消費税増税に反対するブログ

消費税の財源のほとんどが法人税減税に消えている!消費税を廃止し、物品税制度に戻そう!(コメントは、異論や反論も大歓迎です)

今こそ知りたい「消費税増税と法人税減税」の関係

消費税収の78.1%が法人税減税の穴埋めに消えている

 来月からとうとう消費税が10%に増税されてしまうが、社会保障に使われるはずの消費税収はほとんどが法人税減税の穴埋めに消えている事実をどれほどの人が知っているだろうか?

 

 日本では消費税が導入された当時から法人税減税が急速に行われていて、法人税の基本税率は1984~86年度の43.3%から2018年度の23.2%に引き下げられ、国税地方税を合わせた法人実効税率も、1984~86年度の52.92%から2018年度の29.74%まで引き下げられている。

 1989~2018年度まで日本人が払った消費税は計371.9兆円なのに対し、法人税は国と地方合わせて、税収が29.8兆円であった1989年度と比較すると計290.4兆円も減収しており、これは消費税収の78.1%が法人税減税の穴埋めに消えた計算になる(図87を参照)。ちなみに、図87はしんぶん赤旗からの引用だが、日本共産党の機関紙が最も消費税増税に対して厳しい批判をしているのは皮肉な話である。

 また、経団連の榊原名誉会長は法人実効税率を25%に引き下げるよう政府に提言しており、安倍政権が景気を悪化させても消費税10%増税を強行するのは、法人税の大幅な減税によって税収が減ることを見越しているからだろう。

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 経団連法人税減税を推進する理由について「企業の設備投資を増やす」と言っているが、法人税を引き下げても設備投資が増加するとは限らないのが現実だ。国民経済計算の民間企業設備投資(実質値)を見ると、法人税が高かった1977~1997年の20年間では2.99倍も増加したのに対し、法人税減税が繰り返されてきた1997~2017年の20年間では1.17倍しか増加していない(図88を参照)。

 1977~1997年は一般的に日本が安定成長していた時代だと言われているが、1987~91年のバブル景気を除けば1979~80年の第二次オイルショックや1985~86年の円高不況、1992~94年のバブル崩壊など経済的に不安定な時期も多かった。

 それにも関わらず設備投資が増加したのは法人税が今より高かったことにより、企業が税引き前利益を減らして投資や人件費、交際費などに回していたからではないだろうか。

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法人税減税よりも海外進出企業に対して課税を行うべき

 更に、経団連は「法人税増税すると日本から企業が逃げ出す」と言うが、経産省の海外事業活動基本調査(2017年度)では海外に進出する企業に対して移転を決定した際のポイントについて3つまでの複数回答で聞いたところ、法人税が安いなどの「税制、融資等の優遇措置がある」を選択した企業は8.0%と一割にも満たなかった(図89を参照)。

 もし、企業の国外流出を防ぎたいのであれば、法人税減税よりも海外に進出する企業に対して課税を行うべきである。前述の海外事業活動基本調査によれば、海外に拠点を置いて活動する企業の数を表した現地法人企業数は1987年度の6647社から2017年度の25034社まで約3.8倍も増加していて、法人税の高い時代のほうが企業は国内で仕事をしていたのだ(図90を参照)。

 また、企業が海外進出を決定した理由としてトップに挙げたのは「現地の製品需要が旺盛または今後の需要が見込まれる」の68.6%だった。つまり、法人税を減税するよりも消費税を廃止して個人消費による需要を創出すれば、企業が国内に留まってくれる可能性が高いということだろう。

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 海外では米国のトランプ政権が2018年に連邦法人税率を35%から21%に引き下げた一方で、中国など海外からの輸入品の関税を引き上げて税収を増やそうとしている。トランプ氏は政治家として問題の多い人物だが貿易の保護主義を推進し、法人税減税の財源を消費税の導入に頼らなかったことは高く評価すべきだろう。

 それに対し、日本の安倍政権はトランプ氏との交渉で米以外の農産物の関税を全て撤廃しようとしている。国民に対しては消費税増税を強要する一方で、グローバル企業に対しては法人税減税や関税撤廃で優遇したいというわけだ。「もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」という発言からもわかる通り、安倍首相は日本の国益について一切考えていないのだろう。

 

 

消費税廃止と法人税増税国債発行こそ必要な政策である

 この他にも、財務省が言う消費税引き上げのメリットの一つとして、「法人税収は景気に左右されやすいが、消費税収は経済状況に関係なく安定した財源」というものがある。確かに、財務省の一般会計税収の推移を見ると、国の法人税収は1989年度の19.0兆円とバブル期にピークを迎えてその後は減少し、2018年度の法人税収は12.3兆円になっている。

 だが、法人企業統計によれば企業の経常利益は1989年度の38.9兆円から2018年度の83.9兆円まで約2.2倍も増加し、法人税収が減少する一方で経常利益はバブル崩壊後も増え続け過去最高を更新しているのだ(図91を参照)。ちなみに、2018年度は売上高が前年比マイナス0.6%だったにも関わらず、人件費を削減している影響なのか経常利益は増加に転じている。

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 もし、2018年度の経常利益に1989年当時の税率(40%)が適用された場合、単純比較で法人税収は41.0兆円にものぼっていたことが予想される。これは2018年度の法人税収と消費税収を合わせた30.0兆円より多いため、法人税率を一昔前の水準に戻せば消費税を廃止しても社会保障費を捻出することは可能なのだ。

 その上、リーマンショックのような金融危機が発生して法人税収が減少したら、国債発行や財政出動などの景気対策で経済成長を促して税収を増やせば良いだろう。例えば、安倍政権は2025年度までに国の収入と支出の釣り合い状態を表す「プライマリーバランス基礎的財政収支、以下PB)」を黒字化させる目標を掲げているが、PBを改善する方法は消費税増税や歳出削減ではなく経済成長こそが有効である。

 実際に、図92を見ると1980年代以降の名目GDP成長率とPBには相関関係があることが確認され、消費税を廃止してもデフレを脱却すれば自然にPBは改善していくだろう。そして、日本が本当の意味でデフレを脱却するためには消費税廃止と法人税増税国債発行こそ必要な政策なのである。

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<参考資料>

消費税と法人3税の減収額の推移 2018/11/1

http://nam-students.blogspot.com/2018/11/2018111.html

「日本も法人減税を」 経団連は25%要望

https://www.sankei.com/economy/news/171220/ecn1712200038-n1.html

国民経済計算 2019年4-6月期 2次速報値

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2019/qe192_2/gdemenuja.html

消費への罰と、利益への罰

https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12412460015.html

海外事業活動基本調査

https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kaigaizi/index.html

「米法人税率21%」決着 税制改革、成立の公算

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24734550W7A211C1MM0000/

報ステ】“ウィンウィン”強調 日米貿易協定合意

https://www.youtube.com/watch?v=SFpFJTn5gis

平成30年度 法人企業統計調査

https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/results/h30.pdf

一般会計税収の推移

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/010.pdf

日本の基礎的財政収支の推移

https://ecodb.net/country/JP/imf_ggxcnl.html

消費税は国税の中で最も滞納の割合が多い

国税滞納のうち57.3%が消費税で占められている

 消費税が10%に増税されるまで残り2週間余りとなってしまったが、今こそ「消費税は国税の中で最も滞納の割合が多い」という事実について知るべきではないだろうか。「消費税になぜ滞納金が発生するのか?」については、消費税という税制の仕組みを理解する必要がある。

 私たちが買い物をするとき、レジでお金を支払っているため、消費税を納めているのは消費者だと思っている方も多いだろう。だが、これは大きな誤解で、実際に消費税を納める義務があるのは事業者だ。事業者は、決算や確定申告の際に、一定の計算による消費税額を国などに納付する義務があり、そこで消費税を販売価格に上乗せ(転嫁)することが認められている。

 

 しかし、販売価格に上乗せされた消費税を、モノを買うときに消費者が負担するのは事業者が値引きしていない場合で、中小・零細企業の中には少しでも商品を安く売るために、消費税を価格に転嫁できないこともあり、結果的に自腹を切って納税する例が少なくない。その影響もあって消費税は国税の中で最も滞納額が大きく、2018年度に発生した消費税の滞納税額は3521億円と、国税全体の滞納額(6143億円)における57.3%を占めている。

  消費税は法人税所得税と違って、年間売上高が1000万円以上の場合、事業者が赤字でも納税しなければならず、滞納税額が減らないのはそれだけ消費税を納められない企業が多いからである。消費税は事業者が預かる「間接税」ではなく、事業者が納める「直接税」と言ったほうが正しいだろう。

 

 国税の新規発生滞納税額は1992年度の1兆8903億円をピークに減少しているが、これは主に所得税法人税相続税の滞納が減ったからで、消費税だけは依然として滞納額が多いのだ(図85~86を参照)。ちなみに、図85を見ると「消費税の滞納額も1998年から減少しているのでは?」と思うかもしれないが、国税全体に占める滞納額の割合は1990年度の11.1%から2018年度の57.3%まで増加している。

 更に、消費税の滞納額は1996年から98年度、2013年から15年度へと税率が引き上げられた時期に増えており、2019~20年度は10%増税の影響で消費税を納められない事業者が増加するのは明白である。

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消費税という税制に欠陥があるから滞納が発生する

 だが、国税庁は消費税の滞納が増えているのを問題視するどころか、「自営業者=脱税」のイメージを作ることに必死だ。

 例えば、少し古いが1999年11月25日には前年の1998年に消費税の新規発生滞納税額が過去最多になったことを受けて、「消費税は消費者からの預り金的な性格を有する税であるという趣旨の広報活動を更に徹底する必要がある」という通知を出している。税金の問題に関心を持っている方なら、一度は「消費税は消費者からの預り金」という言葉を聞いたことがあるだろう。

 国税庁が子ども向けに広報活動を行っている税の学習コーナーでも、『消費税を通して私たちも納税している』という明らかな間違いを教えている。前述の通り、消費税を納税するのは消費者ではなく事業者であって、子どもたちが『消費税を通して私たちも納税している』という誤解を持つことは、逆に言えば「消費税を納められない事業者は悪質業者」と偏見を助長することにもつながりかねない。

 

 国税庁だけでなくマスコミでも、2001年5月18日の産経新聞で「消費税は私たち庶民が少しでも日本の社会が住みよい、安定した姿になりますようにとの願いから必死に納めているものです。その義務を果たさず、納税すべきお金を他に使うのは最も悪質な脱税行為と言っても過言ではありません。どうして新聞はもっと大きく報道して国民に詳しく知らせないのですか? 政治を先頭に消費税滞納の根絶方法を早急に確立することが急務だと思います」と読者から怒りの声を掲載し、「自営業者=脱税」のイメージを作るキャンペーンを展開している。

 

 2008年4月16日の衆議院財務金融委員会でも、民主党下条みつ議員が滞納された国税の徴収を急げとの趣旨で「釈迦に説法ですけれども、源泉所得税とか消費税というのはいわば中小零細事業主の一時預り金でございますよね。税金を払うのにも、目の前に来ることを先に優先して、お客さんが払った消費税や従業員から取った源泉部分を国に払わない。まず手前の自分のところで処理してしまう。この結果、こういう滞納連鎖が起きていると私は思います」と税金滞納者をけん制した。

 

 国会では消費税引き上げについて「増税したら景気が悪くなる」という反対意見はあっても、「滞納金が多いから」という反対意見は聞いたことがない。最近ではやっと山本太郎元議員が演説の中で国税滞納の約6割が消費税で占められていることを指摘してくれたが、もし政治家の方々が「消費税は国税の中で最も滞納税額が多い」という事実を知らずに増税するかどうかの議論を行っているとしたら、あまりにも勉強不足ではないだろうか。

 

 この他にも、国税庁は過去にタレントを起用したポスターで消費税の滞納者を非難したこともあるが、そもそも消費税の滞納額が国税全体の半数以上を占めているのは、どの事業者も売上に対して一律の額が徴収される「消費税」という税制に欠陥があるからだろう。

 消費税増税を批判する際は、景気の問題だけでなく滞納の問題についても取り上げていく必要があると感じる。

 

 

地方の消費税を安くして「地方創生」を実現しよう

 安倍政権が進める経済政策の一つに地方創生がある。地方創生とは、東京一極集中を是正して地方の人口減少に歯止めをかけ、日本全体の活力を上げることを目的にしている。

 2014年には、元岩手県知事の増田寛也氏が「何も対策を取らなければ、2040年までに全国896の自治体が消滅してしまう可能性がある」というレポートをまとめた『地方消滅―東京一極集中が招く人口急減』(中央公論新社)がベストセラーになった。

 その一方で、政府が進めている地方創生は必要なインフラ整備を放棄し、「各地方は自助努力せよ。成功しているところは地方交付税を厚くし、上手くいかないところは自己責任」と、各地域の競争を煽っているだけなのではないかという批判も存在する。

 

 しかし、私が注目しているのは「地方ほど消費税を滞納する割合が高い」という問題だ。各地域の国税局別に滞納額の割合(2017年度)を見ると東京が1.60%なのに対し、金沢が2.01%、広島が2.29%、名古屋が2.37%、大阪が2.41%、高松が2.63%、関東信越が3.01%、仙台が3.47%、福岡が3.52%、札幌が3.53%、熊本が3.67%、沖縄が3.76%と地方ほど割合が高くなることがわかるだろう(表12を参照)。

 消費税10%増税は政府が進めている地方創生にも大きく反する愚策なのである。

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 地方のほうが消費税を滞納する割合が多いのは、東京などの都市部よりも経済的なハンデが大きいことが原因だろう。例えば、雇用者に占める非正規雇用の割合(2017年)は東京都が32.6%なのに対し、滞納の割合が最も多い沖縄県では41.3%だ。都道府県別の平均年収(2018年)も東京都が622万2900円なのに対し、沖縄県は369万4800円(東京都の59.4%)と宮崎県の365万5300円(58.7%)に次いで少ない。子どもの貧困率(2012年)も東京都が10.3%なのに対し、沖縄県は37.5%となっている。

 

 更に、沖縄は全国の米軍専用基地のうち74%を負担してもらっている問題を忘れてはならない。だが、「沖縄の経済は米軍基地に依存している」というのも事実ではなく、県民総所得に占める基地関連収入の割合はアメリカ統治下だった1965年の30.4%から2015年の5.3%まで低下している。今後、沖縄が米軍基地に依存しない経済を築くためには、県民総所得を拡大させてこの比率を更に引き下げる必要があるだろう。

 そのためにも政府は消費税率を都道府県別にわけて、東京都は5%、沖縄県は0%、それ以外の地域は3%とすべきだと思っている。地方の消費税が東京より安くなれば、各地域の税負担が減って本当の地方創生が実現するのではないだろうか。

 

 

<参考資料>

小澤善哉 『図解 ひとめでわかる消費税のしくみ』(東洋経済新報社、2013年)

醍醐聰 『消費増税の大罪 会計学者が明かす財源の代案』(柏書房、2012年)

行政監察情報 『滞納防止策の改善求める 消費税滞納額増で国税庁に意見表示』(官庁通信社、1999年)

斎藤貴男 『消費税のカラクリ』(講談社、2010年)

大久保潤、篠原章 『沖縄の不都合な真実』(新潮社、2015年)

 

国税庁 統計情報

https://www.nta.go.jp/publication/statistics/index.htm

平成30年度租税滞納状況について

https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0019007_115.pdf

暮らしを支える税を学ぼう

https://www.youtube.com/watch?v=AM8Um27CW4Y

砂漠で金を稼げと言うのか?「地方を見捨てた」山本幸三地方創生大臣

http://www.mag2.com/p/money/274082/2

平成29年就業構造基本調査 主要統計表(都道府県)

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200532&tstat=000001107875&tclass1=000001116995

平成30年賃金構造基本統計調査 都道府県別

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450091&tstat=000001011429&cycle=0&tclass1=000001113395&tclass2=000001113397&tclass3=000001113406

子育て貧困世帯 20年で倍 39都道府県で10%以上

https://mainichi.jp/articles/20160218/k00/00m/040/108000c

米軍基地と沖縄経済について

https://www.pref.okinawa.jp/site/kikaku/chosei/kikaku/yokuaru-beigunkichiandokinawakeizai.html

れいわ新選組は保守左派の政党を目指すべき

れいわ新選組以外の野党も「消費税廃止」を掲げよう

 安倍首相は参院選公示を翌日に控えた7月3日の党首討論会で、「自民党改憲議席を3分の2取ると言ったことは今まで一度もない。与野党で3分の2の合意を得られる努力を重ねていきたい」と発言し、日本維新の会や国民民主党の名を挙げながら憲法改正の国会発議を目指す考えを強調した。

 2020年の新憲法制定に意欲を見せる安倍首相がこのタイミングで維新と国民民主に呼びかけたのは消費税10%増税を控えた悪条件の中、7月21日に実施された参院選で与党をはじめとする改憲勢力が国会発議に必要な3分の2を確保することが難しいと見越していたからに他ならない。

 

 だが、国民民主党の玉木代表は8月20日立憲民主党の枝野代表と衆参両院で統一会派を結成することを合意し、最近では山本太郎氏の人気に目をつけてれいわ新選組との合流説も浮上しているという。玉木代表は経済評論家の三橋貴明氏との対談の中で、小泉政権以降の自民党が進めてきた構造改革を批判し、「食料の安全保障を憲法に明記すべき」と発言していて安倍政権が目指す新自由主義的な改憲とは方向性が違うというのが本音だろう。

 もし、国民民主党立憲民主党がれいわ新選組と合流したいのであれば、「将来的な消費税の廃止」を掲げることを最低条件とすべきである。

 

 その一方で、日本維新の会は次の衆院選までに与党入りする可能性が高いのではないかと見ている。維新はもともと政治の既得権益を打破する目的として設立され、2012年の衆院選では消費税増税原発再稼働に反対していたが、2015年5月に大阪都構想住民投票が否決されると急速に自民党にすり寄るようになったと感じる。

 維新の松井代表は自民党について「既得権益を守る側」としているが、安倍政権は大きな政府によって中間層の所得を分厚くした1970~80年代の「古き良き自民党」を捨て、TPPや法人税減税、農協改革、高度プロフェッショナル制度の導入など日本維新の会が推進してきた「岩盤規制の解体」を次々に実現している。政策面では既に維新も安倍政権の一部となりつつあるのだ。

 

 また、今年の参院選で維新は3議席増やしたものの、持ち前の「身を切る改革」というスローガンが説得力を失っているように感じる。

 その理由はれいわ新選組山本太郎氏が「身を切る改革」と称して特定枠を使い、自身よりALS患者の舩後靖彦氏と重度障害者の木村英子氏の当選を優先させたことが大きいだろう。松井代表は舩後氏と木村氏が議員活動で利用する介護支援について「原資は税金。国会議員だけ特別扱いするのか」と批判していたが、先に「身を切る改革」を使われてしまったことに対する危機感の表れでもあるのではないだろうか。

 維新が自民党に媚びずに大阪以外でも支持を拡大させるためには、従来の「身を切る改革」という主張を控えて山本太郎氏と同様に消費税廃止を掲げるしかないと思っている。

 

 

ネット上に溢れた安倍信者の「山本太郎バッシング」に反論する

 参院選から1ヵ月半が過ぎてやっとれいわ新選組がマスコミに取り上げられるようになったが、その一方でツイッターなどでは安倍信者自民党ネットサポーターズクラブ)による「山本太郎バッシング」も多く見かけるようになってきた。

 安倍信者山本太郎氏を叩く際に決まって2008年の『たかじんのそこまで言って委員会』で「竹島は韓国にあげたら良い」と発言したことを取り上げるが、実際には韓国の実力行使に対して何も行動を起こさない日本政府にハッパをかけようという趣旨だったのに、番組でカットされて竹島の不法占拠を容認するかのような発言に編集されたという話である。

 それに、山本氏の他にも堀江貴文氏が「尖閣諸島を中国にあげちゃえば」と発言し、みのもんた氏も「ロシアは北方領土を買ったらどうか」と発言しているが、安倍信者がこれについて批判した書き込みをほとんど見たことがないように思う。山本氏の竹島発言だけ叩くのは、安倍政権の代わりになる勢力の台頭が嫌だからというのが本音なのだろう。

 

 また、安倍信者山本太郎氏が中核派や逮捕歴のある活動家から支援されていることを批判するが、山本氏が直接的に中核派と関わっているわけではなく勝手に応援されたというだけの話だろう。

 例えば、安倍首相は2006年に統一教会の関連団体「天宙平和連合」に祝電を送り、国際勝共連合が発行している雑誌『世界思想』の2013年3月号と9月号では「強靭な国・日本」「救国ロードマップ」というタイトルで表紙を飾っているが、山本氏が中核派から支援されていることが問題なら総理大臣を約7年もやっているような人物が、霊感商法合同結婚式で散々日本人を騙してきた犯罪組織の統一教会から支援されていることも十分問題にならないだろうか。

 しかし、この点をツイッター安倍信者に指摘すると、必ず反論しないで逃げるかブロックされてしまう。どうも山本太郎氏を叩いている人にとって、安倍首相と統一教会の関係について批判されると都合が悪いようだ。

 

 更に、れいわ新選組が消費税廃止を掲げて、ALS患者や重度障害者の方を当選させたことにどのような関係があるのかと疑問に思っている人も多いかもしれない。だが、障害者の平均月収は一般の方よりも低く、2018年5月のデータでは常用労働者の「きまって支給する給与」が26.3万円なのに対し、身体障害者が21.5万円(常用労働者の81.7%)、知的障害者が11.7万円(44.5%)、精神障害者が12.5万円(47.5%)、発達障害者が12.7万円(48.3%)程度である。知的障害者精神障害者の給与が低いのは、高度かつ付加価値の大きい仕事をこなすことが難しいからだと言われている。

 消費税は所得に関係なく、消費に対して同じ額の税金を支払わなければならないため、障害者の方々により負担が重いのだ。舩後靖彦議員と木村英子議員には、是非ともこの点について国会で追及してほしいと思う。

 

 

れいわ新選組は政府の移民受け入れ政策をもっと批判すべき

 また、れいわ新選組は政府の移民受け入れ政策についてもっと批判すべきである。在留外国人数は民主党政権だった2009~12年に218.6万人から203.4万人まで15.2万人減少していたのに対して、最新の2018年末のデータでは273.1万人と安倍政権の6年間で69.7万人も増加していることがわかるだろう(図84を参照)。

 外国人労働者数も民主党政権時代の2009~12年では56.3万人から68.2万人まで年平均3.97万人程度の増加に留まっていたのに対し、安倍政権では2018年の146.0万人へと年平均12.97万人も増えており、明らかに増加のペースが速くなっているのだ。その影響もあって、既に日本は「世界第4位の移民大国」と呼ばれるまでに変貌しつつある。

 今年4月からは外国人が原発作業員などの単純労働を目的に入国することが可能になり、日本の大学を卒業した留学生の就職条件も緩和された。このままのペースで増加が続けば、2028年には在留外国人が380万人、外国人労働者が270万人にも達してしまうだろう。

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 しかし、この急速な日本の移民国家化を保守もリベラルもほとんど批判していないように思う。私が安倍信者自民党の移民受け入れ政策についてどう思っているのか聞くと「外国人労働者が増えると日本の国益を損なうというロジックがわからない」「外国人労働者を批判する奴は大した努力もせずに、無能の自分を責めることもなく全てを政治の責任にしている愚か者」などと言い訳をしてくる。

 つまり、彼らの本質は移民受け入れを容認する左翼で、「低賃金を我慢できない日本人が悪い」という自己責任論を国民に強要したいようである。

 

 更に、共同通信が2018年11月に行った調査によれば、外国人労働者の受け入れを拡大する入管法改正について賛成する割合が60代以上は37.9%程度だったのに対し、40~50代は54.9%、30代以下は66.3%と若年層ほど高いことが明らかになっている。若者は保守化どころかむしろ移民受け入れに賛成し、「左傾化」しているのが現実なのだ。28歳の私としてはこの状況を憂慮すべき事態だと思う。

 今年の参院選で全体の投票率が48.80%と有権者の半分以上が選挙に行かなかったのも、「消費税を10%に増税して生活が苦しくなっても自分には関係ない」「外国人労働者を受け入れて日本人の雇用が奪われても自分には関係ない」という政治に無関心な国民意識の表れではないだろうか。

 

 この状況を変えるためには、山本太郎氏が演説の中で日本人の給与を上げたくない経団連が安い労働力としての移民を大量に呼び込もうとしている実態を暴いて、外国人労働者の受け入れに疑問を感じている保守層にも積極的にアピールしていく必要があると思っている。れいわ新選組大きな政府によって中間層の所得を分厚くした1970~80年代の自民党のような「保守左派」の政党を目指すべきである。

 

 

<参考資料>

氷川清太郎 「自民・公明+維新+国民民主 悲願の憲法改正にくすぶる"大連立"」 『財界』(財界研究所、2019年8月6日)

齊藤祐作 『発達障害者の才能をつぶすな!』(幻冬舎、2016年)

出井康博 『移民クライシス 偽装留学生、奴隷労働の最前線』(KADOKAWA、2019年)

上毛新聞 『外国人就労の拡大賛成51%』(2018年11月5日)

 

立憲と国民が統一会派「ゆるいグループ」で勢力拡大

https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/201908200001066.html

国民民主党とれいわ新選組に合流説 玉木雄一郎氏、小沢一郎氏、山本太郎氏が会談か

https://news.nifty.com/article/domestic/government/12151-378730/

三橋貴明×玉木雄一郎構造改革って考え方が古いよね

https://www.youtube.com/watch?v=PcUrphzuXuw

れいわ2議員の公費負担 介護支援「拡大」の議論活発化

https://www.sankei.com/life/news/190803/lif1908030021-n1.html

山本太郎、「竹島は韓国にあげたらよい!」発言の真意を告白

https://news.livedoor.com/article/detail/6377900/

毎月勤労統計調査 平成30年5月分結果確報

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/30/3005r/3005r.html

平成30年度障害者雇用実態調査の結果を公表します

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05390.html

図録▽外国人数の推移(国籍別)

https://honkawa2.sakura.ne.jp/1180.html

図録▽外国人労働者数の推移

https://honkawa2.sakura.ne.jp/3820.html

参院選投票率48.80%、24年ぶり50%割る

https://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/20190722-OYT1T50220/

安倍首相が消費税増税を延期しなかった理由

リーマンショックよりも大きかった消費税増税による景気悪化

 7月21日に実施された参院選自民党公明党の与党が77議席から71議席に減らした一方で、野党の立憲民主党が9議席から17議席に増やし、私が支持していたれいわ新選組はALS患者の舩後靖彦氏と重度障がい者の木村英子氏が特定枠を使って当選することができた。しかし、肝心の山本太郎氏が落選したことで次の衆院選まで国会で消費税廃止の議論が行われず、今年10月1日からの消費税10%への増税はほぼ確定してしまったと言えるだろう。

 

 安倍政権や財務省は消費税引き上げを既定路線にしているが、そもそも増税は安倍政権の公約違反だったことをどれだけの人が知っているだろうか?

 安倍首相は2012年6月のメールマガジンで、当時の野田政権が「社会保障・税一体改革関連法案」を衆議院で可決させたことを批判し、「名目成長率が3%、実質成長率が2%を目指すというデフレ脱却の条件が満たされなければ消費税増税を行わないことが重要」と述べていたのだ。

 

 だが、2018年の名目GDP成長率は0.7%、実質GDP成長率は0.8%とデフレ脱却の目標には届いておらず、2014年4月の消費税増税から5年が経ってむしろ経済成長率が落ち込んでいるのが現実なのだ。本来なら安倍首相は「デフレ逆戻り」を理由に、消費税増税の中止を決断すべきだっただろう。そもそも消費税とは完全雇用のもとで国民の消費を減らし、消費財を生産していた人手を浮かせてインフレを抑制することが目的の税金であって、年間の名目GDP成長率が10%を超えるような激しいインフレが発生しない限り増税してはいけないのだ。

 

 デフレ脱却を掲げる安倍政権がデフレを更に加速させてしまう消費税増税を強行する理由は「デフレは貨幣現象」という誤解があるように思う。「デフレは貨幣現象」とは、デフレの原因はマネタリーベース(世の中に供給しているお金の量)の不足なので、日銀が金融緩和を続けていれば消費税増税してもデフレ脱却できるという考え方である。

 だが、マネタリーベースの推移を見ると2012年12月の130.5兆円から2019年6月の510.1兆円まで安倍政権で3.9倍も増加したが、消費者物価指数の中で最も重要なコアコアCPI(食料〔酒類を除く〕及びエネルギーを除く総合)は2019年6月に前年比0.3%程度と年率2%のインフレ目標には達していない(図82を参照)。

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 日銀が異次元の金融緩和を行ってもデフレを脱却できないのは、デフレの原因がマネタリーベースではなく「総需要の不足」だからであって、2014年以降に消費税増税公共投資の削減など緊縮財政が実行されている以上、デフレ不況が継続するのは当然のことだろう。

 しかし、この事実を安倍首相の熱狂的な支持者である経済評論家の上念司氏に指摘したら「2009~12年にマイナスだった物価がプラス転換しているから問題ない」と言い訳してきた。つまり、上念氏にとっての「デフレ脱却」とはコアコアCPIが前年比プラスになる程度のものらしい。この定義ならリーマンショック直前の2008年6~10月もインフレだったことになる。どうやら彼は「日銀がマネタリーベースさえ増やしてくれれば、年率2%の物価上昇率を達成しなくても構わない」とデフレを容認しているのが本音なのだろう。

 

 更に、安倍首相は馬鹿の一つ覚えのように「リーマンショック級の経済危機が発生しない限り消費税を10%に引き上げる」と繰り返している。しかし、国民経済計算の家計最終消費支出はリーマンショックが発生した2008年度には5.7兆円程度の落ち込みだったが、消費税を8%に増税した2014年度は7.3兆円の落ち込みにものぼっている。つまり、「リーマンショック級の経済危機」はすでに消費税増税によって発生していたのだ(図83を参照)。

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 2018年度の実質GDP総額は535.5兆円だが、もし安倍政権が消費税増税を中止して税率が5%のままだったらとっくに家計最終消費支出が300兆円を超えて実質GDPは550兆円以上にも達していただろう。その上、安倍首相にとって「リーマンショック級の経済危機」とは、アメリカで金融危機が発生して日経平均株価が暴落する状況なのかもしれないが、そうなってから消費税増税を中止するのでは手遅れだと言わざるを得ない。

 2008~13年度は消費税がまだ5%だったことで家計消費が回復していたが、8%に増税した2014年4月以降は著しく家計消費が落ち込んでおり、この状況で金融危機が発生したらリーマンショックよりも深刻なデフレ不況になるのは言うまでもないだろう。

 

 

増税を中止するためには経団連の言いなりにならない政権が必要

 また、私がツイッターなどで「安倍首相は消費税増税を中止すべき」と批判すると、必ずと言っていいほど自民党ネットサポーターズクラブ(J-NSC)の関係者と思われるユーザーから「増税民主党政権が決めたことだ。安倍さんとは関係ない」という反論が返ってくる。

 自民党ネットサポーターズクラブとは、2010年に発足した安倍首相の熱狂的な支持者が集まる組織で、2017年時点の会員数は約1万9000人にものぼっている。しかし、消費税が10%に増税されるまでの経緯を振り返るとこれは非常に無理のある言い訳だ。

 

 まず、最初に消費税増税を言い出したのは2008年10月の麻生政権で、初めて「10%案」を出したのも2010年6月の谷垣総裁だった。野田政権の「社会保障と税の一体改革」についても自民党公明党が合意している。

 安倍首相は2012年のメールマガジンで「デフレ脱却するまで増税は行わない」と発言していたが、その公約を反故にして消費税8%増税を決定した2013年10月1日の記者会見で『社会保障を安定させ、厳しい財政を再建するために、財源の確保は待ったなしです。だからこそ昨年、消費税を引き上げる法律に私たち自由民主党公明党は賛成をいたしました』と発言したのである。

 

 更に、自民党の熱狂的な支持者は「野田政権が消費税増税国際公約にしたから、安倍首相はそれに従って増税を進めただけ」と言っているがこれも全くの嘘だろう。国際公約は2011年11月にG20サミットで野田首相が「日本は2010年代半ばまでに消費税を10%に増税する方針を決めた」と発言したことを根拠にしているが、当時の世界主要国はユーロ危機の対応に追われていて日本の増税などどうでもいい話である。

 そもそも消費税を引き上げるかどうかは他国が干渉できない国内の問題であって、G20サミットに関係なく安倍首相は6年半の政権の中でいくらでも増税を中止するチャンスがあっただろう。自民党信者は「安倍政権の消費税引き上げならOK」というのが本音だからこそ、増税民主党政権のせいにするのである。

 

 また、「安倍首相は憲法改正を何としてでも実現させるために選挙直前になって消費税増税の延期を発表する可能性が高い」という言説を聞いたことがある方も多いだろう。これは自民党信者だけでなく、リベラル派と言われている森永卓郎氏や荻原博子氏も同様の主張をしていた。

 しかし、自民党改憲案の内容を見ると「憲法改正のための増税延期」は全くのデマであることがわかる。自民党改憲案83条には「財政の健全性は、法律の定めるところにより確保されなければならない」という財政規律条項が新設されており、これが成立すれば消費税増税に反対して社会保障の充実を求めることも憲法違反になってしまうからである。

 憲法改正に批判的な森永氏や荻原氏が自民党改憲案の財政規律条項を指摘せずに「憲法改正のための増税延期」を煽っていたのは、彼らが本音として消費税増税を容認しているからではないだろうか。

 

 その上、今の安倍首相は憲法改正よりも経団連の言うことを聞いて、どれだけ政権を長く続けられるかのほうが重要だと考えているように感じられる。実際に、2014年の衆院選と2016年の参院選で消費税引き上げを延期したのも、経団連榊原定征前会長がそれほど増税に積極的でなかったのも理由の一つとして挙げられるだろう。

 榊原氏は安倍首相が増税延期を発表した2016年6月1日に「日本経済を再びデフレに戻さない、経済再生を最優先するという安倍総理の揺るぎのない強い決意を示されたものと理解する」と発言していた。つまり、榊原氏が増税延期を許したからこそ、安倍政権は選挙対策として消費税10%引き上げの時期を変更したのである。

 

 だが、現在の経団連会長である中西宏明氏は榊原前会長より増税に積極的なように感じられる。安倍首相が2018年10月15日の臨時閣議で消費税を10%に増税する方針を表明したことを受けて、中西氏は「今回の安倍総理の引き上げ表明を歓迎する」「前年の衆議院選挙の結果により、国民の信任はすでに得ていると理解している」とのコメントを発表している。

 経団連会長は「財界総理」とも呼ばれているように1980年代以降、政府の経済政策に大きな影響を与えてきた存在である。例えば、TPPに関しては2010年に経団連会長が御手洗冨士夫氏から米倉弘昌氏に変わって急に「参加すべき」という話が浮上し始めた。米倉氏は「日本はTPPに参加しないと世界の孤児になる」と発言するほど強力なTPP推進派だった。この10年間は安倍政権も民主党政権も自ら経団連の奴隷になるような政治を続けてきたのである。

 

 2018年にスイスが付加価値税を引き下げ、マレーシアが消費税を廃止して物品税に近い「売上・サービス税」に戻したことは『「平成おじさん」の功罪とれいわ新選組への期待』の記事でも述べたが、今年4月には中国でも増値税率(消費税)を製造業などの業種で16%から13%に、交通運輸業や建築業などの業種で10%から9%に引き下げている。

 それに比べて在任中に消費税を2段階も引き上げ、税率を倍にする安倍首相はやっていることが中国共産党以下ではないだろうか。戦後最悪の緊縮財政を強行する安倍政権を止めるためには、財政再建より経済成長を重視して将来的な消費税の廃止を目指し、財務省経団連の言いなりにならない政権を確立する必要があると考えている。

 

 

<参考資料>

三橋貴明 『2014年 世界連鎖破綻と日本経済に迫る危機』(徳間書店、2013年)

     『メディアの大罪』(PHP研究所、2012年)

清水真人 『消費税 政と官との「十年戦争」』(新潮社、2013年)

片岡剛士 『日本経済はなぜ浮上しないのか』(幻冬舎、2014年)

荻原博子 『安倍政権は消費税を上げられない』(ベストセラーズ、2018年)

 

参院選当選者確定…与党、改選議席から6減らす

https://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/20190722-OYT1T50215/

マネタリーベース : 日本銀行 Bank of Japan

https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mb/index.htm/

消費者物価指数 時系列データ

https://www.stat.go.jp/data/cpi/historic.html

消費増税、首相「リーマン級なければ方針変わりない」

https://www.sankei.com/politics/news/190509/plt1905090016-n1.html

自民公認サポーター組織 会員数1万9000人で「宣伝戦」

https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171018/k00/00m/010/172000c

平成25年10月1日 安倍内閣総理大臣記者会見

https://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/1001kaiken.html

憲法改正草案 第83条(財政の基本原則)

http://tcoj.blog.fc2.com/blog-entry-83.html

消費増税再延期に関する榊原会長コメント

https://www.keidanren.or.jp/speech/comment/2016/0601.html

2019年10月に消費税10%、経団連会長「安倍総理の引き上げ表明を歓迎」

https://news.mynavi.jp/article/20181016-707774/

全人代で2019年も増値税率引き下げの方針を発表

https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/03/a4d31dcc440fb3bf.html

「平成おじさん」の功罪とれいわ新選組への期待

公共事業を増やして一時的に景気回復させた小渕政権

 今年4月30日、1989年1月8日から続いた「平成」という時代が終了した。日本の政治を振り返るとこの30年間で竹下政権から安倍政権まで17人の首相が移り変わってきたが、その中で最もマシだったのは「平成おじさん」でも有名な1998~2000年の小渕政権だったように思う(写真を参照)。当時、自分は小学1~3年生で初めてリアルタイムで覚えている総理大臣でもある。

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 平成不況の真っ只中に実施された1998年7月の参院選では自民党が敗北し、その責任を取って橋本首相が辞任する。7月30日に就任した小渕首相は当初「冷めたピザ」「凡人」と批判されていたが、橋本政権が1997年11月に制定した「財政構造改革法」を凍結し、国債発行を財源に1998年度の公共事業関係費を過去最高の14.9兆円まで増やした。小渕首相は大胆な経済政策を実行することで「私は世界一の借金王」と自嘲していたが、消費税増税後のデフレ不況に苦しむ1998年当時の日本にとって国債発行と公共事業の拡大は正しい政策だったと言えるだろう。

 

 実際に小渕政権の支持率は1998年11月の20%から1999年8月の53%まで上昇し、実質GDP成長率も1998年のマイナス1.1%から2000年のプラス2.8%まで回復している。90年代は不況と言われながらも、政府の公共事業によってかろうじて経済成長していた時代なのだ。

 また、バブル崩壊後に増加していた年収100万円以下の男性貧困層の数も1998年の66万9019人から2000年の49万9517人へと減っている(図78を参照)。労働力調査によれば建設業で働く従業員は1950年代以降、一貫して8割以上が男性なので政府の公共事業関係費が男性の所得にも影響しやすいのだろう。

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 しかし、小渕首相が脳梗塞で辞任してから2000年4月に就任した森政権は財務省の緊縮路線に戻り、2001~06年の小泉政権では公共事業が大幅に削減された。小泉首相の「古い自民党をぶっ壊す」というスローガンは、政府の公共事業や社会保障支出によって分厚い中間層を生み出してきた高度経済成長期の自民党を破壊することに他ならなかったのである。

 安倍政権も当初は国土強靭化として公共事業を推進していたが、実際に2017年度の公共事業関係費は7.0兆円と1998年の半分程度に過ぎず、その影響もあって「世界の一人当たりの名目GDPランキング」が2000年の2位から2017年の25位まで下落している。平成は緊縮財政のせいで、日本が「先進国」から「衰退途上国」に転落してしまった時代なのだ。

 更に、2017年には年収100万円以下の男性貧困層が94万8835人まで増加し、1978年以降の過去40年間で最多となっている。安倍首相は「アベノミクスが成果を上げて、就業者数が過去最高になった」と自画自賛するが、賃金関係なく就業者数だけ増やしてワークシェアリングを進めてきたのが現実だろう。一定の収入を得ないと結婚できない20~30代男性にとって、年収100万円程度では失業しているのと同じことである。

 

 また、小泉政権以降の自民党が公共事業を削減してきたことで、高度経済成長期に作られた道路や橋などがどんどん老朽化しつつある。アメリカでは1930年代のニューディール政策で作られたインフラが80年代に老朽化した問題を抱えていたが、新自由主義を推進しながら財政出動を続けて1996~2012年の公的固定資本形成を1.93倍も増加したのだ。

 日本でも2012年12月に笹子トンネルの崩落事故が発生しているが、高度経済成長期から50年以上も経過して1996~2012年の公的固定資本形成を0.47倍に縮小したにも関わらず、大規模なインフラの崩壊が相次がないのは奇跡的だとしか言い様がないだろう。「平成」が終わって「令和」の時代に入った今だからこそ、政府は公共事業費を過去最高に増やして一時的に景気回復させた小渕政権を再評価すべきである。

 

 

富裕層減税と労働規制の緩和が少子化を加速させた

 だが、小渕政権には功績だけでなく「罪」の部分も大きい。具体的な例を挙げるとしたら所得税法人税を大幅に減税し、労働者派遣法を改正してしまったことだろう。富裕層に対する減税と労働規制の緩和を行うことによって、90年代まで続いていた戦後の一億総中流社会を崩壊させてしまった。

 所得税の累進性が最も高かったのは1974~83年で中曽根政権の時代から徐々に引き下げられ、1995~98年には課税所得が3000万円以上の富裕層に対して50%の最高税率が適用されていたが、小渕政権はそれを1999年に課税所得が1800万円を超えればどれだけ稼いでも37%の最高税率しか適用されないように減税したのである。

 

 所得税の累進性が高いと企業経営者の中には「どうせ税金で取られるなら自分が高額の報酬を受けるより、社員に還元したほうがマシだ」と考えて従業員の給料も上昇しやすくなるが、最高税率の引き下げはそのプロセスを壊すことになってしまう。実際に、労働者の平均月収は1998年の36.6万円から2018年の32.4万円まで下がり、1ヵ月では4.2万円程度だが年間にすると50.4万円にもなって減少額が大きいことがわかるだろう(図79を参照)。

 特に娯楽・文化では小渕政権だった1998年に音楽ソフトの売上が6075億円とピークを迎えて2018年には2403億円まで落ち込んでいるが、これはCDからダウンロードや定額制ストリーミングの時代に移行しただけでなく、20~30代の所得が減少して娯楽に使えるお金が減ったことも大きいのではないだろうか。デフレ不況は国民を貧困化させるだけでなく、音楽文化まで破壊してしまうようである。

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 80~90年代に所得税が減税されてきた理由は主に「富裕層の消費を促して経済を活性化させる」というトリクルダウン理論が言われていたが、日本で100万ドル(約1億1000万円)以上の投資可能な資産を保有する人は2005年の141万人から2017年の316万人まで2.24倍も増加したのに対して、家計最終消費支出は2005年の274.5兆円から2017年の290.8兆円までたったの1.06倍しか増加していない(図80を参照)。

 家計最終消費支出とは、「民間最終消費支出」から私立学校、宗教団体、政党、福祉関係のNPOなど営利を目的とせず社会的サービスを提供している民間団体の消費を除いた額で、より家計の個人消費を表す数値に近いと言える。これが増加していないのは、富裕層の資産が増えても国民全体の消費は伸びないことの証左ではないだろうか。

 小渕首相はケインズ経済学に基づいて減税と公共事業の拡大を進めたのだろうが、減税するのなら所得税法人税よりも消費税を1997年以前の3%に戻すべきであった。そうすれば仮に小泉政権以降の自民党が歳出削減しても、個人消費が回復して一人当たりの名目GDPランキングが25位まで落ち込むことはなかっただろう。

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 また、小渕政権は1999年12月に労働者派遣法を改正し、それまで専門26業務に限定されていた「ポジティブリスト方式」を港湾運送、建築、警備、医療、製造業など以外は原則自由化するという「ネガティブリスト方式」に変えてしまった。派遣業務の拡大は1995年に日経連が発表した『新時代の「日本的経営」―挑戦すべき方向とその具体策』に基づくもので、従業員を「長期蓄積能力活用型」「高度専門能力活用型」「雇用柔軟型」の3つのタイプにわけ、雇用柔軟型として非正規雇用派遣労働者を大幅に増やす提言を行っている。

 小渕政権の後も労働者派遣法は2004年に製造業での採用が解禁され、2015年からは専門26業務の枠組みを廃止して企業が人さえ変えれば同一事業所の派遣使用期間をいくらでも延長できるようになった。その影響で非正規雇用の割合は1998年の23.6%から2018年の37.9%まで上昇し、主に20~30代の労働環境が悪化して少子化の原因の一つにもなっていることが明らかである。

 

 

与党も野党もれいわ新選組の経済政策を見倣うべき

 小渕氏の死後、森政権から安倍政権までほとんどの内閣が緊縮財政を続けて野党でも公共事業を推進する政党が少ないが、その中で私は参議院議員山本太郎氏が結成した「れいわ新選組」に期待している。2013年の参院選で当選したときに山本氏はイロモノ扱いされていたが、最近では安倍首相と仲が良かった経済評論家の三橋貴明氏と対談するなど脱原発以外にも経済政策で支持を伸ばしている。

 れいわ新選組は消費税廃止、公共事業の拡大、公務員の増加、奨学金の返済免除、一次産業戸別所得補償、所得税法人税の累進性強化、政府が補償して最低賃金を引き上げるなど戦後の福祉型資本主義を取り戻す真っ当な政策を掲げた真の保守政党で、原発即時禁止や米軍基地建設の中止を除けば、高度経済成長期の自民党がやっていたこととほとんど同じではないだろうか。

 公共事業を増やして景気回復させた一方で、富裕層減税と労働規制の緩和を行って一億総中流社会を崩壊させた小渕政権の「功績」と「反省」を踏まえた政党でもあると言える。

 

 政府はれいわ新選組の政策を参考にまずは消費税10%への増税を中止し、将来的に物品税制度に戻していくべきである。国民経済計算を見ると昭和後期の1959~1988年では名目GDP成長率の平均が12.4%、実質GDP成長率の平均が6.6%と高かったのに対し、平成の1989~2018年では名目GDP成長率の平均が1.1%、実質GDP成長率の平均が1.3%と大幅に下落しており、物品税の時代と比べて消費税を導入してからの30年間は名目では10分の1以下、実質では5分の1以下しか成長していないのだ。

 海外では2006~08年にカナダとイギリスが付加価値税を引き下げていたが、2018年にはスイスでも8%から7.7%に引き下げ、マレーシアは6%の消費税を完全に廃止して「物品税」に近い売上・サービス税(SST)に戻している。深刻なデフレ不況であるにも関わらず、たった5年間で消費税率を倍にする日本がいかに時代に逆行しているのかわかるだろう。

 

 この他にも前述の通り、建設業の賃金を引き上げて公共事業費を増やし、災害に備えて老朽化した道路や橋などを修復する必要がある。1998~2018年の政府総支出の伸び率は新興国の中国、カタール、インドで多いのはもちろんのこと、イギリスが239%、カナダが220%、スウェーデンが196%、フランスが184%、ドイツが154%と先進国でも当たり前に政府の公共投資で経済成長を続けているのに、日本では98%と1998年より政府総支出が少なく緊縮財政がデフレ不況の長期化に繋がっていることが明らかである。

 アメリカは2001年以降のデータしか公表していないが、それでも211%となっている(図81を参照)。

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 更に、れいわ新選組は「政府が補償して最低賃金を1500円まで引き上げる」と言っていて、これも日本がデフレ脱却するために必要な政策だろう。日本の最低賃金は年々上昇しているが、欧米と比較すると80年代から新自由主義を推進してきたアメリカでもワシントン州が12ドル(1320円)、イギリスでも25歳以上が8.21ポンド(1150円)なのに対し、東京は985円(いずれも2019年4月現在)とまだまだ安い。

 最近ではアメリカの連邦最低賃金を15ドル(1650円)まで引き上げる公約を掲げたバーニー・サンダース氏や、イギリスの最低賃金を10ポンド(1400円)まで引き上げる公約を掲げたジェレミー・コービン氏が若年層から支持を集めており、日本の「最低賃金1500円」も決して非現実的な政策ではないことがわかるだろう。

 安倍政権の熱烈な支持者たちは「韓国は最低賃金を引き上げて失業率を悪化させた」と言うが、韓国では最低賃金を上げても政府の中小企業支援策が圧倒的に足りなかったから経済が停滞しているのが現実で、最低賃金の引き上げそのものを否定するのは悪質な印象操作である。

 

 財政出動最低賃金引き上げの財源として、れいわ新選組は年率2%のインフレ目標に達するまで国債発行を続けると言っている。ただ、年率2%程度では本当に日本がデフレ脱却したとは言えず、できれば年間の名目GDP成長率が5%を超える経済状況になるまで国債発行を続けても良いと思う。名目成長率が5%を超えたら20~30代の所得も増加して、間違いなく少子化が改善するだろう。

 これから始まる「令和」は反緊縮に転じて1998年から続くデフレ不況を終わらせる時代にしなければならない。そのためにも山本太郎氏の経済政策を与党も野党も見倣うべきである。

 

 

<参考資料>

小此木潔 『消費税をどうするか 再分配と負担の視点から』(岩波書店、2009年)

塩田潮 『内閣総理大臣の日本経済』(日本経済新聞出版社、2015年)

植草一秀 『日本経済復活の条件』(ビジネス社、2016年)

藤井聡 『公共事業が日本を救う』(文藝春秋、2010年)

全労連・労働総研編 『2016年国民春闘白書・データブック』(学習の友社、2015年)

森岡孝二 『雇用身分社会』(岩波書店、2015年)

萩原伸次郎 訳著 『バーニー・サンダース自伝』(大月書店、2016年)

松尾匡 『この経済政策が民主主義を救う』(大月書店、2016年)

 

公共事業関係費(政府全体)の推移

https://www.mlit.go.jp/common/001270879.pdf

政治意識月例調査 1998年

https://www.nhk.or.jp/bunken/yoron/political/1998.html

国民経済計算 2019年1-3月期 2次速報値

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2019/qe191_2/gdemenuja.html

民間給与実態統計調査 長期時系列データ

https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/jikeiretsu/01_02.htm

労働力調査 長期時系列データ

https://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.html

世界の一人当たりの名目GDPランキング

https://ecodb.net/ranking/old/imf_ngdpdpc_2017.html

公共投資水準の国際比較

https://www.sato-nobuaki.jp/report/2017/20170529-002.pdf

所得税 最高税率の推移

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%89%80%E5%BE%97%E7%A8%8E#%E7%A8%8E%E7%8E%87%E3%81%AE%E6%8E%A8%E7%A7%BB

労働政策研究・研修機構 図1 賃金

https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0401.html

日本のレコード産業 2019

https://www.riaj.or.jp/f/pdf/issue/industry/RIAJ2019.pdf

World Wealth Report  Compare the data on a global scale

https://www.worldwealthreport.com/hnwi-market-expands

「民間最終消費支出」と「家計最終消費支出」の違い

https://www.dir.co.jp/report/research/introduction/economics/indicator/20130117_006677.pdf

れいわ新選組 今日本に必要な緊急政策

https://www.reiwa-shinsengumi.com/policy/

マレーシアの売上・サービス税(SST

https://kabu-yutai.com/2018/12/08/post-7610/

各国の最低賃金(2019年6月20日更新)

http://ww1.tiki.ne.jp/~happy-n/sub100.html

消費税増税後の景気悪化から逃げ続ける安倍政権

就業者数ではなく消費税増税の影響で下落する実質賃金

 賃金や労働時間を調べる厚労省の「毎月勤労統計調査」で、統計法に反する不適切な調査が長年行われていたことが今年1月に発覚した。2018年1月に調査対象となる企業群のサンプルを半数近く入れ替え、同年6月には名目賃金の伸び率が前年同月比で3.3%増加と1997年1月以来の高い水準にのぼっていたことが報道された。

 しかし、名目賃金から物価の変動を除いた実質賃金は2014年に消費税増税の影響で「現金給与総額」が前年比マイナス2.8%、「きまって支給する給与」が前年比マイナス3.2%となっており、その後も低迷した状態が続いている。

 

 経済学者のミルトン・フリードマンは消費と所得の関係について、「消費者の消費は恒常的だと考える所得に比例する」と主張している。例えば、農家に代表される「所得が不安定な人々」は預金や保険を増やさざるを得ない。つまり、所得から消費に回す割合を減らすため消費性向が下がる。

 逆に、公務員に代表されるように安定的な所得を「恒常的」に得られることが確定しているならば消費性向は上昇する。恒常的な所得を拡大することこそが、国内における「消費」という需要を最大化する道なのだ。毎月勤労統計調査では「現金給与総額」と「きまって支給する給与」をそれぞれ公表しているが、実質賃金の「きまって支給する給与」がフリードマンの言う「恒常的な所得」に最も近いだろう。

 

 2011年2月から2018年2月までの「きまって支給する給与」の推移を見ると、消費税を8%に増税した2014年4月から大幅に下落したことがわかる(図72を参照)。

 実質賃金は「生産の量」に大きく左右され、例えば販売数が1年で10個から9個へと減った場合に実質賃金は前年比10%落ち込んでしまう。消費税増税で家計消費が減少したことが実質賃金下落の原因なのである。

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 それでも、高橋洋一氏など安倍政権下の消費税増税を容認する経済学者は実質賃金の下落について「就業者数が増えたことによる成果」だと強弁し、政治ブログなどを見ていても「給料の安い労働者を解雇してデフレにすれば実質賃金は上がる」などとデタラメなことを書いている人が多い。

 だが、図73の「就業者数と実質賃金指数の推移」を見ると消費税が3%だった1990~96年は就業者数も実質賃金も上昇していたのに対し、5%に増税された1997年から共に下落が始まり、8%増税後の2014年以降は「就業者数が増加したにも関わらず実質賃金が減少する」という状況が発生している。

 消費税を3~5%に減税すれば就業者数が増加しても実質賃金は上昇するし、逆に消費税を10%に増税すれば更に実質賃金が下落して国民が貧困化してしまうだろう。

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緊縮財政を隠すためにかさ上げされた名目GDP

 安倍政権は「毎月勤労統計調査」の改ざんだけでなく、国民経済計算の名目GDPも大幅にかさ上げしている。内閣府は2016年12月にGDPの算出方法を変更し、研究開発費などを加えて1994年以降のGDPを旧基準の「平成17年基準」から新基準の「平成23年基準」に改定して公表した。

 しかし、実際の名目GDPを見てみると1994年は平成17年基準が495.7兆円、平成23年基準が501.5兆円とたったの5.8兆円しか増加していないのに対して、2015年は平成17年基準が499.3兆円、平成23年基準が531.3兆円と実に32.0兆円もかさ上げされているのだ。1994年と2015年でこれだけ差があるのは算出方法を変更した際に、研究開発費とは関係ない「その他」の部分を大幅に加算したからだと言われている。1994年なら「その他」の部分はマイナス7.8兆円だったのに対し、2015年は逆にプラス7.5兆円も増えてしまった。

 

 平成23年基準の名目GDPは2018年で548.9兆円と、1997年の534.1兆円を超えていて過去最高を更新しているが、平成17年基準では最後に公表された2015年の名目GDPが499.3兆円だったので、これに平成23年基準の名目GDP成長率(2016年の0.9%、2017年の1.7%、2018年の0.7%)を掛けると2018年の名目GDPは515.9兆円程度にしかならず、まだ1997年の523.2兆円を超えていない(図74を参照)。

 「アベノミクスが成果を上げて、名目GDPが過去最高になった」と自画自賛する安倍首相の発言は全くの嘘なのである。

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 更に、かさ上げされた平成23年基準でも安倍政権が始まった2013年1-3月期から2018年10-12月期までの年率換算の名目GDP成長率を見ると、安倍政権前期に当たる2013~14年の成長率は年率平均2.44%、安倍政権中期に当たる2015~16年の成長率は年率平均1.94%、安倍政権後期に当たる2017~18年の成長率は年率平均1.21%と、政権後半になるほど成長率が下落してデフレ不況に逆戻りしていることがわかる(図75を参照)。

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 名目GDP成長率が下落したのは消費税増税による景気悪化に加え、政府の公共投資(公的固定資本形成)を削減したことも原因だと思われる。安倍政権は当初「機動的な財政政策」として公共事業の大盤振る舞いを宣言していたが、実際に公的固定資本形成(実質値)が増加していたのは2012年10-12月期の24.1兆円から2013年10-12月期の27.1兆円までの最初の1年だけであって、その後は2018年10-12月期の24.5兆円へと減少している。

 安倍首相がアベノミクス自画自賛すればするほど増税後の景気対策は遅れ、財政も緊縮的になってきているのが現実のようだ。「日銀が金融緩和だけしていればデフレを脱却できる」という勘違いはやめて、消費税引き下げと財政出動に踏み切るべきではないだろうか。

 

 

本当に「悪夢のような時代」なのは2014年4月以降

 また、安倍首相は2月10日の自民党大会で、2007年の参院選での敗北に触れる中で「悪夢のような民主党政権が誕生した。あの時代に戻すわけにはいかない」と演説した。

 ツイッターなどを見ていると民主党政権の時代を不当に貶めるのが自民党ネットサポーターズクラブ(J-NSC)の常套手段なので安倍首相は熱狂的な支持者に向けたリップサービスとして上記の発言をしたのだろうが、民主党政権の時代は消費税がまだ5%で今より家計消費の伸びが良かったから中小企業の景況感も回復していたのが現実なのだ。

 

 実際に、2011年3月の東日本大震災から数ヵ月経った仙台ではブランド品のルイ・ヴィトンや高級車のメルセデス・ベンツが急に売れ始めたことが報告されている。あれだけ大規模な災害が起こると生命保険会社や損害保険会社は世間からの批判を恐れて、本来なら地震保険に加入していなければ免責される事案でも申請を受け付け、その審査が下りて多額の保険金が支払われたタイミングで高級品が売れたのだという。

 民主党政権の時代も決して好景気だったとは言えないが、消費税が今より安かったことでリーマンショック東日本大震災からの回復が早かった側面も存在するのではないだろうか。

 

 家計最終消費支出を見ても2008年10-12月期の272.7兆円から2013年10-12月期の292.7兆円まで5年間で20.0兆円も増加していたのに対して、2018年10-12月期には292.8兆円へと5年間でたったの0.1兆円しか増えていない。中小企業の景況感を表す「中小企業DI」も2008年10-12月期のマイナス42.0から2013年10-12月期のマイナス13.8まで回復していたが、その後は横ばいに推移していて2018年10-12月期もマイナス13.8と変わらない(図76を参照)。消費税増税から5年が経っても未だに2014年1-3月期のマイナス11.1を上回った時期がないのだ。

 総務省が公表している家計消費水準の実質的な向上分を示す「消費水準指数」も東日本大震災後の2011年4月から2014年3月まで回復していたが、2014年4月以降は消費税増税の影響で大幅に下落してしまった(図77を参照)。

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 この間、日本の総人口が減少して介護の人手不足が深刻化したことにより、完全失業率が2011年4月の4.7%から2018年12月の2.4%まで改善するという好条件にも関わらず、増税後に消費がこれだけ落ち込んでしまったのだ。

 安倍政権が統計データを改ざんしたり、旧民主党へのネガティブキャンペーンを煽ったりするのも結局のところ「消費税増税による景気悪化」から目を逸らすためである。本当に「悪夢のような時代」なのは民主党政権ではなく2014年4月以降で、消費税増税がいかに日本経済を苦しめているのかわかるだろう。

 

 

<参考資料>

吉田啓志「発覚した厚労省『毎月勤労統計』の『偽装』は『政権への忖度』の声も 『アベノミクスは失敗』の評価恐れるか」 『週刊金曜日』(金曜日、2019年1月25日)

三橋貴明 『日本「新」社会主義宣言 「構造改革」をやめれば再び高度経済成長がもたらされる』(徳間書店、2016年)

明石順平 『アベノミクスによろしく』(集英社インターナショナル、2017年)

和田秀樹 『経営者の大罪 なぜ日本経済が活性化しないのか』(祥伝社、2012年)

 

厚労省、統計発表見直しへ 賃金上昇率過大「補整はせず」

https://www.nishinippon.co.jp/nnp/politics/article/453411/

6月の名目賃金確報値3.3%増、速報値から縮小 毎月勤労統計

https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL22H74_S8A820C1000000/

毎月勤労統計調査(全国調査・地方調査):結果の概要

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/30-1a.html

増税サポーター 安倍晋三

https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12442619730.html

労働力調査 長期時系列データ

https://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.html

国民経済計算 2016年7-9月期 1次速報値(平成17年基準)

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2016/qe163/gdemenuja.html

国民経済計算 2018年10-12月期 2次速報値(平成23年基準)

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2018/qe184_2/gdemenuja.html

『悪夢のような民主党政権』発言からにじみ出た『バラ色の自民党』意識

https://bunshun.jp/articles/-/10861

中小企業景況調査報告書 結果の概要

https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/keikyo/index.htm

家計調査(家計収支編) 過去に作成していた結果表

https://www.stat.go.jp/data/kakei/longtime/index2.html#level

2017年2月28日発売「消費税の歴史と問題点を読み解く」

消費税収の86%が法人税減税に消えている」など、2017年2月までの当ブログの記事をまとめ、大幅に加筆した新書が同年2月28日に発売されました。

興味を持っていただいた方は、書店やAmazon等で購入してもらえると有り難いです。

 

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目次

第1章 消費税の歴史(近代史から橋本内閣まで)

第2章 消費税の歴史(小泉内閣から安倍内閣まで)

第3章 増税グローバリズムのここがおかしい!

第4章 世界の消費税、軽減税率、所得税の負担率

第5章 消費税は社会保障に使われていない

 

内容紹介

 消費税は身近な税金である。しかし国税のなかで消費税は滞納金が多く、増税をしていくにつれて滞納額が増加するという問題点はあまり知られていない。また、消費税引き下げの議論はない一方で、法人税減税は行われている。

 本書では、消費税の導入から増税が繰り返される日本の歴史、欧米諸国との比較、消費税増税についての問題点を明らかにする。消費税に関して改めて整理し、増税後、国民の生活にどのように影響していくのか考察していく。

 

著者 大谷 英暉  ISBN 978-4-344-91106-2

新書186ページ 価格864円

 

 

消費税の歴史と問題点を読み解く

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