ぐ経済対策の策定や軽減税率の準備を進めるよう指示している。

 増税賛成派が言う消費税引き上げのメリットの一つとして、「法人税収や所得税収は景気に左右されやすいが、消費税収は経済状況に関係なく安定した財源」というものがある。確かに、財務省の一般会計税収の推移を見ると、法人税収は1989年度の19.0兆円、所得税収は1991年度の26.7兆円とバブル期にピークを迎えてその後は減少し、2017年度の法人税収が11.7兆円、所得税収が18.6兆円になっている。

 

 だが、法人企業統計と民間給与実態統計調査によれば、企業の経常利益は1989年度の38.9兆円から2017年度の83.6兆円まで約2.1倍も増加し、年収2000万円以上の富裕層は1991年の13.8万人から2017年の25.5万人まで約1.8倍も増加している。つまり、法人税収や所得税収が減少する一方で、企業収益や富裕層人口はバブル崩壊後も増え続け過去最高を更新しているのだ(図67~68を参照)。

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 1989年当時、法人税の基本税率は40%だったが2018年には23.2%まで引き下げられ、所得税も1991年当時は課税所得が2000万円を超えれば50%の最高税率が適用されたが、2015年以降は課税所得が4000万円以上でやっと45%の最高税率が適用されるまでに変化してきた。

 仮に、税率を当時の状態に戻せば2017年度の法人税収は最大で40.8兆円、所得税収は最大で49.3兆円にのぼっていたことが予想され、消費税を引き下げても社会保障費を捻出するのが可能になるだろう。

 

 経団連などは「法人税増税すると日本から企業が逃げ出す」と言うが、海外に進出する企業の多くは安価な労働力の確保を求めているのが実情で、経産省の海外事業活動基本調査(2016年度)でも、海外進出を決定した際のポイントについて企業に3つまでの複数回答で聞いたところ、法人税が安いなどの「税制、融資等の優遇措置がある」を選択した企業は7.5%と一割にも満たなかった。

 

 もし、企業の国外流出を防ぎたいのであれば、法人税減税よりも海外に進出する企業に対して課税を行うべきである。経産省の調査では、海外に拠点を置いて活動する企業の数を表した現地法人企業数が1989年度の6362社から2016年度の24959社まで約3.9倍も増加していて、法人税の高い時代のほうが企業は国内で仕事をしていたのだ。

 海外では米国のトランプ政権が連邦法人税率を35%から21%に引き下げる一方で、日本や中国など海外からの輸入品の関税を引き上げて税収を増やそうとしている。トランプ氏は政治家として問題の多い人物だが貿易の保護主義を推進し、法人税減税の財源を消費税の導入に頼らなかったことは高く評価すべきだろう。

 

 所得税については2015年に最高税率が40%から45%に引き上げられたが、これについても経団連は「富裕層の海外流出を招いて日本経済の活力が失われる」と批判している。しかし、ワールド・ウェルス・レポートによれば日本で100万ドル(約1億1000万円)以上の投資可能な資産を保有する人は2014年の245.2万人から2017年の316.2万人まで約71万人も増加しており、所得税増税しても富裕層が海外に逃げるという事態は発生していないのだ。

 むしろ、所得税最高税率を引き上げると企業経営者たちの中には「どうせ税金で取られるなら自分が高額の報酬を受けるより、社員に還元したほうがマシだ」と考え、従業員の給料も上昇しやすくなって経済的なメリットが大きいのである。

 

 

日本が経済成長しないのは緊縮財政を続けているから

 また、法人税所得税が景気に左右されやすいなら、単純に財政出動などの景気対策で経済成長を促せば良いだろうが、こう主張すると必ず「日本は総人口が減少しているからもう経済成長できない」と反論してくる者がいる。

 例えば、元財務大臣藤井裕久氏は月刊日本2018年8月号の中で「アベノミクスの理論はいろいろな点で間違っていると思いますが、最大の間違いは高成長主義です。基本的に人口が減少する日本で経済成長することはありません」と述べ、京都大学名誉教授の橘木俊詔氏も『貧困大国ニッポンの課題』という著書の中で「少子化が進んで労働力が減少する日本では、かつてのような高度成長の再来を望むことは不可能だろう」と述べている。

 こうした「経済成長否定論」は消費税を10%に増税した後に景気が悪化することで、ますます説得力を増してしまうかもしれない。

 

 だが、国の総人口が減っているのは日本だけでなく、ロシアでも1994~2018年の間に445万人減少し、東欧のジョージア(旧グルジア)でも1994~2018年の間に122万人減少している。この間、日本では131万人増加と人口が横ばいになっており、ロシアとジョージアの人口減少のほうが深刻だということがわかる。

 しかし、名目GDPの推移を見るとロシアが24年間で149.9倍、ジョージアが24年間で45.7倍も伸びていて、日本の1.1倍と比較しても圧倒的に経済成長しているのだ(図69を参照)。

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 特に、ロシアはソ連が崩壊した90年代以降ずっとインフレが続いていて、リーマンショック翌年の2009年には名目GDP成長率がマイナス6.0%とアメリカのマイナス2.0%より悪化していたものの、2010年には19.3%、2011年には20.9%と高い状態に回復している。アメリカやカナダでも1994~2018年の間に名目GDPが2.8倍も増加しており、「先進国や人口が減少している国では経済成長できない」という藤井氏や橘木氏の主張がいかに間違っているのかがわかるだろう。

 

 バブル崩壊以降の日本が経済成長していないのは、消費税を増税して政府の公共投資を削減するという緊縮財政が続けられているからである。

 国民経済計算によれば、個人消費の額を表した民間最終消費支出(名目値)は物品税や消費税3%だった1977~1997年の20年間では約2.86倍(平成2年基準)も増加したのに対し、消費税を5%や8%に増税した1997~2017年の20年間では約1.06倍(平成23年基準)しか増加していない。更に、政府が行う社会資本整備などの投資の額を表した公的固定資本形成(平成23年基準、名目値)も阪神・淡路大震災による復興需要が高まった1995年の45.8兆円から2017年の27.7兆円まで約6割程度に削減されている。

 

 中京大学名誉教授の水谷研治氏は1997年12月号の文藝春秋で「財政赤字を削減するために国民一人ひとりが国の将来のために犠牲になる覚悟を持たなければならない」と発言していたが、実際に経済成長を否定して財政再建に邁進し、国民を貧困化させてきたのがこの20年間の日本政府だったと言えるだろう。

 安倍首相は「2019年10月から消費税を10%に引き上げる代わりに幼児教育の無償化も進める」と言っているが、『オウム真理教よりも統一教会のほうが悪質な宗教である』でも指摘した通り消費税導入後のデフレ不況こそが少子高齢化の原因であって、今やるべき政策は「経済成長が人々の心を豊かにする」という90年代以降の日本から失われた哲学を取り戻し、消費税引き下げと財政出動によって子育て世代(20~40代)の所得を高めることではないだろうか。

 

 

<参考資料>

消費税率、来年10月に10% 首相「経済対策に全力」

https://www.asahi.com/articles/ASLBH5X33LBHUTFK010.html

なぜ所得税法人税ではなく、消費税の引上げを行うのでしょうか?

https://www.mof.go.jp/faq/seimu/04.htm

一般会計税収の推移

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/010.pdf

年次別法人企業統計調査 -平成29年度-

https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/results/h29.pdf

平成29年分 民間給与実態統計調査

https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2017/pdf/001.pdf

第47回海外事業活動基本調査結果

http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kaigaizi/result/h28data.html

米減税法案が議会通過 法人税21%、下院も再可決

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24894440R21C17A2000000/

World Wealth Report  Compare the data on a global scale

https://www.worldwealthreport.com/hnwi-market-expands

ロシアのGDPの推移

http://ecodb.net/country/RU/imf_gdp.html

ジョージアGDPの推移

http://ecodb.net/country/GE/imf_gdp.html

オウム真理教よりも統一教会のほうが悪質な宗教である

国際勝共連合は反共を装った「隠れ共産主義」の団体

 7月6日と26日に麻原彰晃をはじめとするオウム真理教の元幹部13人の死刑が執行された。私は麻原の死刑について否定しないが、果たして日本人にとって凶悪なカルト宗教はオウム真理教だけなのだろうかとも思う。

 

 例えば、自民党岸信介の時代から韓国の統一教会国際勝共連合、世界平和統一家庭連合)と親密な関係を築いてきた。

 岸信介の孫の安倍首相も2006年5月、統一教会の関連団体「天宙平和連合」に祝電を送っていたことが明らかになっており、国際勝共連合が発行している雑誌『世界思想』の2013年3月号と9月号では「強靭な国・日本」「救国ロードマップ」というタイトルで、勇ましい安倍首相の写真が表紙を飾っている。それはまるで、2012年9月に死去した教祖の文鮮明の後継者として安倍首相を指名しているかのような気味の悪さを感じてしまう(写真を参照)。

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 また、国際勝共連合は消費税増税、TPP協定、原発再稼働、共謀罪テロ等準備罪)、特定秘密保護法、日本版NSC集団的自衛権、安保法制、緊急事態条項、憲法の家族条項、小中学校の道徳教科化など安倍政権の様々な政策を熱烈に支持し、2016年1月には安倍首相を応援して自民党改憲案を推進する学生団体の「UNITE」を結成した。

 この他にも、長年の悲願だった共謀罪の制定について2017年4月のコラムで「先ほどロンドンの国会周辺でテロ事件が発生したようにテロ対策は焦眉の急だ。2020年の東京五輪に向けてテロ対策の強化が急がれる。同法案は今国会で必ず成立させねばならない」と高く評価している。

 

 しかし、先祖の因縁や霊障を取り除くためと言って信者に朝鮮人参茶や大理石壺などを高価で売りつける霊感商法や、女性信者を騙して見ず知らずの外国人と結婚させる合同結婚式など、今まで散々共謀罪に該当するような犯罪行為を繰り返してきた統一教会共謀罪の制定を推進するのは何とも皮肉な話である。

 共謀罪の真の狙いは、自民党統一教会に批判的な人々を取り締まることにあるのだろうか。

 

 更に、自民党議員の加藤寛治氏が今年5月10日に「女性に必ず3人以上子供を産み育てていただきたい」「結婚しなければ子供が生まれず人様の税金で老人ホームに行くことになる」と発言して問題になったが、国際勝共連合はこれに関しても「少子化が深刻な日本の50年後、100年後を考えたら極めて真っ当な正論である」「結婚しなくてもシングルで子供を持てるというフェミニスト社会保障だけ手厚くやれば良いと言うが、それではますます他人様の税金の投入が必要になるだけだ」と擁護している。

 だが、加藤氏の「結婚しなければ人様の税金で老人ホームに行くことになる」という発言は明らかにデタラメである。老人ホームのほとんどは有料であって、国が無償で提供しているわけではないからだ。加藤氏の発言には「政府が国民を養ってやっているのだから、子供を産んで国に貢献しろ」という統治意識が強く感じられる。

 

 こうした女性に出産を強要する発想は、実は国際勝共連合が忌み嫌っているはずの共産主義と非常に相性が良いことをご存知だろうか。有名な例は、独裁政権として知られるルーマニア共産党のニコラエ・チャウシェスク(1918~1989年)である(写真を参照)。

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 チャウシェスクは、ルーマニア出生率の低さを由々しき問題だと考えて1966年から女性の人工妊娠中絶を法律で禁止し、離婚にも大きな制約を設け5人以上の子供を産んだ女性を公的に優遇したが、ヨーロッパの中で最も貧しい部類に入るルーマニアでは大家族を養うことができず、育児放棄によって孤児院に引き取られる子供やエイズに感染する子供が急増するという問題が発生した。

 こうした極端な人口増加策で生まれた孤児たちは「チャウシェスクの落とし子」と呼ばれ、ストリートチルドレン化するなど後々までルーマニアの深刻な社会問題となっている。

 

 つまり、歴史的に見れば女性に出産を強要していたのは共産党であって、ニコラエ・チャウシェスクと同様の主張をする国際勝共連合は反共を装った「隠れ共産主義」の団体ではないだろうか。国際勝共連合が実際は共産主義の団体であることは、既に一水会鈴木邦男氏が1985年2月に寄稿した『朝日ジャーナル』の論文で指摘している。

 

 しかし、自民党議員の間では加藤氏だけでなく、山東昭子氏が「子供を4人以上産んだ女性を厚労省で表彰することを検討してはどうか」と発言したり、二階俊博氏が「この頃、子供を産まないほうが幸せじゃないかと勝手なことを考える人がいる」と発言したり、杉田水脈氏が「LGBTは子供を作らない、つまり『生産性』がないのです」と発言するなど、日本の出生率が低下したのを結婚しない若者やLGBTのせいにし、女性に出産を強要する共産主義的なイデオロギーが蔓延しつつある。

 

 

少子化の改善には消費税引き下げと財政出動しかない

 日本で少子化が進んだのは、所得税減税や国営企業の民営化、消費税導入、労働者派遣法の施行など中曽根政権以降の小さな政府というデフレ促進策によって名目GDP成長率が下がり、子育て世代の収入が激減したからではないだろうか。

 1980年代はまだインフレの時代だったので小さな政府を進めても経済に悪影響を与えることは少なかったが、1990年代のバブル崩壊後にデフレ不況が深刻化する中で消費税増税や歳出削減を断行してしまったのは問題だった。厚労省国民生活基礎調査によれば、児童のいる世帯の平均所得金額は消費税が3%だった最後の年である1996年の781.6万円から2016年の739.8万円まで約42万円も下落している。

 

 児童のいる世帯の所得が大幅に減ったのは、『消費税増税が少子高齢化を加速させる』でも指摘したように子育て世代に当たる30代後半~40代前半の男性の平均年収が1997~2016年の19年間に70万円以上も減少し、夫が妻子を養える経済状況ではなくなったことが最大の原因だと言えるだろう。

 

 また、過去60年間(1957~2017年)の「名目GDP成長率と出生数の推移」には強い相関関係が見られ、最後に出生数が100万人を超えた2015年も名目GDP成長率が2.5%(平成17年基準)と比較的高い数字を示している(図66を参照)。

 政府が本当に少子化を改善させたいのならば、消費税引き下げと財政出動によって子育て世代の所得を増やし、年間の名目GDP成長率が5%を超えるような経済状況を3年以上続けるべきである。

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 だが、国際勝共連合少子化とデフレ不況の関係をどうしても認めたくないように見受けられる。

 『世界思想』の2013年3月号では、男女共同参画社会に関する世論調査の「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方に賛成する割合が2009年の41.3%から2012年の51.6%まで増加したことについて、女性の貧困や若者の労働環境の過酷さが原因だとする村松泰子氏、山田昌弘氏、開沼博氏の主張に反論し、「結婚と出産に経済的な関わりがあることは否定できないが、子供に寄り添いたい親の心情をことさら無視するのは家族軽視やジェンダーフリー思想の表れである」と述べている。

 

 しかし、2012年以降の「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方に賛成する割合の推移を見ていくと2014年は44.6%、2016年は40.6%と徐々に減少していることがわかる。2012年の調査で一時的に賛成派の割合が高まったのは、夫が妻子を養う高度経済成長期の家族モデルに回帰したのではなく、東日本大震災の影響で将来に不安を感じる女性や若者が増加したからではないだろうか。

 

 更に、『世界思想』の2018年6月号では戦後の歴代内閣をA~Eの5段階で格付けしていたが、これにも強い疑問を感じる(表11を参照)。

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 岸と安倍はもともと勝共連合と蜜月関係を築いていたので高い評価を受けるのは仕方ないが、法人税増税や公共事業の拡大、高齢者医療の無償化、公務員給与の引き上げなど大きな政府オイルショック後の安定成長に貢献した田中角栄が何故、C評価なのだろうか?

 田中角栄が首相だった時代(1972~74年)は、それこそ安定した収入を得た団塊世代が次々に結婚して第二次ベビーブームが発生していたにも関わらずである。

 

 そもそも、政府が公共事業を拡大すれば国民経済計算の「公的固定資本形成」が増加し、社会保障を充実させれば「政府最終消費支出」が増加して名目GDPも増え、国の経済成長にもつながるのだ。長引くデフレ不況においても小さな政府ばかり信奉する国際勝共連合は、そうした経済的な知識を一切持っていないのかと呆れてしまう。

 

 オウム真理教は1990年に「真理党」として衆院選に出馬したが、全員落選して供託金も没収され政界進出に失敗している。その一方で統一教会は長年、自民党新自由主義的な政策や家族の助け合い義務の強化を要求し、安倍政権の6年間で彼らの悲願が次々に実現されつつある状況だ。

 麻原彰晃は63歳で死刑となり一連のオウム事件についてある程度の償いをしたと言えるが、文鮮明は92歳までのうのうと生きて霊感商法合同結婚式の被害について全く責任を取っていない。その点では、オウム真理教より統一教会のほうがもっと悪質な宗教なのかもしれない。

 今後、もし安倍政権がスパイ防止法の制定を推進してきたら、野党議員は「犯罪集団の統一教会が1980年代からスパイ防止法の成立に関わってきたこと」を明確に提示して断固反対すべきだろう。

 

 

<参考資料>

櫻井義秀 『霊と金 スピリチュアル・ビジネスの構造』(新潮社、2009年)

山口広、滝本太郎紀藤正樹 『Q&A宗教トラブル110番』(民事法研究会、2015年)

ジョン・D・スターマン 『システム思考 複雑な問題の解決技法』(小田理一郎・枝廣淳子 訳著、東洋経済新報社、2009年)

国際勝共連合 「特集 強靭な国・日本 安倍政権の歴史的使命」 『世界思想』(世界思想出版、2013年3月号)

同上 「特集 歴代内閣を格付けする 安倍政権を戦後政治に位置づける試み」 『世界思想』(世界思想出版、2018年6月号)

 

死刑確定囚13人、全員執行 オウム真理教事件

https://www.asahi.com/articles/ASL787HXWL78UTIL01K.html

安倍首相と統一教会=家庭連合の関係がわかる8つの出来事

http://poligion.wpblog.jp/archives/5522

街頭デモで安倍政権を応援 旧統一教会系の国際勝共連合が支援する大学生集団「UNITE」の正体

https://dot.asahi.com/wa/2016062900245.html

「テロ準備罪法案」の成立を期せ

http://www.ifvoc.org/monthly/2017_04.html

「3人産んで」で人口急激社会への処方箋

http://www.ifvoc.org/news/shiso-np180601/

ニコラエ・チャウシェスク 堕胎と離婚の禁止

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%82%A8%E3%83%BB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%82%A6%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%82%B9%E3%82%AF

勝共連合統一教会)と愛国詐欺

http://wondrousjapanforever.blog.fc2.com/blog-entry-234.html

「子無し税」で炎上中に山東昭子「4人以上産んだら表彰」発言の時代錯誤

http://bunshun.jp/articles/-/5081

自民・二階俊博幹事長「子供を産まない方が幸せだと勝手なこと考える人がいる」

https://www.sankei.com/politics/news/180626/plt1806260029-n1.html

LGBT“生産性”発言で大炎上 自民党杉田水脈の“脈々”と続く問題発言まとめ

http://bunshun.jp/articles/-/8326

平成29年 国民生活基礎調査の概況

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa17/dl/03.pdf

「夫は外で働き、妻は家庭を守る」という意識の変化

http://honkawa2.sakura.ne.jp/2410.html

安倍首相は左翼グローバリストである

愛国者を装って安倍首相を徹底的に甘やかす自称保守派

 6月10日、米山前知事の辞職に伴い実施された新潟県知事選で自民・公明両党が支援した花角英世氏が当選した。これにより、森友・加計問題の影響で内閣支持率が下げ止まっていた安倍政権がまた調子に乗るのは間違いないだろう。

 

 私が最も許せないのは、雑誌『正論』『WiLL』『Hanada』『ジャパニズム』のような愛国者を装って安倍首相を徹底的に甘やかす自称保守派の存在である。

 例えば、2018年6月号の『正論』を読んでいても日本会議会長の田久保忠衛氏が外交問題に目を逸らして「こんなことで憲法改正を潰してはならない」と無条件に安倍政権を持てはやし、自民党議員の山田賢司氏が野党に対して「安倍政権さえ倒すことができればいいの一点張りだ」とレッテルを貼っている。

 彼らは国有財産売り払いの決裁文書改ざんという前代未聞の事件を放置してでも、未だに「安倍さんが日本を取り戻してくれる」「安倍さんなら何をやっても構わない」という幻想を捨てないようだ。自称保守派は日本の国益を守りたいのではなく、ただ安倍晋三を守りたいだけなのだろうか?

 

 また、インターネット上に幅広く存在する安倍信者の被害妄想も酷い。

 連中はよく「朝日新聞などのメディアが偏向報道をして、安倍さんを首相から引きずり降ろそうとしている」と言うが、実際のところマスコミの問題に詳しくない自分でも2017年の衆院選で野党が消費税増税の凍結を掲げていたのに対し、「財政再建はどうするんだ?」と脅して自民党への支持を煽る報道が多かったように感じる。

 マスコミが野党を潰しにかかった背景はもともと消費税増税の反対意見を意図的に黙殺していることに加え、前回(2014年)の衆院選自民党萩生田光一氏が在京テレビ各社に「公平中立な報道姿勢にご留意いただきたくお願い申し上げます」と釘を刺していたことが大きいだろう。

 

 仮に自称保守派や安倍信者が政権を擁護するなら「森友・加計問題で国民に謝罪し、消費税を5%に戻すことで責任を取れ」と言うべきだ。しかし、残念ながら自民党を支持する経済学者の多くが安倍政権になってから増税容認に変節してしまったように思う。その代表的存在とも言えるのが2018年4月から岡山理科大学加計学園)の客員教授に就任した上念司氏である。

 彼は民主党政権の時代まで「次に消費税を上げれば、1997年以降に襲った不況より三段階も四段階も上のすごい不況が襲いかかってくるかもしれない」(『復興増税亡国論』 P.160)と増税を厳しく批判していたが、2015年2月の『ジャパニズム23』に寄稿した論文では、消費税引き上げによって景気が悪化している現実を無視して「アベノミクスの恩恵にあずかれないと文句を言っている人は『賃金が上がっていない』と主張して、単に迎合するだけで何の理論的裏付けもない評論家のカモになるのが運命」とこき下ろし、2013~14年に円安倒産が増加したことについては「アベノミクスに対する本気度を疑っていたから倒産しただけの話」と企業側に責任を押し付け、最後には「景気回復は我々の目前に迫っている!」と期待を煽っていた。

 

 だが、実際に名目GDP成長率(平成23年基準)は安倍政権前半の2012年10-12月期~2015年4-6月期では年率平均2.92%にのぼっていたのに対し、安倍政権後半の2015年7-9月期~2018年1-3月期では年率平均1.13%まで下落してしまった。

 民間最終消費支出もリーマンショックから安倍政権初期にかけての4年半(2009年1-3月期~2013年7-9月期)では23.6兆円増加していた一方で、その後の4年半(2013年7-9月期~2018年1-3月期)では逆に0.9兆円も減少している(図63を参照)。

 安倍政権の中で本当に景気が回復していたのは最初の1年だけであって、消費税増税の影響が表れ始める政権後半にはどんどん名目GDP成長率と個人消費が落ち込んで尻すぼみになっているのが現実だろう。

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安倍首相の熱烈な支持者こそ「反日左翼」を名乗るべき

 安倍政権になってから在留外国人と外国人労働者の数が急増している。在留外国人は麻生政権から民主党政権にかけての2008~12年に221.7万人から203.4万人まで18.3万人減少していたのに対し、最新の2017年末のデータでは256.2万人と安倍政権の5年間だけで52.8万人も増加していることがわかるだろう(図64を参照)。

 また、外国人労働者民主党政権時代の2009~12年では56.3万人から68.2万人まで年平均3.97万人程度の増加に留まっていたのに対し、安倍政権では2017年の127.9万人へと年平均11.94万人も増えており、明らかに増加のペースが速くなっているのだ。

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 在留外国人と外国人労働者がここまで増えたのは当然政府が受け入れを推進しているからで、安倍政権は介護など技能実習制度の適用範囲拡大や国家戦略特区における外国人家事支援人材の解禁など様々な形の移民政策を進めている。

 今年5月30日には政府が5年間を上限に日本国内で就労できる新たな在留資格を設ける方針を決め、2019年春の導入に向けて今秋の臨時国会にも入管難民法改正案を提出する予定だという。

 それに対し、野党では特に日本共産党が「外国人技能実習制度」や「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案」に強く反対している。今の日本の政治では、保守とリベラルの立場が逆転しているようだ。

 

 更に、訪日外国人も近年急増していて、特に2012~17年で中国人観光客が593.1万人、韓国人観光客が509.7万人も増えている(図65を参照)。外国人観光客の増加は一見良いことのように感じるが、1997~2017年の20年間で訪日外国人は421.8万人から2869.1万人まで6.80倍も増えた一方で、出国日本人は1680.3万人から1788.9万人まで1.06倍とほぼ横ばいになっている。

 つまり、長引くデフレ不況による日本人の旅行離れを尻目に、政府は外国人観光客を呼び込んで日本国内の消費を回復させようと必死になっているのだ。

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 その上、安倍首相は海外のスピーチで「もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」「国を開くことが私の中に流れる一貫した哲学でした」「一定の条件を満たせば、世界最速級のスピードで永住権を獲得することができる国になる」と保守とは思えない地球市民的な発言を繰り返している。

 自民党議員の赤池誠章氏は「友達に国境はない!」という子供向けアニメのキャッチフレーズに対して、「国家意識なき教育行政を執行させられたら、日本という国家はなくなってしまう」「私なら『国境があっても、友達でいよう』と名付けたいところ」と揚げ足を取っているが、そんなに国家を重視するなら前述の安倍首相の発言を批判しろよと言いたくなるのは私だけだろうか?

 高須クリニック院長の高須克弥氏も、「マスコミが安倍首相に批判的な報道をするときは最初に反日を宣言しろ」などと意味不明な発言をしているが、高須氏のような安倍政権の熱狂的な支持者こそ「反日左翼」を名乗って国境や国籍を否定する安倍を崇めるべきだろう。

 

 

<参考資料>

菅野完 「バカとの戦い」 『月刊日本』(ケイアンドケイプレス、2018年5月号)

望月衣塑子 「メディアは権力に屈するな」(同上)

田久保忠衛 「こんなことで憲法改正を潰してはならない」 『正論』(日本工業新聞社、2018年6月号)

義家弘介山田賢司 「中国人の『愛国無罪』を笑えない 『反アベ無罪』の日本人たち」(同上)

上念司 「『アベノミクスによる景気回復』の実情」 『ジャパニズム23』(青林堂、2015年2月)

適菜収 『安倍でもわかる保守思想入門』(ベストセラーズ、2017年)

 

自民党、在京キー局に「圧力文書」――アベノミクス酷評に激怒?

http://www.alterna.co.jp/14103

国民経済計算 2018年1-3月期 2次速報値

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2018/qe181_2/gdemenuja.html

図録▽外国人数の推移(国籍別)

http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1180.html

図録▽外国人労働者数の推移

http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/3820.html

三橋貴明】移民受入政策の本命がやって来る

https://38news.jp/economy/11756

新たな在留資格 技能実習後、5年就労可 政府、来春創設へ 労働力確保狙う

https://mainichi.jp/articles/20180530/ddm/002/010/112000c

移民に反対したのは「共産党だけ」という惨状

http://pagent.seesaa.net/article/402126207.html

統計データ(訪日外国人・出国日本人)

https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/visitor_trends/

「友達に国境はな~い」を批判した赤池誠章

http://datsuaikokukarutonosusume.blog.jp/archives/1070566453.html

高須院長がマスコミに注文「先に反日ですと宣言して」

https://www.news-postseven.com/archives/20180324_661859.html?PAGE=2

経済成長が人々の心を豊かにしている

名目GDPが増加して殺人件数が減った戦後日本

 昔から言われている通説に、「物質的な豊かさを追求すると人々の心が貧しくなる」というものがある。

 例えば、安倍首相は著書『美しい国へ』(文藝春秋、2006年)の中で、「戦後の日本は経済を優先させることで、物質的に大きなものを得たが精神的には失ったものも大きかったのではないか」「自主憲法を制定しなかったことで損得が価値判断の重要な基準となり、家族の絆や生まれ育った地域への愛着、国に対する想いが軽視されるようになってしまった」と述べている。

 

 しかし、実際のところ『消費税増税が少子高齢化を加速させる』でも指摘したように、日本人の国民性調査で「一番大切なものは家族」と答えた人の割合は1958年の12%から2013年の44%まで増加していて、家族の絆はむしろ深まっているのだ。

 また、社会意識に関する世論調査で「国を愛する気持ちの程度が他の人と比べて強い」と回答した割合は1977~2018年にかけて、ずっと40~50%台を維持していて現代の日本人が愛国心を軽視しているとは言い難い状況である。最近でも、人気フォークデュオ・ゆずの新曲『ガイコクジンノトモダチ』の歌詞内容が「愛国的」だとネット右翼から高い評価を受けたばかりだ。

 

 更に、戦後の殺人件数の推移を見ても1955年の2119人をピークに2015年の314人まで減少している。この間、名目GDP総額は1955年の8.3兆円(平成2年基準)から2015年の499.3兆円(平成17年基準)へと50倍以上も増加しており、経済成長は人々の心を豊かにしているというのが現実なのだ(図60を参照)。ちなみに、1998年以降に限れば名目GDP成長率が低迷したにも関わらず、奇跡的に殺人件数が減り続けている時代とも言える。

 最近では、「家族間殺人が増加している」という報道をよく目にするが、増えているのはあくまでも殺人事件全体に占める割合であって、未遂を含めた家族間殺人の件数は2008年の558件から2016年の440件まで減少しているのである。

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児童虐待増加の背景にある子育て世代の貧困化

 安倍首相と同様に憲法改正について極論を述べているのが日本会議と関わりが深い政治評論家の細川珠生氏だ。彼女は2016年3月にBLOGOSの記事で、90年代以降の児童虐待の増加について「憲法の行き過ぎた個人主義にその原因の一端がある」と現行憲法のせいにしているのである。

 しかし、児童虐待は戦前の大正時代や昭和初期から既に社会問題となっており、旧児童虐待防止法(1933年)が制定される3年前の1930年には内務省社会局が全国の被虐待児童について調査した結果を公表している。

 

 この調査によれば、昭和恐慌真っ只中の1929年に虐待を受けた児童(検挙された保護責任者の取り調べから判明した人数)は124人(14歳未満が74人、14~19歳が50人)で、曲馬や軽業など危険な諸芸に従事させられていた児童は392人(同170人、222人)、身体の障害などを見せ物にされていた児童は9人(同5人、4人)、芸者や酌婦など「特殊な業務」に従事させられていた児童は6607人(14歳未満のみ)、丁稚奉公など「報酬による養児」とされていた児童は5543人(14歳未満のみ)にものぼっている。

 戦後の日本をどうしても否定したい自称保守派は「今の児童虐待と内容が違う」「貧困社会の中でやむを得ない現象だった」などと言うだろうが、『経済を優先させることで精神的に失ったものも大きかった』という勘違いで、14歳未満の子供が働きに出ないといけないような貧しい時代の日本に戻したいのだろうか?

 

 また、厚労省が発表している「児童虐待相談対応件数の推移」を見ると、1992年度の1372件から2016年度の12万2578件まで増加しているが、この間、年収200万円以下で働く女性の数も550.8万人から833.9万人へと24年間で283.1万人増えている(図61を参照)。

 更に、男性の側も1997~2016年の19年間で子育て世代に当たる30代後半の平均年収が77.4万円、40代前半の平均年収が81.8万円減少しており、バブル崩壊後に女性の貧困が広がって夫が妻子を養える経済状況ではなくなったことが児童虐待増加の背景ではないだろうか。

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主要先進国で日本だけ賃金が上昇していない

 日本のデフレ不況が始まった元年と言われる1997年、中京大学名誉教授の水谷研治氏は同年12月号の文藝春秋で「日本の経済水準は異常に高い。財政赤字を削減するために消費税を20%まで増税して、国民一人ひとりが国の将来のために犠牲になる覚悟を持たなければならない」と緊縮財政を推進する記事を出した。

 実際に、当時の橋本政権は「財政赤字GDP比を毎年3%未満にする」「1998年度の公共投資について、1997年度当初予算における公共投資関係費の93%を上回らないようにする」という内容を盛り込んだ財政構造改革法を同年11月に成立させている。だがその後、日本経済は一体どうなっただろうか?

 

 図62を見ればわかる通りこの20年間、主要先進国の中で日本だけ労働者の賃金が上昇していない。カナダが1.32倍、イギリスが1.31倍、アメリカが1.28倍、フランスが1.24倍、ドイツが1.16倍も増加しているのに対し、日本は0.99倍とほぼ横ばいだ。

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 日本と他の先進国でこれだけ差がついたのは、やはり90年代後半以降の緊縮財政が原因ではないだろうか。欧米諸国ではこの20年間だけでも政府の公共投資を増やし続けた一方で、日本は公共事業削減の影響もあって0.47倍へと半減している(写真を参照)。

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 特に賃金の伸びが良いカナダでは1996~2010年に公共投資が3.27倍も増加したのに加え、付加価値税を2006~08年に7%から5%へと引き下げた。実際に、財政出動と消費税「減税」で国民所得が向上している国は存在するのだ。

 それに対し、日本では安倍政権が公共投資(公的固定資本形成、平成23年基準)を2013年10-12月期の27.1兆円から2017年10-12月期の26.2兆円まで削減し、森友・加計問題やデフレ逆戻りの影響で内閣支持率が30%を切っているにも関わらず、自民党内から「消費税10%への増税を中止しろ」という声すら上がってこない異常事態である。

 90年代のバブル崩壊以降に日本から失われたのは、家族の絆でも国に対する想いでもなく「経済成長が人々の心を豊かにする」という哲学ではないだろうか。

 

 

<参考資料>

大倉幸宏『「昔はよかった」と言うけれど 戦前のマナー・モラルから考える』(新評論、2013年)

水谷研治『大不況を覚悟せよ』(文芸春秋、1997年12月号)

 

社会意識に関する世論調査(平成30年2月調査)

https://survey.gov-online.go.jp/h29/h29-shakai/2-1.html

図録 他殺による死亡者数の推移

http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2776.html

家族間殺人は上昇しているのか

http://blog.livedoor.jp/kudan9/archives/42617386.html

憲法に「家族条項」の創設を 最大の問題は、日本人の思考だ

http://blogos.com/article/166557/

平成28年児童相談所での児童虐待相談対応件数<速報値>

http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000174478.pdf

日本を亡ぼした「財政構造改革法」

https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12297956794.html

Earnings and wages Average wages OECD Data

https://data.oecd.org/earnwage/average-wages.htm

公共投資水準の国際比較

https://www.sato-nobuaki.jp/report/2017/20170529-002.pdf

2017年2月28日発売「消費税の歴史と問題点を読み解く」

消費税収の86%が法人税減税に消えている」など、2017年2月までの当ブログの記事をまとめ、大幅に加筆した新書が同年2月28日に発売されました。

興味を持っていただいた方は、書店やAmazon等で購入してもらえると有り難いです。

 

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目次

第1章 消費税の歴史(近代史から橋本内閣まで)

第2章 消費税の歴史(小泉内閣から安倍内閣まで)

第3章 増税グローバリズムのここがおかしい!

第4章 世界の消費税、軽減税率、所得税の負担率

第5章 消費税は社会保障に使われていない

 

内容紹介

 消費税は身近な税金である。しかし国税のなかで消費税は滞納金が多く、増税をしていくにつれて滞納額が増加するという問題点はあまり知られていない。また、消費税引き下げの議論はない一方で、法人税減税は行われている。

 本書では、消費税の導入から増税が繰り返される日本の歴史、欧米諸国との比較、消費税増税についての問題点を明らかにする。消費税に関して改めて整理し、増税後、国民の生活にどのように影響していくのか考察していく。

 

著者 大谷 英暉  ISBN 978-4-344-91106-2

新書186ページ 価格864円

 

 

消費税の歴史と問題点を読み解く

http://www.gentosha-book.com/products/%E6%B6%88%E8%B2%BB%E7%A8%8E%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2%E3%81%A8%E5%95%8F%E9%A1%8C%E7%82%B9%E3%82%92%E8%AA%AD%E3%81%BF%E8%A7%A3%E3%81%8F/

 

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